●あけおめ 人で賑わう神社へ続く道に、それは突然現れた。 やけに派手な、派手な……全身タイツの集団+獅子一匹。 手にはそれぞれ、正月向けの道具を手にしている。 何だろう、お笑い番組か何かの企画だろうか。 人々の視線が向けられ、自然と人波が割れた。 中心付近で人々に囲まれた所で、リーダーらしき紅白横じまの全身タイツがずいっと前に出る。 手には門松を持っていた。 そして、意外と無駄に良い声で、朗々と言い放つ。 「――よく聞け! 我々は正月だからと浮かれる愚かな民衆に鉄槌を下しに来た!」 …………。 ―― 一番浮かれてんのお前らじゃねーか、という呟きは、笑い声で掻き消された。 数秒後に響き渡る声。 「新春門松アターック!!」 「迎春しめ縄ビーティィィィング!」 「賀正羽子板スマァァァッシュ!」 「謹賀獅子舞クラァッシュ!」 「初春鏡餅フラーイーング!!」 ●誰よりも浮かれた男達 「やあやあ今年初めてですね皆さん、皆さんのお口の恋人断頭台・ギロチンを今年も宜しくお願い致します。早速ですが新年一発馬鹿が出ました。他に形容しようがないので馬鹿です。ちょっとウザいので今行って殴ってきてくれますか」 新年早々ブリーフィングルームに集められたリベリスタに『スピーカー内臓』断頭台・ギロチン(nBNE000215)が告げたのは、そんな身も蓋もない一言だった。 端末操作でモニターに現れたのは、それぞれ微妙に衣装の違う全身タイツの男四人――と、獅子頭。 しかもどこで撮ったのか、妙なポーズまでつけている。 ああ。 なるほど、これは馬鹿だ。 納得するリベリスタが遠い目をする横で、青年は頷いた。 「見てお分かりの通り、全身タイツの男達です。で、神社で人を門松で殴ったりしめ縄で叩いたり好き勝手に暴れます、年神様に怒られそうですよねえ、まあどうでもいいですけど。で、彼らも一応加減はしてるようなので一般人でも死ぬどころか怪我もほとんどないと思いますが、折角の初詣で変な人に絡まれるのも可哀想ですし。警察の方も忙しいでしょうしねえ」 彼らは『浮かれる愚か者に現実を!』とか言っているらしいが、丸のままのし付けて返せ。 というかもしかして酔ってんじゃないかコイツら。 そんな疑念すら浮かぶ中、ギロチンは一人しるこドリンクを飲みつつ説明を続ける。 お前も真面目にやれよ朝から呼び出しておいて。 「元日の神社ですからね、人の目はありますが……何しろ相手の格好と武器がアレなので何かのイベントかと思ってくれますよ。逆に言えばマジ殺傷っぽい派手なスキルは使用しないで下さいね。殴り合いで結構です。こんなんでも革醒しててフェイト持ってるんで遠慮は不要です」 一応リベリスタ相手には本気で殴りかかって来るだろうが、大した事はない。 適当に痛めつければ逃げていくだろう。 「それっぽい演出の為に着物も貸し出しますよ。暴れる悪者を倒してついでに帰りがけに初詣でもどうぞ。神頼みは好まないという方もいらっしゃるでしょうけど、目標や気持ちを新たにする、という意味では良いかもですよ。おみくじとかもありますからね」 あ、ぼくも甘酒飲みつつ観戦させて頂きますので宜しく。 ちゃっと手を上げるフォーチュナの視線は、今年もどこを見ているのか良く分からない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:黒歌鳥 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月08日(火)23:05 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●無礼講にも程がある ハレの日には、羽目を外したくなるのが人情と言うものである。 ただ――それでも度合いというものがある訳で。 「新年早々仕事だなんて、リベリスタ使いが荒いなぁ!!」 「アークの仕事って盆暮れ正月マージ関係ないよねー★」 山吹色のグラデーション、色彩豊かな石楠花と桜が降り注ぐ振袖を着た『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)の黒に薔薇さく袋帯を指先で弄りながら『大風呂敷』阿久津 甚内(BNE003567) の言う通り、度を越してしまったフィクサードの為に、彼らを含むリベリスタ十名が(初詣を兼ねて)駆り出される事態となったのである。 