●たまには、だらだら。 もう幾つ寝るとクリスマス。 クリスマスといえば一大イベント。その日の為に贈り物を用意したり、自分用に買い占めたりする季節。 「もふぁーん。もふもふが……もふもふが、恋しい……」 いつもは気障ったらしくブリーフィングルームの椅子に座っている筈の『あにまるまいすたー』ハル・U・柳木(nBNE000230)の様子が今日は少し違っていた。 椅子の上で羊のぬいぐるみを抱き抱え、キャスターを蹴って部屋の中をゴロゴロしている。 見なかった事にしようと、そっと部屋を出かけたリベリス達に気付いたのか、ハルは顔を上げた。 「そんな訳で、もふもふ祭りに行くよ。皆」 なんだその唐突さ。というか説明プリーズ。 リベリスタ達の視線を受けてハルはぬいぐるみを抱え直し、はふっと幸せそうな息を吐いた。 「なんでもクリスマスに向けて、ぬいぐるみ祭りがあるらしいんだよね。リアル嗜好のぬいぐるみからマスコットぬいぐるみまでなんでもござい。簡単なアクセサリーもあるから気に入ったぬいぐるみを好きにトッピング……じゃなくて、飾り付けたりも出来るんだってさ」 そのぬいぐるみ達は見て回るだけでもきっと癒される。 写真も自由に撮って良いし、気に入ったぬいぐるみは買って帰っても良いだろう。 そもそも入り口からして聳え立つようなでっかいもふもふ三毛猫ぐるみが出迎えてくれるのである。 同じ大きさのわんこぬいぐるみも鎮座しているから、犬派にも猫派にも贔屓はない。 その二匹は非売品だが、存分にもふって登って良いそうだ。 「それともう一つ。ぬいぐるみに埋もれられるんだよ。もふっふー」 今日のハルは水面下でハイテンション。 なんでも一面のぬいぐるみ畑、ぬいぐるみプールとも言うべき特別施設があるらしい。 そのもふもふを信じて飛び込めば、きっとぬいぐるみ達がもふっと受け止めてくれるに違いない。 なんという癒し。 ハルはそうして、少しだけ子供っぽく皆に笑った。 「本物の動物達じゃないけどさ。たまにはもふーっと、羽根を伸ばしに行こうよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:琉木 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月29日(土)22:09 |
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■メイン参加者 17人■ | |||||
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●慈愛の猫様、孤高のわんこ ザ・ぬいぐるみワールドを守護するかのように、彼らは居た。 でっかいもっふり三毛猫さんに、でっかいもっふりわんこさん。 「猫……可愛い……♪」 無情表ながらアンジェリカの頬は上気する。猫は可愛い。可愛いは正義。こんなに素敵な存在を造りたもうた神様にしばし感謝を捧げて後、―――いざ猫もふタイム! 会場内に流れる音楽に合わせて歌を口ずさみ、恥ずかしながらも猫登り。ふと見れば、 「でかーい☆ もふもふ! これはちみっこに紛れてのぼるしかない!」 隣で全く恥ずかしげも無く全身全霊、全力をもって猫登りをしている男が一人。その名を終。 「男はいつまでも少年の心を忘れちゃダメ☆ ようするに高いところには登りたくなるんだよ、仕方ない。だってバカだもーん……あ、やっほー! あと写真撮って写真撮って貰っていいですか? いぇーい☆」 だぶびだぶび! 終のハイテンションは凄まじい。 