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<クリスマス2012>氷の国のトロンプ・ルイユ

●迷子の雪の女王様
 掌に落ちる雪の『温かさ』に瞬いた。
 常識とは乖離した存在に、ここが『神秘』に囲われた世界だということに気付いた。
 氷の花に、氷の迷路。けれど、寒さはあまり感じなくて。

 嗚呼、そういえば、聖夜だ。
 ふわり。舞う雪の冷たさに静かに目を伏せた。

●メリークリスマス!
『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)の髪の色を何かに例えるなら桜だろう。
 元の色は雪と同じ白色であるのに、薄桃のグラデーションが仄かにかかっている。
「雪! ねえ、お姉さま、私ね、雪が好きなの!」
 だって、綺麗じゃない。
 キラキラと瞳を輝かせる世恋は内面の幼さの残る部位も伴って本当に少女のように見える。
 ハロウィンでは『幼女っぽい』と学園の案内役を任されていたりする彼女でも立派なレディなのだ。
 月鍵・世恋(24)……(笑)。

「――ってなわけで、クリスマス! 過ごしましょうよ!」
 どういうわけか、この幼さの残る予見者はイベント事が大好きだ。
 鬼ごっこ、かくれんぼ、魚類探索に肝試し。ロマンチックの欠片もないラインナップを提案し続ける彼女には珍しく胸を張って自慢げにいい提案があるの、と笑う。
「とあるアーティファクトの効果なのだけど……あ、勿論無害よ? とーっても無害っ!
 聖夜に人を取り込んでしまうの。氷の迷路よ。あんまり寒さは感じないみたいなのね」
 イマイチ要領を得ない説明に首をかしげるリベリスタ。
 つまりは、『氷の迷路』の異空間へと飲み込んでしまうアーティファクトがあるらしい。
 休憩所や、氷の花(冷たくない!)、温かい雪、氷の遊具……様々なものが自由自在思いが儘に存在しているという。
 いちゃいちゃしてもよし、遊んでもよし。思い思いに過ごせばいいんじゃないかしらと大はしゃぎの予見者。
 迷路の入り口は三つ。簡単、普通、難しいのそれぞれ。ゴールにはパーティー会場があり、食事を用意しておいたとドヤ顔をしている。
「迷路にいきましょうよ? 楽しいわ。クリスマス! 冬!」
 世恋は最後まで無い胸を張っていたのだった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:椿しいな  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年12月26日(水)22:37
メリークリスマス!こんにちは、あなたの椿です。

●成功条件
クリスマスを楽しく過ごす!

●場所情報
氷の迷路
 アーティファクトの効果で生み出されている氷の迷路です。害はなく覚醒者しか見えないものとなっています。
 温かい雪が降ってきたり氷でできた花が咲いていたりします。
 迷路の入り口は【1】簡単、【2】普通、【3】難しいの三種類。
 迷路の中には【休憩所】【氷の遊具】【七面鳥】【パーティー会場】【花畑】等々があります。
・休憩所:氷でできた休憩所です。それなりに軽食があります
・氷の遊具:小さな広場みたいな感じです。公園あるものならそれなりにあります
・七面鳥:(なんでか)七面鳥と鬼ごっこできる場所です。でかいです、怖いです。そして強いです。
・パーティー会場:ゴール地点。お菓子、ケーキ、ジュース、食べ物が揃っています
・花畑:氷でできた花が咲き誇っている花畑です。普通のお花も咲いています。
 等々。思い思いに遊んでくだされば幸いです。
(べ、別に迷路でかくれんぼしたって、鬼ごっこしたってリア充爆発叫んだっていいんだからね!
 いちゃいちゃしたって、いいんだからね!手とか触っちゃってきゃーとか!)

◆イベントシナリオのお約束
・参加料金は50LPです。
※予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・誰かとご一緒の場合は『時村沙織(nBNE000500)』と言った風にIDと名前を表記してください。
【グループ名】タグで一括でも大丈夫です(タグ表記の場合はID、フルネーム表記は必要ありません)
・NPCと絡む場合はID、フルネームは必要ありません。名前をお呼びください。

◆参加NPC
 月鍵・世恋(nBNE000234)
ぼんやりと迷路を巡っています、何かありましたらお声かけくださいませ。

楽しい一日を過ごしませんか?よろしくお願いいたします。
参加NPC
月鍵・世恋 (nBNE000234)
 


