●元気の出るケーキ 「ふんふんふん、ふ~~ん♪」 鼻歌を歌いながら、少女はスポンジに生クリームをへらを使って塗りつける。 お店で売っている品のように見事な出来栄え……とはいかないものの、題材選びが良かったのか。 シンプルではあるものの美味しそうな、素朴な雰囲気のケーキができあがった。 それに……用意しておいた、特製のパウダーを振りかけて…… 「食べた人が元気になってくれるといいな~」 笑顔で彼女が言った直後。 「……そうはいかないわっ!!」 「っ!?」 ●トホホホホ…… 「つまり元気になるケーキを作ろうとしたら、元気なケーキが出来上がってしまった……と?」 「ハイ……本当に……ずびばぜん……」 土下座の勢いで頭を下げる少女は、半泣きどころか全泣きで……鼻声だった。 「いえ、その、まあ……仕方ないですよ? 本当に……そうですよ、崩界が悪いんですよ」 そう言ってマルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)は泣いて謝る少女をフォローする。 少女はアークに勤めるリベリスタの一人で、ヤミィと呼ばれていた。 とある事件がキッカケでリベリスタたちの世話になり、以降アークに所属している。 「で、話を戻しますが皆さんにはその逃走したケーキ……分類的にはエリューション・ゴーレム? ……になるみたいですが、それの対処をお願いしたいんです」 コンソールが操作されるとスクリーンに……生クリームが雪のように感じられる、かまくらのような外見にイチゴをデコレーションしたケーキが表れた。 ちなみに大きめのお皿に載っている。 「これが問題のケーキになります。直接的な攻撃は行わないんですが、周囲の対象を魅了する能力を持っています」 かなりの精度を持っているようで、避けるのは容易ではない。 「それ以外は攻撃手段等は無いんですが、こう……耐久力がある訳では無いんですが、戦闘不能を耐える能力みたいなのが高いみたいで」 限界まで追い詰められても、根性で戦い続けるようである。 「必殺の力が籠められた攻撃で無い限り倒すのは難しそうですが……特定の条件下ではこの効果は発動しないみたいなんです」 食べられた場合です。 そう言ってマルガレーテは皆を見回してから、ですがと付け加えた。 「食べられたく無くて逃げ出したみたいですから、当然ケーキ本体は食べられないように抵抗するでしょう」 現在E・ケーキは、とある公園内をうろついているらしい。 フェーズもあまり進んでいないので人目を避けるように動いているが、この先どうなるかは分からない。 「ちなみにこのケーキは、お皿含めて周囲が空気の膜みたいなもので覆われてまして……全く汚れないみたいです」 「食べられたいんですよ! 本当は!」 フォーチュナの少女の言葉に続けるように、ヤミィが力説した。 「ケーキたちはきっと皆……じゃないかも知れませんが、多くがそうだと思うんです! ショーウインドーの中からお客さん達を眺めながら、誰が自分を買ってくれるのかな~とか、あの仲の良さそうなカップルに買ってもらえたら嬉しいなとか、真剣な顔で悩んでるこの子の好みって何だろうかと、あの家族が自分を食べてもっと幸せそうになってくれたら嬉しいな~とか、色々考えてるんですよ!」 「まあまあ、ヤミィさん。落ち着いて」 「す、すみません///」 「……まあ、でも実際……本当に嫌がっているという訳でも無さそう、というのも事実なんです」 もし、ケーキを食べる事で人は幸せになれると思わせる事ができれば……ケーキに、自分も食べられたい、誰かを幸せにしたい! みんなに食べてもらいたい、と思わせる事ができるかもしれない。 「幸せになりたいならフランス料理を食べなさい、じゃないですけど……でも、ケーキを食べて美味しい、幸せ……って感じる瞬間は、実際にあると思うのです」 少し神妙な顔をして頷きながら、マルガレーテは口にした。 「そういうのもありまして……皆さんが望まれる場合、こういう作戦もあります」 E・ケーキの進路で待ち伏せして、いかにも美味しそうに幸せそうにケーキを食べる事で、E・ケーキに『自分も食べられたい!』と思わせる、という作戦である。 ちなみにこの場合、持参するケーキは必要経費。 「もちろん必殺能力のある攻撃が用意できるなら、戦うのも構いませんが……あ、いえ。