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君の色

●君の色
 それを確かめることは僕には出来ないんだろうなって、とっくに諦めていたんだ。だから突然視えるようになったときは、信じられないくらい嬉しかった。
 あの子が教えてくれてたように、世界は、本当に綺麗で――。美しいっていう言葉の本当の意味を、僕はあのとき初めて知ったんだと思う。
 夕焼けの赤、木々の緑、空の青、そしてそのどれよりも――あの子は本当に輝いていて、特別だった。
 僕は、なぜあの子だけがこんなに色鮮やかに輝いて視えるのかが知りたかったんだ。
 それで考えて考えて考えて……。ある日、やっとその理由が分かった気がした。
 きっとあの子の中には、あの子を輝かせる『もっと綺麗ななにか』が在るんだって。

 どうしてもそれを確かめたくて、我慢出来なくなって。僕はあの子の中を覗いてみた。だけど、あの輝きの正体はどこにも見つからなくて。
 あの子自身もさっきまであんなに輝いていたのに、もうそこにはありきたりな色しか残っていなくて。
 あの綺麗な輝きは、どこに消えてしまったんだろうって悲しくなって。涙が出てきて。泣いて。泣いて。
 やっと涙が枯れた頃、もっともっといろんな人達の中を探していれば、いつかまた見つけられるのかなって、思った。


●ブリーフィング
「少年の名前は堀井稔(ほりい・みのる)、フェーズ2のエリューション」
 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)がそう言うと、ブリーフィングルームのモニターに、十三歳前後の少年の姿が映し出された。
「盲目の少年が、革醒したことでその瞳に光を取り戻した。でも代わりに、革醒の影響で『色』に対する異常な妄執に取り憑かれてしまったの」
 その結果、堀井稔は一人の少女をその手にかけてしまう。文字通り、彼女の『中』を確かめるために。そして――。
「彼は革醒で得た力を使って、すでに複数の人を殺めてる」
 堀井の妄執は歪な妄念へと変化し、少女を輝かせていた『もっと綺麗ななにか』を求め、今も殺人を繰り返しているという。
「理性はもうほとんど残ってないみたいで、だから堀井稔の動きは掴みにくかったの。でも、夜になると必ずある場所を訪れることが分かった」
 そう言って、イヴはモニターの画像を切り替えた。
「そこは普通の公園なんだけど……少女が盲目の堀井稔を連れ出し、世界の美しさを説いていた場所」
 自身の手で殺めた少女との思い出の場所。そこで堀井はなにを考え、一体なにをしているのだろうか――。
 そんな問いかけが頭に浮かぶが、リベリスタ達はそれを打ち消した。知ったところで、彼等のやるべき事は変わらないのだから。
「堀井稔の目的は叶わない。彼の求める輝きは、彼自身の手で消失させてしまったから」
 静かにそう言うと、イヴはリベリスタ達を真っ直ぐな瞳で見つめた。色違いの瞳から、彼女の想いが伝わってくる。
「彼を終わりのない妄念から、解放してあげて」


●あの彩りをもう一度
 わからない、わからない……。
 沢山の人の中を覗いてみても、あの子と同じ輝きが見つからないんだ。
 みんなの中は、赤かったり白かったり、あるいはその中間だったりするだけ。
 あの輝きは、あの美しい色彩は、どこを探せば見つかるのかな……。
 どうすればまた、君に逢えるのかな……。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:外河家々  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年01月09日(水)23:21
こんにちは、外河家々です。
どうぞ、少年を解放してあげて下さい。
相談期間短めとなっておりますが、よろしくお願いします。

●成功条件
全エリューションの撃破

●堀井稔(フェーズ2)
革醒により盲目から回復するも、代償として色彩への妄信的な執着に捕らわれてしまった少年。四体のE・エレメントを従えています。

・マヒ視(神遠複 異:麻痺 追:ダメ0、ブレイク)
・切断視(神遠貫 異:弱体、ショック 追:弱点)

●色彩のE・エレメント×4(フェーズ1)
スライム状のE・エレメント。各色ごとに攻撃方法に特徴があります。

・赤(物近範 異:流血 追:ノック)
・緑(物遠貫 異:猛毒 追:連)
・黒(神遠範 異:呪い、致命)
・白(神遠単 回復&BS回復80%)

●戦場
ある程度の広さがある公園内ですが、堀井を見つけ出すのに苦労するというような事はないでしょう。
時刻が夜のため人通りもほとんどありません。
近隣の民家とも距離があり、戦闘音を聞いて人が駆けつけてくるといった心配もなさそうです。