はい、撮りますよーとばかりに手を振ってくれるのもぬいぐるみなこの天国。 モルモルなぬいぐるみの中は、何故か会場スタッフとして働いているアラストール。 何故こうなったのか。超スピードとか催眠術とかそんなちゃちなものじゃないがとりあえず働いているから働いている。そういう事にしておこう。 「………モルッ」 皆のイメージを壊さない為、独特の鳴き声でアラストールはシャッターを押した。しかしふと見れば、もふっもふっと断続的な音。 「おのれ! ねこめっ! ねこめっ! あたしをみておいかけるなですぅ! よだれをたらすなですぅ!」 きりっとした顔のねずみさん……ではなく、ねずみっこなビーストハーフのマリルが日頃の鬱憤を三毛猫さんにぶつけていた。 「にゅっふっふ! まいったかぁ! ……にゅっ、もふもふ攻撃とは敵ながらやるのですぅ!」 おお神よ。こんな素敵な存在に拳を向けるなんて……と、思わず猫の上から見つめるアンジェリカだが、もっふもっふとその攻撃をはじき返す三毛猫さんは、その攻撃と鬱憤を全て受け止める。それはまるで慈愛の聖母のようだった―――かもしれない。 アラストールも叱らずそっと見守っておく事にしておいた。 一方、わんこさんは一匹ぽつねんと――― 「ураааааааа!!!!」 してなかった。こっちもこっちでめっちゃたかられていた。 「デカァァァァァいッ!? まさに説明不要の愛くるしさだな……!! 我が同胞たる犬よ!」 ベルカは耳をピンと立てて駆け登る。そして嬉々として宣言した。 「てっぺんとったど―――!!」 高い所大好きベルカ。 登られたわんこぐるみもまた、まるで共に野を駆け回る仲間のようにキリっとした顔をしているように見えた。気がした。 ●あっちでもきゅ、こっちでもふんっ きょろきょろと辺りを見渡す木蓮の手には大きな鞄。 自分の見せでもぬいぐるみは多く取り扱う為、後学の為に参加! ……と言いたい所だが、半分は木蓮の趣味。 辺り一面のぬいぐるみに、思わずうおおおと声が出る。 「マジ色んなのがあるなぁ。さて何を買おう……この狼のぬいぐるみは龍治に似てるかも!!」 見渡した木蓮が見つけたのは狼ぬいぐるみ。その姿は唯一無二の恋人そっくりで、眼帯を付けたらきっとそっくりに思えてならず。 その内心が唯漏れていたのか店員さんが声をかけ、示された先を見れば―― 「え……別売りである!? じゃあ1つお願いしますだぜ! うおお、こっちのはこないだ会ったボス狼に似てるかも!」 ガタガタとアクセサリー売り場からぬいぐるみ売り場を駆け巡る木蓮。 狼ぐるみに眼帯を付ければ、今度は真っ黒狼もお買い上げ。それはいつしか出会った異なる世界の狼さんにそっくり似ていて、思わず撫でる。 そのぬいぐるみに、再会を夢見ながら、木蓮の鞄はぬいぐるみでいっぱいに膨らんでいった。 「あ、これお願いします」 そういって弥千代が会計に差し出したのは、落ち着いた茶のテディ・ベア。 ごってり白いフリルやらレースやらついたのをなんとなく着せて、橙色のリボンを首に巻いて。弥千代の姿は10歳の男の子。ご自分用ですかと聞かれるのも無理は無い。 「……いや、自分用じゃねェから。女の子にやるんだよ」 そう言われれば次に聞かれるのは「彼女用ですか?」というお言葉。 「いや彼女でもねェから」 贈る先は弥千代の姪っ子。遺伝子どこいったと思う程に大人しい良い子である。 甘ロリとかいうのが好きらしい姪っ子に似せたテディ・ベアを可愛らしくラッピングされた袋を弥千代は大事に受け取った。 そんな彼らの横を、羽音と雷慈慟が歩いて行く。 