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魔導書惨殺カーニバル


 街の外れ。
 生活圏から僅かに離れた場所に建つ、一軒の家。
 家人はすでにおらず外装は見るも無惨なボロボロの状態で、屋内も埃や蜘蛛の巣に侵蝕され、荒れ果ててしまっている。
 だが、家具などの生活品は今も残されたまま。

 近隣の住民は言う。
『あそこには占いの好きな女が、1人で住んでいた』
『占いが好きでも、当たった事はなかった』
『5年ほど前に、女の姿が消えた』
 ――と。

 その背景には、何らかの事件性もあるのかもしれない。
 だが真相はすでに闇の中、住んでいた女がどうなったのか、誰も知る者はいない。
 そして薄気味悪さを漂わせる家は、誰も近寄らなくなり――ただ朽ち果てていくのみの存在となった。

「相当前に住んでた女がいなくなったって話だが……本当に家具なんかそのままなんだな」
「電気は通ってないようだけど、溜まり場にするなら良いんじゃね?」
 日が暮れた頃、この家に侵入した数人の少年達。
 どうやらここを遊び場にしようと考えたらしく、彼等にとっては放置されたこの家は絶好の場所に思えたのだろう。
「問題は夕方からしか使えないって事かな。かったりぃけど学校あるしなぁ」
「まぁ良いだろ、ランプとか持ち寄れば夜でも明るいのは明るいしよ?」
 家の中がどうなっているかを調べながら、彼等の会話はだんだんと弾んでいく。
 どうせ誰も住んでいないのだから、バレない限り誰かに怒られる事もない。必要なものさえ持ち寄れば、ここで好きに時間をつぶす事が出来る。
 その期待が胸の中で膨らんでいるせいか、彼等の足取りはとても軽かった。

 少年の1人が、書斎の扉を開けるまでは。

『うわぁぁぁぁぁっ!?』
 家の中に響く、仲間の悲鳴。
「な、なんだ?」
「奥のほうから聞こえたぜ……行こう」
 高まっていた期待が一瞬で不安へと変化し、少年達は仲間の悲鳴が聞こえた方へと進む。
「書斎、か?」
 道中の部屋を軽く調べながら、彼等が最後に辿り着いたのは書斎だった。
 入り口から照らすだけでも、部屋の四隅に本がぎっしり詰め込まれた本棚が見えた事が、ここが書斎である事を知らせている。

 グチャリ……パキ……。

 続いて耳に届く、何かが噛み砕かれるような音。
 光を照らしたその先に見えたのは、ページを刃に変えた本に喰らい尽くされる仲間の姿。
「ひ、ぃっ!?」
「何だよこれっ!?」
 ここで何も考えずに一目散に逃げ出していれば、彼等の内の誰かは生きて家を出る事が出来たかもしれない。
 しかし一瞬でもその光景に目を留め、足が止まった事。それが彼等の命運を分けた。

