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自分VS自分 ~ミラクルミラージュクラブ・エンゲージ~

●ミラクルミラージュクラブ
 その施設は元々ミラーハウスだったんだ。
 知っているかい? 壁が全部鏡になってる迷路さ。昔の遊園地にはよくあったんだよ。
 けれど何だろうね、時代の流れか遊園地は一つの廃墟になってしまった。そうして残ったミラーハウスはそれ自体がアーティファクト化してしまった。
 自分を見ながら迷路を進む施設は、自分を見ながら死ぬ施設になったんだ。
 分かるかい?
 この迷路ではね、自分が敵になるんだよ。

●最強の敵、自分
「自分自身と戦ったことはあるか? まあ人生ってやつは自分自身との戦いってトコはあるみたいだが……今回はそういう哲学的な話じゃない」
 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は壁に背を預けたままリベリスタたちを出迎えた。
 モニターに廃墟の遊園地……その一画に存在するミラーハウスを表示する。
「これが今回相手にするアーティファクトだ。外から見るとそんなに広そうじゃないんだが、中に入ると広い閉鎖空間に放り出されるらしい。でもって、どこからともなく現れる『自分自身』に殺されるというシロモノだ。こんな自殺専用のアーティファクトがどうして生まれたのかは分からないが、好奇心旺盛な廃墟マニアたちが既に数名犠牲になってる。このミラーハウスに乗り込んでアーティファクト化を解除してやろうってのが、今回の任務だな」

 アーティファクト化解除の条件は以下の通りである。
 一度に九人の人間がトライすること。
 そのうち四人以上が立っている状態で勝利すること。

「以上だ。突入したら九対九での戦闘になると思うが、まあこういうのは気持ちの問題って所があるからな。理屈だの効率だので勝負したら、多分相打ちになってアウトのコースだろう。自分らしさと意地、忘れるなよ?」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:八重紅友禅  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 9人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年01月10日(木)22:59
 八重紅友禅で御座います。
 一世紀ぶりかって気持ちです。

 依頼内容はOPに説明した通りです。
 敵のスペックは依頼参加中のメンバーのスペックに依存しています……が、動かし方はアーティファクト側が空気を読んだり考えたりして決めるので、ヘンに釣りを仕掛けない方が安全だと思われます。
 どのみち、どういう作戦をとろうがどういうスペックで挑もうが相手も一緒になるので結局は気持ちをどう持つかが大事になるでしょう。
参加NPC
 


■メイン参加者 9人■
クロスイージス
アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)
ソードミラージュ
ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)
マグメイガス
雲野 杏(BNE000582)
デュランダル
日野宮 ななせ(BNE001084)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
レイザータクト
波多野 のぞみ(BNE003834)
インヤンマスター
璃鋼 塔矢(BNE003926)
覇界闘士
滝沢 美虎(BNE003973)
   

●みずからを死に至らしめんは己のみであるべし
 この物語が『どんな』話であるべきか、はっきりとはしない。
 同スペックの戦闘兵器どうしをぶつけて遊ぶゲームか。
 類似品を重ねあわせたことで見る魂のゆらぎか。
 もしくはただのゲームログの羅列であるべきか。
 どれも、正しくもあり、間違ってもいるのだろう。
 故にこうとだけ述べておく。
 これは『戦い』である。