「いろいろあって、可愛いね」 にっこり笑う羽音に、雷慈慟はぎこちなく「ああ」とか「えぇと」とか口籠もり、出た言葉が 「楽しみが 良く解った 事情だ」 「………雷慈慟?」 意味を為さない羅列であった。はたと気付いた雷慈慟。 ――迂闊! 女性をエスコートしたことが無かったんだ……! カチンと硬直してしまった雷慈慟に羽音は大丈夫と声をかける。 「エスコートとか、難しく考えなくていいよ? 面白いなぁ。雷慈慟は、どんな動物が好き? あと……どんな女性が好き?」 柔らかく問われる言葉に続いて、こっそり好みの女性も質問が混じる。 「分け隔て無いが、……そうだな、猛禽だ。女性は……やはり動物と共にある事が出来、そして慈しみがあるような……」 「そっか」 その言葉を羽音はこっそり覚えておく。友達の雷慈慟に良い子が居たら紹介してあげようとそう思い、「あ」と見つけたのは赤い毛と赤目の猫ぐるみ。 その子は婚約者に、似てるかもと、そう思えばほわりと笑って胸に抱く。 「雷慈慟はお気に入りの子、見つかった?」 「そうだな……コレか。シベリアンハスキー」 雷慈慟が手に持ったシベリアンハスキーに、羽音は雷慈慟が好きだという夜明けに見える鮮やかな焼け色のリボンを飾り付ける。プリティに着飾られたシベリアンハスキーのぬいぐるみは、自分を迎え入れる雷慈慟の事をじっと見ているようだった。 ●百の獣のひと団欒 「今日はみんなで買い物でござる! 家族で買い物なんて久々でござるなー!」 「なー、どうしても来たかったんだもんよ。クリスマス前だし、うちの可愛い妹にぬいぐるみでもプレゼント!」 ぬいぐるみ会場に一際朗らかな集団の声。虎鐵に夏栖斗。 「虎鐵も夏栖斗も大人しくしろ、恥ずかしい」 そして二人に見守られる少女、雷音の姿。 夏栖斗がどうしてもというから仕方なく。女の子だからといってぬいぐるみが好きなどと勘違いされたくないと思っている雷音の姿も、夏栖斗からしてみれば可愛いもの。 抱き付きたいのを我慢しているんだときっと思う。 「おーい、夏栖斗、虎鐵。雷音ちゃんじゃん。俺も混ぜてよ」 そこにひらりと加わる快の姿。早速快は夏栖斗に耳打ちする。 「雷音ちゃんへのプレゼントなんだろ? 俺にも一枚噛ませろよ」 おっけと頷く夏栖斗が見れば、雷音はじっとくたくた素材のライオンぬいぐるみを見つめているのに気がついた。 「これかわいくね?」 夏栖斗が笑えば、快も調子を合わせてにっと笑う。 「夏栖斗にしちゃあ目の付け所がいいんじゃないか?雷音ちゃんに似合うと思うよ」 「………」 じっと押し黙ってる雷音に、今度は虎鐵が走ってきた。 「雷音! 雷音!! 拙者!!! プレゼントを買ってきたでござるよ!!!!」 渡されたのは可愛らしい白虎のぬいぐるみ。 その隙にとばかりに夏栖斗と快はさっきのライオンぬいぐるみを買いに走り、振り返った雷音にプレゼント。 「ほら、見てただろ? 早めのクリスマスプレゼント」 言えば快が小さく笑う。 「俺たちからのプレゼント、だな。夏栖斗一人に良い格好はさせないぜ?」 相棒の夏栖斗の妹であるなら、快にとっても妹みたいに思えてくる。だから二人からのプレゼントとくたくたライオンは手渡されて、少し押し黙った後で雷音はぎゅっとぬいぐるみ達を抱き締める。 「せ、せっかくのぬいぐるみだしな、捨て置くのも悪いからもらってやるのだ、ありがたく思え。……おとしてはだめだからな! 誤解しないように!」 取り繕うように慌てて言う言葉も、 「雷音が受け取ってくれたでござるぅぅぅ!!」 可愛い白虎のぬいぐるみも一緒に抱っこされて、目から涙がだばぁの虎鐵の勢いにかき消される。 