『氷雨』
『雷撃』
『斬殺』

 ふわふわと空中に浮いた本が指し示したのは、彼等の未来――。


「エリューションになってしまえば、本ですら凶悪になってしまいますね」
 集まったリベリスタ達に、『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は感じたことをそのまま素直に口にした。
 家の中でエリューション化した本は、全部で3冊。
 どれもフェーズ2になっており、火をつけても燃える事はない。
「家は普通の一軒家で、周囲に人家もなく人の気配はないと考えてください。ですがこの一軒家という事に問題があります」
 そこで和泉がそう問題だと伝えるのには、やはり理由があった。
 エリューションが巣食う書斎は狭く、3人から4人が中で戦うのが精一杯で、大きな武器を振り回して戦う事も難しい戦場なのである。
「別の部屋なら、そこまで狭くもないのですが……何しろ、本のエリューションであるせいか、すごく素早いのですよね」
 なんとか書斎から引っ張り出し、別の部屋まで誘導する事が出来れば、武器の制限は変わらずとも全員で戦う事はできるはずだ。
 しかし本のエリューションであるために身軽であり、かつすばしっこくもあるため、引っ張り出す時には最後尾にいる者が食いつかれる可能性も高いと告げる和泉。
 そしてそれ程までに素早いのだから、攻撃を当てるだけでも一苦労となるだろう。
「どの攻撃が来るかは、開かれたページによってすぐに分かります。開いたページの文字通りの攻撃を行いますから」
 と和泉はいうが、それに対して何らかの対策を打つ為には、本がページを開いてから攻撃に転ずる僅かの時間に割り込まなければならない。
 少年達が襲われるのは少し先の未来であるらしく、人の目を気にしたり、誰かを救出する必要がない事だけが幸いか。
 それでも生半可な気持ちや作戦で戦いに臨めば、いかなリベリスタと言えども敗北する可能性も高い。
「多少の危険はありますが、有利な戦場に持ち込むか。それとも、4人ずつ書斎に入って戦うか。それは、皆さんで決めてくださいね」
 まず重要なのは、戦場の選択。
 それを選んだ上で、どう戦うか。それは、戦場に赴くリベリスタ次第だ。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:雪乃静流  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年12月22日(土)22:54
雪乃です。
本がエリューションとなったら、まぁ大概はこうなるのではないかと思います。

成功条件:エリューションの撃破

戦場は4人が中に入って戦う事の出来る書斎、もしくは8人で戦う事が可能な別室の二択。
ただし後者を選択した場合はエリューションを引っ張る必要があり、下手をすれば回り込まれて逃げ場を失う、分断される等の可能性があります。
広さは書斎が5m四方、別室が15m四方となっています。


エリューション詳細
魔導書×3
赤、青、黒の書があり、速度と回避に特に優れ、能力は全て同じです。
本が変化したせいか空中を漂い移動し、ブロックは無効。
ただし別室を戦場に選択した場合は、通路やドア付近などの狭い場所に限り、エリューション側だけはリベリスタの移動の阻害が可能です。

氷雨:威力小(神遠全・命中補正が極めて高い)異:[氷像]
惨殺:威力中(物遠全・命中補正は並)追:[連][弱点] 異:[流血]
雷撃:威力大(神遠範・命中補正は高い)異:[感電]

攻撃は毎ターン最初に選択、表示され、それぞれの本の行動順番時にその攻撃が発動します。

それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
★MVP
覇界闘士
鈴宮・慧架(BNE000666)
プロアデプト
逢坂 彩音(BNE000675)
マグメイガス
シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)
マグメイガス
風見 七花(BNE003013)
ホーリーメイガス
雪待 辜月(BNE003382)
レイザータクト
波多野 のぞみ(BNE003834)
マグメイガス
シェリー・D・モーガン(BNE003862)
覇界闘士
宇佐見 深雪(BNE004073)

