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<三ツ池公園大迎撃>嗚咽の黒霞

●招集
「三ツ池公園で、また大きな動きがあるわ」
 緊急招集――。
 非常事態との知らせを受け集まったリベリスタ達へと、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は状況の説明を始めた。
「彼女の研究成果であるキマイラは、時と共にその完成度が上がり、どんどん強力なものへ進化していった。皆の中にも、一度は戦ったことのある人がいるかも知れない」
 フィクサード主流七派である『六道』の首領、六道羅刹の異母兄妹『六道の兇姫』こと六道紫杏が造り上げたエリューション生物兵器『キマイラ』。
 その強力な生物兵器であるキマイラ達が、大将である紫杏と共に三ッ池公園へと大挙して押し寄せてきたというのだ。
「三ッ池公園はケイオスの一派『楽団』の木管パートリーダー『モーゼス・“インスティゲーター”・マカライネン』の攻撃を受けたばかり。アークが警戒を強化したこのタイミングで仕掛けてくるのは、おかしいとは思うけれど」
 アシュレイからの情報によると、自信を強める彼女にはバロックナイツのモリアーティ教授の組織が援軍を派遣しているという。
 或いは競合する『ライバル』の存在が、彼女を焦らせた事もあるのかも知れない。
 ……どちらにしても、事前に感知出来たおかげで奇襲効果が殆ど無かったことは幸いだが、かといって好都合という話でも無い。紫杏の狙いは、間違いなく『閉じない穴』だろう。
 キマイラ研究向上の為、更なる野望の為にと六道紫杏は穴を使って手っ取り早く崩界度を上げるつもりでいるようだ。己が道を究める為に妥協を許さぬのは、如何にも六道らしいといったところだろうか。
 だが当然、彼女等の好きにさせる訳にはいかない。大規模な部隊を編成して『本気で攻め落とす』心算の紫杏派に、少数の警備要員のみで対抗するのは困難だ。
 結果、アークも大きな動きを余儀なくされることとなった。
 それに、懸念はそれだけではない。第一バイオリンのバレット、歌姫シアー以下『楽団員』達の動きを見れば、その目的が恐怖を撒き戦力を増強する『序曲』に当たるのは明白だ。
 今回の場合、期せずともそういう形となった先のモーゼスの下見も効いてくる。ケイオス一派が自分達に利するであろうこの現状――六道、アーク問わず『強力な死者が生まれ得る状況』を見逃す事はないだろう。
「つまり、『紫杏の一派』、『楽団』、そして迎え撃つ『方舟』。三ツ池公園には三つの勢力が集う事になる。厳しい戦いになると思う。それでも、一番良い未来を掴み取るために、皆の力を貸してちょうだい」
 イヴはそう締めくくり、リベリスタ達へと意志の籠もった視線を向けた。
 斯くして、紫杏派と教授の連合軍に先んじる形で三ツ池公園に布陣したリベリスタ達。
 敵はキマイラ、そして虎視眈々と機会を伺う『楽団』も然りである。
 何の因果か、かつてこの場所を占領したジャック・ザ・リッパー達と同じく聖夜を目前に控え、迫り来る敵の迎撃をする事となったのだった。


●嗚咽と、交差する音の影
元は、ダークナイトの革醒者がベースとなっていたのだろうと推測は出来る――。
もはや人体の型を保っておらず、黒く靄がかった巨大ななにか。
不快なノイズを響かせるその体の周囲には、常に黒い瘴気が漂っている。

そして遠くに、その姿を見つめる影。
音楽を愛する者であれば聞くに堪えないその音に眉を潜めながら、せいぜい死体の山を築いてくれよ……と心中で独りごちた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:外河家々  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年12月29日(土)23:00
こんにちは、外河家々です。
聖夜を前に、浮かれる暇もなさそうですね。
全体シナリオとなります。どうぞよろしくお願いします。

●重要な備考
『<三ツ池公園大迎撃>』はその全てのシナリオの状況により『総合的な結果』が判定されます。
 個々のシナリオの難易度、成功数、成功度によって『総合的な勝敗』が決定されます。
 予め御了承の上、御参加下さるようにお願いします。

●Danger!
 このシナリオはフェイト残量によらない死亡判定の可能性があります。
 又、このシナリオで死亡した場合『死体が楽団一派に強奪される可能性』があります。
 該当する判定を受けた場合、『その後のシナリオで敵として利用される可能性』がございますので予め御了承下さい。