ちなみに今回はケーキの移動経路の方も確認できましたので、待ち伏せ等も可能です」 言葉を選びつつそう言ってから、マルガレーテは視線をヤミィからリベリスタたちに戻した。 「あの……もし戦うのならお役には立てませんが……皆さんが、ケーキを食べる為に説得するというのでしたら私にも協力させて下さい」 そう言ってヤミィが頭を下げる。 「……どうなさるのかは、皆さんにお任せします」 いろいろとあると思いますが、どうか宜しくお願いします。 リベリスタたちを見回してから、そう言ってマルガレーテも頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月10日(木)22:47 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●「面白いものを作るのだ、ヤミィは」 どこか感心したような様子で、『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)は呟いた。 食べられたくなくて、逃げ出したケーキ。 「ふふっ、動くケーキを作ってしまうなんて、ヤミィさんらしいと言えばらしいですね」 源 カイ(BNE000446)も同意するような口ぶりで呟く。 (けど、本当にみんなの為に頑張っていて、心の底から微笑ましいと感じるのです) だからこそ何とかしてあげたい。 「それでは、ご賞味といきましょうか」 そう青年が微笑めば、 「お仕事とはいえ、ケーキでパーティって感じで、超楽しみ!」 『ビタースイート ビースト』五十嵐 真独楽(BNE000967)も嬉しそうに笑顔で言い、作り主へと視線を向けた。 「ヤミィさんがケーキにチャレンジしていた事はマルガレーテさんから聞いて知っていたですけど、まさか元気なケーキを作っていたとは!」 「ち、違うんですよ!」 「大丈夫です」 「いえ、だから……」 「あたしもケーキは食べられたいと思ってるに違いないのです!」 「あ……はい」 「皆で説得して楽しいパーティにしましょうです」 また半泣き気味になったヤミィに『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)が笑顔で言えば、少女は力強く頷いてみせる。 「ほら、ヤミィ」 「うぅ……らいよんちゃんも御免なさいです」 「気にしなくてよいのだ」 泣いているヤミィの顔を拭いてあげると、雷音は優しく微笑んだ。 「一緒に幸せにしてあげよう?」 美味しい紅茶も用意している。 一緒に食べに行こうと誘えば、少女は目元をこすってから元気に頷いた。 「ケーキなあ。最近、焼いてないな」 『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)が誰に言うでもなく呟く。 (とっても美味しそうなケーキだね、楽しみだなぁ♪ 食べるぞー) 「……こほん。Eゴーレムになっちゃったとはいえ……ケーキとして食べて貰いたいっていう気持ちがあるようだし、何とかしてあげたいなぁ」 思考が漏れそうになったところで我に返った『やわらかクロスイージス』内薙・智夫(BNE001581)は、そう言ってうんうんと頷いてみせた。 (目標は少女の手作りであるときいた) 「であれば、それを攻撃して破壊することなど俺にはできない」 真剣な表情で『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)が口にする。 (なぜならば、俺は少女たちの味方であるからだ!) 「一つのケーキを救うって事は、少女の未来を救うって事なんだ!」 どのような時であろうと、彼はブレない。 ケーキを食べる為に、全力を尽くすのみだ。 「『自分もこんな可愛いお皿に切り分けられて盛り付けられたい!』という願望をケーキに抱かせないとですね」 そう言って『絹嵐天女』銀咲 嶺(BNE002104)は、うふふと微笑んだ。 「作戦遂行に必要だからってことで、アークの経費で落としちゃいました♪」 彼女が用意したのは、人数分のティーカップ&ソーサーやケーキ皿、かわゆい細工のフォーク等。 可愛い雑貨屋さんやアンティークショップに行って揃えた品々である。 「ヤミィは名前は何回か聞いたコトあるけど、会うのは初めてだよね?」 お友達になれたら嬉しーなと真独楽が言えば、私の方こそよろしくお願いしますと少女も笑顔で応える。 (今日はみんなで……もちろんE・ケーキも含めて、幸せな気分になれたらイイな) その為に。 真独楽はきあいを入れるように、きゅっとこぶしを握ってみせた。 「自分がどれだけ人を幸せにできるか、しっかりケーキに教えてあげなくちゃ!」 ●「ヤミィさんは女性陣の手伝い、お願いできますか」 義衛郎の言葉に少女は真剣な表情で、はいっと返事をする。 それぞれで持ち寄ったりカイの車を使って運んだ備品で、8人はさっそく準備を開始した。 冬の寒気は身に沁みこみそうな程に冷たいが、寒さ対策もバッチリしてある。 義衛郎はコートを羽織っているし、嶺は加えて足の裏に貼るタイプのカイロも用意している。 真独楽は白いコートの内側にカイロを貼り付けた上、ふわふわのマフラーをしっかり首に巻き付けていた。 「はい、そあらさん」 「ヤミィさんはお疲れさまなのです」 そあらはお礼を言って、ヤミィの用意したカイロをカイロカバーに入れる。 人数分のイチゴケーキ型カバーは、彼女のお手製だ。 (待伏せの間、寒いですから) 「これであったかいのです」 可愛らしいですよね~とヤミィが笑顔でカバーをなでる。 (僕がケーキだったら……) 「食べられる時は、出来るだけ綺麗な場所で美味しそうに食べて貰いたいもんね♪」 そう考えた智夫は周囲のゴミ等をささっと取り除くと、義衛郎に周辺の掃除を任せて準備に入った。 用意したテーブルクロスやリボンで、テーブルや椅子を綺麗に飾りつけていく。 「ケーキの為の素敵ステージを作っておくのですよ」 そあらもそう言って、テーブルを華やかに飾りつけてゆく。 (飾りつけは皆に任せよう) 「ぶっちゃけ、俺にそういうセンスはない! 女子力高くないしね!」 タキシード姿の竜一は、寒い寒いと丸くなりながら邪魔にならぬようにと隅っこに待機。 待ち伏せに間に合うようにと、カイと真独楽もセッティングを手伝って……夜のお茶会の準備は整った。 ●「ケーキに関しては、せっかくだし、俺はもらったお菓子をもってきた!」 イチゴのタルトとクッキー、ブッシュドノエルを用意しながら竜一が胸を張る。 因みにブッシュドノエルは彼女の手作り。 「いやぁ、うちの嫁さん(予定)はいろいろ出来てスゴイよねえ」 可愛い、料理上手等々、どや顔で惚気始める竜一にloveloveなんですね~と感心した様子のヤミィの肩をちょんとたたいて。 「陰ト陽からお茶を用意してきたのです」 「秘密のブレンドだ」 キャンドルを用意しながら、そあらと雷音は特製のブレンドィを少女に見せた。 (ボクたちはなんだかんだで似た者同士なのかもしれない) 少し、実験にもにているなと雷音が口にすれば、ヤミィは成程と零れる香に笑顔を見せる。 「らいよんちゃんがブレンドしたお茶はすっごく美味しいのです」 そあらは笑顔で言いながら、コーヒー派の人の為にとコーヒーも用意。 「美味しく頂いてもらうといいのだ」 「楽しみです」 雷音の言葉にヤミィが応えて。 カイも珈琲、軽食やブッシュ・ド・ノエルを用意し、義衛郎も持ってきたフルーツタルトをテーブルへ。 智夫も持参したかぼちゃのタルトとチョコレートシフォンケーキを並べていく。 「紅茶と味の合うジンジャーシュガーも持ってきました」 内側からぽかぽかしますよと言いながら、嶺もケーキをテーブルへ。 「ほら、竜一も手伝ってくれ、忙しくなるぞ」 少し遅いクリスマスパーティだ。 そう言って、テーブルの飾りつけが終ったのを……陽が暮れ始めたのを確認すると。 雷音はキャンドルに光を燈した。 ●「夜のお茶会だなんて、とてもロマンチックだよね」 (僕、恋人とかいないけど) 中学の頃、仲の良かった異性の事を思い出しながら呟いてから……智夫はヤミィに声をかけた。 「E・ケーキも、本当は食べて貰いたがってるようだし、大丈夫だよ」 「……ありがとうございます」 お礼を言って笑顔を見せるものの、いよいよというのもあってか……ちょっと緊張した様子で少女は周りをきょろきょろ見回す。 直後。 「寒いので、ほら、俺のお膝の上に乗ってむぎゅむぎゅっと! むぎゅむぎゅと!」 「え!? あ、いえ、その」 「あったまろう! そして、ケーキを食べよう!」 「はぁ、はい、その!?」 「幸せってのは、そうやって出来ていくも」 「こら、竜一」 びっくりして動転したまま流されていきそうなヤミィを落ち着かせるように、雷音は声をかけた。 