●魔の巣窟
 ばさり、ばさりと本が舞う書斎。
 その扉を開いた者は、E・ゴーレムと化した魔導書の生贄――。

 天井の隅に張り巡らされた蜘蛛の巣。屋内に漂う、埃っぽい空気。
「荒れたままの家……なんだかもの悲しい雰囲気です」
 住人がいなくなった家の荒れ具合に、雪待 辜月(BNE003382)の表情が僅かに曇る。
 仕方のない話ではあろう。陰惨な雰囲気の場所に踏み込めば、気分も暗くなるというものだ。
「なんだ雪待、また哀れんでいるのか。ならば、私がすべて破壊してやろうか?」
「シェリーさんが一緒だと心強いですけど、あんまり乱暴すぎるのはっ……」
 そんな彼の表情を察したのか、苦笑いを浮かべながら『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)は言う。
 慌てて待ったをかける辜月ではあるが、
「そうすれば、悩みようがないだろう」
 当のシェリーは冗談とも本気とも取れる語調で言葉を紡ぐ。
 しかしぎゅっと自身の手を握る辜月に、軽く微笑んでみせる様を見れば、それは冗談だったのだろう。
「無事に終わったら魔導書や役に立ちそうなモノがないか、探したいわね。だから、壊さないでくれると助かるわ」
 そんな2人の会話に割って入った『虚実之車輪(おっぱいてんし)』シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)は、『魔導書』という存在に興味津々。
 否、彼女だけではない。
「エリューションでなく、アーティファクトなどであったなら欲しかった所なのだけれどね」
「武器としてはかなりの魅力ですね、わたしも個人的には欲しいな~」
 シルフィアと同じく『黄昏の賢者』逢坂 彩音(BNE000675)と『混沌を愛する黒翼指揮官』波多野 のぞみ(BNE003834)は『魔導書』の入手を願い、
「他に何か、珍しい本や可能性になりそうな本もあると良いですね」
 そして『大雪崩霧姫』鈴宮・慧架(BNE000666)は3人の願いが叶うことを願う。と言ってもエリューション化した魔導書は倒せば消失を免れないため、アーティファクト化している魔導書が存在している事が大前提ではある。
 そうなれば、やはり廃屋であっても過度に破壊してしまうと、探索どころの話ではなくなる事は間違いない。
「冗談じゃ」
 本気にするなと言うシェリー自身も、戦いの後に探索を行うつもりだったらしい。
 だがそれは魔導書入手のためではなく、姿を消した占い師の事を知るため。
「まあ、占い師の行方とか気になる所は多いしね……」
 少し前を歩く宇佐見 深雪(BNE004073) や、シェリーと手を繋いで歩く辜月も、同じ心算のようだ。
「それに、エリューションの件についても気になりますね。魔導書はただの本がエリューション化して魔導書になったのか、元から魔導書なのか」
 さらに風見 七花(BNE003013)は、エリューション化した本についても気になっている様子だ。
 あぁ……、もうこれは調べずにはいられない。
「まずは家の間取りを調べよう。他の部屋は、本を倒した後で調べても問題はあるまい」
「そうね、家の中の見取りはチェックしておきたいわ」
 とは言え、書斎にさえ入らなければ魔導書が襲ってくることもない。
 さすがに他の部屋の探索を行う事はシェリーが後でと釘を刺したが、間取りを知ろうという彼女と深雪の提案は、少しでも戦いを有利に進めるためには必要な行動だと言えよう。

「そういえば、前に手に入れたパラサイトメイルって着心地どうなの? ちょっと着てみたいところではあるが……」
「まあ、この鎧は生体融合型ですからね。慣れるまでは大変ですけど、ちょっとしたマッサージみたいなものって感じですか?」
 シルフィアとのぞみは雑談に花を咲かせながらゆっくりと探索を進め、
「ここが例の別室か」
「そのようですね」
 一方でリベリスタ達が戦場に適していると判断できた別室は、シェリーと辜月が発見するに至っていた。
 書斎までの距離は目測で20m程か。間に点在する他の部屋の扉を見れば、それぞれの部屋は狭くとも、家自体はそれなりに広い事がわかる。
「後は引っ張るだけですね。援護は任せてください」
「結界、展開しました」
 書斎の扉が見え、かつ援護出来るだろう距離を心がける位置に陣取った慧架が仲間達に声をかけると、念のためにと辜月が結界を展開する。
 この2人の存在が、エリューション達の『氷雨』と『雷撃』に対する最大の要。
「準備は良いですか?」
 最も倒されると拙い存在である慧架を見やり、七花はいざとなれば身を挺して守る覚悟を胸に、扉を開き敵を誘き寄せるのぞみに問うた。
「ええ、もちろん。では……開けますよ」
 わずかな異常も見逃さぬ程に視野を広げつつ、のぞみの手がゆっくりと書斎の扉にかかる――。

●開かれたページ
「驚いて出てくるかもしれぬな。まずはコイツを投げ込んでやろう」
 扉が開かれると同時に、シェリーの手から投げられたありったけ照明弾が書斎へと飛んだ。
 一瞬の後、暗い書斎は目を開けていられないほどの光に包まれ、
「来ますよ!」
 その光が段々と弱くなり始めた頃、リベリスタ達の耳に届いたのはのぞみの声。
「ページの内容はっ……!?」
 そして開かれたページと、文字が記されるまでの一連の流れをしっかりとその目に焼き付ける辜月。
 最初は、何の変哲もない本の1ページに過ぎなかった。
 しかしページが開かれると同時に記された文字が変化し、動き、別の形を成し――。