■メイン参加者 33人■
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
デュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ソードミラージュ
司馬 鷲祐(BNE000288)
ホーリーメイガス
七布施・三千(BNE000346)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
ソードミラージュ
上沢 翔太(BNE000943)
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
ナイトクリーク
リル・リトル・リトル(BNE001146)
ホーリーメイガス
ニニギア・ドオレ(BNE001291)
クリミナルスタア
神城・涼(BNE001343)
デュランダル
ランディ・益母(BNE001403)
クロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
デュランダル
イーシェ・ルー(BNE002142)
ホーリーメイガス
翡翠 あひる(BNE002166)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
ホーリーメイガス
レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)
覇界闘士
★MVP
焔 優希(BNE002561)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ソードミラージュ
リンシード・フラックス(BNE002684)
ホーリーメイガス
エルヴィン・ガーネット(BNE002792)
ナイトクリーク
荒苦那・まお(BNE003202)
ホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)
インヤンマスター
明神 涼乃(BNE003347)
ナイトクリーク
明神 暖之介(BNE003353)
ダークナイト
スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)
レイザータクト
ミリィ・トムソン(BNE003772)
インヤンマスター
一万吉・愛音(BNE003975)
覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)
ソードミラージュ
七月・風(BNE004135)
デュランダル
双樹 沙羅(BNE004205)
   


「みんなでゴールしてみせるよぉー! がんばろ~!」
「よっしゃー! 皆で迷路をゴールするぞぉー! 当然、難しいに挑戦だろう!」
 やる気を漲らせた壱也とツァインは『難しい』とプレートのかかった迷路の入り口に立っていた。
 迷路に踏み出す前に翔太が提案したのはお馴染みのものだ。言う気がしていた、とツァインは頷く。
「左手の法則は通用するかな? 迷路って基本そうなってるだろ?」
「その法則が通じない迷路だってあるんだぜ」
 勿論、この『難しい』の迷路ではその法則は通じない。逆手に取られてしまってると言う事か、と真面目な考察を続ける翔太。
 彼らの後ろで、ひゅうと風が吹いた(気がした)。
 
 風に煽られ氷の塵を肌に感じながら仁王立ち。
 俺はこの迷路を攻略する為に生み出された存在……!!(ではないけどそう言う事にしておこう)。
「ああ、行くぞ! 立ち塞がる障害は全て薙ぎ倒してくれる!」
 ――焔優希(17) 2012年クリスマスにて。

 ……迷路に入った四人は早速迷っている。楽しそうに前進していく壱也が呼ぶ声に誘われて進んでいく。壱也さん、前を見ないとそろそろ――ゴッ。
「うえーんっ! 痛いよ! この壁此処にあるから悪いんだ!」

 |壁|<ごめん

 盛大にすってんころりん。美少女(笑)としてその転び方は如何なものか!
 涙を浮かべながら、壁をディスる壱也。これには無害な氷の壁も涙目である。
「ねえ、ほむほむ! この壁壊して! 痛かったんだもん!」
「任せろ。一気呵成に撃ち貫く!」
 気合いを溜めて氷に突撃していく焔。土砕掌(威力341)が真っ直ぐに氷の壁にぶつけられていく。
「壊すな! 壁壊すなぁ~~ッ!?」
 慌てて止めるツァイン。嗚呼、彼はツッコミなのか。普段ボケなのに。普段、ボケなのに!
 がらがらと虚しく壊れる氷の壁にへにゃりと笑った壱也は振り向いてカメラを向けている翔太にピース。
「しょーたん、ほら、壁なくなっちゃったからこっちだよ! ごーごー!」
「わー!? おいっ、勝手に進むなっ! はぐれたら探すのが一苦労……あれ……?」
 真っ直ぐに進んでいる壱也と優希の前からツァインと翔太(カメラマン)の姿が消える。

 |壁|<仕返し!

「うおおおっ! 七面鳥!? 恨みかっ! 毎年食われてる恨みかっ!」
 遠くから聞こえるツァインの声。ついで聞こえるシャッター音。
「俺は食ってねぇーし!! アイラブチキンライス!! ノットターキー!! アンダスタンッ!?」
「俺まで巻き込むな! コッチくんな! 俺も食ってねえええ!! 逃げるが勝ちだ!」
 それでもカメラは逸らさずに。ツァインの叫び声が遠く木霊していたのだった。迷路内に。
「あれっ! ツーくんどこおお!? ツーくん迷子!? しょーたんもどこー!?」
 きょろきょろと周囲を見回す壱也の鼻が捕えたのは翔太でもツァインでもなく美味しそうな匂い。
 くんくん、きょろきょろ。目の前の氷の壁も嫌な予感がしている。壁だから何も言わないけれど。
「ほむほむ、行こう! 食べられない七面鳥はいらない!」
「今は目の前のゴールを目指すのみだ」
 二人が武器を構えた。周囲に走り回る七面鳥などスルーだった。迷路の貴公子と美少女(笑)の視線が交わる。
「全てを砕け! 壱式迅雷!」
「ギガクラッシュー!」