●成功条件
キマイラ『嗚咽』の撃破及び戦場一帯の防衛

※フェクサード達の逃走については、作戦の成否には影響しません。楽団員の生死についても同様となります。

●エネミーデータ
E・キマイラ『嗚咽』
三メートル級の巨体で、ブロックを行うには三人の前衛が必要となります。
▼攻撃手段
・EX 嗚咽(神近域 異:[毒][出血][火炎][凍結][感電][弱体][不吉][重圧][怒り][呪い]の中からランダムで三つを付与 追:[ブレイク][呪殺])
・ペインシャウト(神遠複 溜1T 神攻: +(自ダメ値)攻撃補正最大値500)

『紫杏派』フェクサード
メタルフレーム・ホーリーメイガス×2
ジーニアス・スターサジタリー×2
ジーニアス・インヤンマスター×1
ヴァンパイア・レイザータクト×1
▼攻撃手段
遠距離主体のスキル構成となります。

●楽団
遠くのの森の影から『千里眼』を使用し様子を伺っています。
能力、配下等不明。
戦闘に介入してくる可能性なども未知数です。

●戦場
休憩所付近にて接敵することとなりますが、戦闘に支障をきたす要素は存在しません。

ではでは、皆様からのプレイングを心よりお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
斜堂・影継(BNE000955)
クリミナルスタア
神城・涼(BNE001343)
ホーリーメイガス
ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)
ホーリーメイガス
救慈 冥真(BNE002380)
クロスイージス
神谷 要(BNE002861)
マグメイガス
風見 七花(BNE003013)
クリミナルスタア
曳馬野・涼子(BNE003471)
ダークナイト
黄桜 魅零(BNE003845)


『――――――――――――――ッ!!』

 三ツ池公園の中心地からは外れた場所にあたる休憩所付近。周辺が木々で覆われたそこを、ゆっくりとした速度で横切るは禍々しい黒い巨体。
 体の回りに暗い瘴気を纏いし其れは、時折思い出したかのように陰々滅々たるノイズをまき散らす。
 その音は救いを求めるようでもあり、この世の全てを呪うかのようでもあり……『嗚咽』という名通り絶望を押し殺し、咽び鳴くかのようでもあった。

 ――その創り出された歪の進行を遮るように立ちはだかる、リベリスタ達。

「年の瀬だってのに、わざわざ大軍で攻め込んで来るとかお前等の大将は何考えてんだ? もうちょっと時勢とかをだなぁ……て、言っても詮無きことか」
 『ダブルエッジマスター』神城・涼(BNE001343)は後ろ髪をいじりながら、空気を読めよとでも言いたげな表情で溜息を吐いた。
(今この瞬間も、楽団員に見られてるのですね……)
 風見 七花(BNE003013)は周囲へと視線をやるが、その気配を感じることは出来ない。
 どこから見ているのか、この戦場に介入してくるのか……介入してくるならば、そのタイミングはいつなのか。
 いや、楽団の動きは気にかかるが今は目の前の六道と、キマイラに集中しなければ……七花はそう思い直すと、前方へと意識を戻した。
「本当に、三ツ池公園はいつになっても静かになる事が無いですね。アークの握っている拠点なので仕方がないのかもしれませんが……犠牲を払いながらもおさえた此処を、明け渡す訳には参りませんね」
 激闘の末に勝ち取った此の三ツ池公園。それを成し遂げるために散っていった命を無意味なものにしないためにも、死守してみせると『不屈』神谷 要(BNE002861)は言った。
「キマイラ六道楽団と……この公園は、相変わらず強敵揃いで楽しくなるな!」
 黒塊の背後から、『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)はこちらへ敵意を向ける六道のフェクサード達に向け威圧するかのように言い放つ。
「泣くのはすぐ終わりにしてやる。待ってろ!」
 次いで眼前の嗚咽へと、強い決意の籠もった眼光を向けた。
「三つ巴……この混沌を沈めるためにも、ルメの子守唄で静かに、安らかに眠って欲しいの……」
 生物兵器キマイラとなってしまったそれを、救い出す術はない。それならばせめて、自分達の手で安らかに――『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)も嗚咽へと、悲哀に満ちた視線を向ける
「キマイラね、犬公相手にしてた頃が懐かしい程度には厄介だな。どこまでも歪められた命と死なら尚の事――。出来損ないが……教育してやる、俺達の全てで」
 その口から吐き出される言葉こそ毒に塗れているが、『塵喰憎器』救慈 冥真(BNE002380)とてその底にあるものは、仲間達のそれと変わりがない。
「ハロー☆ 兇姫の犬ども。そのキマイラのために何人殺したか言ってみなさいよ? その分黄桜が殴ってやるから」
 不快感と軽蔑と……そして殺意を籠めた視線で、『骸』黄桜 魅零(BNE003845)は六道のフェクサード達を見据えた。
「いつもそうだ、だれかが泣いてて、拳をにぎる。敵が泣いてることも、そりゃあるだろうさ。……それで泣かせてる奴と、泣いてるだれかを利用する奴がいる。いつもどおりだね」
 本当に、うんざりするくらいにいつも通りの話。だから、それならばいつも通り……。
「……気に食わない奴を、ぶっとばす」
 『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)は剥き出しの想いと共にそう言い切ると、血のにじみ出る程に強く、その拳の中のボロボロの『単発銃』を握りしめた。