「正月早々暴れる悪いフィクサードはしまっちゃおうねぇ~☆ チーム羽柴出動!」 「チームじゃないから!?」 ごー、と握った拳を上げる『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)と二人は、何だかよく分からないが仲良しであった。一々剣呑なこの二人を壱也本人がそう思っているかどうかは別として、見た目は完璧仲良しである。 「んー、ちょっと苦しいかなあ……」 「何、このおっぱいめ!」 赤地に花鞠と艶やかな大牡丹、白に芍薬舞う袋帯。胸元を押さえた『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)に、白地に赤帯、色違いのお揃いを纏った『ミサイルガール』白石 明奈(BNE000717)が抱きつく。こちらは誕生日まで同じくする、何の疑いようもない仲良しコンビである。 「なーに見蕩れてんですか」 「へ!? な、何言ってんだ、ただ着物って雰囲気変わるなあ、って思ってただけだ!」 そんな二人を眺める『折れぬ剣《デュランダル》』楠神 風斗(BNE001434)は、白紋付に黒から銀へのグラデーションの袴。肩を叩いてその頬に指を減り込ませた『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)に、風斗(ハーレム)はそのままの体勢で弁明した。 「昨日見た夢、巨大化したあたしが神社の入り口を塞ぐ、って謎の夢だったんですよね……」 一斤染の生地に、絞り桜と小花の振袖。金の袋帯に赤の帯紐を締めた『くるみ割りドラム缶』中村 夢乃(BNE001189) は普段から着物ではあるが、折角の初詣と言う事でより華やかな一枚で。 鳥居を見上げた彼女は、ぐっ、と拳を握って頷いた。 「でも、今日が元日だから、初夢は今日なんですよね? 良い初夢の為に、お仕事頑張りましょう!」 頑張ればきっと、神様だって見てくれるに違いない。 「大晦日で鐘をつくのはお寺、初詣は神社……お寺と神社は宗派は違うわよね?」 「あ、でも初詣もお寺でもいいそうですよ。結構曖昧なんですよねぇ」 紅緋基調に散る桜吹雪、柘榴花の袋帯の『蒙昧主義のケファ』エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)に、ギロチンが軽く返せば日本はやっぱり変わってるわね、と『彼』は首を振る。 エレオノーラが実際はこの中で最年長の男性であるという事はアーク内部では(一部の拒絶と共に)知られた事ではあるが、一見すればどうやっても可愛らしい少女にしか見えないのもまた事実。 「問答無用で振袖着せられたんだけど似合う? 変じゃないかしら」 「いえいえ、よくお似合いですよー」 「そう? あ、ギロチンちゃんにお年玉。今年もよろしく」 「あ、やったー」 とは言えそこは年長。取り出したのは酒である。 「あ、いたいたー♪」 若草色に金ののし柄、鮮やかな薔薇を散らした振袖の上にファーショールを羽織った『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)が、ビデオ片手に声を上げた。 指の先には色鮮やかな全身タイツ。 「――よく聞け! 我々は正月だからと浮かれる愚かな民衆に鉄槌を下しに来た!」 実にナイスタイミングである。 ごふっ、とその姿が変なツボに入ったアンナが噴出した。 ●後半に向けて巻きが入ったので音声オンリーでお送り致します 「只今『新人アイドル白石明奈 アクションショー』の撮影中でーす☆」 「はいはーい、危ないんでちょっと離れて下さいねー★」 「ギロギロさん、無駄ナレーションスタート!」 『さてお集まりの皆様方、これから始まるのは新人アイドル白石明奈の新春アクションショー! 果たして美少女明奈とその仲間たちはお正月怪人の魔の手から平穏なお正月を守れるのか!?』 「任せろ、とっちめてやるぜー!」 