●雪のまだ無い世界 「ねえ、ユキ、帰ろうよ」 きらきら光る陽から隠れるようにして、一匹が言った。 すぐ近くにはぽっかりと開いた穴がある。そこから落ちてきたのだから、そこに潜れば帰れる筈。一匹が急かしても、一人はつんとすました。 「やぁだ。何だって此処には雪が無いのかしら。雪ってすっごく良いものなのに。知らないなんて損だわ」 「ユキ、此処にだっていつかきっと降るよ。だから――」 「もお、フウちゃん煩い! あたし決めた! 此処の人達に雪の素晴らしさを理解して貰うまで、帰らないんだからー!」 直後、ごうっと雪が舞った。 「ユ――……」 視界を一瞬奪われる。再び瞳を開くと、そこに並んでいたのは雪だるま、雪だるま、雪だるま。 「ユキ……?」 不思議そうに声をかけると、意気揚々と弾む声が帰ってきた。 「あたしに勝ったら帰って良いわよ。さあ、勝負!」 ●雪到来 「皆、雪は好き?」 集まったリベリスタ達に、『あにまるまいすたー』ハル・U・柳木(nBNE000230)は一足早い季節の話を持ち出した。 モニターに映っているのは、皆がよく知る三高平市居住地区。そこにちらほらと降っているのは雪だった。 寒さ厳しくなってきているとは言え、早すぎる。 「そう、アザーバイド」 ハルは説明を続けた。 雪から産まれた、雪の精霊のような白狐の娘。それが今回、どうも雪の無い景色に立腹したらしく、三高平市に異常気象を振りまいているらしい。 「三高平市だったのは不幸中の幸いだったね。特に人目を気にする事は無い。で、如何するのかなんだけどー……」 「捕まえる。帰す。もふる」 「ま、正解……いや、最後のは如何だろう。うん」 アザーバイドへの正しい対処の仕方をリベリスタが告げて、頷くハル。そのまま画面を変えると、今度は緑色の毛並みの犬がいた。 「これはそのアザーバイド――『ユキ』と一緒に落ちてきた『フウ』。彼はユキと一緒に帰りたがってるから、まずは彼と合流してあげて。で、さて、それからが一勝負」 ハルの表情ににまりとした笑みが浮かんで、釣られて次の言葉を待つリベリスタ達。ハルはぴっと人差し指を立てた。 「君達にして貰うのは、ずばり、追いかけっこと雪合戦」 ハルは言う。 先ず、彼らが居るのは三高平市住宅街北ブロック内の、ある空き地。 そこに今、雪だるまが10体鎮座している。その中の1体が、今回問題のユキだそうだ。 フウ、そしてリベリスタ達が足を踏み入れれば、その雪だるま10体が北ブロック内を走り回って逃げ始めるという。地面を滑るように走って行く雪だるまは、どれも自動的に逃げていくらしく、たまに塀までジャンプするシュールな雪だるま。 「フウは犬っぽいけど、流石に雪に阻まれて鼻は其処まで当てにならないみたい。それよりも、ユキが入ってる雪だるまはちょっと生き物くさい動きをすると思うから、注意して見てみて」 ダミーは捕まえると消えるから、手当たり次第追いかけても言いけどとハルは笑い、そして第二弾。 「次は定番、雪合戦」 これは今度は空き地に戻ってきて行う。リベリスタ達が合流すれば、流石に一対多数は見るに見かねると、フウはユキ側につくだろう。 雪はユキが無尽蔵に降らせるから、特に不利は無い。不利は無いが―― 「ユキは大気を凍らせて氷バリアーを使ってくるし、フウは風を纏って雪玉を跳ね返してくる」 「……何そのチート」 「まあ、アリじゃない? だから君達もスキル使っても良いと思うし」 さらっと適当に流すハルさん。ただ、「火炎」系の特性を持つスキルは使わないであげてと付け加えた。ユキは雪の、フウは風の存在だから。 そこまで説明すると、ハルは椅子に座り直して首を傾げた。いつも通り、笑みを乗せて。 「それじゃ、いってらっしゃい。リベリスタ諸君。どうか楽しんできておいで」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:琉木 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月05日(水)23:15 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●十一月の早雪 ちらほらと雪が降る。それはまだ十一月の出来事の話。 「十一月の静岡にこんなに雪が、極めて局地的に降りますとはねえ……」 『絹嵐天女』銀咲 嶺(BNE002104)が息を白めながら空を見上げた。気温も冬並みに下がっている。 「完全装備! マフラー、手袋、それに帽子!」 「わたしもファー付ケープコートにイヤマフ、手袋だよー。でもちょっとくらい寒くたってへーき!」 すっかり冬模様に身を包んだ『見習いリベリスタ』柊・美月(BNE004086)と『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)が笑い合う。その姿はすっかり遊ぶ準備が万端態勢。 「子供は風の子元気な子とはよく言ったものだな! うむ、実に良し、俺に良し、お前に良し!」 