●プログラムの化身 -LANG=...- 万華鏡に、ブルーのスーツを着崩した男が映った。 髪もブルーで、大げさにオールバックにした長髪と整った顔立ちが特徴的だった。 「――と、いう訳だ、俺たちをさ、狩ろうとする連中がいるのさ」 青い男が言葉を発した先に、映像が移る。 「話は分かった。しかし……あの者と協力するなど……」 修道服を着た女が体育座りで、青い男に言葉を返す。 修道服の視線が横に切れれば、赤墨色の闇に溶けるようにして、壁にもたれ掛かる様なマントの男が一人。 「よぉいではないか。向こうから来てくれるのならば、存分、血にありつけよぉうものだぁ」 マントの男からの重厚なバスに、修道服の顔は――ベールで半分隠れているが――懸念めいた表情を浮かべる。 「汝が我が城に来た時の事を思い出す。ククク……」 「貴様……デミタスッッ!」 修道服は瞬間沸騰した様に立ち上がり、マントの男――デミタスを睨む。 次に手を前に、親指を畳み、四本の指を並べた形の掌を、クンっと上へ動かせば、デミタスの足元から竜巻が巻き起こった。 「ククク……無様よな、ジニ子よ」 ジニ子の腕を緩やかに"後ろから"手を伸ばして掴むは、八つ裂きにした筈のデミタス! 「く、貴様、デミタス! "子"をつけるな!」 「はいはい、やめやめ! ミスターもわざわざ挑発せんでよ」 かしわ手を叩きながら中断を告げる青い男に、デミタスはジニ子の手を離し、ジニ子も向き直る。 「ジニ子さんも、話が分かったって言った側から、勘弁してちょーだい」 「むう……」 俯いて口を閉ざすジニ子に対して、デミタスはニヤニヤと笑みを浮かべる。 「長居は無用だ。撤収するぞ」 青い男の号令に、ジニ子が移動する。デミタスは従う素振りを見せない。 「どうした? ミスターデミタス」 「汝の名を聞いていない。無礼だと思わんかね?」 「ああ、すまんよ」 青い男は悪びれもせず、両手をオーバーに広げながら。"頬を赤らめ"て。 「俺はEvans Manという。音ゲー筐体の出さ。Yes,next door!」 ●げえせん! -Game Center- 「げーせんでエリューション・フォース」 ――ガタッ 『リンク・カレイド』真白 イヴ(nBNE000001)の言葉に、ガタッと立ち上がったリベリスタの手には、エアジョイスティックが生じているような気がする。そろそろガタっとするのも疲れる可能性もある。 「時間は夜。"格闘ゲームの筐体"から出てきたエリューション・フォースと、それを手引きしているらしきエリューション・フォース。彼等を倒してほしいの」 映像を見れば、何とも珍しい人型のエリューション・フォースである。 手渡された資料によれば、先日も似たような事件が発生していたという。 「コンピュータプログラムのエリューション。考えもするし、思考もする。そして学ぶ。意外と厄介よ」 脳という器官には、微弱な電気の信号が駆け巡っている。 これを模したコンピュータ。異国の言葉で"電脳"というそれは、0と1の最小単位の信号で動く、脳のフェイクである。思考はプログラム。 となれば、手引きしているエリューション・フォースは、自らを滅ぼさんとする存在がある事を"学んだ個体"なのか。逃げる可能性を考慮しても損は無いだろう。交渉の余地は薄そうだ。 「それから、このエリューション達は、同士討ちすると力を吸収してフェーズを上げるみたい」 デミタスという個体とジニ子という個体は、仲が良さそうには見えない。これも注意が必要か。 「あと、デミタスという個体は、『性別を逆にする魔法を使って"女の子"を吸血してくる変態ヴァンパイア』」 一同は絶句する。思索が中断する。 イヴはしかし、よろしく、とだけ静かに言った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Celloskii | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月18日(火)22:59 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●げえせんばとる -Real Fight- ゲーム筐体が整然と並ぶゲームセンターのフロア。 床のタイルに、カツカツとリベリスタ達の雑踏が響き渡り、止まり。 3体のエリューション・フォースと相対する。 