●死からの生還 「かな、ケーキできたわよ。食べましょう?」 「うん」 「いい天気だし、食べたらお父さんとちょっと庭に出るか?」 「……うん」 ぎこちなくも頷く娘に、父母は顔を見合わせそれでも笑む。 一週間ほど前に事故に遭った娘がソファに座っている、それが何よりも幸せだった。 例え少々感情表現が希薄になったとして、受け答えに元気がなくなったとして、それがどうしたというのか。 『一度死んだ』のだから、その程度は仕方ない。 それに『彼』も言っていた、しばらくは少々不自然だと。 段々と戻っていく過程なのだから、ゆっくり見守ろう。 「な、可奈子、犬欲しいって言ってたよな。ずっと家にいるばかりだし、今度仔犬を知り合いから貰ってくるよ」 「そうね、遊び相手はいた方がいいものね」 微笑んで会話する夫婦のそれは、まるで病後の子供を気遣うようでもあった。 いや、彼らにとっては全く同様なのだろう。 今の元気のない状態は仮のもので、すぐに良くなるのだと。 共に歩んで、また元の生活に戻るのだと、信じているそれ。 彼らにとって、娘はもう『死んだ』ものではないのだ。 今となっては、『死にそうになった』のと同義になっている。 何故なら娘は、父の隣で母の作ったケーキを食べているのだから。 だから彼らは気付かない。 娘が生き返ったのではなく、『動く死体』になっただけだと、気付かない。 気付けない。 ●二度目の死神 『貴方の大事な人、生き返らせます』 ぱさり。 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が机の上に放ったのは、そんな一枚のチラシ。 訝しげに見詰めたリベリスタ達に、伸暁は鼻で笑ってチラシを指差した。 「胡散臭いだろ? だけど藁にも縋る人間ってのは、そんなのにもコールしちまうみたいだな」 親指と小指を立てて耳元で振る。電話のジェスチャー。 「彼女は交通事故で一週間前に命を落とした。大事な大事な一人娘、両親は嘆いても嘆き切れない。 そんな時に天啓のチラシが舞い降りた。実際はカミサマじゃなくて悪魔の囁きだったんだけどな」 映し出されたのは、広いリビングと中央のソファに座る親子。 一般基準より少々裕福であろう以外は、特に変哲もない家族団欒の風景。 「何もないように見えるか? ノーノー、お前らなら分かるはずだ。 フィクサードによってエリューション化された死体。リビングデッド。 生き返りなんて悪いジョーク、彼らの娘は眠る事も許されず、化け物に、生ける死体に変えられたのさ」 伸暁はその中の一人を見詰める。 小学校低学年程度であろう少女は、父母の問いに合わせて小さく首を縦に振っている。 この少女がエリューションだとしたら――倒す相手は、彼女しかいない。 顔を向けたリベリスタに、伸暁はゆっくり頷いた。 「両親は滅多な事がなければ子供の傍から離れない。父親もここ数日は仕事を休んで付きっ切りだ。 愛情を注げば元に戻る、ってフィクサードの言葉を信じてな」 忌々しげな響きを帯びた言葉を吐き出し、青年は状況説明を続ける。 「攻撃方法は単純に殴ったり噛み付いたりだ。とは言えエリューションだからな、普通の子供がじゃれるみたいに思ってるとあっという間にノされるぜ。 後は……『ポルターガイスト』とでも言うべきか。家なら家具、庭ならガーデニンググッズや石、レンガに低木を叩き付けてくる。規則性がないだけに避けるのは難しいかもな。何処からか飛んでくるものだから、一応言っとくが事前に掃除とかはナンセンスだ」 ま、でもお前らなら何とかしてくれるんだろう?と伸暁は笑う。 「眠りについたお姫様を叩き起こした劇的に野暮な野郎を殴る準備は他でしている。 だからお前らは、もう一度。