 石タイルとフローリングタイルのまじりあった複雑怪奇な床を、使い古したスニーカーが踏んだ。
 片足から踏み込んで、白いソックスの足首をひねり、もう片方の踵から前へ踏み込む。肉体動作が足首から順に上へと連動し、腰、胸、肩へと力が伝わる。
 これは、ある二人が全く同時に行った動作を記述したものである。
 だがここからが違った。
 『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)の右肩は機械でできていて、『ムエタイ獣が如く』滝沢 美虎(BNE003973)は細い子供のものだった。
 間合いを整え、捻じり込むように拳を繰り出す。
 だがもう少し。
 そのイメージを鏡合わせにしてほしい。
 優希と偽優希、美虎と偽美虎の拳合計四発が同時に交差したのだ。
 かき混ざる風の中、衝撃が複雑に流転し、それぞれ元の位置から動かずに足を止める。
 頬に拳をくらい、仰け反った優希が歯を食いしばった。
「待ったいたぞ、この機会……」
 二人の間に空いたわずかなエアポケットに真っ直ぐ蹴りを突っ込む美虎と偽美虎。靴底がぶつかり合って反発。跳ね飛んだ美虎がごろごろと後ろ向きに転がった。
「いたっ、たっ……うわっぺりだけ真似ただけで、わたしをコピーできると思ったら大間違いだぞ!」
 両足を振り上げ、ぐるんと身体を捻じりながら立ち上がる美虎。自らと同等の体格を相手取るために肘をコンパクトに、歩幅をやや広めに構える。
「わたしのムエタイは、お前なんかに負けない!」
 美虎たちが飛び出す、その直前。彼女達の間を鴉の式神が遮った。
 一羽だけではない。二羽の……いや、次々に連なった無数の鴉が二重螺旋を描くように左右より横切り、交わり、身を捻じりながら目標へと真っ直ぐに突っ込んでいく。
 先頭の一羽の視点に立ってみよう。
 鋭い嘴をさらに尖らせ、風を切って飛ぶ鴉。視線はしっかりと『俺の中のウルフが叫んでる』璃鋼 塔矢(BNE003926)へ定まっていた。
「そうだ、それでいい。浮気するなよ相棒?」
 薄く笑うと、コートの裏から銃を引き抜く。流し打ちしながら横向きに走り始める。
 波打つ黒い風の如く鴉の列が彼を追う。急激にカーブした列に向けて銃を乱射。飛び込み前転の要領で身を屈めると、頭上を鴉の一団が通り過ぎた。反応した後続の鴉がやや分散して彼を覆い込む。
「ガラじゃないんだが……今日くらいは突っ込ませてもらうぜ」
 どこからともなく刀を抜くと、身を捩じって一閃。周囲の鴉を切り捨てた。だがそれでも止まずに襲い掛かってくる鴉。
 塔矢は片眉をわずかに上げて肩をすくめた。
「ねちっこいのは嫌われるぜ、俺」


 『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)は肩にかかった肩ベルトの食い込みを親指で直すと、レスポールタイプのギターを軽く揺らした。続いて胸の谷間にストックしたギターピックと煙草を取ると、慣れた手つきで煙草を咥える。
 すると横からすっと百円ライターが突き出された。最大火力で着火。軽く首を引きつつ火をつけると、口の端から煙を吐いた。
「さんきゅ。先生も吸うんだ?」
「さぁーてね。私の容姿で喫煙してると教育なんちゃらが黙ってなさそうだし」
 まだ熱いライターを白衣のポケットに突っ込むと、余り気味の袖を折りたたんで出席簿で肩を叩いた。
 仕草だけを見るなら三十路に近い女性のそれなのだが、背丈と顔つきは小学生以下という、『マグミラージュ』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)である。
 彼女たちの後ろから様子をうかがうように、ゆるく腕を組む『混沌を愛する戦場の支配者』波多野 のぞみ(BNE003834)。黒いスーツとワイシャツが内側で擦れる音がした。
「自分らしく、強い意志をもって頑張りましょうね」
「『いつも通り』と何が違うのよさ」
「さあ、でも今回のはちょっと面白そうじゃない」
 顎を上げ、ギターの弦にピックを当てる杏。
 視線の先では、全く同じようにギターを構える偽杏の姿があった。
「音楽やってると思うことあるのよね……『自分がもう一人居たらいいのに』」
 イくわよ。
 杏はそう呟くと四重奏を一斉発射。対する偽杏はほぼ同じタイミングでチェインライトニングを叩き込んできた。
「ちょ……!」
「そっち!?」
 迸る電流の中で咄嗟に天使の歌を展開するソラ。
 そうこうしていると相手の偽ソラが追い打ちのチェインライトニングを撃ちこんできた。
「向こうは速攻型みたいですね! 体力的にこっちが危ないですよ!」
 鞭を撓らせて駆け出すのぞみ。味方との連携に特化した作りをした鞭が偽のぞみの腕に絡みつき、ほぼ同時に自分の腕にも絡みついた。拮抗するパワー。
 その背中を眺めつつ、杏とソラは顔を見合わせた。
「速攻型なの?」
「早く仕事終わらせて帰りたいんじゃなくて?」
「ああ……」
 あるなあ、と思いながら天井を見上げる二人だった。


