●お稲荷様 「亡命者よ」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はそういった。 イヴの腕にはモフモフの毛皮が抱かれている。否、それには狐のような顔があった。単なる毛皮ではない。 「くるしゅうないぞ」 モフモフが喋った。金色の毛並みの、実に暖かそうな毛皮が喋ったのだ。 モフモフはイヴの腕を駆け上がり首に巻き付くと、リベリスタ達を眺め見た。 「我は金剛稲荷を守護する守護獣。名は金魂(こんこん)である。皆の者頭が高いゾ」 えっへん。 ちっこいイヴの首に巻きついてる限り、体育座りでもしないとその要望には応えられそうにない。 「なにこのナマモノ」 「亡命者。金剛稲荷と呼ばれる古い神社を、昔から守ってきたアザーバイドよ」 「うぬらの大先輩なるゾ。敬えヨ」 イヴは金色の毛皮に頬ずりしている。その暖かさがどれだけの魔力を持つのか、容易に想像する事ができた。 金魂はするりとイヴの頭へ登って、うーんと背伸びする。高いところが好きなやつは大抵バカだ。 「数日前のこと」 しかしイヴに尻尾を捕まれ、再び抱き込まれている。 「金剛稲荷がエリューション・ビースト、フェーズ2、通称『ナインテイル』によって襲撃を受けたわ。彼女は応戦するも敗北、神社からの撤退を余儀なくされ、アークに助けを求めてきたの」 「負けたのではない。戦術的後退であるゾ」 スルーし。 「今回の作戦は、彼女と協力して敵エリューション『ナインテイル』を撃破する事。ナインテイルの戦闘能力については、彼女が資料制作を手伝ってくれたわ」 「この身を危険にさらして得た情報なるゾ。感謝せよ」 幼女に抱きかかえられたナマモノは誇らしげにしている。 協力してというところ、コレも戦闘についてくるという事だろうか。 「にしてもさ、国内で、しかも神社から逃げてきたのになんで亡命なんだ?」 「亡命とは偉いモノがするのであろう? なれば我に相応しいではないか」 「つまり真っ先に国を捨てて逃げ出してきた、と」 ●月夜に 月夜の水鏡はおだやかに夜風と戯れている。 獣は一歩、また一歩と踏み入った。しなやかながらも逞しい脚が水面にちいさな波紋を生じさせる。 波紋は金色の月をかき消すこともないまま、獣は水鏡の満月へとたどり着く。 じっと水鏡を見つめる。 獣の銀毛は幻想めいて美しい。自ら見惚れてしまうことも罪になるまい。 なれど蒼白とした月の美しきは恥ずべくもない自惚れさえ忘れさせる。 獣は静かに横たわる。水面に佇み、水月を眺めて。 獣は月夜に吠え歌う。まるで詩人がごとく。 妖しい歌は人々の心を苛み、眠れる夜を与える。 獣は、ただ静かに美しきを愛でたいと願うのみであっても。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:コント | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月18日(火)23:03 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●それゆけビーストハーフ友の会 「うむ、ケモいの」 金魂の第一声はこれである。 理由は簡単、今回ナインテイル討伐に参加したリベリスタ達の顔触れのせいだ。 なにせほぼ全員がビーストハーフなのだ、モフモフのフサフサである。 ちなみに唯一非ビーストハーフである『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759)は、いなり寿司を持参するほどお狐さまが好きらしい。 「道中の無事をお祈りさせて欲しいしと思っての。お口に合えば良いのじゃが……」 鼻先に米つぶくっつけ、はぐはぐと金魂は犬食いする。 「くるひゅうらいぞ」 もひもひ。 金魂はお稲荷様を召し上がる最中ずっと与市の首にするりと巻きついている。奉納物の効果は絶大だ。 