● 学生達は腹を空かせていた。 やって来たのは最近出来たばかりの黄色い看板のラーメン屋。 まずは入り口で大量の行列に阻まれ、食券を購入してからも待たされている。 しかし、この場を立ち去ろうという気は微塵も起きない。 この空間に立ちこめる匂いが、逃げるなと告げる。もうちょっと待とうぜ、と優しく語りかけてくる。 自分達と同じように列に並ぶ同志達も同じ気持ちなのだろう。 そうこうする内に席が空く。至福の、あるいは試練の時間は間も無くだ。 「ニンニク入れますか?」 「ヤサイニンニクアブラ!」 店主の言葉に、周囲を真似た呪文のような注文で応える。 そして、目の前にいよいよ現れるラーメンに似た何か。 学生は割り箸を割って、麺を掴もうとした。 「……アレ?」 不思議なことに麺を取ろうとしたら、腕を麺に掴まれている。 そして、ラーメンを食べようとした学生は、ラーメンのような何かに食べられてしまうのだった。 ● 「っていう事件が起きるんだけど」 ぞんざいな物言いの『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)を前に、はぁっと返すリベリスタ達。 最近、三高平に出来たばかりのラーメン屋。なんでも都心で有名な店から暖簾を分けてもらった店らしいのだが、中々に評判が良い。濃厚な豚骨醤油味でボリュームが多く、何より食べたものは病み付きになってしまう癖のある旨さらしい。 「要はこのラーメンが、エリューション化するらしいんだってさ」 守生の言葉に、ここがちゃんとBNE世界であることを確認し、リベリスタ達は安堵のため息を漏らす。 「で、対処としてあんたらには、これから該当のラーメン屋に行ってもらう。食えば革醒することないから」 盛大にずっこけるリベリスタの皆さん。ご協力ありがとうございます。 場所が客商売やっているだけに、店を閉じてもらって……というのも気の毒な話だ。幸い、『万華鏡』の力であれば最適なタイミングで並んで、革醒が起きる前にターゲットを処理出来る。この人数を集めたのも、革醒するラーメンが出てくるタイミングを調整して、確実にリベリスタの口に運ばれるようにするためだ。 多分、『万華鏡』のくだらない使い方としては、それなりに上位に入っているだろう。上がいくらでもある辺り、フォーチュナ坂はまだまだ長いもんだ。 「注意事項としては、量が多いから自分の食える量は自覚しておけ……って位か。一応、資料は作っておいたから参考にしてくれ」 そこまで言うと、守生は軽くステップを踏んで、ターンを決める。 どうリアクションを取ったものか戸惑うリベリスタ達。 そこで、守生はコホンと咳払いをすると、その鋭い瞳で睨みながら取り繕うように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。 「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月21日(金)23:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 三高平の街を歩くものはそれを見て、何事だろうと首を傾げる。この寒い中、多くの人間が行列を作って並んでいるのだ。 そして、列の先にある黄色い看板を見て、一応の納得をする。なるほど、新しいラーメン屋が出来ていて、彼らはそこに並んでいたのだ。しかし、そこまでして並ぶ程に美味しい店なのだろうか? よし、今度機会があれば行ってみよう。 結果、この店に並ぶ者は地道に増えて行くのだ。 木枯らしの吹く中、8人のリベリスタ達はそんな列に並んでいた。 「思ったより並んでるなあ。でも楽しみだな」 温かいダウンジャケットに身を包み、『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)は白い息を吐き出す。思った通り、今日は冷え込む。カイロを持ってきたのは正解だった。 「……うぅ、流石にこの時期は冷え込むのう。