 大気を割って走る稲光。
 その筋と筋の間を潜り抜け、ジグザグに飛行する『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)。パチンと走ったスパークが眼鏡のフレームを弾くが、彼は無視して短刀を握りしめた。
「『貴方』に矜持はありますか? からっぽでないことを、望みますよ」
 目測と言うよりほぼ直感で短刀を繰り出した。火花が散る。雷がぶつかったのではない。自分と同じもの。偽亘の短刀がすれ違ったのだ。
 緊急で身体を丸め、空中クイックIターン。今度は目視できた。
 眼鏡のレンズを通した向こうにある自分と同じ目の中に映るレンズ越しの自分の目。
「ですよね」
 それを確認して亘は満足げに笑った。
 緊急停止。
 高速連突。
 連続衝突。
 激し火花が辺り一面に飛び散り、二人の顔をオレンジ色に照らした。
 勘でマントを翻す亘。それまでの衝撃が解放され、大きく弾かれ合う亘。まだ火花の残る空間が、斜め方向から全く別の影によって押し潰された。
 火花を、空気を、そして緊張感を押し潰して激突する剣と盾、盾と剣。
 互いに仰け反った『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)を偽アラストールはその場でもつれるようにぐるりと位置を入れ替えると、同時にバックステップ。
「どれだけ形を似通わせようとも!」
 長い髪を大きく振って剣を突撃の形に構える。
「いかに力を真似ようとも!」
 踵でタイルを削り、ブレーキ・アンド・ダッシュ。
「魂を真似ることができようか!」
 輝きと共に突き出された剣。その切っ先が衝突。エネルギーの渦が二人を中心に暴れ始める。
 その途端、アラストールの頭上へと躍り出る影があった。
「さあ、勝負です!」
 『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(BNE001084)。
 椅子に腰かけるように身体を丸めた彼女は、巨大なハンマーを携えていた。
 長い柄の中心を腰に交えるように、先端と根元をそれぞれ掴み、身体ごと捻じってマルチスイングを仕掛ける。
 誰に?
 そんなことは決まっている。
 肩を軸に縦方向のマルチスイングをする偽ななせ。その上半身にハンマーが命中した。ほぼ同時に頭部を強打する相手のハンマー。
 斜め方向に叩き落とされるななせ。ごてごてとした音を立てて地面を転がると、地面をぶっ叩いて停止した。
 床のタイルを粉砕してめり込んだハンマーを引き抜き、髪を僅かに振るななせ。
「さ、仕切り直しですね!」


 バッドステータスなど所詮五割で抜けるもの。先手など所詮五割で取れるもの。半分の半分が万全ならば、それは万全と同じようなものだ。
 そんな発想から、偽杏は笑いながらチェインライトニングを乱射し続けた。
「開き直ってるわね。我ながらすっきりするわ。でも……」
 雷光を魔光の連射で迎撃する杏。
「ロックはインパクトよ。衝撃よ! 足りない分は力で押し込む!」
「う、つぅ……!」
 回復を完全に後回しにした偽杏たちの影響はのぞみの脆弱性へと現れていた。首に巻きついた鞭がバチバチと電撃を放ち、四肢の自由を奪った。意識が遠のき、仰向けに倒れる。のぞみの戦闘不能と同時に偽のぞみが消滅する。
「んっんー、ヤバいかも」
 顔にかかる雷撃を出席簿で遮りながら、ソラは顔をしかめた。
 どう考えてもこちらの被害の方が大きい。杏のブーストチェインライトニングが強力過ぎて回復が追いつかないのもあるが、のぞみと偽のぞみが全体的な攻撃力を上げているのでダメージの増え方が加速しているのだ。ハッキリ言って押し負ける。
 片眉を上げる杏。
 同じように眉をあげて見せるソラ。
「でもねえ」
 杏の身体に染みわたる痛みと痺れ。身体が勝手に跳ねような、喉が勝手に鳴くような、舌の根から先までがぴりぴりと痛むような、どこか慣れ親しんだ刺激に指を震えさせた。
「……これだわ」
 弦をひときわ強く弾き、指の震えを乗せる。目を瞑ると同時に、魔光の弾が空中に出現した。
 まじりあいながら発射し、偽杏の胸元を貫通。最後に迸った雷に、杏とソラは弾き飛ばされた。
 仰向けに床をバウンドする杏。地面に当たって悲鳴のような音をだすギター。
 ソラは片目をつぶって腕を振りかぶると。
「私達には未来があるの。お家に帰ってビールのプルタブ開けて、お布団に入ってごろごろしたいの。その、ためにっ!」
 ポイズンシェル、フルスイングスマッシュ。
 顔面に炸裂したポイズンシェルで、偽ソラは大きく転倒し、そしてぱちんと消滅した。