彼女を眠らせて来い」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:黒歌鳥 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月22日(水)23:37 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●夕暮れ時の魔 日の光が朝の眩さとは違う穏やかさを帯び始める刻限。 「こんにちは」 「あら、こんにち……は?」 家の門扉に手を掛けた所で、見覚えのない青年、『fib or grief』坂本 ミカサ(BNE000314)に声をかけられ、笹井晶子は首を傾げる。 彼の後ろには、大半が二十歳前後と思われる集団が続いていた。学生の集まりと言うには幅が広すぎるが、会社やそれに類する組織にしては若い者が多すぎる。 礼儀正しく一礼し、ミカサは訝しげな視線を流した。 「突然失礼します。笹井さんのお宅ですね?」 「子供の事で、少し話しておきたい事が」 一歩進み出た『通りすがりの女子大生』レナーテ・イーゲル・廻間(BNE001523)がミカサの横に並んだ。 子供、の単語に母の顔色が変わったのを見て、『チクタクマン』中・裕仁(BNE002387) が微かに目を細める。なるほど彼らの愛は本物かも知れない。だが方法を大きく誤った。誤った事を知らない彼らは、果たしてどんな反応をするのか。この先の彼女の反応で、リベリスタ達の取る行動は大きく変わるのだ。 「な、何か?」 「先日来た男に関して、ご両親にお伝えしたい事項があります」 「多分、蘇生させた人が伝えていないと思う事を」 続いた言葉に晶子が動揺しているのが『Not A Hero』付喪 モノマ(BNE001658)にも伝わって来る。フィクサードに蘇生の事は口外しない様にでも伝えられていたのか、彼女は酷く惑った様子で視線を彷徨わせるだけであった。それが蘇生ではないのを知っているのは、フィクサードとリベリスタのみ。 心情も多少理解できる。大切な者を失うのは殆どの者にとって辛い出来事。零れてしまった命に嘆く事しかできないのは辛い。だが、それは全て生者の都合だ。辛さを飲み込み、或いは飲み込まれて生きるしか方法はない。 ――もしくは死者の列に連なるか。 『毒絶彼女』源兵島 こじり(BNE000630)は些か冷めた瞳で三人の会話を見詰めている。 リベリスタも含め、ここに在る命はいずれ終わるもの。最終地点は誰も彼も皆同じ。生き返らせてもいずれ死ぬ。終わりあるから命なのだ。そこには救いも奇跡もない。死は公平で無慈悲だ。死『神』を気取るつもりはない。いずれ終わる命の一つとして、もう終わった命を正しい場所に戻しにきた。それだけだ。 黙ったままの『白夜光』クラッド・ベルクシュタイン(BNE001395)とてそれは同じ。思うところなどない。躊躇なく速やかに。 「宜しければ、ご主人も含めてお話をさせて頂きたいのですが」 丁寧な口調は崩さぬままのミカサに引く気配がないのを見て、晶子は目を伏せた。 『まめつぶヴァンプ』レン・カークランド(BNE002194)は微かな悼みを伴った目でそれを見ている。 ほんの僅かな沈黙の後、この人数を家の前に並べておくのも不自然だと思ったのだろうか、晶子は小さく頷いて扉を開けた。『みす・いーたー』心刃 シキ(BNE001730)が、電柱の影でひっそりと他の一般人を寄せ付けないよう結界を張っていた事など、彼女は知るよしもない。 そう、神秘など彼女は、彼女らは知らない。 だからこそ、彼女らにとって『奇跡の業』である娘の蘇生に関して語る相手を無碍に扱えなかった。そしてまた、チラシに半信半疑ながらも電話をし――生き返りを信じた彼らは、人の良いほうであったのだろう。 