わらわにもカイロ貸してもらえるかの? もうちょい厚着してくるべきじゃったか」 疾風は苦笑を浮かべると、薄着の『巻き戻りし残像』レイライン・エレアニック(BNE002137)に渡す。最初はのんびりと持ち込んだ漫画でも読もうと思っていた彼女だが、こうも寒くてはのんびりできない。寒そうにしている仲間に配りながら、疾風は改めて温かい格好で良かったと思う。 「まだかな、まだかな」 『娘一徹』稲葉・徹子(BNE004110)も温かい服に身を包みながら、胸を高鳴らせて列が進むのを待っている。目の前で1人の客が店から出てくる。満足げな表情だ。そして、不思議なことに時を同じくして、また数人出てきた。知り合いと言う訳でもなさそうなのに。 列が進んだので、彼女も前に進む。手先が冷えたら、カイロで温める。待っている時間は辛いが、これからのことを思えばどうということは無い。苦労が多ければ、乗り越えた喜びはひとしおだ。何よりも今日の朝は早起きして、日課のランニングも2倍にしてきた。その苦労を思えば、この程度どうと言うことは無い。 列を並ぶ際の客のマナーを見て、『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)はむぅっと唸る。訓練され過ぎているという奴だ。 「暇だし、誰かスパークリングでもしようぜ……と思ったが、そんな雰囲気じゃないな」 列が並ぶ途中には駐車場があり、普通であれば入り口を塞いでしまう所だった。ところが、このラーメン屋に並ぶ者達は、ごくごく自然に駐車場の前の道を開けている。そう簡単に出来るものではない。 周囲を見ると、リピーターも多いのだろう。 経験者と思しきものが、友人に対してこの店での食べ方を指南している。中には量の多さで脅しつけているものもいる。もっとも、半分は脅し、半分は注意といった所なのだろうが。 そうした光景は決して珍しくは無いのだろう。今は仏頂面した『消せない炎』宮部乃宮・火車(BNE001845)だってそうだったのだから。学生の頃、散々世話になっていた彼は有段者だ。固形のチョコを口に放り込み、手には袋に入れた烏龍茶のペットボトルを人数分持っている。その姿はまさに戦士。加えて、その内心は普段彼が見せる顔とは裏腹で、子供のようにはしゃいでいた。 (ついにきた……! 待ってた! すげー待ってマシた! オレも一端のジナリアン! しかと戦ってやるさ) 別段おかしなことでもなんでもない。 一度この味に魅せられてしまったものは、学生だろうと会社の重役だろうとこうなってしまうものだ。 (今回は新兵が多いみたいだな。オレは最初一人だったが……) 感染経路の多い店だ。先輩・悪友・家族、行列に惹かれてなんとなく。そして、最初は割と撃沈される。それでも、なんとなく来てしまうという不思議な店なのだ。今回のように仕事で来たのが初めて、というメンバーが多いのは中々にレアなケースだろう。 「あっしはまだ食べたことがありやせんが、聞いたことありやす。その量の多さがッパない事にかけては 業界でもトップクラスやと」 「いやー、三高平に来る前に放浪してた時期に、どっかのアイドルが食べてるのを見かけたことがあって興味はあったんだよね」 『√3』一条・玄弥(BNE003422)は顎を指で撫でながら、経験者と思しき連中を眺める。なるほど、たしかに噂は伊達ではないようだ。アメリア・アルカディア(BNE004168)も軽くパンを齧って、意の準備を始める。 「アークのお金で食べられるんでしょ? 万々歳じゃない」 「アークからいけるただ飯とあっちゃあ遠慮はいらねぇなぁ、おぃ。この飯のために、1日ご飯抜きをしてきたあっしの腹はぺこぺこやでぇ。今日は倒れるまでくいまくるでぇ」 ただ飯が食える上に、報酬まで入るのだ。これ程「美味しい」話は早々転がっているものではない。 俄然テンションも上がってくる。 「食の道は次男にあり! 天才たるもの食においても天才であるべきだ」 IQ53万(推定)を誇る天才、『ジーニアス』神葬・陸駆(BNE004022)は、いよいよ迫って来た入店を前に士気が高い。