●蠢く異質 月明、凸凹ビルに踊るネオン。 喧騒、アスファルトを踏み締めるのはいつだって二つの脚とタイヤ達。 しかし彼らは誰も、知らない。この街の陰に『異質』が潜んでいる『事実』を。華やかな文明達とは裏腹に。皮肉にも。 そして異質は唸り、哮り、我が物顔で陰を往くのだ。 ●リベリスタ出動! 「さて、エリューション発生事件を察知致しましたぞ皆々様!」 事務椅子をくるんと回し、集った一同を一望した『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)は快活な物言いで低い声を響かせた。その背後モニターに映るのは、三体の異形――これが件のエリューションだろう。 「未来予知によって出没を察知したのは、フェーズ2のEビースト一体、その増殖性革醒現象で発生したと思われるフェーズ1が二体の、合計三体でございます。 皆々様に課せられたオーダーは一つ、そしてとってもシンプル――これら三体のエリューションの討伐でございますぞ!」 各エネミーの詳細情報はそこの資料を参照して下さい、と視線で卓上のそれを指し示し、メルクリィは説明を続ける。 「エリューション達には高い知能や堅固な連携こそないものの、相応に厄介ですぞ。特にフェーズ2は物理的な能力と身のこなしに優れ、個体能力も高く危険です。お気を付けて! それから現場ですが、光源や足場類の心配こそ無いですがあんまり派手にやらかすと一般人が来てしまうやもしれません。その辺の対応もよろしくお願い致しますぞ!」 リベリスタとして神秘秘匿は必須である。頷く彼等に機械男は一つ頷き、「サテ」と一間を空けて。 「偶には因縁や陰謀や葛藤なんて無い――ドシンプルな任務なんて如何でしょうか? 肩の力を抜いて、しがらみも無く思いっ切り戦うってのも良いかもしれませんな。 あっ、勿論油断は禁物ですぞ! 戦闘が主となる以上、危険は常に付き纏うものですし」 いつも心配なんですからねとメルクリィは苦笑する。 「さて、説明はこんなものにしておきましょう。それでは皆々様、お気を付けて行ってらっしゃい! 私はいつもリベリスタの皆々様を応援しとりますぞー! フフ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月09日(日)23:15 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●こんばんは 24時間が巡って、今日もまた夜がやって来た。 喧騒は遠く。遠巻きのネオンが、路地裏を行く『墓掘』ランディ・益母(BNE001403)の靴先を照らし出す。ゴツ、ゴツ、重厚な体躯に見合う足音が響く。ゴツン。立ち止り、周囲を見渡し、一般人が居ない事を確認すると『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)へ視線を送った。 「路地裏とは言え街ん中だしな」 「了解です。――近くありて遠き地となさん」 張り巡らされる強結界。これで思う存分動いても問題無い。凛子はその手に手術用手袋を装着しつつ、呟いた。 「街の片隅に出現したエリューション……世の歪みが生んだ産物なのでしょうか?」 でも、と逆接。大きな事件になる前にここで終わりに致します、と。夜風に白衣が翻る。その通りだとランディが答える。 「シンプルな仕事だ。だからこそ、実力を発揮しないと話にならない」 油断せず、確実に仕留めるぜ。傷だらけの大斧を手に言う言葉。同感だ。『住所不定』斎藤・和人(BNE004070)は無骨な印象の大型拳銃を構えつつ。 「どんなややこしい事情アリな話でも、仕事ってんなら何だってフツーにこなすけどさ」 緩くパーマの当てられた髪を掻き上げ、口角を擡げる。緩い雰囲気とは対照的に防御のオーラでその身を固めた。 「そーいう面倒なの抜きで、単純にやり合うってか……面白そうじゃねーの。折角の機会だ、存分に楽しませてもらうぜ?」 