 |壁|<痛い痛い

「……難しいに行く?」
「登るなら高い山。挑むなら最難関だよねぇ」
 まじかよ、と漏らした涼に旭は「迷子になっちゃだめだよう」と笑う。
「手ぇ、繋いでてあげよーか?」
 そういって、伸ばされる手。繋いで引っ張られるのだって偶には悪くないだろう。年下の旭が楽しそうならそれでいい。
 一方の旭は年上だけど弟みたいなおにーさんで、何かと心配だとかキリリッとしていたのだが其れを涼は知る由もない。
(わたしがしっかりしなくちゃ!)
 ぐんぐんと進む旭に段々と不安になってくる涼。見る景色は氷の壁だけで、空を見れば温かな雪が降る。
 あちらこちらと悩みながらも進んでいく。入りこんだ道は『難しい』だけあって簡単にはゴールに出られない。
「ここは直感に頼って行ってみようよ!」
「直感!? マジ!?」
 保険に右手を壁に付けた涼に旭はすっとしゃがみ込む。選択肢は二つ。右か、左だ。
 なむなむと念じる様子に涼は「ペン!? まーじーでー!?」等とオーバーなリアクション。
 伝統的な占いで自分の深層心理に問いかける旭の呪いは続く。
「よぉし! こっち! はやくはやく。たいむあたっく!」
「っと走るの!? こう、手を繋いでまったり楽しんでいこうよ!?」
 楽しそうに走る旭と繋いだ手を其の侭に迷路を駆ける。――ああ、こういうクリスマスも悪くない、かな?

「氷で出来た迷路ですよ!」
 ぺたぺたと氷の壁に触りながらミリィは楽しそうに笑った。頷きながら予見者は一緒に難しい迷路の入り口をくぐる。
 手袋をはめた左手が氷の壁を這う。時間はかかるかもしれないけれど、沢山面白い物を見れると思うから。
 一歩、歩むたびに頬に温かな雪が触れる。指先にじんわりと伝わる氷の冷たさも何処か心地いい。
「世恋さん、私。約束を護ろうと思うんです」
 迷路の中で、足を止めて、振り向かないままミリィは言葉を少しずつ紡ぐ。
「こんな私でも無茶すると怒ってくれる人が居て、悲しんでくれる人が居るから」
 何時か、ただ自分の気持ちに直向き過ぎて身を挺して庇った。何時か、死んだら承知しないと言われた。
「だから、どんな大変な事があっても、生きて帰ります。絶対に」
 其処まで紡いで。まだ振り返らない。予見者の表情はミリィには見えないままだ。
「――御免なさい、こんな話をして。でも、世恋さんにはどうしても聞いて欲しくって」
 私だって、怒るし悲しむのに、と予見者はぽそりと零す。世恋は一度目を伏せて微笑んだ。
「……さあ、ゴールを目指そう? 面白い物に、出逢えるかもしれないわ」
 ね、と手を差し出して。ゴールはまだ、遠いけれど。

 のんびりと辺りを見回しながら虎鐡は進んでいた。折角のクリスマス、思いきってチャレンジしたのは難しいのルート。
「いやー、ここはあんまり寒くないからいいでござるなあ」
 そう笑って周囲を見回すと、彼の目の前には予見者の姿がある。ロリコンは多少赤面しつつ、世恋、と声を掛けた。
「世恋も散歩でござるか? あんまり寒くないでござるが気をつけるでござるよ」
「虎鐡さんもお散歩? 温かい雪が降るとつい油断しちゃうわね」
 頬に落ちる雪の温かさに虎鐡は不思議なものだと顔をあげる。雪と言えば冷たいが相場だ。
「変な感じでござるな……」
「偶にはいいでしょ?」
 微笑む予見者に頷き返す。それじゃ、と手を振る幼女(24)に手を振って、ん、と小さく伸びをした。
 さあ、ゴールを目指そう。のんびりと、なんとなくゴールへ向かって歩こう、きっともっと面白い物あるだろう。
「流石にゴールできないのは嫌でござるしな!」

 ――その頃、彼の愛娘はというとお馴染みの竜一君と迷路であった。
「その、簡単な方が迷わなくて良いと思うのだが……」
 雷音はおろおろと竜一を見つめる。嗚呼、なんだろう竜一が珍しくキリッとしている。
「どんな迷路にも出口はある。
 君が迷った時、それがどんな難しい迷路でも誰かと一緒ならばきっと出口は見える。それを俺は、知って欲しいんだ!」
 ぐいぐい。引っ張るそれに雷音は「挑戦する事に意義があるのだな」と頷く。
(……らいよんは、お手手も可愛いなあ、フヒヒッ)
 お巡りさん、コイツです。お巡りさんも道に迷ってしまう難解な迷路。容疑者は少女と手を繋ぎ探索している模様。
「あれ? この道だったか?」
 因みに、あんまり何も考えていない竜一は物事はシンプルに行く性質だった。休憩所について、段々とゴールへ行けるのかが不安になってくる雷音はちらりと竜一を見る。
「なかなかに難しいな……ちゃんと、帰れるはず?
 う、うーん。こ、今度は右にいこうな。右手の法則と言うのがあってだな。遠回りしてもゆっくりでも必ずゴールにつくのだ」
「うむ……。名案だ」
(頑張る顔も可愛いなあ、ウヒヒッ)
 ――あ、駄目だ、コイツなんとかしないと。
 二人揃ってあっちらこちら。これで上手くゴールへ……いけないのがこの迷路なのだ。
「あれ……」
「大丈夫、俺たち二人なら脱出できるさ。頑張ろう?」
 そっと差し出したココア。飲みながら、作戦会議を始める雷音の頭を撫でた。
(一生懸命ならいよんが可愛いなあ。もうしばらく脱出しない様にしよう。ブヒヒッ)
 ――お義父さん、ここです。