ではでは、皆様からのプレイングを心よりお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
天城 櫻子(BNE000438)
プロアデプト
天城・櫻霞(BNE000469)
インヤンマスター
ハイディ・アレンス(BNE000603)
ソードミラージュ
ユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)
インヤンマスター
岩境 小烏(BNE002782)
クリミナルスタア
秋月・仁身(BNE004092)
覇界闘士
片霧 焔(BNE004174)
クロスイージス
浅雛・淑子(BNE004204)

●この美しい世界で
 昼間は楽しそうに駆け回る子供達の様子や、散歩や休憩中の老人などの姿が見られる公園も、すっかり暗くなったこの時間帯ともなると人通りはほとんど見られない。
 冬の寒さも相まって、寂しさに包まれた公園の中を捜索するリベリスタ達。この公園のどこかに、フェイズ2のノーフェイス『堀井稔』がいる――。
 用意した明かりで辺りを照らしながら、リベリスタ達はターゲットを探し続ける
「毎度の事ですけど、どうして『めでたしめでたし』で締め括れないんでしょうね?」
 生まれついての悪党を、叩き潰してめでたしめでたし――全ての任務が、そんな勧善懲悪であれば良いのにと……。周囲を警戒するように視線を走らせながら、『親不知』秋月・仁身(BNE004092)は零れた言葉の後に小さく溜息を付いた。
「革醒して果たして良かったのか、悪かったのか……。答えなぞ、無いのだろうな」
 見えるようにならなければ妄念に犯されることもなかったろうし、少女の放つ眩い輝きの正体を探るために、常識では考えられない手段を取ることもなかったはず。
 だが、革醒が起こらなければ少年は世界の色を知らないままに、少女の輝きを目にすることのないまま一生を終えたに違いない。
 どちらが、彼にとって幸福だったのか――堀井稔がすでに正気を逸脱している今、それを聞き出すことは不可能だろう。いや、例え正気を失っていなかったとしても、答えの出る類の問いではないのかも知れないと『赤錆烏』岩境 小烏(BNE002782)は頭を振る。
 そして、問いの結果がどうであれ、彼を救う術などありはしないということをリベリスタ達は十分に理解していた。
「盲目の者が光を得た結果がこれとは……。これが、運命の皮肉というものか?」
 少女と少年がそう感じたように、疑いようもなくこの世界は美しいし、優しい彩りに溢れている。
 しかしだからといって、それが全てに平等に降り注ぐというわけではない……。時に世界は無情に、世界を愛する人間にさえ容赦なく襲いかかることをハイディ・アレンス(BNE000603)は知っていた。
 だからこそ、彼女達のような『人で無し』がここに来たのだ。
「人に害を成す存在である以上、見逃すわけにはいかない。せめて思い出の場所で、これ以上の過ちを犯す前に――ボク達の手で討つ」
 彼女達に出来るのは、文字通り『終わらせる』ことだけ。せめて思い出の場で、思い出に包まれながら死んでいけるようにとそう願う。
 リベリスタ達は、浮かび上がってくる感情を振り切るかのように……只管に捜索を続けていった――。