『氷雨』
『雷撃』
『惨殺』

 それぞれの本の攻撃方法へと、移り変わっていく。
 降り注ぐ氷雨、放たれる雷撃……さらに刃と化した本のページが舞い散り、リベリスタ達へと襲い掛かる。
「別室に行くまでの辛抱です、頑張りましょ……」
 言い終わるより早くのぞみを庇った彩音が氷漬けになったと思えば、後方に位置していた慧架の眼前でも、七花が氷像へと化していった。
 ここでもし、敵を引っ張る役目を担うのぞみを始め、少数で誘導に向かっていれば、被害は相当に甚大なものとなった事だろう。
「的が多かったから、リスクが分散できたってところかしら」
 深雪がそう言うように、どうやら全員が通路に位置していた事で、多少でもそれぞれが受ける被害を抑えることは出来たようだ。
 この調子ならば、引っ張る事も決して難しい話ではない。
「なら、後は引っ張るだけね。行くわよ!」
「彩音さんと七花さんの氷は私が!」
 バン! と引き込むべき部屋の扉をシルフィアが開け放てば、彩音と七花を包み込む氷は慧架の放った神の光によって浄化され、水となり溶けていく。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へってね。……やっぱり、まともに当てるのは難しいみたいだけど」
 唯一、懸念する材料があるとするならば、3冊の本が総じてすばしっこい点か。
 鋭い蹴撃でかまいたちを巻き起こした深雪の攻撃が、赤い魔導書を掠めただけに終わった事からも、その素早さは一目瞭然だ。

 リベリスタ達にとっては、リスク承知の誘導作戦。
「ここなら思いっきりやれますね」
 多少の手傷は負ったが、それでも最後尾を走るのぞみが件の部屋に到着した事で、その作戦を成功させる事は出来た。
 ふわりふわりと部屋に誘い込まれた3冊の魔導書は、その全てが『氷雨』のページを示していたものの、
「精一杯支援いたします」
 慧架の放つブレイクイービルの神光が、驚異的なその力で、氷雨による氷像を作り上げる事を許さない。
(勝つためには、慧架さんを守ることが何より大切です)
 当の慧架は七花が氷雨から庇い続ける態勢を取っているため、彼女が凍りつく可能性も低いと言えよう。
 もし彼女が凍りついたとしても、2枚目、3枚目の回復手には七花や、辜月もいる。
「さ、ここからが本番よ」
「だね、後は全力で倒すだけだよ!」
 本番を告げる深雪の言葉に、彩音が頷き応える。先んじて部屋に入っていたリベリスタ達には、態勢を整えるだけの時間すらもあった。