「えっ、なんか分からんけどまあいいや!」 「浮かれる民衆を成敗するという崇高な目的を持った我等を邪魔するやつには天誅を!」 「そう簡単に止められると思うな!」 「よく言った! 食らえ巨大かるたアターック!」 『振袖を舞わせながら明奈がかるた攻撃! だが受け止めたのは獅子頭です! 硬い、中々に硬い! これはダメージは通っていないか――?』 「くくく、この獅子頭は『泣く程痛い』から『かなり痛い』くらいにする防御力だぞ……!」 『訂正します。割と痛いみたいです』 「貴方達に言いたい。正月に浮かれなくて何時浮かれろって言うんですか!」 「えっ」 「謝れ! 普段仕事仕事で正月くらいしか羽根を伸ばせないお父さん達に謝れ! 女正月までは寧ろ超忙しいお母さん達にも謝れ! 後受験生とかにも謝れ! 良いから早く謝って!!」 「なんかそう言われると凄い申し訳ない気分になってきたぁー!?」 「馬鹿! 負けんな!」 『うさぎの精神攻撃。鏡餅怪人膝を突いた――! 次に挑むのは夢乃、その手には門松があります。向かうのも門松怪人、これはどういう事でしょうか』 「いいですか、あなたはひとつ、決定的な思い違いをしています」 「思い違い……だと……!?」 「ええ。門松は、本来ふたつでひとつ! つまり、こう!」 『両手に花ならぬ両手に門松。これはよりおめでたいような気がします』 「くらいなさい! 真・新春門松アタック!」 「うおおおお!」 「てやあああ!」 『両者打ち合って――! 立っているのは夢乃! そりゃ門松一個で防いでももう一個で殴られますしね! 数の暴力、じゃなかった、より正しくおめでたい方に門松怪人は惨敗です!』 「く、くそ、まだ……、まだだ……!」 「はいはい。あんましぶといと殺したくなっちゃうから大人しくしときなよ」 「えっ」 「あー、殺したい」 『はい、良い子はそこのパーカーのお兄さんの言葉は何も聞こえませんでしたね! 門松怪人ダウンです!』 「ライブと言えばマイクだよね!」 『躍り出たのは壱也! 手に握られているのはお正月定番、カラオケ等で用いられるマイクとスタンドです。ロックミュージシャンのように振り回しています。良い子は真似しないで下さいね!』 「ふん、マイクスタンド如きでこの硬い餅を遮れると思うなよ! 初春鏡餅フライーング!」 「わたしのマイクスタンドはそんなものに負けたりしない!」 「何っ……!?」 『これは何と言う事でしょう、振り回したマイクスタンドの足で鏡餅が砕かれました! 破片が鏡餅怪人に向かって――直撃です! あーこれ痛いですね。この鏡餅は後でスタッフが美味しく頂きますのでご心配なく』 「貴方達、正月気分で馬鹿やるのはやめなさいね」 「くっ、正月に正月気分になって何が悪い……!」 「……浮かれるなって言ってる事と矛盾してるけど、分かってる?」 『容赦ない。エレオノーラの突っ込みに羽子板怪人思わず目を逸らしました』 「ふ、ふ、そんな可愛くない子供は羽子板遊びの後に顔に墨を塗ってや」 「はいはい。目を覚ましなさいね」 「うごぶふっ!?」 『お正月に親戚の叔父さんの家とかに行くと飾ってあるトロフィー攻撃! あ、このトロフィーはハリボテなので、やっぱり良い子は本物のトロフィーとかで殴っちゃ駄目ですよ!』 「嘘だああああ!? 普通にいってえええ!?」 「本当よ、あたしか弱いし」 「平然と嘘吐くとか何最近の子供怖え……!」 『おっと、エレオノーラの追撃が入りました、羽子板怪人吹っ飛んだー! 尚彼らは訓練されているのでハリボテでも飛べます』 「だから嘘吐けよお!? ――くっそ、これでも食らえ、賀正羽子板スマァッシュ!」 「はいはい、そんなにこころうかれてるなら付き合ってあげるから。はつひのであたーっく」 「うおっ眩しっ……!? ぐはぁ!?」 『しぶとく這い上がったものの、アンナのおめでたいご来光に目の眩んだ羽子板怪人、打ち返された羽根に反応できずノックアウトー! だがそんな彼女に迫るのはしめ縄怪人だ!』 「迎春しめ縄ビーティィング!」 「行かせるかぁ! 厄払い棒ガード!」 『立ち塞がったのは風斗、厄払い棒でしめ縄を巻き取りました! これにはしめ縄怪人、打つ手がない!』 