そのままちょっと落ち着くように話をして、少女は改めて雷音の隣に席を取る。 陽が沈み、暗くなった公園の一角を……キャンドルの灯りが照らし、どこか幻想的な光景を創り上げて…… (あの娘が好きだったんだ) 智夫が自分の隣、つくっておいた空席にチョコレートシフォンケーキを置いた。 「いなくなっちゃったんだけどね」 聞こえぬよう呟いてから彼は、かぼちゃのタルトを頬張りカップに手を伸ばす。 温かい飲み物からのぼる湯気が目にしみりそうになって…… でも、暖かいのは心地好い。 公園の一角には、穏やかで楽しげな空間ができあがっていた。 「いただきまーす♪」 一口ずつゆっくり味わって。 真独楽はベリーたっぷりのチョコレートケーキをほお張る。 みんなに、ちょっとずつ交換しようよと持ち掛ければ、ヤミィを含め幾人もがこころよく応じて。 「なんか楽しいね、こういうの」 タルトを食べながら微笑んだ義衛郎は、ふと……隣の席の嶺へと視線を向けた。 彼女が食べていたのは某有名店の、薔薇のフレーバーが特徴のケーキ。 「何それ美味しそう」 深い意味もなく一言口にすると、それを聞いた嶺が彼の方を向いて…… (そういえば、目の前に居る恋人と一緒にケーキを食べるのも久しぶり) 「はい、須賀さん。あーんしてください」 嶺は切り分けたケーキをフォークにのせると、義衛郎の口元へと差し出した。 (えっ、何、あーん?) 聞き間違いかと思ったものの、義衛郎の目前には差し出されたフォーク。 (嬉しくないかと訊かれたら、嬉しいんだけど、これ相当恥ずかしくないか) しかも外で、公衆の面前で。 (けど食べないのも変だし、ええい、儘よ!) 3秒ほど迷ったものの、彼はぱくりとケーキをほお張った。 「……大変美味しゅうございます」 (これ、オレもやらないと駄目か) 仕方ないので自分もフルーツタルトを一口大にして、フォークで嶺の口元に。 「はい、あーん」 (ああ、照れ臭い) そういった義衛郎の心境に気付く様子もなく、嶺は嬉しそうにタルトをぱくりとしてから。 「……あら、注目されちゃってます? ってヤミィちゃんガン見してる~!?」 「すご~く、らぶらぶです」 「らぶらぶ~」「そうだね、らぶらぶだね」「らぶらぶだな」「らぶらぶなのです」「ケーキ! ケーキ!」 きゃーっと言いつつ見守っているヤミィに、幾人かが同意する。 能力を使用して周囲を見張る合間に、そんな光景を目にして……目を細めたカイは、折角なのでと軽く振ってみた。 「ところで、話では元気になるケーキを作るという事でヤミィさんは頑張ってたそうですが……ほんとのところは、誰か意中の方が出来たのでは……できたのでは?」 「!? や、そんな事はないです! いつも頑張ってるみなさんに、何か少しでもって思っただけで!」 いっそう真っ赤になって否定するヤミィにくすりと笑ってから、カイもケーキを一口頬張る。 楽しい時を過ごしながらも、油断なく。 状況を確認した雷音は、周囲に強い結界を張り直した。 ●「乗っている苺に(`☆ω☆´)ってなってケーキを驚かせないように気をつけるです」 そあらはケーキ発見の報を聞くと、慌てないようにと自分に言い聞かせる。 「はい、ヤミィたん、あーん! らいよんも、あーん! まこまこも、はい、あーん!」 なでなでもふもふすりすり。 「よしよしよし、むっふっふ、みんな可愛いなあ」 「こ、今回は私が止めなければ……ええと、その皆さんは……竜一さんの、想像上の 存在なのではないでしょうか?」 そんなこんなと賑わっていた一行の視界の隅に……何かが、映った。 「ケーキはすごく美味しいのです」 「ああ、ケーキは美味しい」 そあらと雷音が、口火を切った。 「夢や希望がいっぱい詰まってるのです。ケーキがあるだけで皆幸せになれるのです」 「綺麗で可愛くて幸せで大きな白いケーキがあれば、きっとみんな幸せにできる」 そうだろう? ケーキくん? ケーキに見えるように、雷音は美味しそうにケーキをほお張ってみせた。 「な、なななっ!?」 「そのケーキがもっともっと美味しく食べれるように、ケーキさんの為に素敵ステージを用意して待ってたのです」 「よかったら食べさせてもらえないかな?」 「あんた達、あの……っていうか、その女の差し金ねっ!?」 「みんな君のことが好きでしかたないんだ。