「あちゃあ……噂をすれば、か」 青スーツの男、Evans Manはオーバーな挙動で額を押さえた。 「この者等が敵対者ですか。Evans Manさん?」 返事を待つまでも無くに、問答無用と修道服の女。ジニ子は身構える。 「ほう……面白い」 デミタスは顎に手をやって微笑を浮かべながら、ねっぷりとリベリスタの面々を見渡す。 「私は…あまり、ゲームとか、よく知らないのですが…友達に、好きな子が…一人います」 『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)は、すらりと魔力剣を抜き放つ。 「ここに居たら、熱く語ってくれそうだったんですが……」 その好きな子――告死の蝶から伝え聞いた"仇"はこの場に居ないから、敵討ちという訳でもない。が、高度な知性を持つエリューションであるから、戦う理由には十分だった。 『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)も、感慨深く敵対者を見据える。 「ゲームキャラのエリューションか。何でもありだな、神秘世界は」 とかくマニアックな技を多く使う。注目は性別を反転させる魔法である。 「野郎を可愛い可愛い女の子に変身させたら、サムズアップでグッジョブと褒め称えよう」 ――ブレスの発砲。 同時に弾丸を飛び越える様にリンシードが駆け、戦闘は瞬時に開始される。 「BGMも始まらない内に、せっかちなもんだな、お前ら」 Evans Manの左右から、灰色の棒状のシーケンスと、矢印型の図形がそれぞれ浮かぶ。 「一曲目から飛ばしていくぜ! BGM:Geni=ko The Wind」 次々と放たれるデコイ、ファの弾幕。 しかし放った当人であるEvans Manの意図を無視して、弾幕はリンシードへと向かう。 「何ィ……?」 「アッパーユアハート…」 リンシードが静かに初手を潰した。 「あ、あの修道服は超反応でこちらの飛び込みを竜巻で潰し、ゲージが無くとも超必を使って来る鬼畜じみたボスキャラ!……の女バージョン?」 『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)は、えらい具体的にうんちくを垂れながら、抜き打ちで連続に弾丸を放つ。 「そう言えば別のゲームに性別を転換する技を使う奴がいたな……」 あの吸血鬼、それっぽいが……まさかな、と考える。 ブレスの悪い視線を振り払って、銃を構えるじゅっさいおとこのこ、とってもがんばる。 弾丸が、リンシードに纏わりつくデコイを砕くと同時に、フロア全体にBGMが鳴り響く。 「ノッてきたああああ!」 『ムエタイ獣が如く』滝沢 美虎(BNE003973)は高をくくっていた。 「今こそわたしのなかに宿れ、帝王の魂っ!!」 偉大でカッコイイ彼を真似る如く、胸の前で二の腕を交差させて、いつでも高笑いできるように構える。 『機械仕掛けの戦乙女』ミーシャ・レガート・ワイズマン(BNE002999)は、ミッドナイト魔法だとかそんなものはどうでも良かった。 「ついに彼が参戦したんですね! ホッケー型対戦音ゲーを手掛け、現在はつまみで有名なあの機種をプロデュースしている彼が!! 胸熱です!!」 熱い視線はEvans Manへと向く。 「……う?」 悪い視線に、Evans Manは身震いする。 「Yes, Next Door! 逃しませんよ! Mr.Evans Man! ヒャッホオオオオオ!!!」 翼の加護を放ち、一同は重力から解き放たれる。これでボス曲-冥王星-も楽に攻略できる筈である。 「っと、格ゲーはやるんだが音ゲーはやらねぇんだよなぁ」 『ヤクザの用心棒』藤倉 隆明(BNE003933)は、エアスティックをガチャガチャしながら、矢印の一つをヤクザキックで蹴り砕く。 「BGMといい、本当に格ゲーっぽいな。……コマンドはこんな感じだったか?」 誰とも無く同意を求める様に横を見ると、いつの間に近づいたのか。デミタスである。デミタスと目が合う。 悪寒めいたものが走って、首裏がぞわっとする。 「よ、よっし、ゲーセンでの禁じ手リアルファイトナックルで相手をしてやるぜ」 「来たまえ」 『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷 小夜(BNE001462)は、全身にマナを巡らせながら、何やら思い出をぽつりぽつりと語る。 