 公園の一番奥――ライトアップされ鮮やかに浮かび上がる噴水の前。丁度ライトの光が当たらぬ影となった場所に、堀井稔は居た。
 ベンチに座り下を向き、虚ろな瞳でブツブツと呟いている。
「よう坊主、こんな時間に探し物かい? それとも……探し人か?」
 小烏からかけられた声など気にとめる様子もなく、彼は下を向き何事かを呟き続けていた。その手元には、なにか紙のようなものが見える。
「色彩への妄執、ねえ」
 『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)はそう言って、少年へとつまらなそうな視線を向けた。
 少女が輝いて見えたのはその内面や精神故なのか、それとも無意識下での少年の想いがそうさせたのか――。
 既に終わったことを考えたところで意味は無いと、櫻霞は頭の片隅に浮かびかけた考えを振り切る。
「失ったものは永遠に戻らない、欲したモノは貴様自ら壊したんだ。妄執に憑かれていたとしても、数多を殺めたその罪状は明らか。懺悔の準備は整ったか?」
 黄金と紫暗のオッドアイに宿らせたつまらなそうな視線を、鋭い――無機質な視線へと変えた。
 櫻霞の傍らに佇んでいた『プリムヴェール』二階堂 櫻子(BNE000438)も、少年へと虹彩の異なる左右の瞳に哀憐の色を浮かばせる。
「内面から滲み出る美しさと輝きは、殺して手に入れられる訳がありません。貴方は色彩に囚われた。恐らく、本当に欲しかったモノを失ったのでしょう。貴方が望む答えは永遠に出ないのです。自らの手でその答えを壊してしまったのですから」
 憂いを帯びた言葉を告げると、銀装飾が施された蒼白き長杖『ディオーネー』を静かに構えた。
 ぶつぶつと呟き続けていた堀井稔だったが、戦闘の気配に気づいたのか彼女達のほうへとゆっくりとした動作で顔を向けると、見つめていた紙をコートのポケットへと仕舞う。そして立ち上がると、脱力したように腕をだらりと下ろした。
 すると下ろされた腕を包むコートの袖から、赤、黒、白、緑の四体のE・エレメントがずるりと滑り落ちてきた。
「木々の……色は、とっても、優しい色……包み込んで、くれてるような、気が……して、見ている、だけで、幸せになれる……のよ……」
 それは、少女が口にしていた言葉なのだろうか……。少年の口から、まじないのように抑揚のない言葉が発せられていく。
「想う人に会いたいとか~、それだけを聞くと願いを叶えてあげたくなりますね~。けど~、万華鏡で前後まで知れば~、全力で阻止するしかないです~」
 逸脱した者に対して発した言葉とは思えぬような、普段と変わらぬ間延びした口調でユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)はそう言うと、自身の武器であるチャクラムをくるくると回してみせた。
「御機嫌よう、堀井稔。私達は貴方を止めに来た。特別な輝き、それを今も探しているっていうなら――止めるついでに、教えてあげるわ」
 燃え上がるような朱の長髪を靡かせ、焔のように紅い瞳に強い意志を宿し、『炎髪灼眼』片霧 焔(BNE004174)は堀井稔を真っ直ぐに見据える。
「触れない優しさも、忘れてしまったのね……。あなたが綺麗だと感じた世界を壊してしまう前に、悪夢を終わらせてあげる」
 『blanche』浅雛・淑子(BNE004204)は、淑やかに雪白の髪を掻き上げた。
(お父様、お母様。どうかわたしを護って)
 そして、心中の不安を覆い隠すかのように気品に満ちた口調で言い放つ。
「……さあ、はじめましょう? 女の子は優雅に。わたしはわたしの愛する世界を守るわ」
 対する堀井稔は虚ろな瞳のまま、リベリスタ達を見つめているのかいないのか、あいかわらず脱力した様子で口だけをぶつぶつと動かし続けていた。
「空、の色は……あなたの色……透き通る、ように、澄ん……で、吸い込ま、れていきそう……になる、の……」