「まぁ、単純なら良いって話でもないがな。人外魔境、複雑怪奇、悪意狂気の大バーゲンよりはマシか」 それじゃ今日も世界の平和を護るとしますかね。『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)は打撃系散弾銃「SUICIDAL/echo」を担ぎ直した。 「此処の所異世界やフィクサードの対応に追われていたが」 『生還者』酒呑 雷慈慟(BNE002371)は心の内で再確認する。忘れなどしない、崩界を食い止める事が自身の使命であり役割。初心忘るべからず。 相手は変異覚醒体――夜の帳を下ろすモノ。 我々はリベリスタ――夜の帳を上げるモノ。 (月を朱に染める事。何としても其だけは、阻止撃滅させて貰う) 超頭脳演算。外道の書を秘めた胸元、悪意を受諾し、執行する覚悟が内包されたそこに機械の手をやり、正面を凛然と見澄ました。 「頭がのこぎりになったお犬さん、蓋に口ができたゴミ箱さん、赤いガス……ううう、夜中にTVで流れてる映画みたいな方たちですっ」 ぶるりと身震い、『娘一徹』稲葉・徹子(BNE004110)は幾分大振りな樫の木刀をぎゅっと握りしめた。無害な俳優になったらきっと喜ばれたと思うのだが、エリューションなら仕方がない。 「街の平和を守るために、打ち倒しますっ」 「街の人達もこんな事が起きているとは思わないだろうな。そして知らないままがいいんだ――一般人への被害を防ぐ為、ここで食い止める!」 堅い拳を握り締め、言い放つのは『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)。 各人に準備を整え、気持ちを固めるその最中。戦闘前の緊張空間――に響いたのは、 「でもやっぱりあの笑い方赤いモップの彼に似てるよね。だからって緑の怪獣も出てきてやっぱり同じ顔だったらどうしよう? 胸の前で手を交差させ、ビシリと決めポーズを取る『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)のノリノリな声だ。 「オーケィ、それじゃ疾風! 千里眼(サウザンドアイズ)ヒァウィゴー!」 「了解――ARK・ENVGⅡ起動(イグニッション)!」 特撮ヒーロー風ゴーグルを装着する疾風は翔護と共に千里眼の力を用いて周囲を見渡した。4つの目、360度。見えぬモノも死角も無い。 「「見付けた」」 まだこちらにも気付いていない。距離はそうまで遠くはない。ご苦労様です、と凛子が頷いた。 「準備万端ですね。皆さん、怪我のないようにがんばりましょう」 翼の加護を皆へ施し、自身は魔力の体内循環を。 ふわり、浮き上がり行動を開始するリベリスタ。 「では往く。各々の活躍に期待する」 そう言い、先んじて進み始めたのは雷慈慟を始めとした甲班――疾風、凛子、和人と共に。 「おうよ」 その声に親指を立てて応えたのはランディ、彼が属するのは乙班――喜平、翔護、徹子だ。 夜が始まる。 ●そんな夜会 ガサ、ガサ、不穏な、蠢く音、気配、息遣い。殺気。視線。乙班の面々は、彼等がこちらの存在に気付いた事を知った。 「あいや待たれよ、其処な人外御一同。故あって貴殿らを打ち倒しに参った次第で……オカクゴヲー」 大見得。口上。手を広げ、喜平は口角を吊り上げた。問答する様な相手でもないが、あんまりサッパリし過ぎるのもね。なんて。オールドジャパニーズスタイル。そしてここからは自分流。走り出した世界は90度。面接着で壁を駆け、ぐんと速度の上がる世界で散弾銃らしきモノを振り上げた。 「そらァ!」 武骨極まる武器から繰り出されるのは、見た目とは裏腹に『光の飛沫が飛び散る様な』『芸術的な』『華麗にして瀟洒な』と賞される無数の速撃。路地に漂う赤いガスを強襲する――確かな手応え。紙一重で直撃には至らなかったものの、別段物理的な攻撃が効き難いという事は無いらしい。 