こんな時にしか言えないと、胸の内。 「私が幼稚園だった頃、とあるアーケードゲームがそこそこヒットしたらしいんですよね。登場人物と私の名前がかぶってたのを両親が面白がって、神社に何度も連れて行ってくれたんです」 嗚呼、――そんな私は、今では神社で巫女のお仕事をしつつ、エリューション的な意味で妖怪退治もやっていますよ。天国のお父さん、お母さん。と天井を見上げる。半透明の両親が微笑んで頷いている様な気がした。 ある意味、両親にハメられたのかもしれない、とチラチラよぎるが、それ以上はいけなかった。 「うん、私の技がドレだけ通用するか今から楽しみ。さて……」 『炎髪灼眼』片霧 焔(BNE004174)は、堂々と前に出て拳をつきだした。手近に来ていた灰色のシーケンスを殴り、燃やす。 ゲームのキャラとリアル格ゲー出来る。何とも高揚が止まらない。 「――退屈なのはゴメンなの。貴方達は少しは燃えさせてくれる人?」 エリューション・フォース達は、ニヤリと笑みを浮かべる。 ●荒ぶる旋風のジニ子 -Geni=ko The Wind- BGMがガンガン鳴り響く中、BGMに混じる事無く、――ぽん、と明瞭な音がした。 煙が湧いたかと思えば、リベリスタ達は自身の状態に違和感を覚える。 「クソ変態が!」 隆明は悲鳴を上げた。その声は甲高い。 短かった髪がえらい伸びている。 亜麻色の髪は一層ふわふわしている。スーツであるずり落ちている。手がすっぽりと袖で隠れるのである。マニアックである。 横を見れば、全員が果てた姿である。 「野郎を可愛い可愛い女の子に変身させたら……グッジョブと褒め称えようと考えていたのにな……」 ブレスは本音をデロデロと漏れさせる。 ワイルドびゅーちいになったブレスは、たわわになった胸を片手で下から持ち上げてみる。次に怒りが湧いてくる。 「馬鹿野郎! 俺が女になったら可愛い可愛い女の子と遊びにくくなるじゃねーか!!」 デミタスごと、盛大に弾丸を撒き散らす。まき散らした弾丸がEvans Manのデコイを駆逐する。次に蹴りを刺す。 「高々性別が変わった位で揺らぐほどオレの心はヤワじゃな……スク水に水鉄砲……だと……?」 福松は、1-3白なんとかと書かれたスク水に驚愕する。 ぴゅっぴゅっとじゅっさいおんなのこは、水鉄砲でとりあえずジニ子の服を透けさせる。がんばる。 「ふははは、では血を頂こう!」 ニンマリと笑うデミタスは、マントの前面をばさあっと開く。"女性陣"の眼前にデミタスのぴっちりした燕尾服が顕わになる。 ムキムキマッチョである。じりじりと躙り寄るのである。 「へ、変態だー!!」「死ね! 変態!!」「寄るな! クソ変態がっ!」 五人の"男性陣"は、イケメン揃いである。とかく、イケメン揃いである。 「全員あとで俺のオフィスに来なさい」 Evans Manの目が光る。新たな弾幕を生じさせる。 「男同士とか…性転換とか…随分と非生産的なこと、してるんですね……」 水色の髪を靡かせて、リンシード"君"は改めてアッパーユアハートめいた毒を投げる。矢印とシーケンスが集中する。 「萌えるんだからいいだろう、ロックだろ、そのほうが?」 ふてぶてしく軽口で返すEvans Man。 リンシードは、このEvans Manのデコイどもが一番のネックになると読み。ならばと一手に引きつける。イケメンである。 「はい、フルコンクリアー!」 そして、リンシードにまとわりついた弾幕の一部をミーシャ君が破壊する。 「そういえば、あのお二人は某魔界の騒乱を舞台にした格ゲー界の出身ですね。ミッドナイト魔法はどんなキャラでも女体化するという超必の一つだったはずです」 早くも分析を始めたミーシャ君の足元より、猛烈な風が荒び上がる。 「どこを見ている」 見れば、ジニ子が手首を効かせ、掌をクンっと上に。 ズドンと、天井を突き破るが如き竜巻がいくつも上がり、ゲーム筐体ごとリベリスタ達を薙ぎ払う。 ミーシャは切り刻まれながらも不敵に笑い、グラサンを傾ける。 「さあ、始めようか」と、どこぞのスーパースターばりのポーズをとる。 風の壁ともいうべきものが立ちはだかれば、その壁を両断して走る大男の影―― 「るぉああああッ!! 虎(とぉらぁ)ッッアパカッ!」 謎の大男がデミタスへと接敵する。 「くっ!? ごはッ」 謎の大男。禿頭で、眼帯で、胸に傷のある大男が、天を突くが如きアッパーカット土砕掌をデミタスの腹部に叩きこみ、昇竜する。 