火車に言われたアドバイスに従って(本当は知っているが彼に敬意を表してだぞ! 知ってるぞ! 知ってた! by陸駆)、前日に運動をして体の調子を上げておき、来る前にはクッキーと水を口にして胃を整えておいた。 いつでも大丈夫だ。 そして、そんなリベリスタ達が店に入るタイミングがやって来た。 店員の声が明るく迎える。 「食券お買い求め下さーい!」 ● 店内に聞こえるのはラーメンを作る音だった。 皆、黙々とラーメンを啜っている。 話に聞いた通り、店内の床は妙に油で汚れている。 そして、まだ新しい店だというのに、壁にはちらほらと定期券や名刺が張られていた。 (この店オープンしたばかりなのに床も黒く汚れてるし、テーブルもベトベトするのは、あの脂のせいなんだな) トッピングで背脂を頼んでいる男の姿を見て、アウラールはなんとなく納得する。 寒さに身を縮めていたレイラインは店内に入ってようやく一息つく。暖房がある訳ではないが、風を遮れるだけマシというものだ。そして、食券の販売している券売機の前に立った。フォーチュナから聞いた通りのメニューが並んでいる。こうした情報を調べなくてはいけないフォーチュナも大変だ。 「ふう、ようやく注文かえ、人気店はやっぱり違うのう。えーと……ん? ここの食券、プラスチック板なんじゃな、珍しい。小でも普通のお店の大盛りって言ってたし、ここは小……いや、小ぶたで。お肉!」 カランと音を立てて色のついたプラスチックの板、食券が出てくる。 次に並んだのは徹子。 券売機を前に悩む。 お腹を減らして来たし、食欲には自信はある。しかし、店の中に入り、他の客が食べているどんぶりを見ると不安にならないではない。何のかんので、まだ自分は13歳なのだ。相手は昔聞いたことがあるあの店なのだ。 「小ぶたです」 カラン 今日のところは入門用だ。 しかし、次に券売機の前に来たアメリアの行動は違った。 迷う事無く、「大ブタ」を選択したのだ。こう見えても、過去にフィクサードとしてそれなりに修羅場を潜り抜けてきた少女だ。場数は踏んでいる。しかし、周りの客からしたら10歳の少女が大それた挑戦をしたようにしか見えない。当然、止めた方が良いんじゃないかと視線を交わすものが出てくる。 そして、アメリアはそんな不安そうな者達に対して、自分は大丈夫だと言わんばかりにVサインを見せた。 玄弥は券売機にビールと書いてあるのを見て動きが止まる。 どうせ、払いはアーク。ただ飯にただ酒、割とアリなんではないかと心が揺れる。しかし、成功条件は「ラーメンを食べ切る」なのだ。ぐっと堪えて、大ブタのみを注文する。 「勝利してから美酒はのむんやぁ」 やせ我慢しているようにも見えるが、この判断は正解だろう。普段は意識されないが、炭酸は結構腹を圧迫する。ましてや、このような大盛り系の店だったら、危険極まりない。 そんな挑戦者達を微笑みを浮かべながら眺める疾風は冷静だった。 彼が頼んだのは「小ぶた」。 同系列の店で食べたことがあるので、勝手は分かっているつもりだ。 くだらないかも知れないが、ラーメンがエリューション化して一般人に犠牲者が出るのを見過ごす事も出来ない。「正義の味方を目指す者」としては、食べきれずに犠牲者を出すような真似を認めるわけには行かない。評判が良いみたいだし、お腹も空いたので一石二鳥と行きたい所だ。 「食券見せてもらえますか?」 「メンカタで」 店員の言葉に、リベリスタ達は色とりどりの食券を見せる。 すると、店の奥で麺が茹でられていく。 あの中に、人類の脅威たるエリューションに革醒するものが紛れているのだ。 しかし、そんなことは漂ってくる匂いの前に消えそうになってくる。腹を空かせてやって来ているのだ。この匂いに勝てるものがいるはずは無い。 そして、まず1つ、リベリスタ達の前の客が店を出る。そのまま座ろうとすると、店員に止められた。何故だろうと首を傾げていると、その隣の客も席を立つ。