「こんちゃんえりまきいいなぁ……」 『おかしけいさぽーとにょてい!』テテロ ミーノ(BNE000011)も金魂を襟巻きにしたかったのか、うらやましそうに指をくわえている。 「参加メンバーのうち、ビスハ7人、そのうちキツネが5匹。めずらしい事もあるものですぅ」 『ぴゅあで可憐』マリル・フロート(BNE001309)はネズミのビーストハーフだ。ネズミは動物の中でも捕食される側になりやすい。その代表例といえば。 「……ひとつだけ、先に言っておく。わらわは『猫』じゃ。断じて狐では無い」 『巻き戻りし残像』レイライン・エレアニック(BNE002137)の爪がキラリと光る。マリルはぞわりと悪寒に襲われた。が、狐だってネズミは食べることを忘れてはならない。 『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)もお狐様のひとりだ。 「うん、キツネ5人もおってええかんじやね、あ、一人ちがっ」 バリッ。 仁太の断末魔があたりに響く。 夜の山道を登り、一行は湖にほど近い金剛稲荷神社へと辿り着く。 「これが我の城である。侘びた良い社であろう」 神社の老朽化はかなりのものだ。侘びしい風情を感じられなくもないが、廃墟同然だ。元はお稲荷様が鎮座していたと見られる二対の台座。その片割れに金魂は駆け上がる。 「聞けヨ皆々。いよいよあの憎きナルシス狐に復讐する時が来た! 準備はヨイな」 そろそろ本番だ。 自然と一同の身も引き締まる。金魂から得られた多くの情報により、敵の手の内はおおよそリベリスタ達の知る所であった。 それでもなお、ナインテイルが強敵である事に変わりはない。 唯一欠点とされる隙を突くため、今回は二人の囮役が先行する。たった二人で九つの式神を相手にするのは難題、危険な任務だ。 「そうや、一つ聞いておきたい事があんのやけど。式神には攻撃が入るんか?」 仁太は真面目な顔でたずねる。レイラインから頂戴した一撃の爪痕はくっきり残っているが。 「我が知る所であれば『効く』。なれど式神は式神、あくまで攻撃の手段。式を操る尾を潰さぬ限り油断はできぬ。こころせヨ」 金魂はまた与市の首に巻きつくと、勝手に場を仕切って出発の合図を出す。 モフモフの毛並みを堪能していられるのもここまでだ。 ●多重砲火 湖には幻想じみた光景が広がっていた。 鬼火を纏った九匹の狐が輪を作り、優雅に舞い跳ねている。静かにゆらめく、九つの尾のまわりを。 湖に映るのは夜空の月。九尾の狐はただ水面を眺めるばかりだ。 エリューション・ビースト、フェーズ2、通称『ナインテイル』。 白毛九尾ノ狐とその式神と金魂。これらが今回倒すべき『敵』である。……―匹多い。 なんと金魂がいつのまにか、ナインテイルの足元で仁王立ちしているではないか。 「貴様に住処を奪われ幾星霜、狼藉者め覚悟せヨ」 リベリスタ達は絶句する。 「この大妖狐金魂様に逆らうなど身のほどをわきまえぬ輩め。ここを襲ったことをくやむがヨイ。ふたたびび化け出でぬよう、そなたのハラワタを喰らいつくしてくれるわっ!」 ふんぞり。 なぜ金魂がナインテイルの前にいるのか、リベリスタ達は想定外の事態に動揺した。 そんなこちらの気など知らず、金魂は勝ち誇った顔でしれっと帰ってくる。 ナインテイルの反応はない。 「ふっ、どうやら我の覇気を目の当たりにして、恐怖で声も出んようだな」 「なにやってるですぅ?!」 あまりの出来事に冷静さを失いかけたリベリスタ達であったが、どうやらナインテイルは気にもとめていないようだ。気を取り直して作戦に入る。 「まずは囮であるわらわ達が先行して、ナインテイルの注意を引こう。後は作戦通りにな」 樹の枝で小鳥が羽を休めている。静かなもので、聞こえるのは木々のわずかな揺らめく音くらいだ。 静寂を破ることなく、男は小鳥の隣に降り立つ。 『影なる刃』黒部 幸成(BNE002032)、彼が囮役の二人目だ。 「美しきを愛でることそれ自体は罪ではないので御座ろうが……」 囮役は二人。