●届かない、でも――
 堀井稔の放った麻痺を与える視線が、リベリスタ達の動きを阻害する。
「……なるほど、厄介だな。だが――」
 櫻霞の超頭脳演算はかき消され、同時に体の自由をも奪われていった。しかし彼のその表情に、焦りの色は浮かんでいない。
「――痛みも傷も、私が治しますわ」
 彼の背後に立っていた櫻子の歌うような詠唱が仲間達の傷を回復し、体を蝕むものを癒していった。
 自由を取り戻した櫻霞は、全身から発現させた気糸を飛ばしエリューション達を狙い打つ。
 ――櫻霞はそうすることが当然とでもいうように常に恋人である櫻子の前方に立ち、そして櫻子も、寄り添うかのように愛しい人の背後へと添い従っていた。
 櫻霞が櫻子と堀井稔の直線上を位置取るように動いていたため、彼の放つ強力なマヒ視を櫻子はほとんど受けることがなく、故に傷を負った仲間達の回復が遅れるといった事態を避けることが出来ていた。
 また、マヒ視から守られるということは、マヒ視のもう一つの効果である厄介な付与効果排除をもその身に受けることがないということ。傷を癒し、状態異常を取り除くために聖神の息吹という消耗著しいスキルを連発する櫻子だったが、戦闘開始直後に付与したマナコントロールが、周囲から魔力を取り込みその消耗を最小限に抑えてくれていた。
 もちろん、二人のその立ち位置にはデメリットもある。黒のE・エレメントによる範囲攻撃、なにより堀井稔との直線上に並んだことで、両者共が切断視による貫通効果を受けてしまうリスクを負うことになるのだ。
 だがしかし、仲間達のフォローによってその憂いは綺麗に消え失せる。
「発色さえ良けりゃいいって話でもねぇな、気色の悪い奴らだ」
 自然の中では決してありえないような、絵の具のチューブをそのまま絞り出したかのような真っ黒な存在――少女がその素晴らしさを説き、少年が魅せられた彩りとはほど遠い其れへと小烏が懐から取り出した式符・鴉を投げつけ、毒と怒りを付与し攻撃対象を自身へと向けさせる。
「堀井稔、キミの相手はボクが受け持つ!」
 ハイディもそう言って、呪符を堀井稔目掛けて投げつけた。呪符は空中で鴉へと姿を変え、相手の体を撃ち抜くと同時に体内に毒を撒き、注意をハイディ自身へと固定させた。
 また、BSの解除には淑子も「サポートは受け持つわ」とブレイクフィアーを用いて積極的に参加し、それでも手が足りないようなら小烏までもがそこに加わるという万全の体勢が敷かれていた。
 よってリベリスタ達は、傷つくことを恐れることなく攻撃を繰り出していくことが可能となるのだ。
 赤のE・エレメントが体を電動ノコギリのように変化させ、ブロックするユーフォリアごと周辺一体を切り裂こうと攻撃を仕掛けた。
「こんな口調でも、高速戦闘のソードミラージュですよ~」
 しかしユーフォリアはのんびりとした口調で言い放ち、ハイスピード付与によりキレの増した体裁きで回転する刃を華麗に躱すと、
「抑える敵と叩く敵が別だってありますよ~」
 とそのまま堀井稔への回復に専念していた白のE・エレメントの死角となる位置まで一気に跳躍し、両手のチャクラムを振るいその体をクロスの形に切り裂いた。
 【絶対者】保有により、ほとんどの状態異常を受けつけない仁身も積極的に仕掛けていく。
「これが、僕の色だ、痛みだ、力だ! 存分にその眼に焼き付けろ!!」
 仁身の魔弓により放たれた強烈な反動を伴う断罪の魔弾は、凄まじい勢いのまま黒のE・エレメントへと襲いかかり、その体へと大きな風穴を空けた。
 リベリスタはその後も猛攻を続け赤のE・エレメントをも打ち倒し、残るは緑のE・エレメントと堀井稔の二体だけとなる。
「――どれだけ人の中身を見たいと思っても、本当に見えるものなんて限られてるのよ。稔、あの子の事が輝いて見えたのはね……きっと、好きだったからよ!」
 焔は、必死で少年へと言葉をかける。
「人を好きになるとね、その人がキラキラしてるの、輝いてみえるのっ。貴方はソレを自らの手で消してしまった。だからその輝きを、もう二度と見ることなんて……出来ないのよ!」
 緑のE・エレメントからの攻撃に晒されつつも投げられ続けるその言葉は、起こるはずのない奇跡的ともいえる可能性を信じてのものなのか――。
「夕陽、の色、は……私の色、かな……明るく、て、元気いっぱい、に、見られがち……だけど……本当は、ちょっと……寂しがり、屋な、んだ……」
 しかしその言葉は、正気を失った堀井稔には届くことがない。
 届かないということに対するどうしようもないほどの怒りと悲しみ、その激情を破壊的な気と共に緑のE・エレメントへと叩き込み、焔は体内から相手の活動を完全に停止させた。