誰だ? という疑問が一同に浮かんで―― 「フッフッフ、今のわたしは滝沢美虎ではない……偉大なるムエタイ帝王なのでみんなもそう呼ぶように!」 二の腕を胸の前で交差させてワッハッハッハハと笑う姿は、まさにムエタイ帝王の貫禄。イケメンである。 「……ムエタイ帝王だと……ふん、下賤な」 「初代ボスへの敬意が足りんらしい。仕置きが必要と見える」 "血中ムエタイ"が気化してコオオオオっと口から漏れる。白目剥き、のしのしと歩みを進める。"女性陣"を窮地から救ったイケメンである。 小夜君は、学ランに変わった。 漆黒の髪は茶髪めいたショートカットになり、赤いリュックが付属している。 嗚呼、自分の名前"小夜"だから。前回、巫魔女のエリューションと戦った時に想起したあのシューティングか、とちょっぴり納得した。コンパクトを取り出して鏡を見る。イケメンである。でもあのキャラ、バカなんですよね。 「……癒します。祓いたまえ!」 ちょっと頬を赤らめてながら、光を放つ。ジニ子の竜巻で生じた出血を癒す。 横で、赤髪の少年がデジカメで皆を撮影している。焔らしき。 「とっ、今はそんな場合じゃなかったわっ」 焔も学ラン――短ランである。鉢巻が付属している。イケメンである。 焔はジニ子へ吶喊する! 交差する手甲と手刀。交差する視線! 「ジニ子……ジニ……子? 何か引っかかると思ったら貴女って元は……」 「ん、貴方は……」 ジニ子が驚愕したような顔で焔を眺める。焔は一旦間合いをとる。 謎の沈黙と束の間に空白めいた時間が過ぎて―― 「コホン。今はそんなの関係ないわね」 「……そうですね、他人の空似と思うことにしましょう」 ジニ子の周囲に旋風が生じる。 更に威力が高まる気配に、緊張が走る。 「なんつーか、見切られちゃってるかねぇ……予知能力でもあんの?」 Evans Manは思索する様に顎に手を当てる。 「……回収できないなら、アマリムスの嬢ちゃん越えでも狙ってみるか」 Evans Manの目は、敵対者ではなく、ジニ子へと向いた。 ●マントの下はぴっちり燕尾服 -Demitasse The Crazy Vampire- 「無駄です。早くこの筐体とかいう箱の中に戻ったらどうですか……」 リンシードが改めてデコイを引きつけんと、挑発を重ねる。命中は上々。パターンハメは十分機能している。 「あーあーあー。手強いねえ……んじゃ、BGM:Demitasse The Crazy Vampire! 足踏みメリー仕様だ!」 Evans Manより、先程のパターンと異なった弾幕が生じた。 灰色のシーケンスめいたデコイの後ろから、大量の同じ向きの矢印が襲来する。 「あなたに皆伝が! トイサイダー村が! ハエレが! クリアできるか!」 両腕から白い素麺のような束をひらりと、ミーシャが灰色のシーケンスを撃ち落とす。 「うっせぇえ! 業界用語詳しすぎんだろ!! 百烈拳できねーやつは来んな!」 「指4凶はクリア済みですから!」 リンシードはクエスチョンを浮かべる。小首を傾げる。 次に、連続した弾幕をひらりと回避する。これは避けても良い弾幕である。 「ん~~~~デミタス!」 デミタスは満足そうな笑みを浮かべた。 隆明の首筋から血をちゅーちゅー吸って、ハッスルしたかのように再動する。情け容赦なくブレスを味見する。 「お前ぶっ殺す」 「ぶっ殺す!」 「プリーズ。淑女がそんな言葉を使ってはいけないよ」 チッチッチと、デミタスは指を揺らす。ピッチリ燕尾服に包まれたマッソォも揺れる。 「よかった、オレには無い」 安堵するスク水の少女福松。次にぞっとする。 デミタスは唐突に両手を左右に広げ、まるでハグするようなポーズをとる。 「私は紳士だからね。幼女は犯罪だろう? 代わりに私の胸に飛び込んできなさい」 殺気を漲らせて隆明が駆ける。ブレスが駆ける。 ――そして"通り過ぎる"。 個々の羞恥だとか怒りだとかよりも、作戦を優先させる優秀な"女性陣"である。 "男性陣"も負けていはいない。 「虎(とぉらぁ)!」 「ごフォァ!」 そして、ハグのポーズをとったデミタスのガラ空きな鳩尾に、ムエタイ皇帝美虎の膝が入る。 「貴様がわたしの相手か……いいだろう、かかって来るが良い!!」 「いや、貴殿から挑んできたのではないか!?」 折角吸った血を血反吐に変えて、デミタスはぷんすかと怒りゲージを上昇させる。 「さぁ、祈りましょう!」 決まり文句を唱えながら、ジニ子の姿が消える。 