リベリスタは拍子抜けする程あっさりと、家の中へと招かれた。 ●動く死体は居間にいる リベリスタを廊下に置いて、母親はリビングと思われる部屋へと入っていく。 「とりあえずこっちに入って頂いたらどうだ?」 聞こえてきた、不安はあるが疑いはない父親の言葉にシキは顎に手を当てた。フィクサードへの印象は悪くなかったらしい。少なくとも、彼らに話を通し『生き返し』を行った者の態度が恐怖や怒りを煽り、脅すようなものであったならば彼らとてここまで『普通』の対応はとらなかったであろう。 それはある意味感謝すべき事でもあり、フィクサードが己に不都合な事は何も言っていなかったという証左でもある。本当の奇跡のように、何一つ悪い事などなく、幸福だけが帰って来るかの様にそのフィクサードは偽った。両親は偽りだと知らず、信じたい事を疑いなく受け入れたのだろう。程なくリベリスタは、不安げな色を残した母親が開いた扉の先、リビングへと通される。 「――それで、お話と言うのは?」 父親はミカサを筆頭に入って来た人数に少し驚いた様子であったが、広い部屋の中心、やや奥に置かれたソファから立ち上がり、寄ってくる。 その肩越しに、ソファに座った十歳程度の女児が足を揺らしているのが見えた。父親と共に、ソファに座っていたのだろう。ここまで穏便には進んだが、まだ娘と両親の距離が近い、と裕仁が目を細める。割り込むタイミングを見計らわねばならない。すぐに、穏便なだけでは済まなくなる。 「娘さんには、できれば聞かせたくないので……」 レナーテが口実を紡ぐ中、娘はするりと立ち上がった。 先程のこじりよりも冷めた目で、リベリスタ達を見詰めながら。 気配を察したミカサが母親の腕を引いて己の背後に庇い、レンが父親に足を掛けて引き倒した。 ミシリ。 家鳴り。 瞬きの間に、リビングの花瓶が、小物入れが、グラスが置物がガラステーブルがソファが渦を巻くように蠢き、リベリスタへと来襲する。 ある者は得物でそれを打ち払い、ある者はテーブルの直撃を受けて軽く呻く。 父と母は、何が起こったのか全く分からない様子で、声も上げずにぽかんとしていた。 騒乱の中心となった娘は、笑いもせず、怒りも恐怖も見せてはいない。異常があるとすれば、余りに何もない、感情が抜け落ちた目だろうか。 「なるほど」 クラッドが呟いた。己の信条に基づく勘。ある程度は楽しめそうだという予感。アンデッドは、リベリスタを敵性の物だと判断し、容赦なく初撃を加えて来た。 「良くできた人形だ。……壊したくなる、ね」 「なら、さっさと済ませましょう。殺る気はあっちも充分みたいだし」 こじりが手に持っていたそれ、現代日本では見る機会が少ない銃器に、初めて両親の顔がぎょっとしたものに変わった。動こうとした母親の腕をミカサは強く握り直し、レンもまた父親を押さえつける。彼らが娘を守るのを防ぐ為でもあり、娘から彼らを守る為。相手が細い青年と小柄な少年とは言え、一般人である彼らが、この世界の理を超えたリベリスタに敵うはずもない。 前に躍り出たモノマが、両親に一瞥を向ける。 「死んだ奴を勝手に甦らせたってさ。蘇った方も蘇らせた方もロクな事にならねぇんじゃねぇかな」 「ねえ、本当に何も疑問に思わなかった?」 シールドを構えたレナーテが問う。父母は、この異常事態に理解が付いていっていない様子だった。娘に感じた微かな違和感を、振り返るだけの余裕があるかどうか。 それに気付いたミカサは噛んで含める様に、彼らが知らない真実を口にした。 「――娘さんはもう、人じゃない。『生き返り』なんて存在しないよ。あれは娘さんの姿をした化け物だ」 「な」 「そんなはずは……!」 狼狽する両親を背に、シキが駆けた。長い袖に覆われた両腕を振り、娘をその場へ縛り付けるべく気糸を張り詰める。語る言葉は仲間が持っている。 