湖の反対側ではレイラインとは別に、もう一人の囮役が身を忍ばせていた。 幸成は静かに呟く。 「これも忍務なれば、その命、貰い受ける」 殺気を込めた睨みを効かせる。 ナインテイルが気づいた。妖狐の瞳に人影が映り込む。 「遅れるでないぞ、黒部!」 「御意」 二人は駆け出した。ナインテイルも二人目の存在に気づいたのか、後方に意識が傾く。 ワンテンポ遅れて式神達が動き出す。口腔が瞬く。連なる十数の光弾が、弾幕となって二人を迎え撃つ。 「みんなっこれでじゆーにとんでいけるのっ」 ミーノは翼の加護で二人に飛翔の力を授けた。翼を得た二人は水上に飛び出し、弾幕をすり抜けゆく。水柱が次々と飛沫をあげた。二人の後を追いかけて。 「くっ!」 レイラインの左脇腹を光弾が掠めた。二分されているとはいえ5体分、敵の弾幕は安々と避けきれる物ではない。 「レイライン殿!」 「案ずるな! この程度の傷で墜ちるわらわではないっ!」 レイラインの腹部は表面がごっそりとこそぎ取られていた。衣服と一緒に皮膚が焼け、見た目には痛々しい状態である。 すぐにレイラインは体勢を立て直そうとする。流石に囮役を買って出ただけはあるようだ。 「グッ……、とはいえ、コレほどの弾幕。囮の数がたりとらんのは言うまでもないのう……!」 「やはり後方からの一斉砲火に頼るしかなさそうで御座るな」 砲火は二人に休む暇を与えない。負傷のためかレイラインの動きは若干鈍く、敵弾から逃げるのが精一杯だ。 そんな中、荘厳な福音が響き渡る。ミーノの天使の歌だ。痛みが失せ、レイラインの傷が癒えていく。 「じゅんびができたの!」 「まっておった!」 ●攻防戦 リベリスタ達の一斉攻撃が始まった。 『第30話:Xディズ』宮部・香夏子(BNE003035)、マリル両名が躍り出る。 「顕現せよ」 水晶玉占いのように神秘の結晶体を形作り、香夏子は意識を集中させる。 透明な結晶がおぞましくも赤黒く染まっていく。やがて夜空へ高々と水晶玉を掲げ、ささやいた。 「月よ」 偽りの月は砕け散り、禍々しき赤い月が夜を汚す。 危険を察知し式神が退く。しかし大半は逃げきれず、赤黒い月明かりの呪力に呑まれる。 狐の形をした式神が、次第に珠の形にひしゃげてゆく。書き損じた紙を丸めて捨てるかのように。 「ビスハ最強(ねずみ限定)の銃撃の嵐を見るといいのですぅ!」 トドメにマリルのハニーコムガトリングが炸裂する。魔力銃の銃身が焼きつくほどに撃ちだされた弾丸は、式神達を文字通り蜂の巣にした。 消滅する式神。残るは四つ。 突如ナインテイルが攻撃に転じた。残る式神が再び光弾を掃射する。 軽やかに跳躍する九尾。 遠くの攻撃組へナインテイルが迫る。 「いかん!」 幸成がナインテイルの行く手を塞ぎ、遮る。 しかし光弾の嵐は後衛のリベリスタ達を襲い、背後の木々ごと一掃せんとした。激しい攻撃に一帯の木々まで倒れていく。 「クソッタレめ! わしら危うく倒れた木の巻き添えやったぞ……」 「九尾退治は父上や母上からよく聞かせてもらったモノじゃが、やはりお話のようにはいかないのじゃ」 仁太、与市の二人は翼の加護により湖の上へ出ており、なんとか猛攻をやり過ごしていた。式神の半数を失っても、依然としてナインテイルは脅威に値する。否、先程より一個体あたりでは光弾の威力や弾数、命中精度が強化されている。九匹から四匹へコントロールすべき端末が減ったことで、かえって一匹ごとに割けるリソースが増え、個体ごとの戦力は強まっているのだ。 「マリルさんが……! マリルさんが……っ!」 そんな時だ、なぎ倒された木々の中から『ネガデレ少女』音更 鬱穂(BNE001949)の声が聞こえた。 嫌な予感がした。ミーノは慌てて鬱穂の元へ駆け寄る。鬱穂の肩からは血が流れていた。 「どーしたの!」 「マリルさんが……、木に……っ!」 マリルは倒壊した木々の下敷きになっていた。幸い地面の土は柔らかく、下敷きにされた上半身は大事に至っていないようであった。