そこでようやく、火車と陸駆は席に通される。 「仲間だと思われたのか? なんか元気なクソガキが隣来たな。ま、次男が来るまでは賑やかでもまぁ良かろう」 「天才というものをみせてやる」 「うむ、天才を見せてみろ」 軽く笑うと、火車は陸駆の頭をくしゃっと撫でる。 その間にも続々と席を立って行く客。今度はリベリスタ達もスムーズに通される。 「客の流れを管理しているのか……やるな」 E能力で研ぎ澄まされた時間間隔で様子を伺っていたアウラールは感心の声を上げる。そして、彼の計算が告げる。戦いの時間だ。 茹で上がった麺がどんぶりに載せられ、なんか不思議な棒の入った鍋から汲まれたスープで満たされる。 そう、過去に来た経験があるものは知っていた。 初めて来たものは、今気付いた。 これはただの食事ではない。 これは戦いだ。 世界を護るリベリスタとエリューションの戦い、という訳ではない。これから出される「ラーメンに似た、ラーメンではない食べ物」との戦い。1人の人間として、食うか食われるかの戦いを行わなくてはいけないのだ。 ● 「トッピングは?」 「ヤサイニンニクマシマシカラメアブラ!」 徹子の凛とした声が店の中に響く。 うっかり舌を噛みそうになったが、そこは気合で乗り切る。 そして、目の前に現れる重量感たっぷりのラーメン。聞きしに勝るとはこのことだ。それにしても、このニンニクの量は、年頃の女の子が食べても大丈夫なものなのかどうなのか。 「ヤサイニンニクマシマシ」 冷静に最低限の注文を行う火車。席の並び的に、この順番になるのは分かり切っていたこと。この店では、入った順番では無く席の並びで品を出す。 烏龍茶の蓋を開けて一礼。 余計な言葉は必要無い。叫ぶなら心の中で叫ぶもんだ。 「小ぶたヤサイシマシッ……」 火車に追いつこうと焦ったせいか、陸駆は舌を噛んでしまう。 しかし、そんなことでは止まらない。天才はうろたえない。天才は失敗に屈しない。周囲を観察した成果から、天才指揮者は自分の発するべき最適の解を見つけ出す。 「ヤサイマシマシニンニクマシカラメアブラなのだ!」 すると、出てきたのは塔のようにもやしを積み上げたどんぶり。この店では1日にどれ程のもやしを消費するつもりなのだろうか? そんな疑問に思考を割く余裕は無い。すぐさま戦闘用の頭脳に切り替える。それに陸駆は祖母の指導のお陰で野菜は苦手ではない。むしろ大好物だ。 隣にいるアメリアに負けるわけには行かない。 そんな彼女が頼んだのはヤサイマシマシニンニクカラメアブラマシ。 もう何が何やら分からない。そもそも、肉ともやしに阻まれて麺のみならず、スープが見えていないのだ。 「うわぁ、なんだか大変なことになってるぞ」 しかし、言葉とは裏腹に顔は慌てていない。むしろ、物心つくまでろくなものを食べていなかったので、目はキラキラと輝いている。 後は誇りを胸に運命を呼び寄せ、食べ尽くすだけだ。 「いただきます」 手を合わせると箸を割り、スッともやしをかき分け、奥の麺を掴み取ろうとする。 横で暇を持て余していた玄弥が変顔で吹かせようとしているが、WPが上がっているのでどうにかなった。 そんな玄弥にも出来上がったラーメンがやって来る。 (さて、食費節減のためにも、ここからが本当の戦いやな) なるほど、たしかにこの量ならフォーチュナの忠告も納得が行く。昼に食べれば、晩飯を抜いても余裕だろう。久方ぶりの人間の食べ物だ。全くアーク様々である。ニヤリと笑って箸を割る。そして、「ニンニクマシマシアブラ」のラーメンをまずは上に乗っかった『もやしから』食べようとするのだった。 隣にいる疾風は冷静だった。 だから、頼んだのは小ブタでヤサイマシニンニクマシマシカラメ。それでもなお、量は十分過ぎる。トッピングに乗っけた有料の卵が、彩りを添えていた。 「小ぶたでこの量か、食べ応えありそうだな」 口調とは裏腹にまだまだ余裕を感じる。 普段の鍛え方を考えれば、まだまだ大でも余裕だろう。しかし、せっかく良い店の場所を知ったのだ。そういうのはまた今度で良い。 