「気にしなくても、いいのに……」
 ぽつり、リンシードが漏らしたのは俊介の気遣いへだった。
 共に依頼をこなした際、リンシードは危険な役割を与えられていた。その時護れなかった事へのお詫びとして一緒にパーティーへ行こうと俊介が誘ったのだ。
「どうしてこうなった?」
「さあ……」
 断るのも失礼だと共に歩むリンシード。手を引かれながら段々と瞳が普段よりも冷え切って行く。
 俊介被告の言い分ではこうだ!
『パーティー会場に行こうと思った。迷路を通らなければいけないとかいドSなアーティファクトが悪い』

 |壁|<ごめんて

「半分くらいは霧島さんの所為だと思います……」
「り、リンシード……俺は極めて駄目なお兄ちゃんだ」
 元気よくずんずん進むから、とリンシードがジト目で睨んでくる。嗚呼、このままではケーキや美味しい食べ物を食べ損なうかもしれないのだ。
「何か打開策は無いもんか!な、極めてえっちなリンシー「私えっちじゃないです」
 いだっ、とチョップが入った俊介がわき腹を押さえる。
 極めてえっちなリンシードがうんうんと悩むなか、名案を思いついた様に手を打ちならした。
「空飛んだり、とか……?」
「じゃあ分かれ道になったら花染を倒して、切っ先が向いた方の道へ行こう」
 リンシードの頭が痛む。嗚呼、それをやってはまた迷うのみだ。ばたばたと二人揃って走る。
「もう、ぶっ壊した方が早くないですか?」
「じゃあ、そうだな! いっそ壊すか!」

 |壁|<またっ!

 本日は良く壊される壁であった。

 クリスマスの日にアークに所属した沙羅は周囲をきょろきょろと見回した。カップルだらけにパーティーだので、本当にあの『ジャック』を制したアークなのかと悶々としていたら気付いたら迷宮の中だ。
 本格所属した彼はまだ面識が無い。頼れる人も居ないのだ。ふと目の前を通る人影にあ、と沙羅は声をあげる。
「そこのピンクちゃーん、よかったらボクに出口を教えてくれよー」
「え、私?」
 沙羅は目は見ないままに予見者を呼びとめる。恥ずかしがり屋だからか、女性が苦手な事も合わさり目を合わせないままに語る沙羅に予見者は小さく首を傾げた。
「あれ、キミも迷ってるってこと、まさか! 無いよね? ……解った、キミも迷ってるんだね」
 困った様に視線を逸らす予見者に小さなため息を漏らす。取り敢えず人が居る所へいこうと沙羅は世恋と連れ添って迷路を進む。
 ぽつぽつと会話を交わしながら、一つ思い当って「ねえ」と沙羅は世恋を見やった。
「君さ、もしかしたらボクが此処に来て最初に喋った人かもしれない」
 瞬いて、其れは光栄だわと予見者は笑みを漏らす。
「ボクは沙羅。宜しくね! 貧乳のおねーさん!(はぁと)」
「せ、世恋です!」
 む、としたように言う予見者にじゃあね、と沙羅は手を振った。

「世恋と遊ぶ……いや、戦うッス!」
 どどん。イーシェはやる気満々だ。
 そう秋の話だ。かくれんぼでここぞというところまで世恋を追い込んだイーシェは惜しくも標的を逃がしたのだ。
 何がどうなったか彼女はその時誓ったのだ。
「この雪辱、必ず晴らすと! 今がその時ッスよ! 月鍵世恋」

 \何が如何してそうなった/

 何故か屈辱を味わったイーシェはライバル(?)をびしりと指差した。周辺には七面鳥の良く分からない光景。
「行くッスよ! ビッグ七面鳥! ライドオン!」
 何故か彼女は其れに跨った。イーシェ・ルー。何故彼女は七面鳥に乗っているのだろうか。そして、なぜ愛用の兜を七面鳥に被せたのか。
「にっく……きではないッスけれど、あのやけに可愛らしいピンクのふわふわ20代半ばを吹っ飛ばすッスよ!」
「褒められてるの!? ありがとう!」
「褒めてないッス! アタシよりずっと年上のくせにやけに可愛らしいじゃねぇッスかコノヤロー!」
 七面鳥に乗っかったまま突進してくるイーシェ。怯えの表情を向ける世恋。
 ――今、その戦いが始まったかの様に思った。
「あ、待つッス。でも大事なフォーチュナだからやさしーく啄むんスよ!」
「やだー!?私も乗るわよ!?」
 (※七面鳥はイチヤンッ!達が後で美味しく頂きました)