しかし右足のふくらはぎには飛び散った木片が深々と突き刺さっていた。 「あははっ……、油断したですぅ……」 「すぐたすけるのっ!」 金魂を連れた与市と仁太もその場に駆けつけた。仁太の力でなんとか木を押し退けると、女性陣がマリルを引きずり出す。 ミーノは急いでマリルの治療を始める。 「しばらく時間が掛かりそうやな……。よし金魂、治療する間、敵の注意を逸らしとってくれ」 「ジンタ=サン爆発セヨ」 即答である。 「なっ!」 「自分の嫌がることを他人に強いるなバカモノ。やらんぞ我は、絶対に働きたくないでゴザル」 『拙者はやったで御座る!?』 スルーし。 「くぅ~……! しゃあない、ここは一つ博打といくかいな」 仁太は矢面に立って、巨銃パンツァーテュランを手に走る。そして式神たちへハニーコムガトリングを仕掛ける。牽制射だ。敵の注意を引きつけ、時間を稼ごうとしている。 マリルのダメージは深く、胴体と足、それぞれに負った傷はミーノ一人では治療に時間がかかる。 鬱穂はとっさにそう判断すると、金魂の事を思い出した。 「あの……えっと、突然なんですけど、金魂様が持つ回復の力とは、どれほどの物なんですか……?」 「其れを我に聞くのか? 我の力は狐界でも最高クラス、まぁ我ほどにもなれば当然だがナ」 えっへん。 「わぁ……! じゃあこの子の怪我くらいならあっという間ですか……?」 「無論。この程度であれば瞬きの間に済ましてくれよう」 「その例えはよくわからないですけど……、金魂様が治療するとこ、生でみたいなぁ……」 「しょーがないノ。我としてもあのナルシー狐にこのネズミをくれてやるつもりはない」 こういうわかりやすい性格の奴は楽で助かる。 金魂は偉そうにしながらも、ミーナと共にマリルの傷を癒しはじめた。 「こんこんが狙われたら庇ってやるつもりでいたですが、まさか助けられるとは思ってなかったですぅ……」 「ネズミの天ぷらはゴチソウだしの。じゅるり」 説明しよう。お稲荷様の奉納物で知られる油揚げは、ネズミの天ぷらの代用品なのである。罠に仕掛ければ、老獪な古狐さえ誘惑に負けて死んでも食らいつくとの伝承もあるほどの大好物だ。 「殺気?! みっ、みかんの皮は……!」 「ほれグズグズするな! 他の者ははようあのアホ狐を仕留めてこい!」 「ここはミーノたちにまかせるのっ」 ●業火を放て 鬱穂と与市が前線に戻れば、そこではギリギリの攻防が続けられていた。 ナインテイルは尾の多くを負傷し、展開されている式神は二匹。本体も傷を負っている。 幸成はナインテイルを足止めした際に怪我をしていた。そのため追撃を受け、すでにその身は満身創痍。回復手段を持つ香夏子を除き、他の三人はボロボロの状態だ。 「ほんまは金魂焚きつけて楽するつもりやったんやけどな、イテテ」 「えっと……、仁太さんは幸成さんを連れて下がっていてください……。ミーノさんのところまで下がれば安全に治療が受けられますから」 「動けるのは鬱穂様とわしと、香夏子様と……、レイライン様は大丈夫なのかのぅ」 「わらわを誰だと思っておる。だがさすがにコレ以上は長引かせたくない、次で決めるぞよ!」 幸成に対し、レイラインはまだ動ける様子。式神が彼女を追うが、二匹にまで減っても油断はできない。 しかし同時にナインテイル自身が動き、鋭利な爪がレイラインに襲いかかる。 「そうなんどもっ」 不意の一撃がかすめる。スカートが破けるも、レイラインの柔肌を晒すに留まった。 彼女だけではいつまで持つかわからない。香夏子は意識を集中した。深い呼吸と共に、心臓の鼓動が高まる。ハイスピードだ。一気にナインテイルの視界に飛び込んでみせた。 「囮役手伝いますよ」 「流石に一人では辛かったところじゃ! 後少しの辛抱、頼むぞ!」 鬱穂、与市の二人は必殺のタイミングを見定める。 するとようやく飛び回る二人を捕らえられず業を煮やしたのか、ナインテイルが動きを止め、式による砲撃に集中し囮を狙う。 鬱穂が動いた。チェインライトニング。