ボクも君が好きだよ」 あからさまに警戒した様子のケーキに向かって、雷音は真っ向から言葉を送った。 そあらの方はというと、拍手しながらテーブルやキャンドル、用意したお皿などを指し示す。 「ケーキさん、私たちにこんな風に美味しく食べられてみませんか?」 「元気良いし、きっと美味しいんだろうなあ」 嶺に続くように義衛郎も素直な言葉を紡いだ。 ケーキが迷っているように感じた智夫も、たずねるように口にした。 「とっても美味しそうなケーキだし、食べてもいいかな?」 「……わ、私はそんなに安いケーキじゃないわっ!!」 そんな風に、揺らぎながらも意地を張るケーキに向かって。 「ケーキの力ってすごいよね!」 どんなフツウの日でも、可愛くて、キレイで、おいしいケーキがあるだけで、すっごくトクベツな日になるの。 真独楽は、語りかけた。 「アークにくるまでクリスマスは……ずぅっと、パパと二人っきりだったなぁ」 (友だちも少なかったし、うち、あんまりお金もなかったから……) 「それでもさびしくなかったのは、大好きなパパと一緒っていうのもあるけど……やっぱり、ケーキがあったから」 ケーキって、魔法使いみたい。 「……だからね。キミの魔法で、今日を『トクベツな日』に、みんなを世界で一番幸せな気分に、してくれないかな?」 それが、最後のひと押しになった。 「……そ、そんなに食べたいながら……食べられてあげても、良いわよ?」 意地っ張りな様子にくすりとしながら、真独楽は笑顔でピースしてみせた。 ●「世界で一番、美味しく味わってあげるよっ!」 記念に写真も幾つか撮って。 「プリントしたら、みんなにもあげるね」 笑顔につられる様に近付いてきたケーキの為にとカイがお皿を用意する。 「メインの登場なのです♪」 (……さて、ヤミィさん特製ケーキのお味は如何なものでしょう?) きっと親友や仲間の為に思いを込めて作られているだろうから。 「それはそれは素晴らしいに違いないのです」 「甘いものを食べると幸せになりますよね~。ケーキなら尚のこと!」 そう言って嶺は決意を固めたケーキをそっと……等分に切り分け、可愛いお皿に盛り付けていく。 「あたし苺がいっぱい乗ってる所がいいです」 そあらの言葉を聞いた雷音は、一番上の苺をちょこんと彼女のにつけたして。 今日の素敵な時間と元気なケーキに感謝を込めて。 「いただきます」 そあらの言葉に皆も続いて、ケーキを味わう。 「少女が作ったケーキ! マズイわけがないじゃないか!」 (かわいい少女たちをお茶請けに見ながら!) 「……あんたねぇ……」 もぐもぐもしゃもしゃする竜一に呆れたようにケーキが呟いた直後。 「あ、美味しい」 「甘すぎず、それでいてしつこくなく、いちごも新鮮でとても美味しいよ」 「……そ、そう?」 「甘い物食べると、なんで幸せな気分になるんだろうね」 義衛郎と智夫の言葉に少し照れたように返すと……ケーキはそのまま押し黙った。 (皆幸せそうで笑顔がいっぱいこぼれてるのです) そあらは美味しいケーキをありがとですとお礼を言い、雷音も目の前の光景に胸の内に何かが燈ったような気持ちになる。 (そあらが幸せそうで、ヤミィも幸せそうで……) みんなもしあわせそうで嬉しい。 「お菓子は人を笑顔にするためにあると思う」 雷音は語りかけるように、呟いた。 「ヤミィがつくったケーキは皆を笑顔にするためだと思うのだ」 ●「ケーキさん、ありがとうございました。大変美味しかったです」 食べ終えた嶺がお礼の言葉を口にする。 「ご馳走様でした」 そう言って竜一も、手を合わせた。 「ごちそうさま」 めいっぱいの感謝の心を込めて、雷音も口にする。 幸せをありがとう。笑顔をありがとう でも、父へのメールには…… 「沢山ケーキを食べました、太らないでしょうか? 心配です」 不安がちょっと浮かべば、大丈夫です、これが全部加わっても○○gですとヤミィが力説する。 「食器の片付けなどの後始末は引き受けます」 他愛ない会話を聞いて、苦笑しながら……カイは目の前の風景に目を細め、呟いた。 (……その健気さと優しさ) 「何時までも守りたいものです」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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