 式神鴉の腹に銃口を当て、引金を引く。
 散り散りの黒い羽根を浴びつつ、塔矢は小指でマガジンを解放した。
 足元に落ちて跳ねる空のマガジン……十三本。空薬莢数十個。
「いい加減、泥仕合だな。もう少し付き合ってくれるか」
 ベルトに挟み込んだマガジンを銃に押し込むと、床に転がった爪先で踏む。
 回転しながら跳ね上がる刀。
 前方から刀を構えた偽塔矢が飛び込んでくる。塔矢は高速で回転する刀の柄をしっかりとキャッチすると、頭上からの斬撃を受け止めた。
 右目に押し付けられる銃口。交差する腕。相手の左目に押し付ける銃口。
 フルオート射撃。
 同時に身を捻じり、こめかみから肩にかけて弾丸が掠っていく。
 飛び散った血が顔半分にかかり塔矢は片目をつぶる。
 身体を一回転させて胴斬りを繰り出す塔矢。銃身でガードする偽塔矢。逆手に持ち替えた刀が塔矢のに押し付けられ、全体重を込めてずぶりと沈んだ。
「ぐっ……!」
 肉を破り骨を掠め心臓に冷たい鉄が差しこまれる異常な感覚。
 喉からせり上がってくる血液。
 血を吐き出しながら、塔矢は相手の口に銃口を捻じ込んだ。
「悪いな、自分に負けるのは格好つかねぇんだ」
 フルオート、射撃。
 抱き合うように崩れ落ちる二人。その肩を踏み台にして優希が跳躍した。
 天井から反射するように飛び込んでくる偽優希。
 優希は相手の首を掴んで全身を捻じる。高速で回転を始める地面へと迫る偽優希。その途中で逆に首を掴まれ、反回転開始。優希は頭から地面に叩きつけられる。
 脳に走る衝撃。歪む視界。一瞬で遠のく意識。
 そして……時間を高速で遡るように、沢山のものを見た。
 『生き残った時の自分』『罪を犯す自分』『怒りに暴れる自分』そのすべてがまるで他人事のように見えた。自分自身を背中から眺めるような、奇妙な感覚だった。
 自分自身が振り返り、左側の前髪をかき上げた。
 何のために生きているのか?
 自分自身が問いかけてくる。
 何のために死ねないのか?
 自分自身が訊ねてくる。
 優希は右目側を抑えて、そして気づいた。
 手の平が。肉と骨でできた手が、自らの頬に触れていた。
 大きく、大きく、目を開く。
 そして時間が進んでいく。ここへ来る時の何倍もの速さで。
 しかし途中に見えた、沢山のものがあった。
 敵と仲間と自分と、その間に交わされた拳の数々だ。
 その間に急激に冷えていく腕。鉄とネジでできた手の平が、頬を冷たくした。
 そして、現在。
「……っ」
 反射的に身を起こす。偽優希が背を向けて立っていた。
 振り返り、右側の前髪を上げる。
「何のために?」
「知らんな」
 床を殴り、優希は立ち上がった。
「人は一秒ごとに進化する。それが真のことならば、俺に過去など不要。俺は……未来に生きる!」
 繰り出された拳を絡め取り、脚を払い、転倒させる。仰向けになった偽優希の心臓部めがけ、全力で拳を叩き込んだ。
 弾けるように消える偽優希。余った彼のパワーは、地面を叩いた。