●終焉の告
「――借りるぞ、お前の力」
「この力は櫻霞様の為にあるのです、存分にお使い下さい――」
 ピンポイント・スペシャリティという大技を多用したため大量のEPを消費した櫻霞の頬へと櫻子がそっと両手を添え、その意識を同調させることで自身の力を分け与える。
「精々、あの世で自分が殺した人間に頭を下げろ」
 そして活力を取り戻した櫻霞は生命を蝕む漆黒の光をその手に溜め、黒の『ナイトホーク』と銀の『スノーオウル』――翼の彫金細工が施された二丁のオートマチックピストルから其れを撃ち放つ――。
 使役していたモノ達を失い本人のみとなった堀井稔に対し、リベリスタ達は畳みかけるように追撃を加えていく。
「背後にも、気をつけないと駄目ですよ~?」
 素早い動作で敵の背後へ回り込むと、ユーフォリアはソードエアリアルで多角的な強襲攻撃を仕掛けていった。仲間達も彼女に続くように、堀井稔の周りを包囲するかのような陣形を取る。
「『もっと綺麗ななにか』て云うのは推測ですけど、彼女が特別だったんじゃなくて貴方の心が彼女を特別に『視た』からじゃないですか? 『見えた』だなんて受身な物じゃなくて、ね」
 呟くような言葉と共に、仁身は堀井稔の頭部へと狙いを定める。そこから放たれた不可視の殺意は相手の頭部へと直撃した。
 その一撃に体をふらつかせながらも、堀井稔は切断する視線でハイディを切り裂く。しかしハイディも受けた傷を気にすることなく拳を繰り出し反撃した。
「この程度の攻撃で、退くわけにはいかない!」
 凍て付く冷気を纏った拳が少年の体へと突き刺さる。しかしそれでも、彼は倒れずに、虚ろな瞳のままでその口をぶつぶつと動かし続けた。
「この、場所、は……冬に、なる……と、一面に、雪、が積もっ、て、真っ白に……なるの……とっても……寒い、けど、とっても、綺麗、なん……だから」
「こんなの、辛いだけよ。だから、もう終わりにしましょ? ……ね?」
 鮮やかな長髪と瞳、それらと同じく燃え盛るような赤の炎を『乙女の拳』へと宿す。
「歪んだ想いと共に、私が全部――燃やしてあげるわ!」
 繰り出しされた焔の真紅の拳は、堀井稔にぶち当たると同時にその体を燃え上がらせた。
 そしてそこに、間髪入れずに淑子が巨大な斧を振り上げ突っ込んで来る。
「……ねえ、壊してしまったものは二度と戻らないの。たとえどんなによく似ていたって、代用品になんてなるはずがないでしょう? 人を輝かせるのはその心映え、それは手に取れるようなものじゃないわ」
 悲しそうに、それでもあくまでも優雅にそう告げると淑子は神聖な力を秘めた大戦斧を、大上段から振り下ろした。
 止むことのない連撃を受け、少年はついに膝を付く。しかしその口元は動き続けたままだ。
「何色にも……染まって、ない、真っ白……な、雪の、上を……二人で、歩く……の……素敵、でしょ……?」
 もはや倒れていないことが不可思議といった様相の少年の前方に、小烏がゆっくりと佇立する。
「坊主、世界は綺麗か。誰かが教えてくれたように、綺麗だったか」
(なら今度は、それを伝えに行かねぇとな――そして自分が見た世界で一番綺麗なものの話をしてやれ。きっと喜ぶから)
 心中でそう呟くと、何枚もの式符を少年へと飛ばしていった。符はその姿を鳥に変化させ、相手の体を啄んでいく――。やがて、堀井稔の体はスローモーションのようにゆったりと、その場に崩れ落ちた。


●少年は、会いに行く
 いつのまにか、ちらちらと雪が降り出していた――。
「――ただ傍に在れば、答えも見つかったかもしれませんね。」
 答えは恋心だったのかもしれません――櫻子は視線を地面に落とし、小さく溜息をつく。そして櫻霞とともに堀井稔の体へと背を向け、ゆっくりと歩き出した。
「……だか……ら、冬に、なっ……たら……」
 その命が尽きるまでほんの一時もないだろう――それでもまだ口を動かし続ける少年へと、小烏が言葉をかける。
「会いたくても会えない奴に会いたくなったら、目蓋を閉じればいいんだよ」
 小烏の言葉に反応するかのように、少年の瞼がゆっくりと閉じられていく。
「……また……一緒、に、この……場所に……来よう、ね……」
 その一言を最後に少年の瞼は完全に閉じられ、口元も動かなくなった。
「ごきげんよう。天の国で、また逢える事を祈っているわ。あなたに安らぎのありますように――」
 雪が目元で溶け、まるで涙を流しているかのように頬を濡らした少年へと向け、淑子は少女の元へと送り出すかのように小さく呟く。
「……」
 彼にはどのようなモノが見えていたのだろうか……そんな思いと共に堀井稔を見下ろしていたハイディが、コートのポケットからこぼれ落ちていたくしゃくしゃの紙切れに気づき、それを拾い上げ広げてみた。

 それは絵を覚えたての子供が描いたような、本当に拙い絵――。
 絵の向こう側から、様々な色で彩られた少女がこちらへと、微笑みを向けていた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
参加された皆様、お疲れさまでした。
結果はこのようになりました、いかがでしたでしょうか。

少年は、少女の元へ。

それでは、また機会があればどこかで。