「くっ、やるな……!」 「そんな横合いから蜜柑汁クラーッシュ」 「うお目がああああ!?」 『そして仲間の窮地に駆けつけたうさぎが放ったビームにしめ縄怪人がダウンだー!』 「くっそ、さっきから煩――」 「役者さん、寄りすぎ! もっと引いてっ☆」 「うごふっ」 『あ、見切れると仕事熱心な撮影班さんに怒られちゃうんで気を付けて下さいね! さて獅子舞怪人、向き直って一騎打ちを挑むのは明奈です!』 「ふふん、これ以上参拝客に迷惑は掛けさせないからな!」 『明奈、振袖でスリーパーホールド。アクティブ系アイドルの本領発揮です。しかし獅子舞怪人も必死だ、腕から抜け出そうともがいています』 「ところでこの和服の下、えっちな水着だ。この意味が分かるか?」 「へっ」 「隙ありぃっ!」 『決まったー! 一瞬の隙を突き、明奈の巨大かるたアタックマークⅡが炸裂。残った獅子舞怪人もこれにてダウン、境内の平和は守られました、ありがとう明奈(と仲間達)!』 ●そして落ち着いて初詣 ハレの日に騒ぎたい気持ちは分かるが、他人様に迷惑をかけてはいけないという風斗のもっともな説教の後――馬鹿ーズは、共に初詣コースへと突入していた。 理由は簡単。 『水飲みましたね? 興奮だか酔いだか知らないけど醒めましたね? 初詣に行きますよ?』 『そりゃ賑やかな方が楽しいからに決まってんじゃないですか』 『良いから来なさい。返事は『イエス』か『はい』しか許さん』 『良いから』 『良 い か ら』 うさぎの無表情のプレッシャー、もとい誠意の篭った説得の成果である。ちなみにこの後のファミレス新年会にも強制参加決定済。 「ま、あんな騒ぎ起こすって事は寂しかったんだろう?」 そうじゃなくてもこんな可愛い美少女アイドルに誘われてNOなんて言わないだろうけどなー。 笑う明奈の目線の先には「LOVE☆AKINA」の文字。 全身タイツではあんまりだ、という事で貸し出したTシャツだが、中々似合ってるじゃないか。よしよし。巨大カルタ(という設定の看板)で殴った獅子頭が割とマジで嬉しそうだが、さっき殴られまくって何か目覚めたんだろうか。 「お前ら、神前なんだから粛々と行動するようにな! バカやったらまたケツバットだぞ!」 厄払い棒ことプラスチックバットを持った風斗の様子を物々しい、と笑いながらおみくじを引くアンナの手には、破魔矢にくまで。 世に溢れる神秘の一端を知ったアンナではあるが、それと神仏の加護は別物である。 「やった大吉!」 「おお。凄いな白石。俺は吉だった」 「んーとね、『努力すれば周囲の人が自然と助けてくれるから何事も怠るな』って書いてある。恋愛は……『見極めよ、騙される可能性あり』……これ大吉だよね」 「おみくじはね、吉凶に一喜一憂するんじゃなくて書いてある文言を受け止めるのが大事なのよ」 「え、アンナどんなだったの?」 明奈の言葉にうっ、と詰まってそそくさと隠したアンナのおみくじが凶(忍耐の時。迂闊な行動は避け、動くならば熟考の後にせよ)とかいうものだったとしても、だ――神頼みというのは、やっておいて別に悪くはないのである。 「ふむ。『一事が万事と思うなかれ、わるいみちと知りつつすすむのでなければ、光が見える』……か。恋愛は未来に幸福あり、だとさ」 「……ふん」 「お、何だようさぎ、悪かったのか?」 「いえ、中吉ですね。『運気上昇、今までとはちがうみちにも幸いあり』だとか」 そんなうさぎがちらりと見た自分の恋愛運は――『愛を捧げよ、幸い来る』 並んでおみくじを結びながら、風斗がふと、問う。 「そういや、お前ら何をお願いしたんだ?」 「ふふん。何だと思うー?」 「内緒です」 「秘密。こういうのは言わないのが花でしょ?」 その願い事たちが、『皆の為』のものであったのを知っているのは、ご神体だけ。 そして少し前。 こっそりと人ごみに紛れた壱也は硬直していた。 (きこえますかー……羽柴ちゃーん……今……心に直接……呼びかけてー……) ネタではなくガチのハイテレパスである。振り返ると、想定通りに甚内が手を振っていた。 あいさつをする →みなかったふり がっつり目が合ったとかは知らない。知らないったら知らない。 (あれ……? でも熾喜多さんがいなかった……?) 思わず振り返ったその先には――横合いからフレームインしてくる葬識。 「ああああああ振り返っちゃったー!?」 「あけまして殺っちゃおうございます☆ 今あなたの心に直接話しかけています」 「アケマシテオメデ……心じゃなくて普通に喋ってるよね!? 羽柴殺っちゃいかんですよ!!」 「はーいおめでたいねー★ めでたいついでに 街の小悪党からお年玉でも強奪ー?」 「阿久津さんそっちもあかんですよ!!!」 んもー、羽柴ちゃん可愛いから思わず殺っちゃえ☆みたいなー。 物騒な発言をする葬識に早々にぐったりしつつも、両脇を挟まれた壱也はにげられなかった! 羽柴ちゃん今日は薄い本持ってないのー? とごそごそやりだす葬識(無許可) それを止めようとした壱也が甚内にブロックされたり、何かポケットから骨(クリスマスターキー)を取り出した葬識にびびった壱也が思わず甚内の腕にしがみ付いたら腕(義手)が取れて壱也がまた悲鳴上げたり、(主に壱也が)賑やかな三人組が屋台を抜けて境内でおみくじを引く頃には(言うまでもなく)壱也の疲労はMAXであった。 「うう……恋愛運は……『良好。片思いなら実り、相手いるなら更なる絆を育むことができる』……お、おお、いいかも!」 「さっすが羽柴ちゃん、今日の着物も似合ってるしねー☆ 馬子にも衣装ってやつー?」 「うんうん、無い胸張ってがんばるといいよー★」 「褒めてないよね!?」 突っ込んだって聞いちゃいねえこの二人。 「おみくじは俺様ちゃんもやるよ☆」 「あっ、するするー★」 女子高生か。☆とか★を飛ばしながらノリノリで引く葬識と甚内に、まあ多少普通の感覚もあるのかと安堵した壱也はふと問う。 「……二人とも、何占うの?」 「俺様ちゃん主に殺人運かな~。何人殺せるかな~って☆」 「えーと窃盗運かなー。何盗めるかなーって★」 「神様はそんな事教えてくれないからー!?」 新年早々、壱也は至極忙しそうであった。 「恋愛運恋愛運恋愛運……」 ぶつぶつ呟きながら呪い、じゃなかった祈りを込めて夢乃はおみくじを引く。 先程のお参りでもご縁がありますようにと散々祈ってきたのだ、これで悪いはずがない。 気合を入れて開いたおみくじは――小吉。 「あああ微妙……」 がっくりと項垂れる夢乃だが、恋愛運は『知人の紹介に良縁あり。旧友と親交を深めよ』であって、決して悪くはない。そんなものか、と溜息を吐く夢乃に、甘酒が差し出される。 「いいのは出た~?」 「まあまあ、って所ですかねぇ」 にこっと笑うとらに相好を崩した夢乃は、紙コップから掌にじんわりしみこむ温かさに目を細めた。 一年まだまだこれからである。 同じく甘酒片手におみくじを眺めるのはエレオノーラ。 「『吉、思いがけぬ幸いをえる。甘んずることなく力を尽くせばさらなる幸いあり』……ね。仕事は商売ってとこかしら。……『利あれど少なし』……頑張らないとねえ」 ふう、と首を傾げたエレオノーラの前、ギロチンにぴょい、と飛び付いてきたのはとらだ。 「ねぇギロギロさん☆ 見て見て、相性占い良かったよー♪」 「わ、本当ですか」 「うん、『互いに思いやれば波風立たず』だってさ。だからちょっくら皆で屋台デートしようぜ☆ 焼き鳥焼き鳥! ね、エレーナおじいちゃん!」 ショールを巻きつけくるくる笑うとらに、エレオノーラも微笑んで。 「あら、いいわね。……お供はとりあえず甘酒で我慢しておくわ」 「やったー。夢乃さんは何食べたいです?」 「あ、鯛焼きとかどうです? 最近は具が様々で、個人的にはピザ鯛焼きが最強だと思ってるんです」 「何ですかそれ美味しそうですね」 「ピザ……日本ってやっぱ変わってるわねぇ」 「あっ、カルメ焼き~♪」 早く早く、と腕を引くとらに、ギロチンが、エレオノーラが、夢乃が笑う。 賑やかな境内は酷く平穏で、そこに憂いは何もなく。 ――今年も良い年でありますように。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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