 ――七面鳥との苛烈な戦いが行われてる中、終は七面鳥との戦いを望んでいたのだった。
 集音装置で必死に七面鳥の居る方向を特定して、あちらこちらを見回すけれど、何処にも七面鳥の姿は見えない。
「温かい雪って面白いなあ☆ これって溶けるのかな??」
 触れれば熱じゃなくて冷気で溶けそうだと掌に落ちる雪を見つめたり、何故だかパーティー会場に到着してしまった終はきょろきょろとまた周囲を見回した。
「とりあえず腹ごしらえかなあ。あれ、これ、チキンじゃなくてターキーだ……」
 何故か彼は美味しい方の七面鳥に出逢った様で。腹が減っては戦も出来ぬ!
 たらふく食べたら再度七面鳥の捜索だ。何処からか羽ばたきが聞こえる。……七面鳥と目が合う。
 ――見つめ合うと素直にお喋りできないがそうはいってられなかった。
「目標はつよい七面鳥さんと仲良くなる! 超粘る!」
 きりっとし、七面鳥を追いかける。勿論、七面鳥さんも遣られっぱなしではなかった。
 仲良くなったら首に抱きつかせて貰うんだ、と意気込む終。
 つんつくつんつく。
「いたいいたい! つつかないで!」
 ><。と涙を浮かべる彼だけれど、どこか楽しそうなのであった。

「メリークリスマス! アークがお届け、夢の一時!」
 氷の世界での幻想的なクリスマスだぞ、とエルヴィンが誘ったのは春めく灯籠の夏奈だった。
「ごめんね、春ちゃんたちは……」
 アークは苦手らしいから、という夏奈の頭をぽん、と撫でて「来てくれてありがとう」とエルヴィンは笑う。
 今までは戦場でばかり見てきたから、普段の姿は初めてだと隣の少女を眺める。
「……うん、可愛い」
 その呟きに夏奈はえへへ、と笑った。幼い少女はアークのお兄ちゃんと一緒にクリスマスを楽しめることがどうやら幸せらしい。
 のんびりと景色を眺めながらあちらこちらと見て回る。他愛のない日々の話しをしたり、好きなものの話をしたり。
「ねえ、お兄ちゃん、見て、凄いよ!」
「うわっ、氷の花畑すっげぇな……」
 携帯電話をちらりと見やる。写真に収める事はできるだろうけれど、上手くピントが合わずに断念した。
 綺麗だね、と笑う夏奈やその兄貴分達をアークに誘おうとエルヴィンはずっと働きかけていた。
「……口にし辛いなら、メールでも何でもいいよ。ゆっくりと、話をしていこうぜ。待ってるからさ」
「アークのお兄ちゃ……エルヴィン、ちゃん? 今日は有難う」
 にこり、と笑う。何時かきっと、共に過ごせます様に、とそう笑って。

「……さて、どうやって攻略したものかな」
 鷲祐の袖をくい、と引っ張ったまおは持ってきた鉛筆と方眼紙、クリップボードを差し出す。
「壁の向こうが見えそうで見えません。こういう時はマッピングだってまおは教えてもらいました」
  。非。)キリッ――という感じのまおに鷲祐に「まお……」と小さく呟きを漏らす。
「司馬様、ご一緒していいですか。まおがマッピングするので……」
「有効だな。移動は俺に任せろ。……取り敢えず難しいエリアを攻略したい」
 よじよじと背中に登るまおが嬉しそうな顔をする。行き成り背中にぺたりとひっついたまおに何故ひっつくのかと困惑を浮かべる鷲祐。
「これならお邪魔にならないとまおは思いましたので。ぬくぬくですし」
 (*。非。)と幸せそうな顔をするまお。迷路攻略に相方ができる事は中々良い事だろう。
 マッピングするまおは一生懸命に方眼紙のマス目を埋めている――が、鷲祐の動きが変わる。そう、まるで戦闘を開始するかの如く勢いで。
「一気に進むぞ! 速度を高めて突破する! 七面鳥だああああああ」
「でっかい鳥様ですね」
「あ、あんなのは好戦的な奴らに任せるぞ! まお、頭を下げとけ!」
 よじよじとまおは指示に従う。スピードに身を任せ、氷の壁をガンッと蹴った。速度のままに飛び越えようとするその後ろで、七面鳥も何故か一緒に跳ねていた。
「おー」
 まおの呟きの後、温かい雪が彼女の目の前ではらりと散っていた。