その旨を伝えるべく張り上げた声――直後にそれを劈く、けたたましい駆動音。ばるばるばるばる。チェーンソーハウンドの三つ首が『唸りを上げる』。三つもあるから尚喧しい。 飛び掛かって来たチェーンソーハウンドがチェーンソーの頭部を振り回した。力任せの攻撃。駆動音と共にリベリスタ達を切り裂いて、赤い色を夜に散らせた――防御に斧を構えたランディの頬にも一閃、伝うのは髪と目と同じ色。舐め上げれば鉄の味。今度はこっちの番だと踏み込んだ。 「派手に行くぜ! 巻き込まれんなよ!」 轟、と。高速でぶん回すグレイヴディガーが巻き起こすのはチェンソーハウンドとデストラッシュを巻き込み切り裂く激しい烈風、呻き声にも似た風切音。 デストラッシュが激しい攻撃に怯んだ――その隙に徹子は集中を重ね、翔護は懐から素早く銃を抜き出した。 「キャッシュからフェイント気味の……パニッシュ☆」 放たれた弾丸はレッドガスへ。交差する様にレッドガスが放った毒ガスは翔護へ。 その直後、チェーンソーのエンジン音に負けじと張り上げられた声が戦場に響いた。 「騒ぎが大きくなる前に片付ける! 変身!」 電鋸犬の前に躍り出た疾風が拳を掲げる。幻想纏い起動、光を纏った後に現れたのは一人のヒーロー。戦闘の構えを取る。 彼の隣、更に道を塞ぐよう和人が立った。取り逃がしたら拙い。きっちり片付けなくては。チチチ、と犬を呼ぶ。 「ハローハロー犬っころ共。ご機嫌いかが?」 エリューションのチェーンソー顔に映るのは、乙班とは反対側から現れた甲班の面々――もしこの犬がフィクサードか何かならこう言っただろう、「挟み打ちか」と舌打ちながら。だがそれにその様な知能は無く、ただ目の前に現れた得物へ唸りを上げて襲い掛かるのみ。吼える様に駆動音。 その間隙を縫い、チェーンソーハウンドの顔面を穿ったのは一本の糸だった。甲班、雷慈慟の指先。 「動物に手を出したくは無いのだが……」 呟いた。一点の殺意を、怒りを、目の無い視線をその身に受けながら。だが。だがしかし。そうだとしても。 「如何した所で粉砕するんだ だから! 謝罪はしない!」 躍り掛かるチェーンソー、駆動音の中で怖気つく事なく張り上げた声。片手を翳し、脳内で爆ぜるシナプスと共に展開させるARMS-弩-バインダー。22枚の盾と、一転目掛けて振り下ろされた凶撃が激しくぶつかり合う。 強く、重く、攻撃的で暴力的な一撃だ。防ぎきれなかった分が彼の肉を引き裂き、血華を咲かせる。だが雷慈慟は顔色一つ変えず、皆へ冷静に言い放つ。 「諸君、成る可く貫通攻撃に含まれぬよう留意を」 「えぇ、簡単に落ちるわけには参りません」 頷いた凛子は詠唱によって柔らかな微風を紡ぎ出す。吹き抜ける治癒の施しはリベリスタ達の傷を、痛みを、拭い去る。 「さて……どんなもんかね」 雷慈慟によって齎された怒りに任せてチェーンソーハウンドが振り回す凶器をアームガードで往なしつつ、和人は改造銃を握り直し大きく踏み込み間合いを詰めた。振り上げる愛銃が一点の曇りも許さぬが如く光り輝く――リーガルブレード。和人が実戦で使うのは初めての技。怯んでくれたら儲けもんだ、そう思いながら叩き下ろす。 「おぉ、こりゃ中々……」 悪くない。確かな手応え。護り手(クロスイージス)だが攻撃だってガンガン突きたいお年頃。曰く、「硬ぇだけじゃ良い声で啼かせらんねぇだろ?」と。 一方。デストラッシュが麻痺している間にランディが振るった斬撃の疾風が戦場を駆け、レッドガスの朧な身体を切り裂いた。追撃を狙った翔護が放つ弾丸を回避すれば、そのまま繰り出す温熱ガス。熱と炎がレッドガスに立ち向かうリベリスタの肉を肌を焼く。焦げる臭い。脳に伝わる『痛い』という信号。 それでも、だ。徹子は臆さず怯まず地面を蹴った。樫の木刀を両手でしっかり握り締める――相手はガス、攻撃するイメージが掴み難いがエリューションである以上、生き物だ。 (内側まで打ち徹せば、いつもの土砕掌の手応えで行ける筈っ!) 