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【幽霊船】エンダーズ・ボートチェイス

●凶人ENDREと捨駒の幽霊船
 脚をばたつかせ、身悶える少女。歳は9にも満たぬ幼子で、鼻や足首から血を流していた。
 流れた血は波線となり、床に長々と続いている。
 見た目からして無理矢理に引き摺られているのは明らかだったが。
「うぜえ……」
 少女は長めの頭髪を乱暴に捕まれ、声にならぬ悲鳴をあげながら引きずられていたのだった。
「うぜえ、うぜえ……クズみてぇな抵抗しやがって、うぜえんだよ……」
 彼女の髪を掴んでいたのは少年だった。だが少年と言うには荒々し過ぎる、一人のフィクサードでもあった。
 少女の髪を引っ張り上げ、適当な手すりに頭を叩きつける。
 うめき声をあげる彼女の顎を、万力のような力で掴んだ。
 少女も呻きはするが、顎を固定されて言葉が出せない。
「ウ、ア……」
「そうそう、そう言う感じで鳴けよ。アイツっぽくなってきたぜ。でも服がちっと上等過ぎるな」
 そう言うと、胸元に手をかけ、力任せに衣服を引き千切った。
 声にならぬ悲鳴をあげる少女。
 少年はニヤリと笑うと、後ろの男達に声をかけた。
「おい、誰か船酔いしてねえか。こいつの顔にゲロ吐きかけてやってくれよ」
「何故そこまでするのです?」
 黒服の男に抑揚のない声で返事をされ、少年は左右非対称に眉をゆがめた。
「分かってねえな。その方がアークも良い子ちゃんゴッコしやすいだろ? クソみたいにボロカスになった女見つけたら多分あいつらこういうぜ。『女の子に酷い事するなぁー。ぼくたちがやっつけてやるぞぉー』つってな、ギヒヒ、ヒハハハ!」
「…………」
 沈黙のまま、狂笑する少年を見下ろす男。
 ひとしきり笑った後で、少年はとりあえずとばかりに少女の顔に唾を吐きかけた。
「そろそろ、気づいた頃だよな。おいアーク」
 空を見上げ、歯を見せて笑う。
 そこは船の甲板。
 それも、彼と二人のフィクサードを除き30人ものノーフェイスを詰め込んだエリューション武装船。
 既に港を発ち、太平洋をゆっくりと進んでいた。
「この前の借りだ。とりあえずお前ら、ぐちゃぐちゃに殺して犯して沈めてやるよ。この女もオマケだ。ギヒ、ヒハハ、ヒヒハハハハハハハハハハ――!!」
 その声は、海風に乗って何処かへと消えた。

●セリバエ召喚情報奪取作戦
 フィクサード船拿捕の任務を受けブリーフィングルームに集まったリベリスタたちは、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)からこのような話を聞くことになった。
 運命を食らうアザーバイド『セリバエ』を召喚すべくWOO、達磨、第三召喚研究所は前々より動きを見せていた。
 しかし彼等が召喚場に選んだのは何処とも知れぬ太平洋上。そこまで行けば万華鏡の効果範囲からも外れてしまうだろう。
 となれば、召喚場へ向かう船を拿捕し、船内の情報を得ることで手がかりとしようという作戦である。
「今回拿捕して貰うのは、黄泉ヶ辻所属フィクサード『エンダー』の船よ。船には細工がされているみたいで、単純に乗り移って拿捕ってワケには行かないと思うけど……今から適切な手順を説明するわ」