「仲間達と迷路を大冒険し! 数々の罠を掻い潜り! 見事! ゴールに辿りついたのでございます! LOVE!」
 英雄譚を語る愛音。因みに罠は『お花畑』だ。ゴール地点のパーティー会場では彼女と快、スペード、世恋が揃っている。
「いやあ、難しかった。扉を開ければ金ダライ。落とし穴の床踏み抜いたらその下は池になってるし……
 通路一杯の大きさの雪玉が転がってきて仕方ないと受け止めたり」
「ええ、凶暴化した七面鳥が世恋さんをロックオンした時はハラハラしました」
 ちなみに七面鳥からも守護神(DT=できるだけわなにちゃれんじしました)は見事護り抜いていた。
「全部引っ掛かったの、俺だけどね……これも皆を守るためだし。へっくしょい」
 震える快は温かなスープを啜る。氷で出来た迷路、幻想的なそれを想いだしてスペードは幸せそうに笑った。
「氷の花、とっても綺麗でした」
 欲しかったものは全て手を伸ばせば溶けてしまう。それは雪の様で。
 この世界は温かく、触れる事ができた。素敵な友人たちとこの景色を見れて良かった。
「ほら、お菓子が一杯でございます! あ、スペード殿に、じゃじゃん。愛音の作ったお人形でございます!」
 クリスマスプレゼントと差し出したのは互いが互いを作った人形だ。えっちぃのでございますと微笑む愛音に「もう」と小さく呟きを漏らす。
「貴女の声が、その笑顔がどんな時も直ぐ傍に会ったから、愛音は笑顔でいられるのでございます。お人形も、ずっと一緒で御座いますよ」
「ええ、ずっと一緒です」
 微笑んで、スペードはプレゼント交換をしましょうと快と世恋を見つめる。一度視線を交わらせて快と予見者は笑った。
「手作りの和菓子でございまする!」
「酒粕のパウンドケーキを焼いてみたよ。甘さは控えめで香ばしい。ちょっぴり大人のケーキかな」
「それでは、私からはオリジナルのキャラクタートランプを」
「わあ、素敵っ」
 愛音の手作り菓子に快のパウンドケーキ。スペードのトランプの絵柄は其々、友人の顔になっている。
 きらきらと瞳を輝かせ「愛音がハート、快殿はクローバーでございます!」と興奮したように彼女は言う。
「勿論、スペードは私でダイヤはミーノさん。ジョーカーは世恋さんですよ?」
 可愛いは正義ですから、と力説するスペードに予見者は照れたように笑った。
「メリークリスマス! LOVE!」
 これからも、ずっとずっと一緒だから。離れないで、笑って居られます様に。


 迷路を二人で進む。ミュゼーヌの温かな掌のぬくもりを感じながら三千は小さく笑った。
「えへへ、こういうクリスマスもわくわくしますね」
 氷の迷路は幻想的で、温かな雪も現実味がない。不思議な世界だけれど、二人でなら何処だって楽しいから。
「迷路って、常に左手を壁に付けたまま歩けばいいんでしたっけ……?」
「ええ、壁を伝う分だけ遠回りになっちゃうかもしれないけど、確実に辿りつけるわよね」
 ぎゅ、と掌を強く握る。一緒にクリスマスを過ごせるのだから、迷ったってミュゼーヌは幸せなのだ。
 彼女の楽しげな笑みを見てか三千の笑顔も柔らかくなる。
「迷路は好きなんです。迷うのも楽しいですよ。それに、ミュゼーヌさんと一緒ですし。
 ……あ、此処は初めて通ります……わぁっ! ミュゼーヌさんっ、これ、見てください!」
「まぁ、本当……これは凄いわ」
 迷いながら、伝う壁を失って踏み出せば花畑が広がっていた。色付くものもあるが、其処に咲く花は全て氷だ。薄らとした氷の花が一面に広がっている。
 ぽかん、と口を広げたまま、美しく儚い其れに目を奪われているミュゼーヌを仰ぎ見て三千は振り返る。
「この花はきっと、この迷路の中でだけしか咲く事ができないのでしょうね」
 アーティファクトで生み出された氷の世界でしか咲く事の出来ない花。ガーデニングが趣味であるミュゼーヌの興味は花に向くが彼女は触れる事はしない。
 触れるだけで壊れそうだから、儚くて美しいその花々。
「……摘まずに、ここで暫く眺めていませんか? 温かい雪の降るこの場所で……」
「うん……花を摘む事は出来なくても、心には深く残せるものね」
 貴方と一緒に想い出を連れて帰りたい。そっと三千の腕に腕を絡めさせ、身を寄せる。
 ふわり、ふわりと温かな雪が二人の頬を掠めた。