振り上げる木刀、鋭く見澄ます視線。 「稲葉徹子、名前の通り罷り通ります!」 裂帛の気合と共に百人殴っても大丈夫だったという曰く付きの逸品が叩き下ろされる。確かな手応え。レッドガスの芯中を打ち据えて、土をも砕く破壊の気。まるで断末魔を上げるかの様にエリューションの身体が揺らめいた。直後、その身体が掠れ、薄れ、霧散する。討ち倒したのだと知る。 「良し、お次は、っと」 それを見届けた喜平は「SUICIDAL/echo」をデストラッシュへと向けた。ゴミはゴミ箱に。ジャンクはジャンクに。 しかし、悪夢か何かの様に立ちはだかるランディの前にエリューションは既にボロボロであった。如何に堅固な防御力を誇ろうともそれを上回る攻撃力の前には無意味で、身を固めた所でそれをこじ開けぶっ壊されれば詮無い結果。きっとその辺のフィクサードなら泣いて逃げ出しているだろう。尤もそれを快諾する様な墓掘りでは、万が一にも無いのだけれど。 等。思いつ、喜平は引き金を引く。銃口から放たれるのは黒い津波を思わせる烏の群だ。式符・百闇。鳥葬するが如くデストラッシュに襲い掛かる。 圧倒され、猛毒と不吉に苛まれ、その身体に亀裂を生じさせたエリューション。それでも口から固めたゴミの塊を吐き出し、リベリスタ達を攻撃する。空を切って飛び来る塊が翔護、徹子の身体にめり込む。ふっ飛ばす。 「うぐっ、」 徹子の背中に重く伝わるのは冷たく硬い壁の感触。ずり落ち、垂れる鼻血を拭いながらも、まだ眠る時間じゃない。木刀を突いて立ち上がる。 「まだまだ……負けません!」 両手で頬をパチン。駆け出して、揮う一徹。防御を無視する強力な一撃がデストラッシュを強襲する。 送りこまれた破壊の気、動けぬエリューションから徹子はランディへと視線を送り。 「ランディさんっ!」 「あいよ、任せろ!」 言葉の最中には振り上げられていたグレイヴディガー。夜の仄灯りに、歴戦の末に刻まれた血錆や小さな傷が無数に煌めいた。そして真上から落ちる、落とされる、生か死か。答えは後者。ランディの振るう得物は、破滅的な勢いを以てその名の通り獲物の墓穴を作り出す。 呻く様な風切音の後、轟音の後、奇麗に真っ二つとなったデストラッシュがガランと二枚に分かれて転がった。じくじくとゴミ交じりの血が広がる。 次だ。視線をチェーンソーハウンドへ移す。二度にわたって駆動音が振り回され、喰らい付いた疾風を暴力の儘に薙ぎ倒している光景。 返り血に真っ赤になった刃の頭部で犬が吠える。ブロッカーを失ったリベリスタの壁を力任せに打ち壊さんと吶喊する。だが。 「順次対応させて貰う」 雷慈慟が翳す掌。防御に身構える和人。そして飛び込んだ喜平がその進行を食い止めた。最も無傷でとはいかない。喜平が舌打ったのはその身に宿る運命を消費したから。 そしてそのガラ空きの背中へと、ランディの斧と徹子の木刀が強烈な威力を以て叩きつけられる。されど犬は未だ動きと止めず、有り余る力の儘に暴れ続ける。 「おいおい、この服高かったんだぜ……割と」 激戦の最中、血を拭って和人はへらりと笑った。アームガードは服の下に装着していたのだが、既に服は引き裂かれて装甲が外気に晒されている。痩身に見合わず頑強、犬を見遣る。犬。犬か。猫派だけど犬も好き。割と。それ故、「もふもふしたくない全然したくない」なんて言えば嘘になるが。 ああうん、だからって手加減はしねーがな。 「てか、手加減なんか出来ねー! チェーンソーマジで痛ぇし!」 全身から流れる血を止める為にも、ブレイクフィアー。清らかな光が路地裏を包む。その同時に吹き抜けたのは聖神の息吹、凛子の詠唱によって齎されたもの。 「まだ倒れてる訳には参りません。皆さん、後もう少しの辛抱です。御油断なく」 ハスキーな低い声がリベリスタの耳に柔らかく響く。夜の黒の中に映える白衣の白、そこは生と死のボーダーライン。簡単には、越えさせぬ。 凛子の魔力は無尽蔵だ。