「簡単に壊れてくれるなよ」 捕らえるには足りなかった糸の合間から、クラッドの黒いオーラが伸びた。漆黒の破滅。頭部を強かに打ったそれに、小柄な体は揺らぐ。倒れはしない。 「『時よ止まれ、お前は美しい』だけど、時は止まらない」 魂を奪うメフィストフェレスも、救済となる神の声もここにはない。瞬間は永劫にはならず、瞬間のまま。至近距離で放たれたこじりの輝弾は細い腕の一部を吹き飛ばす。 「さあ時間だよ。良い子はそろそろ眠る時間だ」 こんな状況でなければ、いっそ優しげにも聞こえる裕仁の口調。しかし放たれる銃弾は明確に器官の破壊と行動の阻害を意図したものであり、そこに躊躇や情けは一切含まれていない。母の悲鳴も、父が伸ばす腕も、妨げにさえならなければ彼には考慮外だ。 「死体はもう一度、殺させて貰うぜ」 炎を纏ったモノマの拳が、灰となる事も許されなかった少女の体を焼いた。 ●生きる為に死体は動く 「かな!」 二名を両親の保護に割いているとはいえ、数の利は明らかにリベリスタにあった。猛攻に血を流す娘の姿に、母は悲鳴のように名前を呼ぶ。そこで初めて、可奈子は思い出したかのように母に目を向けた。 「――かなはねぇ、『生きて』ないといけないんだ」 元気の良さそうな外見とは裏腹の淡々とした言葉は、リベリスタ達が初めて聞いた可奈子の自発的なもの。 彼女は生存を第一とする本能に従っている。いや、生きていないと『いけない』という言葉を受け取れば、それは恐らくフィクサードによって刷り込まれた志向性なのだろう。『生きる』というよりは『存在し続ける』事が最優先。己を保護してくれる者は存在の為には有用だが、非常事態であった場合は切り捨てもやむなし。確かにフィクサードは両親の『娘が生きていて欲しい』という願いを叶えたと言えよう。そこに最早家族の情愛はないとしても。 「あなた達は邪魔するんでしょ? じゃあ死んで」 色の薄い唇から放たれた発言の異様さに両親が息を呑んだのを見て、レナーテは改めて聞いた。 「ちゃんと見て。あれは、あなたたちの娘?」 「あ、れは……可奈子だ」 「そう思いたいだけじゃなくて? 命はそんな容易く奪い返せる物じゃないよ」 睨みつける父親に、ミカサは憤るでもなく変わらぬ様子で返す。納得しないならば見ていればいい。真実はそこに在る。例え理解したくない事実であっても、結局は彼ら自身が招いた事。逆に、彼らではどうしようもなかった出来事がそこに転がっているだけでもある。娘の死、という純然たる事実が。 「優しい過去は裏切らないからね。浸りたいのは分かる」 壁に背を向け、視界外からの物品の飛来を極力避けた裕仁は少女の足の甲を穿つ。機動力は多少落ちていたが、四方八方から飛んでくる家具ばかりはどうしようもない。攻撃に加わっていない分、ミカサとレンは些か冷静にその軌道を見切ることができた。しかし両親を抑えていては避ける事もできない。ぱたりと胸に落ちた温かいものに父親が顔を上げれば、それはレンの額から顎を伝って滴った血液であった。 「……見ておけ。自分達がしたことと、今の娘の姿を」 自分の上で、家具をその身受け、時には弾いた少年が言い放った言葉に、父は首を向けた。視線の先では指先を異様な色に変えて、娘がダンスを踊るようにくるりと回る。ただ、その挙動は早く鋭い。前に立つ戦士達から、血飛沫が舞った。 「まだ死なないの。邪魔なの。死んで」 生ける死体は、そう生者に呟き続ける。自分が『生きる』為に。 人を離れた動きをする娘を、一撃に耐えるリベリスタを、両親が呆然と見詰める間にも戦況は目まぐるしく変わっていく。状況と敵の特性を考えると短期戦となる、と踏んだ彼らの一撃に迷いはなく、視界が揺らぐ前にレナーテが世界に呼びかけ加護を請う。シキは無言で娘の動きを止める事に尽力し、裕仁が早さを削いだ所にクラッドの黒いオーラが畳み掛ける。 