そして、最初の一口。 「これは美味い。癖になりそうだ」 アウラールが頼んだのは大ブタ、ヤサイマシニンニクマシマシ。アメリアが運命を燃やしながら食べるそれに比べれば標高は低いが、見事に野菜が積まれている。 「圧倒されている場合じゃない。早めに食べないとな。下手に食べると崩れそうだし……野菜からかな」 そう言って、ニンニクの量に気圧されながら、アウラールは箸を進める。 『ヤサイマシニンニクアブラ』 『ヤサイマシニンニクアブラ』 『ヤサイマシニンニクアブラ』 最後に回ったのはレイライン。 今か今かと、注文の練習を行っている。元々ラーメンは好物、箸を使えるようになって良かったと思う料理だ。だからこそ、注文で下手は打ちたくない。 「トッピングは?」 「ヤシャイ!」 残念でした。 「ヤサイマシニンニクアブラ!」 痛む舌を抑えて注文し直し。 そして、姿を現わす最後のどんぶり。 「こ、これは予想してた以上の強敵じゃな」 遠くで見ていたので勘違いしていたが、さすがの圧迫感。こうして目の前にしてみると、高い戦闘力を持つことがよく分かる。先に食べていた玄弥など、涙と鼻水とよだれを垂らしてかなり辛そうだ。 「じゃが折角のタダ飯、残すなんて持っての他! リベリスタの胃袋を……舐めるでないわー!!」 ラーメンを食べる時、日本人は何故か押し黙る。 食への敬意か、麺が伸びると恐ろしいことを本能で知っているのか。 ただ、リベリスタ達は心に様々な想いを抱えて、ひたすらに啜り続けた。 (麺を優先的に食べスープは後回し……) (おじいちゃんが言っていました。ラーメンは伸びる前に食べろと……それにしても、何を食べても濃厚なこの感じ……! 癖になりそうです!) (麺、肉、野菜、すべての原料と原料を作った農家の皆さんに、感謝の念を忘れてはならないのだ) (まずは麺を。伸びるし。で、時々もやし。口の中の味を変えないとね) (減らない……大分食べたはずなのに減ってる気配がない。……も、燃え上がれわらわのフェイトー!) (これで、「まし」なのか……日本人は普段どれだけニンニクを入れてるんだ?) (あかん……食べきるまでこの地獄は……) ガタンッ 誰かがどんぶりを置いた。 リベリスタ達は一斉にそっちを見る。 「ご馳走様、だ。残す奴がいたら全部食ってやるぜ?」 火車はどんぶりを台の上に戻すと、ニヤリと笑った。 ● 「想像を上回る量と濃さで……今日はもうご飯要らないや」 近くの公園でぐったりしているアメリア。冷たい風と烏龍茶が心地良い。 「どうだ! 残さなかったぞ! 僕は天才だろう! 宮部乃宮火車!」 「美味かったな!」 胸を張る陸駆の頭を乱暴に撫でる火車。ぶっきらぼうな雰囲気の彼だが、今日は何処となく嬉しそうだ。 ちなみに、その周りにはまだ物足りなそうな面子と、死体と化しているものがいる。 「まだまだだな……もっと効率のいい食い方を研究せねば」 「くけけっ、フェイトを使ってでも食いまっせ……」 まぁ、もやしから食うとこうなるということだ。 麺が汁を吸うので、後半が地獄になるのよ、マジで。 「確かにこれもある種の戦いだったが、無事に任務達成だ」 疾風の言葉が、もっとも的を射ているのかも知れない。 「噂通り、美味しかったですね。また来たいです!」 「そうじゃな、今回で見切った。次は大に挑戦してみたいのう」 初体験ですっかり味にはまってしまった2人。癖になる、もっと食べたい、そう思わせる何かが、あの店にはあるのだろう。 この店に足しげく通うものを「ジナリアン」と呼ぶのだという。 待ち列中、空腹の腹鳴りが起きることからそう呼ばれるそうだ。 ラーメンがエリューションに目覚めることを阻止したリベリスタ達。しかし、彼らは「ジナリアン」として革醒してしまった……のかも知れない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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