惜しみなく癒しの力で仲間を激励し、リベリスタの精神力は雷慈慟のインスタントチャージが補給し火力を最大限に保ち続ける。 「出し惜しみ無用、やってくれ」 仲間へ意識を同調させ、力を分け与える雷慈慟へ。おい、と息を吐き整えるランディが声をかける。 「交代だ」 「うむ」 ランディの予想通り、ピンポイントによってチェーンソーハウンドを引き付けていた雷慈慟は消耗が激しかった。出し惜しみの必要はないが、それと無茶とは全く異なる。 リベリスタ達の視線が鋭くエリューションを捉えた。 夜に響く暴力音。振り回される凶器、先程血が飛び散った壁が新しい赤で更新される。しかしリベリスタは傷を負っても倒れる事を拒絶し、武器を握り直し、前へ。 踏み込んだランディの烈火の様な打ち込みでチェーンソーハウンドの意識が逸れた瞬間、雷慈慟はすかさず気糸の罠を放ち、エリューションを絡め捕った。不機嫌と苛立ちを感じさせる様な駆動音を立てて犬は糸を振り払わんともがくが、もがけもがく程に糸は深く深く纏わり付く。 「今こそ好機、総火力を持って仕留める!」 張り上げる戦闘指揮の声に、リベリスタ達がエリューションへと一斉に飛び掛かって往く。 「鼬の最後っ屁、ってな!」 「そろそろ仕舞いと行こうかね!」 最後の力を振り絞る喜平が繰り出す超速無数の猛攻が、和人が振り下ろす破邪の一撃が、チェーンソーハウンドの頭部の一つを捉えて打ち砕く。飛び散る刃の破片と吹き上がる血、悲鳴の様なエンジン音。 「せやぁッ!」 直撃が取れれば楽になる筈、と。そこに連携して徹子が踏み込んだ。自分は余り頑丈じゃないけれど、臆していても何も出来ない。仲間の足を引っ張る様な真似だけは、したくない。振り下ろす。集中によって研ぎ澄ませた徹子の木刀がエリューションの胴を強かに打ち据え、その体内へと破壊の気を送り込む。怯んだ。確かに。防ぎようのない痛みに。隙が出来た。 闘将の勘はそれを見逃さない。 「流石に激しい攻撃しやがる、だがな」 ランディは地面を蹴った。助走。加速。飛び上がる。重力。空を切る。冷たい外気。呻る刃。急かす様に。鼓舞する様に。或いは、嗤うかの様に。 「あァ……ぶち折るぞ兄弟!!」 傷だらけの斧を持つ手に全力を込めて。チェーンソーハウンドの頭部へ全体重をかけて叩ッ込む――デッドオアアライブ。名ばかりで0%の『アライブ』。完全に粉砕。 血潮が飛び散る音。 電鋸の駆動音が止まる。 それから、ドサリと頽れる音。 ●閉幕会 任務成功を見届け、ご苦労だった、と雷慈慟の声。ランディは大きく息を吐く。吐いた息は白く、そして、夜の空気に掻き消えた。 一方で、二度と動かなくなったエリューションを前に凛子は静かな眼差しを向ける。彼らとて、こうなりたくってこうなった訳ではなかろう。裏路地の悪い気に当てられたのか、エリューション化してしまったもの達。 「貴方たちもきっと何か役目があって生まれたのでしょう」 この様な終わり方は無念でしょうから、と。手を合わせる。 「おやすみなさい」 その隣で徹子も合掌し、目を閉じる。なむあみだぶつ、と小さく唱え、さて。戦場だった場所を見渡した。帰るのは、きちんと掃除してから。立つ鳥跡を濁さず。 「あー、やっぱたまにゃこういう仕事も良いねぇ」 何でも屋時代からの愛用品である銃を仕舞い、和人はぐっと伸びをした。どっと疲れたが、それもまた一興。 「ところでさ、みんないくら貰ってんの? オレ、この間報酬がカボチャ1個だったんだけど……」 傷だらけの翔護は相変わらず。因みに、くりぬいた中身はSHOGOがおいしくいただきました。だそうな。 そして、今日という夜は昨日という夜と同じように更けてゆく。 数時間も経てば朝日が昇るだろう、昨日という朝と同じように今日という朝が始まるのだ。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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