 敵戦力は主に、強力なフィクサードであるエンダーと、2名の黒服フィクサード。そして彼等の連れている30人のノーフェイスである。
「フィクサード達とは以前交戦してる筈よ。エンダーは破壊力の高い覇界闘士で、残虐な思考を持ってる。部下の黒服達のジョブは不明だけど、こっちは酷く無感情で交渉が通じないわ。まず実力行使で沈める必要があると思う」
 次に、と船が映っている衛星写真をモニターに映した。
「船にはミサイルランチャーや小銃を装備したノーフェイスが数名配置されてるわ。まずは速度のあるボートで接近、これらを撃破しつつ船本体を抑えて頂戴」
 横にイラスト化した船を表示し、バツ印をつける。
 すると、船から三つの小舟が飛び出すアニメーションが流れた。
「このように、敵はモーターボートでの逃走手段を用意してるの。と言うより、最初からそうやって船を捨駒にするつもりかもしれないわね」
 ボートにはフィクサード一名ずつと、咥えてノーフェイスを5人ずつ。
 このノーフェイスは捨駒のように使い、追ってくるであろう我々に自爆同然の攻撃を仕掛けてくるだろう。
「さしずめ、『拿捕』の前半戦と『チェイス』の後半戦って所ね。少し手こずると思うけど、気を付けてね」
 詳細な資料を皆に手渡すと、イヴは瞑目した。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:八重紅友禅  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 9人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年12月15日(土)21:04
八重紅友禅でございます
補足が若干ややこしくなるので、よくお読みください。


●拿捕のパート
 船の側面から突撃する形で襲撃をしかけます。
 アークからの襲撃を想定して強化されており、神秘攻撃と言えど足止めするのはてこずるでしょう。いっそ、船内の敵を直接攻撃した方が早いと思われます。
 船は大型クルーザーのような形で、船外からの射撃を行う場合は、相手が船の淵から射撃体勢をとっている状態でないと射線が通らないでしょう。
 ちなみにこの船には一般人の少女一名が無理矢理乗せられており、脚を負傷して歩けないので、船を沈めてしまうと高確率で一緒に沈んで行きます。
 外側に出て船の防衛に当たっている戦力は以下の通りです。
・ノーフェイス×15体
 ミサイルランチャーや小銃で武装。自分から攻撃できない場合は引っ込んでいると思われる。

●ボートチェイスパート
 ある意味ここからが本番です。
 セリバエ召喚場の情報を握ったまま、エンダーたちがモーターボートで逃走します。ボートで追いかけ、これを撃破する必要があるでしょう。
 戦力は以下の通り。
・ボートA
 エンダー:強力なフィクサード。覇界闘士。
 ノーフェイス×5体:銃器や刃物を所持。体内に爆弾を仕込み、自爆特攻をしかけてきます。

・ボートB、C(戦力は同じ)
 黒服×1
 ノーフェイス×5

●ボートでの戦闘について
 モーターボートが三隻支給されますが、普通のものなので強度は低めです。
 所持アイテムにボートやそれに類するものがあれば、より高い強度を期待できるでしょう。AF内に予備として持っておくのもアリかもしれません。(ただし船を乗り移る際にターンをそれなりに消費するので、あんまり乗り換え過ぎると隙だらけになります)
 また、ボートを運転するために1名を運転役につける必要があります。マスタードライブが無くてもリベリスタパワーで結構無茶な運転ができますが、攻撃も一緒に行うにはやはりマスタードライブが必要になるでしょう。
参加NPC
 


■メイン参加者 9人■
プロアデプト
彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)
スターサジタリー
百舌鳥 九十九(BNE001407)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
クロスイージス
村上 真琴(BNE002654)
クロスイージス
ヘクス・ピヨン(BNE002689)
クリミナルスタア
禍原 福松(BNE003517)
ダークナイト
鋼・剛毅(BNE003594)
スターサジタリー
靖邦・Z・翔護(BNE003820)
クリミナルスタア
アーベル・B・クラッセン(BNE003878)
   

●たとえば闘争の前の空白とか
 依頼内容。
 エリューション武装戦の拿捕、およびリーダー格であるフィクサード『エンダー』の撃破。
 更に彼らの所有しているセリバエ召喚に関する情報を獲得。アークへ持ち帰ること。
「……以上」
 『レーテイア』彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)はボートのハンドルを握ったまま依頼書を読み上げていた。
 暴風にばさばさと靡く依頼書。それを真っ二つに破ると海へ放り投げた。
「少女の救出はこれに含まてないけど……やるわよね?」
「当然だ」
 ボートの後部でじっとあぐらをかく『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)。
「無論、エンダーたちを倒した後でだ。奴らは面倒そうだからな」
「おっと二人とも、そろそろ肉眼で見えてくる頃っぽいよ」
 無駄にビーチチェアに寝そべっていた『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)が千里眼を一時停止して振り返った。
「カルシウム足りてない顔してる。それにしれもアレだよね、わざとやってるのかな。前となーんか似てるっていうか……」