次にシュっと現れて、焔を羽交い絞めにする。 「……っ!!」 焔とジニ子を中心に、先ほどよりも更に巨大な風が上がる。混じる破片。ゲーム筐体が薙ぎ払われ、物理的に砕かれる程の。 「まず一人」 倒れた焔を一瞥し、見据えるは隆明と福松。 「よおジニ子ちゃん大変だな? 女になる気分ってのは……いや、気分最悪なのは分かってるけどよ」 言いかけて隆明は自己嫌悪に陥る。 「なんとなく嫌な予感はしてたんだ……だけどよ……これは情けねぇ」 涙目が可愛らしいのである。 「お気持ちは察しま――」 たぁん、と銃声が響き、ジニ子の頭部が大きく揺れる。 「不意打ち闇討ち卑怯で上等ってな。ああくそ、胸が邪魔過ぎる」 硝煙を筒から上らせながら、ジニ子の死角からブレス。 「全ては……あの吸血鬼の仕業」 よろりとジニ子は立ち上がる。 「拳を交えてわかりました。私と共闘できませんか? あの吸血鬼を滅ぼす事に」 「そうはいかねえんだな」 福松が銃をつきつける。 「貴方達には、筐体の中に帰って貰わなくちゃ……ね」 焔が立ち上がり、構えを作る。 「バカな……倒した筈……?」 驚愕するジニ子に微笑みながら小夜がゆるりと影から出る。 「格闘ゲームには、回復技なんてあまりありませんからね」 ――ぼかん、と音がした。 視線が向かうと、ジニ子やリベリスタ達に背を向ける形で、リンシードから煙が立っている。 「とりあえず…視線が動いたのは見逃していません。庇いに入りました」 「ちぃいい!」 盛大に舌打ちをするEvans Man。彼が何をしようとしたのか。 それは、事前に"何をするか"を得ていたリベリスタ達にとって明白であった。 「フ……これでも格闘家の端くれ。諦めませんとも、最期まで」 ジニ子が両手を広げ、そして頭上で交差させる。最後の突風が駆け抜ける。 その風が過ぎ去った時。 リベリスタの集中攻撃により、ジニ子は潰え。 そしてそれが、勝敗を時間として確定させる。 重厚な回復。決して撃ち漏らさないリベリスタ達の作戦―― 「対空6強K(相手空中喰らい)> 虎(とぉらぁ)……でぃすとらくちょんッ!!」 「ほげぇ……!」 ムエタイ帝王のワロスコンボを受け、ぶっとんだデミタスを覗きこむ様に、影二つ。 「さて、覚悟はいいか。デミタス」 ブレスがガシリとデミタスの腕を握る。ギリギリと音が鳴る。 「次はお前の番だぜ。丁寧にすり潰してやる」 隆明も、だぼだぼの袖ごしに、ぽきぽきと拳を鳴らす。 「コンボゲーには無い一撃必殺の醍醐味、食らってみるか!」 スク水少女が凄んでみる。 「ふむ……」 デミタスは、顎に手を当てて感慨深く頷くと、唐突にブレスと隆明の胸を鷲掴む。 「私の勝ちだ、淑女た――」 隆明のマッハパンチ(蒼穹の拳)がデミタスの顎を捉え、上からブレスのデッドオアアライブが脳天を潰す。 ――嗚呼、血味噌が散る。…… ●エヴァンスマン -NEXT DOOR- 無数の弾幕が生じる。 次に、無数の銃声が響き渡り、全てが消滅する。 「ハッハッハッハッハ……完封とは恐れ入る」 結果的にEvans Manの企みは全て潰えたのである。 弾幕はリンシードや射手の活躍により効果を発揮しない。 Evans Manの最大の攻撃すら、今の通りにブレスのハニーコムガトリングで一撃である。 Evans Manに粘着していたミーシャがしれっと退路を押さえる形で、やはり粘着する。 「音ゲーはよく知らんが、リズムに乗れなくて悪かったな!」 音ゲーの最期は乾いた音。福松の銃声が締めくくる。 フェーズ2に近かろうと、1は1。連携の無いフェーズ1などこんなものである。 「個人的にはIN THE 青い空でびゅーんとロボット操作するゲームとか好きなんですが、あれのエリューションは……出てきたら大惨事ですね、巨大ロボとか。考えないことにしましょう」 小夜がしれっと変なフラグを立てる。 立てるべからず。この世に神秘がある限り、ありえない事が現実となってしまうのだから。 そう、ゲームキャラクターが実体化して、ボトムチャンネルの敵となった、今日の様に……。 Next "Master Prison" & "Armor Breeaker"... |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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