「犠牲の上に、気持ち悪い者作りやがって。お前等が命を蹂躙するなら、される覚悟はお済よね!? 楽しい惨殺ショーの始まりよ!」
 魅零から発せられたその言葉が開幕の号笛となり、リベリスタ達と紫杏派とが衝突する。
 まずは影継、冥真、要が三人がかりで嗚咽のブロックに入り、作戦通りにそのまま影継がメガクラッシュを仕掛け、ノックバックを狙う展開となった。だが相手は三メートル級の巨体、その体は重く、効果的な程には後退させることが敵わない。
 相手後列へと押し込むことは難しいと判断した影継は、すぐさま攻撃手段をハニーコムガトリングへと切り替え、嗚咽を除く敵全体を撃ち抜きダメージの蓄積を狙う作戦へと移った。
 そして涼、涼子、魅零は嗚咽の横をすり抜け、敵後列の六道フェクサード達の元へと一直線に駆け寄る。
 ルーメリア、七花は嗚咽の攻撃の届かない立ち位置、それでいて仲間達全員へと回復が届く立ち位置を模索し、最終的には六道フェクサードと対峙する三人に近い位置取りをし、それぞれ回復、遠距離攻撃を仕掛けていくこととなった。

「ルメの歌で、みんな元気を取り戻すのっ!」
 癒しをもたらす清らかな響きが、リベリスタ達の傷を回復させていく。戦いは、癒し手による回復合戦の様相となっていた。
「皆さん、しっかり!」
 要も、邪気を退ける聖なる光で仲間達へと浄化をもたらす。
 リベリスタ側は、ルーメリア、冥真が傷の回復を担当し、それでも足りなければ七花もそこに加わる。状態異常を付与された仲間達へは要が優先して解除に当たるという盤石の態勢を取っていた。
 一方の紫杏派も、二人のホーリーメイガスが聖神の息吹で回復とBS解除を担い、残りの面子が攻撃を仕掛けるという構成。
 両者共に回復、状態異常解除に厚い布陣であったため、お互い戦況を決定づけるまでには相手を圧倒出来ないまま、戦闘は長期戦の様を呈していった。

 作戦通り、六道のインヤンマスター、レイザータクトへは魅零がスケフィントンの娘で生み出す状態異常の檻へと閉じこめその行動を阻害する。
 特にインヤンマスターに対しては、檻を逃れわずかな隙で生み出した影人に対しても、影継がすぐさまハニーコムガトリングで確実にその個体を撃ち抜き、ほぼ完璧にその役割を封じることが出来ていた。
 だが六道レイザータクトに対しては、ある程度の無力化は出来ているものの、オフェンサードクトリン、ディフェンサードクトリンの攻防それぞれの強化スキルの付与を許してしまう。
 リベリスタ達の中で、付与効果を打ち消すことが出来るのは魅零だけなのだが、その魅零はインヤンマスター、レイザータクトを押さえ込む役を担っているのだ。
 結果として嗚咽、そして二人のスターサジタリーという相手側ダメージディーラー、回復役の二人のホーリーメイガスの攻防が付与効果を得た状態のまま戦闘が続くこととなり、長期戦となった今、それがじわじわと効いていた。
 さらに、回復役である冥真、ルーメリアはその合間を縫ってマナサイクルを使用しEP消費を抑えようと試みるのだが、冥真は嗚咽の咽び泣きに、ルーメリアは六道レイザータクトから投げられたフラッシュバンにかき消されてしまい、その効果を満足に受けることが出来なかった。