『惨殺』
『雷撃』
『惨殺』

 対する魔導書達も、『氷雨』が殆ど通用していないと感じたのだろうか。
 3冊ともが無駄と判断した攻撃を捨て、より火力の大きい攻撃を選択するに至っていた。
「魔術探求家として、その力は是非解析してモノにしてみたいが……これでは難しいな」
 可能ならば『氷雨』を自身の力にしようと目論むシルフィアではあったが、肝心の『氷雨』が発動しなければ解析もままならない。
「割り込んでページを変えさせるのも無理か……」
 もしかしたら魔導書達のページが動く時に割り込めないかと彩音は考えるも、そうなればそのページに描かれた文字が本来の文字を描き出すだけだ。
 攻撃の強制変更は、どう考えても無理に等しいだろう。
(1体減れば楽になる、だから1体削れるまで気を引き締めていこう)
 ここまで来れば、もう下手な行動など打つだけ無駄でしかない。
 七花のおかげもあって回復に手を割く必要性がなくなった慧架の、蹴りによって巻き起こしたカマイタチが赤い魔導書を切り裂いたのが、総攻撃の合図。
「なら、一気に倒してしまいましょう。これ以上の被害は、好ましくありませんし」
「そうじゃな。いちいち順番に焚きつけるなど面倒だ。纏めて焼き払ってくれる」
 さらに七花とシェリーがほぼ同時に雷撃を迸らせれた時、逆にエリューション側の雷撃と紙の刃がリベリスタ達を切り裂いていく。
(まずは当てる事を考えないと)
 相手の素早さは、既に先程の攻撃で理解している。流水の構えを取り、かつのぞみと共有した効率的な攻撃動作が、どこまで通用するのか。
 感じた僅かな不安を『考えても仕方がない』と払拭し、赤の魔導書への攻撃に転じる深雪。
「物凄く不本意だが、消し炭にするとしよう。赤は厭な色で気に入らんしな。援護するぞ」
 その深雪の攻撃が入る直前、ふわりと舞う魔導書の動きがシルフィアの放った四色の魔光によってピタリと止まった。
「――行けるわっ!」
 動きを止めたところを掴んだ深雪が、勢いに任せて地面に魔導書を叩きつける。完全に叩きつける事が出来たわけではないが、それでも先程の攻撃からすると十分に当たった方だと言えよう。
「まずはこれで1体!」
「本棚の中で大人しくしている気がないのなら、バラバラにしちゃいますよ~♪」
 そして叩きつけられた魔導書は、彩音の投げた気糸と、のぞみの振り下ろした小太刀によって言葉通り『バラバラ』となってその動きを完全に止める。
「少しでも相手に傷を負わせられれば……」
 それより少し遅れて、辜月は輝く光のオーラの鎧を深雪に纏わせ、彼女の傷を癒すと同時に攻撃を僅かでも跳ね返そうと動いていた。いかに素早くとも、手広く攻撃を行うエリューション達の習性を考えれば、この鎧は最も効果的な防御手段だろう。
 深雪が攻撃を受けるだけで、僅かでも傷を与える事が出来るのだから。

『惨殺』
『雷撃』

 そして再び開かれる、残った魔導書のページ。
 しかし1体を欠いたエリューションの火力は、書斎の扉を開けた時よりも格段に落ちていた。
 さらには『氷雨』の使用を慧架が憚らせたことで、リベリスタ達は攻撃に傾倒する事が可能となっている。
「このまま行けば押し切れます。最後まで気を抜かずに行きましょう」
 慧架の放つ斬風脚が青の魔導書を切り裂いたのを皮切りに、続けて七花とシェリーが再び雷撃を放つ。
 激しい攻撃に、埃が激しく舞い、家具にも大きな傷跡が残る――が。
「あまり破壊しては、彼らのベストプレイスとして価値が下がりそうじゃな。遠慮はせぬがな!」
 まずは勝利を得る事を考えるシェリーにとって、そんな事は気にするべき事ではないらしい。
 エリューション達の放った雷撃と斬殺にリベリスタ側の被害もかなり大きくなって来ていたが、その傷は辜月に癒してもらえば良い。
「流石のフェーズ2も、こうなれば形無しだな。だが、もっとボロボロにしてやろうか」
 そんなシルフィアの言葉が理解できたのか。バサバサと彼女の方を向いてページを閉じ開きする姿は、『それは断る』と言っているようにも見えた。
 当然、そのようなジェスチャー(?)程度でシルフィアが攻撃の手を緩めるはずはない。
 四色の魔光で青の魔導書に大穴を空けた彼女は、「知るか」と一瞥し、最後の1体である黒の魔導書に視線を移す。
 丁度その瞬間に深雪が黒の魔導書に掴みかかったらしく、惜しくもその手が空を切る瞬間が見て取れた。
「でも、これで最後ですね。癖も、パターンもよく見えましたし、後は――」
 仲間達の傷を癒す息吹を放った時、辜月は戦いの終わりが近いと実感したようだ。
 次は攻撃を行う。
 そう彼が決意し、かつ「私から行きます」と声を上げた彩音の気糸が黒の魔導書に飛んだのと、

『氷雨』

 魔導書の最後のページが開かれるのはほぼ同時だった。
 可能ならば『氷雨』を解析し、覚えたい。そんなシルフィアを嘲笑うかのように、最後の最後に、『氷雨』を発動させて――そして黒の魔導書は、消えていく。