「前となーんか似てるというか……」
 別のボートにて、『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)は奇妙な角度で首をかしげていた。
「もしヴィオニッチ-CCCと同じ演出をしようとしてるなら、随分と根に持たれたものですな」
「ヴィオニッチ……確か同じチームとのアーティファクト争奪戦でしたっけ」
 ハンドルを握ったまま、乱れ髪を抑える『鋼鉄の戦巫女』村上 真琴(BNE002654)。
「あの時は車で二度も撥ねましたからのう。まあ当然と言えば当然……」
「ふん、心の狭い話だ」
 『疾風怒濤フルメタルセイヴァー』鋼・剛毅(BNE003594)は船頭に片足を乗っけると、剣を抜いて天へと掲げた。
「敵は極悪非道。ここは海の上。しかし俺は戦場を選ばない……疾風怒濤フルメタルセイヴァー、発進だ!」

 三代目のボートでは、『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)が無言で銃に弾を込めていた。
 その横で無言のままボートを運転するアーベル・B・クラッセン(BNE003878)。
「今回、随分とご機嫌みたいだね、彼」
「ああ」
「あら、興味ない?」
「私は……ヘクスは興味ありますね」
 二人の後ろで綺麗に正座する『絶対鉄壁のヘクス』ヘクス・ピヨン(BNE002689)。
「自爆特攻やエンダー本人の破壊力、非常に気になります。ふむ、ともかく……」
 すっと片膝を上げ、そしてヘクスは首を傾げた。
「決め台詞は、もう少しとっておきますかね」

●もしくは死ぬことを約束された命とか
 鳴り響くエンジン音。
 吹きすさぶ海風。
 揺れの激しいボートの上で、翔護は片耳を抑えつつ銃を抜いた。
 安全装置解除。片目で千里眼発動。
 無線通信のスイッチを入れると、口角を僅かに上げた。
「みんないいかい、敵さんが顔出した瞬間にパニッシュだ。要するにSHOGOがキャッシュしてからのパニッシュね。せーのっ――」
 エンダー船からノーフェイス達が顔を出したその瞬間を狙って銃を連射する翔護。
 そのタイミングに合わせてヴェイルはハンドルを微妙にきりつつ、手甲から気糸を連続発射した。
 小銃の弾が横へ逸れていく中、ボートの速度を更に上昇。エンダー船へと接近する。
 一方のノーフェイスたちはこちらから撃ってすぐに反撃が来たことに驚き、慌てて頭をひっこめた。
 反応の遅れた数人は気糸や銃弾を浴びて仰向けに倒れる。
「クソッ、タイミングが良すぎるぞ。こっちの動きを読まれてるのか!?」
「だったら闇雲でもいいから牽制するんだよ。これ以上接近されようものなら……」
 銃を三点バーストモードにして顔を出そうと構えるノーフェイス。そんな彼の目の前で金属フックが手すりに引っかかった。
「な――!」
 慌てて銃を突き出すノーフェイスだが、時既に優希が船内へと飛び込んでくるところだった。ロープの上を走り抜け、手すりを飛び越えてノーフェイス集団の中へ着地する優輝。
 両サイドから銃を向けられるが、その銃口を両手で握って電撃を発生。感電した持ち主ごと振り回し、連続で地面や手すりに叩きつける。昏倒するノーフェイス。
「クリア。エンダーはどこだ」
『その真下ってとこかな』
「了解した」
 優希は小さく頷いて駆けだした。