 ――長期戦故に、冥真や六道のホーリーメイガス達のように永久機関を持たず、天使の歌、大天使の吐息、場合によっては聖神の息吹といった消耗の激しいスキルを打ち続けていたルーメリアのEPはみるみる消費されていくこととなる。
 六道のホーリーメイガス二人は、戦闘序盤でしっかりとマナサイクルによる魔力の循環の効果を受けていたこともあり、互いの差は歴然となっていった。

『――――――――――――――ッ!!』

「何があっても嗚咽、手前は殺(すく)ってやる。ああ分かってる。お前は痛かったろうし辛かったろうから……だから死ね。ここでその生命を、終わらせてやる」
 嗚咽の咽び泣きに晒され、冥真は浴びた状態異常に顔をしかめながらも嗚咽を見据えて言い放つ。
 殺(すく)ってやるまで……、それまで絶対に自身は倒れないという決意と共に冥真は天使の歌を奏でる。
 だが、その強固な想いとは裏腹に……。このままでは、先に消耗しきるのはこちらだ――リベリスタ達の表情には、焦りの色が生まれ始めていた。



「キマイラが居なければなにも出来ない、あなた達程度の無名なフェクサードに突破されては方舟の名が廃るというものです!」
 戦況の隙を見つけ要の放ったアッパーユアハートが、二人のホーリーメイガスへと刺さった。怒りにかられた二人は、回復を放棄し要へと攻撃を仕掛ける態勢を取る。
 そして、一見戦闘中のありふれた一場面に過ぎないこの行動が――結果として大きな転機となった。
 『魔導書''Rousalka''』を手にチェインライトニングを敵全体へ撃ち込んでいた七花だったが、それに気づくとすぐさま要と視線で合図を送り合い、彼女の代わりにBS解除の役を引き受ける。
 仲間を巻き込む恐れから放つことが出来ない場面も何度かあり、涼子の暴れ大蛇による麻痺付与だけでは抑えきれなかったやっかいなホーリーメイガスの二人。それを、アッパーユアハートによる怒り付与と暴れ大蛇による麻痺付与、二重の行動封じを仕掛けることにより、かなりの部分を押さえ込むことが可能となったのだ。
 必然的に、六道フェクサード達の状態異常解除率もここまでと比べ格段に落ちる。
 相手のレイザータクトの行動が阻害されたことで、ルーメリアがマナサイクルを自付与しEP消費を抑えることが出来るようになったことも大きい。
 ここまでの場面でかなりの疲弊を強いられたリベリスタ達だが、この戦法変更によって徐々に巻き返していった。
「彼等もかなり疲弊しています、もう一息です!」
 七花は浄化の光で仲間達を包み込みながら、エネミースキャンで読み取った結果を伝える。そう、彼女の言う通り、もう一息。
「生まれ変わることが出来たら、今度はちゃんと時勢の読めるヤツになれよな!」
 一回、二回と――涼の手にした透明の短刀『泡影』が、ホーリーメイガスの一人の首筋をクロスの型に切り裂く。
 ついに、一人のホーリーメイガスが首筋から血飛沫を吹き上げ、墜ちた。
 リベリスタ達の掴んだ小さな綻び、それが戦況を大きく動かした。
 六道スターサジタリーから撃ち込まれる矢の群にも一歩たりとも怯まず、硬く、硬く。涼子は拳を握り込む。
「――くたばれ糞野郎」
 その拳を戦闘前の宣言通り気に食わない相手――六道のホーリーメイガスの顔面へと叩き込み、その命もろともぶっ飛ばした。

「まだ気付かねぇのか? アンタらの後ろで死体ドロがほくそえんでやがるぜ!」
 勢いのままに敵インヤンマスターも打倒し、影継が紫杏派へと撤退を勧告する。
「っ……!」
 忌々しげに睨み返すフェクサード達だが、彼等とて戦況がどちらに傾いているのかくらいは理解している。それでもキマイラが健在な状態だということもあり、なんとかその場に踏みとどまっていたのだが……。
 六道の四人目、インヤンマスターが倒れたところで残りの二人はついに決断し、撤退を開始した。
 リベリスタ達は残されたキマイラ、嗚咽へと向き合う。
 彼等のほとんどは満身創痍といった様相だ。回復役たるルーメリア、冥真……いや、それだけでなく、ここまでの戦いで一部の者を除きリベリスタ達のEPは尽きかけているといって良いだろう。
 その状態で尚、ペインシャウトを警戒したことによりほぼ無傷な状態の嗚咽を撃破するべく、その巨体に挑むこととなった。