 空を裂いて飛ぶ亘。偽亘が真横に並び、短刀を逆手に持ち替えた。
 ジグザグに、メチャクチャに、上下左右複雑怪奇に入り乱れ、無数の金属音を跡に残していく。
「自分は退きませんよ。貴方も、退かないんですね」
 鍔迫り合いながら二重螺旋の機動を描く亘。
 どちらからともなく、口角がほんの僅かに上がった。
 壁に激突する寸前で急カーブ。壁を滑るように上下に分かれると、天井と床をそれぞれ駆けた。
 どちらが上で、どちらが下なのか、わからぬまま短刀を構えなおす。
 同時に足場を蹴り空中で交差、天井と床でそれぞれスライディングする。
 交差地点に散った火花が別の空気圧ではじけ飛んでいった。
 アラストールと偽アラストールが鏡合わせの様に剣を振りかざし、互いの盾へと叩きつけ合う。
「鏡に映らぬものを知っているか。それは……」
 停止するのはほんの一秒足らず。輝く剣を握りしめ、息も尽かさぬ連撃が交わされる。
「信念、思念、衝動、そして祈りだ!」
 髪を振り乱し、相手の盾に剣を叩き込む。
 偽アラストールは地面に足を踏ん張って衝撃を吸収。踵で二本線を刻んでブレーキをかけた。
 再び突撃。接触の直前亘と偽亘が上下から交差した。
 四人が接触する寸前、アラストールと亘はそれぞれ身をひねって互いの分身を跳ね退ける。
 通り過ぎ、背を向ける二人。
「心技体、揃ってこその人であり、騎士であり……私だ!」
 振り向きざまのフルスイング。偽亘と偽アラストールの胸が切り裂かれ、悲鳴と共に消滅した。
 決着の瞬間。頭上で凄まじい爆音が響く。
 ハンマーをフルスイングしたななせが偽ななせをかっ飛ばした音だ。
 地面に向かって吹っ飛ばされた偽ななせは激しくバウンド。一度天井まで飛んでからさらに跳ね返り、複雑にスピンしながら地面を転がっていく。しかし最後は両足を地面につけ、ハンマーの打ち上げ態勢を整えていた。
 追撃にと飛び掛ったななせの両目が大きく開かれる。
 天に向けて動作する撃鉄の如く、偽ななせのハンマーが上向きにフルスイングされる。直撃をうけたななせが天井に激突。どころか天井そのものを突き破って上階へと放り出された。
 目を瞑って歯を食いしばり、衝撃と痛みをこらえるななせ。
 天井にもう一つ穴を作って飛び出してくる偽ななせ。空中で回避する余裕などない。そもそもななせに回避性能などというものはない。完全な無防備だ。
 絶体絶命。
 しかし、それこそがチャンスだった。
 カッと目を見開くなななせ。
「終わりにしましょう!」
 マルチスイング態勢に入った偽ななせに向け、柄の先端を両手で掴み、大きく大きく振り上げる。
「これが私の……全力っ、全開っ!」
 身体をくの字に折ってハンマーを打ち下す。
 大気を抉らんばかりに繰り出されたハンマーが偽ななせに直撃。三つ目の穴を天井に作って地面に激突。数メートルのクレーターを作った。偽ななせの手からハンマーが転げ落ち、煙になって消える。
 そして完全に形を失った煙を、美虎が突き破った。
「こぉお……!」
 助走をつけてジャンプ。腰をひねり、炎を纏った拳を繰り出す。
 それは炎の拳で迎撃され、ごしゃんと派手な音をたてた。
 体勢がブレる。前方向に縦回転。美虎は一回転するまでの間に真空を斬るような鋭い踵落としを繰り出した。対する偽美虎は足首へとかちあげるような肘打ちを繰り出す。べきんと外れる足関節。
「痛……くない!」
 着地したら終わりだ。地面までの2m足らず。それが決着に必要な距離だった。
 折れた脚をぶらんとさせたまま、美虎は業炎撃を繰り出す。しかしそれは空を切り、無駄なスピンを生むだけだった。
「あぅわっ!」
 慌てて態勢を整えようとするが、偽美虎は既に距離をとっていた。頭を叩き落とすような業炎撃。地面に叩きつけられる美虎。
 膝を地面に突き立て、なんとか不時着を防ぐがもう逃げられない。
 偽美虎が上下反転し、顔面めがけて土砕掌を繰り出してくる。
「この……くらい!」
 美虎は無理矢理足をぶっ叩いて関節をはめ込むと、ズドンと地面を踏んだ。
 衝撃は上へと走る。
「とら、あっぷぁああああ!」
 偽美虎の顔面に、そして美虎の顔面にも叩き込まれる土砕掌。
 消滅する偽美虎。
 そして美虎も。
「やっぱし中身までは……真似できなかったみたいだ、ね」
 どてんとその場にぶっ倒れた。


 これは戦いの物語である。
 故に、この先のことを語る必要はあるまい。
 決着はついた。
 それがすべてだ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。
他に語るべきことはありません。