 その一方、真琴はボートを一直線にエンダー船へと突っ込ませていた。
 片目をつぶって狙いを定め、運転の片手間にジャスティスキャノンを撃ちこむ。
「近づける距離には限度がありますよ。ぶつかったら流石に壊れちゃいますから!」
「構わん!」
 まるで船首像のように船の先端で身構える剛毅。彼は剣を大きく振りかぶると、暗黒のエネルギーを集中させた。
 臨界に達した所で一気に解き放つ。
「セイヴァーダークネス……ヴァァァァァァァァスト!」
 剣の衝撃がそのまま暗黒瘴気の波となって船の外淵へと襲い掛かる。
 思わず目を瞑るノーフェイス達。それを絶好のチャンスと見て、九十九はボートから飛び立った。
 一気にハンドルを切る真琴。急カーブで船の外壁スレスレを擦って行くボート。
 一方で九十九はすたんとエンダー船の手すりに着地。
 顔を上げたノーフェイスたちめがけて次々と銃を撃ちこんで行く。
 反撃にと射撃を試みるも、彼らが引金を引いた時には既に九十九が背後に立っているという格の違いである。
「さて、私は少女の救出に行きますかのう。位置は変わっておりませんな?」
『大丈夫、最初に教えた場所のまんまだよ』
「ほいほい」
 九十九は手早くノーフェイスを鎮圧すると、目の前の窓ガラスをコンパクトに潜り抜け、大きな冷蔵庫を発見。開けてみると、中には裸体のまま震える少女が入っていた。
 その時の九十九が如何なる表情をしていたものか、仮面の上からは分からない。
「もう大丈夫ですぞ。さ、外へ」

『少女は確保しましたぞ。とりあえず安全そうなところへ』
「分かった。福松君、『女の子は無事』だってさ」
「そうか……」
「じゃ、こっちもそろそろチェックメイトかけちゃおうかな」
 アーベルはそう言うと、ボートに固定した高射砲座席へと滑り込み、発射レバーを引っ張った。
 船の外淵で射撃牽制していたノーフェイスたちが、襲い来る銃弾の嵐を前に頭をひっこめる。が、流石に隠れてばかりというわけにもいかないのだろう。
 決死の覚悟でRPGを担ぎ上げると、アーベル目がけて発射してきた。
「おっとこれは……」
「豆鉄砲ですね」
 本来銃座を守るカバーがある部分にヘクスが飛び乗り、シールドを展開。
 真正面から飛んできたミサイルをノーダメージで受け止めた。
「さあ……砕いて見せて下さい。ねじ伏せて見せて下さい。この絶対鉄壁を!」
「ああ、頼りにさせて貰うぞ」
 彼女の影から半身を出す福松。
 爆風が後方へ流れて行ったのを見計らってアンカーロープを放った。
「大丈夫? 何なら投げてあげようか」
「余計な御世話だ。先に行くぞ、ヘクス」
 福松はエンダー船の手すりにフックを引っかけ、手繰りながら外壁を駆け上った。
 素早く船内に転がり込むと、口に咥えていた銃を取って連続発砲。
 その場にいたノーフェイス達を打倒し、地下へ続く階段へと駆け込んで行った。

「エンダーはこの下で間違いないな!」
『だね。って言うかもう目の前に……』
「よう、クズども」
 急に飛び込んできた少年が、燃え盛る腕を繰り出してくる。
 咄嗟に転がる福松。地面に大きな穴が開き、少年――エンダーは顔を上げた。
「よう、エンダー。車に撥ねられた傷は癒えたか?」
「あぁ? 骨折れちゃって一生治らねーよ、慰謝料くれよ慰謝料ォ」
 ゆらゆらと立ち上がるエンダー。
「テメェのケツに腕ぶち込んで奥歯ガタガタ言わせて――っとお!」
 彼の足元に銃撃。エンダーは素早くその場を飛び退き、後ろに設置されていた水陸両用ボートに飛び乗った。エンジンは既にかかっている。
「なんでテメェらはいつも分かりやすい場所狙うんだよ。命中率はともかく回避しやすくてアクビ出んぞコラ」
「……またお会いしましたなエンダーさん」
 階段を下りてくる九十九。
 彼に伴って優希が階段を駆け下りてくる。拳に電撃を纏わせ、飛び掛る優希。
「悪いがここで死んでもらう!」
「死ぬのはテメェだ。意趣返し一発目だ――ゴミどもぉ!」
 アクセルを思い切り踏み込むエンダー。急発進したボートに弾き飛ばされる優希。
「おおっ!?」
 九十九は素早いバク転で回避。
 避けきれなかった福松は咄嗟に顔を腕で庇う。だがそんなもので避けられる物量ではない。これはまずいと思ったその時、ヘクスが福松の前に滑り込んできた。扉型のシールドを斜めに構え、ジャンプ台のようにボートを跳ね上げる。
 壁を突き破り、海へと飛び出していくエンダーのボート。
 続いて黒服たちのボートも船下部から発進していった。
「く……追うぞ!」
 すぐさま起き上がって船から飛び出す優希。
 丁度良くボートを寄せていたヴェイルが彼を乗せ、そのままの速度でエンダーたちを追いかけはじめた。
「私達も」
「ああ」
 九十九たちは頷き合うと、同時に船の淵から外へと飛んだ。