『グガゴゴゴゴオオオオオオオオオッッッッ――!!』

 今まで溜め込んでいた鬱積の全てを一気に解放するかのように、周囲一体に嗚咽の絶叫が鳴り響く。
 荒れ狂う咆哮の中、要が冥真を庇い、七花がルーメリアの前へと立ちその衝撃を受け止めた。
「とんでもない威力だな……! だが倒れてる場合じゃない。そうだろ?」
 フェイトを燃やし立ち上がった涼が、バウンティショットで弾丸を撃ち込んでいく。
「最悪ね。同じダークナイトとして同情しちゃうわ。そんな姿にされて、自分が何だったのか覚えてない」
 ……それなら。それならいっそ、死んでしまえ。その方が、楽になるはずだから――!
 受けた痛みを呪いへと変え、その想いを刻み込むように魅零が魔力剣で斬りつける。
 そして――嗚咽の眼前に立ち続け、痛みを全て受け止めるかの如く全力防御でペインシャウトに耐えきった影継が、悲痛の運命に終止符を討つべく己の武器を構えた。
「待たせたな……。斜堂流、慟哭終焉断!」
 しかし、その一撃が放たれるよりも先に――。
「あぶない――!」
 木々の影から連続で放たれたインドラの矢が、周囲のリベリスタ達もろとも嗚咽を業炎の中へと包み込んだ――。



 炎に焼かれ、崩れゆく黒の巨体。そして、連続でのインドラの矢を受けギリギリで立ち続けていた複数のリベリスタ達が膝をつく。
 炎の中で彼等が火矢が飛んできた方向へと顔を向けると、そこにはホルンを持った男がこちらを伺っていた。
 黒いシャツに黒のスラックスを合わせた出で立ちで、漆黒の長髪を後頭部で括っている。そして手にするホルンまでもが、黒い。
 彼の両脇には、逃走したはずの二人のスターサジタリー。彼等はすでに温度を失っており、ネクロマンサーの忠実な駒と成り果てていた。
「ふん、労せず手駒を得るためと目を瞑っていたが……冒涜的な音をまき散らした報いだ。役目は済んだ、さっさと燃え尽きてしまうがいい」
 そう吐き捨てると、男はすぐさま黒のホルンを操り倒れていた六道フェクサードの死体を立ち上がらせる。
 ギリギリの命の遣り取りの中で、楽団対策に死体を解体する余裕などあろうはずもなく……その場にうち捨てられていた六道フェクサード達は動く屍へと変えられていった。
「此奴……!」
 軽蔑するような視線を嗚咽の残骸へと向ける楽団員に対し、影継はこみ上げてくる怒りを抑えきれない。それは彼だけでなく、他のリベリスタ達も同様だ。
「さて、どうする?」
 影継から向けられる怒りの感情を、気にする様子もなく受け流すと、男はリベリスタ達へと問いかけた。
「すでに手負いの状態とはいえ、お前達のあきらめの悪さは相当なものだと聞いている。こちらとしては、手駒を拾いに来て逆に削られるという笑えん展開は遠慮したい。お前達がこちらに危害を加えないというなら、私もこれ以上そちらに危害を加えることはしないが?」
 一方的に選択肢を突き付ける楽団の男。
「それに、正直あれの生み出す音を聞き続けたせいか今日は戦いたい気分ではないからな」
 気乗りしないから見逃してやる、とも取れる言葉を付け足した。
 悔しそうに唇を噛みしめるリベリスタ達。激情に任せ全力で打倒に動きたい――しかしここで死すれば男の手駒となり、仲間達の命を狙う道具と成り果てることとなる。その事実が、彼等をなんとか踏み止まらせる。
「私の名は『ダリオ・ダオーリオ』だ。リベリスタ達よ、またどこかの戦場で会おう」
 リベリスタ達の様子を交渉成立と受け取った男は、別れの言葉を告げて歩き出した。
 最後に一言、
「その不快なものの残骸は、お前達で片付けておいてくれ。私はそれを使役するほど、悪趣味ではないのでな」
 付け加えるようにそう言うと、男は木々の中へと消えていった。

「こんなのってないの、悲しすぎるの……」
 嗚咽だったものを見つめるルーメリアの口から漏れた言葉が、周囲に溶けるように――吸い込まれて消えた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
辛勝、といったところでしょうか。
なんとか戦地の死守は達成することが出来ました。
参加された皆様、お疲れさまでした。

また機会がありましたら、どこかで。