●探索の時
「なんとか終わったわね」
「皆さん、ご無事ですか?」
 手にした勝利の2文字に、深雪はゆっくりと息をつく。魔導書は確かに素早く、攻撃をまともに当てる事には骨が折れた。その魔法も、高い威力を誇っていた。
 誰か深い傷を負っていないかと辜月が周囲を見渡すものの、その攻勢をリベリスタ達はギリギリのところで耐え凌ぎ、倒れたものはいない。
「……じゃあ、行きましょうか?」
 この場合の彩音の『行く』は、帰還ではなく探索を指す。
 占い師だとか魔導書だとか聞いた時から、彼女達は家の中にある本や占い師の行方に、好奇心が募っていたようだ――。

「ううん、やっぱりそう簡単には見つからないかしらね」
 とはいえ、そう都合よくエリューション化したアーティファクトが転がっているわけはない。
 書斎を調べるシルフィアの表情は、少し残念そうにも見えた。
 それでもやはり、そこは占い師の住んでいた家。
「占星術にタロット、四柱推命……雑多に手を出してますね」
 本棚に並ぶ本はどれを取っても占いや魔術関係の本ばかり。雑多だとのぞみは感じたようだが、それだけ占い師も自身の占いが当たらない事を気にしていたのか。
「……もしかして、これの関係でしょうか?」
 そんな折、慧架が手に取った1冊の本。
「どれどれ?」
「ふむ、これは……似てますね」
 何か面白いものが見つかったのかと集まってきた彩音や七花も、彼女の手にした本に、どこかしら見覚えはあった。
 いや、さっきまで戦っていた。
 気になって本棚を見れば、白や緑、黄色といった表紙の『魔導書』のモトになったような本がいくつか並んでいる。
「ほとんど破界器ではないようだけど、図書館には置けそうな本ではあるね」
「確かに、何らかの参考にはなるかもしれないねぇ」
 もちろん、この『魔導書』達も1冊を除き全てエリューション化してはいない。だが、彼女達はそれでも興味を惹かれたのだろう。
 1人、また1人と本を手に取り、後には並ぶべきモノを失った棚だけが残された。
 肝心の破界器と化した『魔導書』は公正に抽選を行った結果、七花が入手する事となる。

「随分と生活は質素だったんですね」
 一方では書斎を離れ他の部屋を探索していた辜月が、あまり高価そうに見えない家具の類を見て、そう声を漏らしていた。
 他の仲間達が探している書斎に並ぶ本を買い集めるがために、生活は質素になってしまったのか。
「孤独死はしてないようですけど……占い師は、どこへ行ったのでしょう?」
 それでも深雪が冷蔵庫を開けてみれば、ほとんど全てが腐っていたものの、数日は食べていけそうな食材が入っている。
『5年ほど前に、女の姿が消えた』
 そんな噂が立っていた事を思い返せば、何らかの事件に巻き込まれたのだろうか?
「行方は分からず――と言う事か」
 結局のところ、分かったのは消えた女が相当に占いを好んでいた事のみ。他には何ら手がかりになりそうな物も見つからなかったため、シェリーはそう結論付けるに至っていた。

 しばらくの後、リベリスタ達は帰路につく。
 お土産というわけではないが、消えた占い師が持っていた本の幾つかを手にして。
 それは行方の分からぬまま忘れ去られていくだろう本来の持ち主が、この世に存在していたという証。
 リベリスタ達がその本を持ち続けている限り、彼女が『この世界に存在した』事は忘れ去られる事はない――。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。
今回は少々セリフのアドリブ、改変を多くしてみたつもりですが、いかがだったでしょうか。
回避率の高い相手ではありましたが、攻撃を耐え凌ぎつつ、じわじわと削っていく作戦は、地道ながら有効な手段でした。
戦闘前の事前付与は雪乃は基本的には認めていません。が、今回はタクティクスアイのみ採用させて頂きました。
勝因は回復率90%のブレイクイービルの存在があった事が最も大きかったと思います。
MVPはそのせいで魔導書に何やら絶望を与えたらしい、鈴宮・慧架さんに。

==============================
レアドロップ:『フルカスの魔導書』
カテゴリ:神秘道具
取得者:風見 七花(BNE003013)