「氷の迷路、面白そうですね、行ってみましょうか」
 風に誘われて、レイチェルは入口に立つ。寒いけれど好きな格好だから其れも我慢だ。
「借りを作るのは良くないですから、きっちりエスコートしてお返ししましょう」
「えへへ、それじゃお任せしちゃおうかな」
 にへ、と笑い風の腕にすり寄れば、薄着で寒いのでしょう、と小さな苦笑が返ってくる。普段から好きな格好だとしているミニスカートはレイチェルの白い足を寒空の下に晒してしまっている。
 流石に寒いのだと思ったのか、上着を脱ぎレイチェルの肩に掛けた風にレイチェルは一度、瞬いた。
「えっと……いいの?」
「女の子は身体、冷やしちゃいけませんから。ボクは下にもう一枚長袖ですからね」
 温かいでしょうと聞く声に優しく笑う。けれど、風も薄着になったのだから、「くっついてる方が温かいけど」とぎゅ、と腕にひっついた。
「温かいんでしたらボクは構いませんが」
 肩に掛けてくれる優しい態度にレイチェルはふふ、と笑う。こうやって居れるなら寒い格好も悪くは無い。
 風としては、如何して気にかけてくれるのかと疑問でもあるのだけど。
 ゆっくりと二人で歩む。ぐるぐると氷の壁が続く其処は温かい雪が降り、氷の花が咲いていた。
「……攻略したいな、と思ったりして」
「はい?」
 ちらり、と風を見る。風の不思議そうな顔に小さく笑って、そうだなあ、とレイチェルは悩むしぐさを見せた。
「変な意味じゃなくってさ、素直な部分、って在る筈だから。そういうとこ、見たいな、って」
 きっと彼女の心も迷宮だから、迷子になってしまうから。だから、攻略してみたいと思える。
 視線を揺れ動かせて、迷いましたとぽつりと零す風にレイチェルは楽しげに微笑んだ。
「エスコートとは言うものの、どうやら見事に迷った様です……」
「迷っちゃった? でも、一緒に居れる時間が増えたと思ったら、それでいいじゃん」
 ね、と微笑む彼女に風は肩を竦める。
 嗚呼、参った。今回も借りは返せそうにないようだ。

「ねえ、難しいのに行きたい」
「ああ、どうせなら難しいのにチャレンジしたいよな」
 瞳を輝かせていうニニギアにランディは頷く。ちらり、大きなランディを下から見上げて、伺う様にニニギアはねえ、と声を掛ける。
「デートをちょっとでも楽しみたいから、難しいに行きたいに決まってるのです」
 えへんと笑う彼女の手をぎゅ、と掴む。逸れない様にと繋いだ手は氷に少し触れたからか少し冷たかった。
「ほら、離れない様にしろよ?」
 寒ければ何時だって温めよう。迷路に夢中のニニギアはランディと腕を組んであちらこちら。思う存分に迷子を堪能している。
 袋小路に行き詰る。左右に分かれた場所や十字路。何処を取ったって難しくて、先がまだまだ見えなくて。
「出口は何処やら」
「ランディ、壁を斧で壊しちゃだめですよ? 途中で会う人も、モンスターじゃないからね!」
 茶化す様に笑う彼女の長い髪を撫でつける。
 まだまだゴールは見えないけれど。休憩所などに置いてあるお菓子を堪能するニニギアを見つめて小さく笑みを漏らす。
「冷えてきちゃったね。あっためてー」
 ベンチに腰掛けて甘える様に言うニニギアにランディは髪をなでる手を下す。
「クリスマスも悪くないもんだな。あ、ニニこっち向きな」
「なあに?」
 呼び声に振り向いて、腕を引かれた。瞬く間に唇を重ねて。
 その温もりに皺世相に微笑んで、その背中に腕を回す。揺れる羽が包む様に、温かさを共有する。
「キスして、心まであたためてあげる」
「まだ、一緒に居られてよかった」
 ぽつりと呟きを漏らす。戦い詰めで、こうすることだって叶わなかったから。ニニギアの細い体を抱き寄せる。もう一度優しく口づけて。何度だって、共に居られる事を感謝して。
 ずっと此処に居たい。けれど、そろそろ本気を出す時間だとニニギアはランディを見上げる。
 絡めた腕のぬくもりが其処に確かにあるから。翼を揺らして、くい、と腕を引いた。
「きっと、あっち!」

 夫と共に迷路を歩みながら、涼乃は周囲を見回した。時分、冷える事は仕方があるまいが、す、と暖之介の掌が涼乃の手を温める事に包み込んだ。
「冷えるがこれもまた良い。暖ちゃんの手の温かさがよくわかる」
 頷き、微笑んだ。その掌は其の侭一緒にポケットへとしまいこむ。温かさが増してくる。
 二人揃って歩き、向かうのは花畑だ。氷の花々の広がる其処に、辿りつき涼乃はは、と息を飲む。
「なんと見事な……涼しげな花畑だな。天国でもそう拝めないものだろう。休憩がてら見ていよう」
「ええ、暫く見つめていましょうか」
 頷き合って、花畑へと近づく妻の背中を暖之介は見つめる。涼乃の指先が花に触れる。触れれば壊れそうなそれにそっと指先を這わせ、嗚呼、と小さくため息を漏らす。
「持って帰れないのが惜しい位だな。見せれば子供達も喜んだだろうに」
「ええ、子供たちにも見せたい程ですが……今回は、私達だけの楽しみと致しましょう」
 想い出としてあとで語るのも良いだろう。秘密にしたっていい。綺麗なことには変わりないのだから。
「さて、そろそろ参りましょうか……その前に」
 身を屈めて涼乃へと顔を寄せる。瞬間、交わる視線が其の侭、重なった。
「……愛しているぞ」」
「私も愛してます、涼乃さん」
 小さく笑みを交わし合う。至近距離でこうやって愛を語り合える事が幸せで堪らないから。
 ずっとずっと共に居られます様に、とそう願う。
「……暖ちゃん、来年もこうしていよう……いいな? 異論は認めん」
「ええ、来年と言わず、ずっと共に。異論等あるはずもありませんよ」
 小さく微笑んで抱き締めてくるその小さな体を抱きしめ返し、永遠にこうしてられますようにとそう祈る。