家族の団欒の空気で満ちていたであろうリビングが、現在は血と暴力で彩られていた。 「ぶちぬけぇぇぇ!!」 モノマの叫びと共に放たれた拳から移った炎は、焼けた皮膚を炭化させた。 かしいだように見えた可奈子の体は、まだ倒れず家具の嵐を引き起こす。 可奈子に一撃を加えようとしていたこじりは、傍らのクラッドに砕けたガラステーブルの破片が迫っているのを見て細い両手で突き飛ばした。距離的に避けきれない、と少ない余力で持ち堪える気であったクラッドが、一瞬拍子抜けしたような顔をする。 「……は、面白くなってきた所だというのに」 「そう。じゃあこれ以上の手間は掛けさせないで」 手間と言いつつ庇うのが照れ隠しなのか素なのかは判別が付かないが、肩を竦めるこじりとて、仕草ほど傷は軽くない。木片が彼女の肩へと幾つも刺さっていた。 だが、可奈子の傷はそれ以上。 さながら映画のワンシーンの如く、炎にまかれ少女はゆっくり床へと倒れた。 ●死ぬから生きる ミカサが手を緩め、自由になった体で、母が走る。 「かなぁ!」 違うものへと変貌していたとしても、『それ』を呼ぶ名を彼女は他に知らない。 あちこちが吹き飛び、炭化した骸を抱き締めた。もう動かない。二度目の偽りの命が途絶えた事を、リベリスタ達は確認した。 「……まあ、悪趣味でしたが思いの外楽しめましたね」 掌を数度握り開き、呟いたクラッドは呆然と妻子を見詰める父親の横を抜ける。木片をうっとおしげに払ったこじりも同様。彼らは己が掛ける言葉を持たない事を自覚している。 嗚咽が響く中、裕仁が口を開いた。 「娘に注いだあなた方の愛情は貴い。だが無意味だ。彼女は死んだ。あなた達が愛情の注ぎ方を間違ったせいで、彼女は二度も『死』の苦しみを味わう羽目になった」 それは弾劾でも責罰でもない。ある事実を淡々と述べただけだ。父親の顔が歪む。 母親の泣き声が、一層酷くなった。 が。 「――いい加減にしろよ、お前らはまだ生きてんだろ! そんな姿見て死んだ娘が笑えんのか!?」 拳を握ったモノマが叫んだ。 びくりと、肩が跳ねる。 「……お前達がそんなだと、愛した娘は眠れないだろう」 それこそ、息子と行っても通じそうな年のレンが静かに言う。許してはいけない禁忌。それを踏み越えてしまった程の愛情。それは真っ当な精神であったものならば、死して尚胸を痛めることであろう。 「親ならば、ちゃんと子供の現状を見てあげて。それが辛い事実だとしても」 レナーテの告げる事実は娘の死。既に一度訪れていたそれから、彼らは逃れたつもりだった。だからこそ、今、それを認識して欲しい。 「……弔いは死者の為じゃない。あなた達の為」 生者が死者への思いを整えて、時間によって心を癒し生きて行く為の儀式。 弔いは一瞬ではない。向き合う時間は人それぞれ。偽りの命で伸びた時で記憶を塗り替えてしまえば、本当の思い出さえも失ってしまう。 「自責や憎しみに浸るのは自由だけど、娘を思って、その死を忘れないで受け入れて生きるのも償いじゃないの。まあ、娘を殺しに来た奴の戯言だよ」 後はあなた達が考える事だ。 ミカサに大事な者を失った人間がどう振舞うべきかは分からない。だから後は判断を託すだけ。正しい事などきっとない。 歩き出したリベリスタ達に、できる事は最早ない。二人は静かに涙を流し黙り込むだけで、反撃や通報の意志はない様子だった。 果たして彼らは何を選ぶのか。 振り返った裕仁の視界、ぼんやりと座り込む両親に、答えはまだ出ないようだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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