夏栖斗も快も、雷音に兄と言ってくれているその姿に虎鐵はぐすんとやっぱり鼻を啜り。 (雷音も少しこれで元気になればいいでござるな……) ぬいぐるみを抱き締めるその背を見守っていれば、三人の携帯が一斉に着信を告げた。 その内容は強がりながらぬいぐるみを抱き締める彼女からのもの。 その文面に三人は一斉に顔を綻ばす。その文面は。 ―――とても嬉しかったです。ありがとうございます。 ●溺れる為のもふもふ畑 さて広がるのは、ぬいぐるみ畑のエリア。 テテロ姉妹はうずうずとぬいぐるみ畑を見つめていた。 「ミミルノもたっくさんぬいぐるみとかきぐるみもってるけど、ここはもっとすごいっ!!」 きららっと瞳を輝かせれば、隣のミーノはぺかっと目を瞬いた。 「そこっ!」 ミーノのますたーふぁいヴのちからで5かんをそーどーいん。 「よおし、ダ―――イブ!!」 「もふぁああ!?」 ミーノが示した場所にミミルノが飛び込めば、草むらから飛び出してくる何かのようにぽこんと飛び出るフォーチュナ、ハル。 「およぐ! ころがる! とびこむ! もぐる!!」 「もふぁーん!」 一瞬見えた気がするが、ミミルノがぬくぬくもこもこごろごろするものだから、また見えなくなってしまった。そしてミミルノも埋もれてしまう。そんなぬいぐるみ畑。 「ミミルノはしゃぎすぎっ!?」 ミーノが再び5かんをそーどーいん。 ぬいぐるみをかき分けてみるとそこのミミルノはもうすぅすぅと寝息を立てていた。ハルにぽんぽんと頭を撫でられているその姿を見て、しぃっと言われれば、ミーノも段々眠くなる。 「ぉょ~でもこれだけぬくぬくもこもこのぬいぐるみにかこまれてると………すぅ」 かくんとミーノも夢の中。 その場をこっそり抜け出して、再びぬいぐるみに埋もれようとしたハルの目の前に現れるドヤ顔が一つ。 「俺のほうがもふもふしてるもんねー!」 「なっ!?」 がんっと衝撃を受けるハル。 竜一ぼっち。でももふもふ。癒されに来た一人の戦士。 「そう、俺たちは、埋もれに来たんだ……この安らぎの海にな……」 すっと囁くように呟くと、もふもふむぎゅっとぬいぐるみを抱き締めた。「嗚呼、」と頷くハルはその気持ちをとってもよく理解して、同士よと手を握る。 ぬいぐるみって素敵。ぬくもりが無いのが難点だが、竜一の中のいろいろなイヤな事が癒されていく。 もふもふも………ぐぅ、と。竜一もやっぱり夢の中へ。 その手には子ペンギンがしっかり抱かれていて、きっと竜一と一緒のおうちに迎えられる事だろう。 一方、眠気に絆されずにごろごろとぬいぐるみの中を泳ぎ回っている姿もあった。 そあらは思い出していた。 昔、デパートの遊園地にあった、ボールがいっぱい入ったプールに飛び込むコーナー。ママが駄目、我慢しなさいっていうから願いが叶わないまま大人になってしまったのだが、今は誰も駄目って言わない。 しかもボールじゃ無くてぬいぐるみ。もう大満足! ―――なのだが。 「でもやっぱり埋もれるならさおりんの愛に埋もれたいのです。やだ恥ずかしいっ」 ごろんごろんすればぬいぐるみの中はいつにも増して気持ちよい。―――でも。 「この気持ちよさをさおりんと共有したいのです。さおりんと共有……やだ恥ずかしいっ!」 そあらのごろごろは止まらない。時間が許す限りごろごろと。 きっと幸せ訪れるクリスマス。 これからも、それからも、幸せの雪が皆に積もります様に―――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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