●エンダーズ・ボートチェイス
 激しいボートの蛇行。水流が弾けて渦を作り、空中でもがくノーフェイスがボートの脇へと落下。激しい爆発によって水柱を生み出していた。
「雑魚の牽制は任せておいて。そっちはエンダーをお願い」
『分かった。無茶はするなよ』
 通信を一時的に閉鎖し、ヴェイルは手を眼前に翳した。
「こっちよ」
 まるで網を投げるように気糸を発射する。
 黒服のボートはそれをギリギリで回避しつつ、ライフル弾を撃ちこんでくる。
 ヴェイルの頬を掠る弾丸。
 優希は頭をひっこめた状態で様子を伺う。
「相手の船に乗り移れれば楽なんだが……近づけられるか?」
「牽制しながらじゃ難しいわね」
「ってことはSHOGOの出番ね」
 翔護は銃を指でくるくると回し、胸の前で腕を交差させた。
「さあ行くよ、キャッシュからの……スターライトパニッシュ☆」
 飛び込んでくるノーフェイスをスターライトシュートで迎撃。
 腕や脚が吹き飛んだノーフェイスが複雑にきりもみしてボートの後ろへと落ちた。爆発でボートが押される。
 その勢いに任せて加速。ヴェイルは黒服の船へとギリギリまで近づいていった。
「そこだ!」
 タイミングを見計らって船頭からジャンプする優希。
 同じく船から飛び掛って来たノーフェイスを蹴りつけ、明後日の方向へと振り落とす。
「セリバエ召喚などさせてなるものか!」
 優希は空中で軽く回転しつつ黒服へ狙いを定める。
 着地と同時に首根っこを掴んで引き倒し、勢いよく船の外へと放り投げた。
 かろうじて水面から顔をだした黒服に、翔護が銃を突きつける。
「地図さえくれたら浮輪をあげるよ。オマケでエンダーちゃんから離してあげよう。どう?」
「興味はない。死ね」
 ライフルを突き出してくる黒服。翔護は反射的にトリガーをひいて発砲。額に穴をあけた黒服はそのまま海へと沈んで行った。

 一方で、エンダーのボートへと距離を詰めようとするアーベル船。
 それを沈めようと黒服の船が横付けしてきた。
「悪いが死んでくれ!」
 まるで殉教者の如く爆弾を抱えたままボートへ飛び移ってくるノーフェイスたち。
「嫌だね!」
 アーベルは射撃で牽制するが、腕の一本吹き飛んだ程度ではノーフェイスは止まらない。そのまま船へと飛び込もうとしてきた……所へ。
「くっくっく、そうはさせませんぞ」
 九十九のスターライトシュートが横合いから発射され、ノーフェイスたちを薙ぎ払った。
 海へ水没、爆発するノーフェイス。
 噴き上がった水柱を突っ切り、真琴は黒服の船へと体当たりをしかけた。
「援護します! そちらはエンダー船を……!」
 そう言いながらも船を押し付け、ジャスティスキャノンを乱射する真琴。
 境を跨いで踏み込んで来ようとするノーフェイスを、剛毅はバットスイングで吹き飛ばした。
「がーっはっはっは! この船を落としたいなら俺を倒してからにするんだな! ……おっと、この台詞は悪役臭いかな? ぐおっ!」
 船の操縦をノーフェイスに任せ、黒服が飛び込んでくる。咄嗟に腕を交差してガードする剛毅。
 黒服の拳を腕でしっかりと受け止めた……ように見えたが、次の瞬間には剛毅の背中がべっこりと内側から拉げていた。
「俺のフルアーマーが!」
「剛毅さん、伏せて!」
 黒服に向けて一斉射撃をしかける九十九と真琴。
 二人の攻撃に黒服は思い切り弾き飛ばされ、ボートから転げ落ちていく。
「こちらの船は制圧完了……と」
 九十九はそう呟いて、エンダーの船を見やった。
 ボート同士をぶつけ合わせて減速していたせいか随分距離を離してしまった。
 後は彼等に任せるしかないだろう。
「ピアニッシングシュートの出番が無くなってしまいましたな。……頼みましたぞ」