「難しいのでいこうぜ!」
 フツに不安そうな表情を浮かべるあひる。ぽん、と頭を撫で大丈夫だとフツは笑った。
「万が一にでもはぐれたりしないように、ちゃんと捕まってろよ?」
「あひるの手、離しちゃだめだよ……! くっつきたいだけどか、そういうんじゃ……!」
 ちらり、あひるへと向けられたフツの視線に頬を赤く染めて腕に額をこつん、と当てた。
「そういうのです……」
「まあ、出口でパーティーやってるらしいが、中に入れば二人でいちゃいちゃできるしな!」
 ぽんぽんと頭を撫でられる。くわ、と小さく呟いて「ちゃんと、外に出られるように、頑張ろ……!」とやる気を入れ直した。
 二人そろって進む道。どちらへ行こうかと氷の壁を伝いながら傍に感じるぬくもりと共に進む。
 ぐるぐる、回っている事で疲れを感じ始めたあひるの肩がびく、と跳ねる。鳥だ。
「あひるは危ないから七面鳥の子供のひよこと一緒に見てなさい」
「あ、あひるも、鬼ごっこ逃げる! まって……!」
 フツを追いかけるのは巨大な七面鳥。あひるを追いかけるのはその子供だ。一方は白熱しているがもう一方は可愛らしい。
 次第に七面鳥もご機嫌が麗しくなったのか何故かフツと友達になっている。恐るべし徳の高さだ。
「七面鳥の背中に乗せて貰おうぜ、あひる」
「ええ……!? 七面鳥、おおきいし、なんか……こ、こわいよ……?」
 落とされないかと伺うあひるに大丈夫だと笑い掛けフツはあひるを抱え上げる。巨大な七面鳥に乗せられて、迷路を上から眺めたい。
「ずるっこだけど、いいよな」
「こんな機会、めったにないし、楽し……う、で、でも、乗り心地は……あまり良くなっ……」
 うぷ、と口を押さえるあひるに七面鳥は楽しげに体を揺らした。

 手を引いて二人で進む。何処か緊張した様なリードは道を確かめながらもちょっぴり遠回り。
「凛子さんの手、温かいッスね。周りが氷だから、そう感じるのかもッスけど」
「ふふっ、リルさんの手も温かいですよ」
 暫く進んでいくうちに、一度、リルは歩を止めた。手が離れる。一歩、距離を開けたリルの瞳が凛子と真っ直ぐに交わった。
「リル、まだちゃんと言えてなかったことあるんです」
 照れをぐ、と呑み込んだ。臆することなく、一言一言をちゃんと紡ぐ。
「凛子さんが好きッス。いちばんとかじゃなくて、特別。……凛子さんだから、好きなんス」
 その言葉がすとん、と胸の中に落ちた。
 頭の中に過ぎるのは年齢差、立場。けれどそれ以上にリル自身の事を浮かべて、自身の迷いに苦笑した。
(私が、迷う……?)
「……凛子さんにもっと好きって思って貰えるように頑張るッス」
 氷の迷宮の中で、じっと見据えるリル。嗚呼、恋の迷路の中に居るようだと凛子は思う。きっと、それはリルも同じ。迷子であることをやめたのだろう。
 惑った視線を合わせて、凛子とハッキリと見つめ合う。緊張が、胸の鼓動が、はあ、と小さく息を吐いてから「一個だけ我がままさせてほしいッス」とリルは一歩の距離を詰めた。
 踏み出して、何時も通りに抱きついた。その『何時も通り』ではない様に、踏み出したリルは其の侭背を伸ばす。視線を合わせた凛子の唇へと一度合わせてから、ゆっくりと離れた。
「……リルさん、一度だけの我儘で済むのですか?」
 背に回された凛子の掌に、リルは彼女の肩口に顔を埋めた。一歩踏み出した我儘。嗚呼、顔が火傷してしまいそうに熱いのだ。
「我儘になってもいいッスか」
 ぽつり、温かい雪が頬を撫でる。呟きをのままに、凛子はくすりと笑った。

 はらりと舞う温かな雪。
 まるで騙し絵に閉じ込められたかのような氷の迷路にて。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れさまでございました。
 メリークリスマス!楽しい一日を過ごして頂けたら幸いです。
 氷の花や温かな雪って素敵ですよね。七面鳥と鬼ごっこしたい。

 MVPは「壁という名の障害がある。ならば俺は、それを壊すのみ……」という迷路の貴公子様へ。
 凄まじい熱意を感じましたので!

 お気に召します様に。ご参加有難うございました。