一条の稲妻が鉄鎖のごとく連なり、敵陣を打ち据えた。式神も、身動きが取れないナインテイルも為す術がない。二匹の式神が雷光に滅される。 リベリスタ達の攻撃は終わらない。至近距離に迫り、与市は炎熱迸る絡繰義手・蜂羽堕を引き絞る。 「わしは自分の腕に自信がなくての。だから、確実に仕留められる距離で射たせてもらうのじゃ!」 天へと昇る炎の矢。業火がナインテイルの胴を貫く。一線の赤い光が闇夜を二つに切り裂いた。 崩れ落ちるナインテイルの亡骸が、ゆっくりと湖の底へと沈んでゆく。 胸部にぽっかりと空いた風穴。その中に月が映り込む様は、実にナインテイルらしい最後であった――。 ●戦い終わって 戦いが終わり、一同は傷だらけの身体を休めるため再び金剛稲荷神社へ戻ってきていた。 ミーノと金魂のおかげでマリルの傷は癒え、今は代わりに囮組が治療を受けている。 「おぉ……、なんとモフい」 「指先一つ動かすのがやっとであろう。我が直々怪我を治してやる、ありがたく思えヨ」 金魂は負傷している部分を探すために、傷だらけの幸成の上をあっちへちょろちょろこっちへちょろちょろ駆けずり回る。 「わらわも、わらわもそれがよいー!」 一方レイラインは仁太と一緒に、ミーノから治療を受けていた。 本来ならケモミミ少女から介抱してもらえるだけでご褒美のはずなのだが、生粋のモフリストは純度100%の小動物が恋しくてたまらないらしい。 「ミーノだってこんちゃんもふもふしたいのっ。がまんするの」 ミーノはぷぅっと頬をふくらませて拗ねる。 「それにしてもぼろっちい神社なのですぅ、このままだと居心地が悪いのでそうじしてやるですぅ」 待っている間暇になったのか、マリルは神社の掃除をはじめてしまった。 お参りをしていた与市や鬱穂も、やらないといけないような雰囲気に負け、掃除に加わる。 結局、絶対に働きたくないでござるを貫けたのは香夏子だけであった。 「私……なんでここまで来て、掃除させられてるんだろう……」 「まぁまぁ、きっと良い行いをしておけばきっとご利益もあるのじゃ」 「うーん、そうじしてもたいして綺麗にならないですぅ」 「ならじんじゃをしゅーりしたらいいとおもうの、さおりちゃんにそーだんして」 「おぉっ」 ●あぁ我が神社 ――後日、金剛稲荷神社は綺麗になっていた。 金魂が大はしゃぎで木目の色艶の蘇った廊下を走り回る。 「なんと面妖な、我の社が新築のようにピッカピカではないか! これがアークの力……!」 「嬉しいかこんこん~、アークが一晩でやってくれたのだぞう?」 金魂をもふる事を散々お預けされていたレイラインは、ついに念願の金魂を手に入れたぞと言わんばかりに抱きしめる。 金魂は抱きしめられてもおとなしくしている様子はない。すぐにふくよかな胸から這い出してしまうと、首に巻きついたり頭に登ったりと大忙しだ。 「おぉっ、よいのよいのっ。まさに我に相応しい社ではないか。気に入ったぞ、褒めてつかわす」 「あのぼろっちい神社とは思えないですぅ。これなら掃除する必要すらないですぅ」 「さおりちゃんのじょばんにまじっくなの!」 ミーノも最後のチャンスとばかりにレイラインの頭の上から金魂を奪取し。 「ふふん、そんなに我に遊んで欲しいか、ういやつめ」 「あーっ! こんこーん!」 ついこの間まで走ったら床が抜けてしまいそうなほどボロかった神社が、今ではドタバタと騒いでもビクともしないほどになっている。 突如として金剛稲荷神社を襲った脅威。しかし終わってみればすべては満月のように丸く収まり、金魂は大満足の様子であった。 すっかりリベリスタ達とも仲良くなり、一同は神社の中ではしゃぎ回る。 そんな様子を眺めながら、仁太は一言「めんこいのう」と呟いたとか。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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