「――頼まれたよ、っと!」
 アーベルは耳に手を当て、再び高射砲座席へと滑り込んだ。
 エンダー船に向けて弾幕を浴びせる。
「うっぜえなあ!」
 一方のエンダーは手近なノーフェイスを盾にして防御。軽く減速するボート。
 アーベルはこれを好機とみてボートを加速。距離を詰めていく。
「さ、これで乗り移れるよ」
 後ろを振り向き、福松たちに合図を送った、まさにその時。
「余所見してんじゃねえぞコラァ!」
 エンダーが逆にこちらのボートに飛び移ってくる。
 反撃にと銃を撃つ福松だが、ノーフェイスの少女を盾にしてそのまま飛び込んできた。
 体内爆弾を起爆。位置的に移動が間に合わなかったヘクスは福松を背に庇ってガード。
 爆風でアーベルが銃座ごと船外へと吹き飛ばされた。
「あなたがエンダーですか。砕いて見せてくださ――」
「あァん? いいから退けよ鉄板」
 ヘクスが翳した盾に掌をつけるエンダー。その直後、伝心した衝撃が直接ヘクスの心臓を圧迫した。
「はぐ……!」
 歯を食いしばるが、喉から漏れた血が噴き出る。
 土砕掌か。そう気づいた時にはもう一撃叩き込まれていた。
 船から突き落とされるヘクス。
「ヘクス!?」
「っちゃあ、マズった。あの女残しておきゃよかった。後でぐっちゃぐちゃに犯してやったのに」
「…………」
 キッとエンダーを睨む福松。
 素早く銃を発砲するが、エンダーは首の動きで回避。こめかみから1センチの所を抜けていく弾丸。そして腕を炎で燃え上がらせ、福松の首に掴みかかった。
 勢いに任せて押し倒す。
 マウントポジションを取り、両腕に焔を発現させた。
 抵抗しようとする福松の両肘に拳を叩き付け、べきりと圧し折る。
「ぐああああっ!?」
「おっと、このポジション懐かしいな? 確かお前じゃなかったが……まあいいや、顔面潰れな!」
 そこからが地獄だった。
 顔面めがけて連続で拳を叩き込んでくるエンダー。
 福松にできることと言えば脚をばたつかせるくらいなものだ。
「さて、これで終わりだ!」
 両拳を組み合わせて掲げるエンダー。
 そんな彼の視界の端に、映るものがあった。
 水上バイクを走らせ、ジャンプするアーベルの姿。
 バイクの前面に足を引っかけ盾を構えるヘクスの姿。
 その一塊が、自分に突っ込んでくる姿だ。
「く――そがあああああ!」
 側頭部に直撃。エンダーがボートの上を転がる。
 福松はぐったりした腕を引っ張り上げ、残った力の全てを込めてエンダーの口に銃口を突っ込んだ。
「この距離なら、外さん!!」
 ギルティドライブ連射。
 数発の弾丸が駆け抜け、エンダーの頭部を破壊。
 飛び散った血と肉が、ボートの上にじわじわと広がった。

 この後、偽装船に残してきた情報とエンダーが所持していた情報を回収。更に囚われていた少女も回収に成功した。
 この事件におけるノーフェイスとフィクサードに生存者は無し。
 凶人エンダーは最後の言葉すら残さず、この世から消えたという。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れ様でした。
 セリバエ召喚に関する情報を無事ゲットしました。
 To be continued――。