『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)が寒さごと吹き飛ばすように豪快に笑えば、『ビタースイート ビースト』五十嵐 真独楽(BNE000967)もマフラーの奥からふふっと笑った。 「まこも、お外で遊ぶのは大好き! だから分かる、雪合戦や鬼ごっこのスキなコに、悪いコはいない!」 お友達になれたら嬉しいなぁ、と、その言葉に添える。 降る雪に指先を伸ばしていた『紫苑の癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)も、ええと、頷いた。 冬は嫌いでは無い。 雪が降った夜、ふと目が覚めた時の静謐なる静寂に趣があるから。それを思って、その雪を一足先に連れてきた異邦人を思って、そっと瞳を伏せる。 「良き思い出を持ってお帰り頂ければ幸いです……」 「それにしても、……珍しい光景にちょっと心も浮き立つね。コンビニでカイロも買っていこうかしら」 『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)の実家の方でも雪は10cmも積もれば、非日常。ちょんと雪に触れて笑うも、隣の『肉混じりのメタルフィリア』ステイシー・スペイシー(BNE001776)のお胸の露出はいつもと変わらない。 「寒くないのか?」 「あらぁん。ちゃんと着込んでるわよぉん」 手袋やセーターを見せるステイシーだが、空き地に近付くにつれ、少し寒そうに見えなくもない。その手にはこっそりと一冊、ある書籍が携えられていた。 しんしんと雪が深くなる。 二人の来訪者の居場所は、もうすぐそこだった。 ●爆走、ユキだるま! 「わぁっ、雪ゆきっ」 一層強く降り積もった雪の空き地。真独楽は思わず息が白く、声が弾む。 そこにずらりと並んでいたのは総勢10体の雪だるま。多くの足音の到来にその中の一体がギクっと飛び上がる。 「な、なによなんで増えるのよ……フウ!」 「知らない、知らない!」 ぶんぶんと首を振る緑の犬、フウが涙目をリベリスタ達に向ける。 すかさず親しみやすく柔らかい空気を『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)が微笑みと共に向け、おずおずするフウへにこりとシエルも微笑みかけた。そして義衛郎が足を踏み出して近付いていく。 雪だるまの傍を抜けて、フウの傍へ腰を下ろす。 「こんにちは。ユキさんを探すの、手伝いに来ましたよ」 ちらっと後ろを見れば、先程飛び上がった雪だるまはもうどれか解らない。 「というかぁ、後一ヶ月先に来たりぃ、ちょっとお隣とか北か南に行けばぁいくらでも素敵な雪景色は見られたのに、ねぇん?」 やはり寒いのかステイシー。全身のエネルギーを防御へと回し始めた。寒さはダメージなのかはともかく、気持ちマシになった気がしてステイシーはふっと勝ち誇った笑みを浮かべる。そして、雪だるまへびしっと指を指した。 「さては貴女、どじっ娘ねぇん!」 「なっ……あ、あたしどじっ娘じゃないもん! し、知ってたよ!? で、でもその……ちょっと早まったっていうか、目測を誤ったっていうか……とに、とにかく、フウもお姉ちゃん達も、お、追いかけておいでーだー!」 「あーユキちゃん逃げた-!」 きゃあっと言う隙も無い。旭の真横を雪だるま達が一斉に駆け抜けた。 「鬼ごっこのスタートだね! まこも行っくよー!」 真独楽はわっと満面の笑みを浮かべ、ぐーを天に突き上げる。たっと走りながら走る雪だるま達の音を聞く。ユキだるまの動きはきっとどこかにボロが出るはずだから。 「追うもの追われるものとの真剣勝負ですね。うっかりこけそうにしないようにしないと」 美月は何度考えても自分に有利になる要素が見つからない。だからこそ、ガッツだけを頼りにすると意気込んで。 「んー、どれでしょうねー? これかなー? それともこれでしょうかー?」 はたりと鶴の翼をはためかせ、嶺は笑う。その瞳は全てを見渡す観察眼、状況すら解析する。微笑みながら指された方向に美月は走り出した。 「ほら! フウも行くんだろ!」 「い、行くよ! けどそれ……何?」 「油揚げだ!」 ベルカの声が力強く、思わずしゃきっと背を正すフウが見る前、ベルカが取り出したのは油揚げ。 「本物の『ユキだるま』は多少人間のような動きが出来る……つまり腹が減るという事だ! つまり狐の大好物である油揚げを用意すれば……この勝負、貰ったという事!」 「おおー。油揚げっ! お兄さんもお姉さんも、早くっ」 勢いに飲まれ、そして油揚げに釣られ、ひゅるんと空を飛ぶフウが呼び、義衛郎とシエルも腰を上げる。 「皆様が精いっぱい楽しめます様に、頑張りますっ!」 ぐっとシエルが拳を握った向こうで、早くもボコンと音が響いた。 「うわーどれが本物だか自分全然わからないわぁーんホントマジ困ったわぁーん迷ってしまうわぁーん」 ステイシーの棒読みだった。しかし目の前には無残に破壊された雪だるまの残骸。その容赦の無さっぷりに恐れをなしたのか、ほんの一瞬、一つの雪だるまの動きが少し不規則に変わる。 (もしかして……) 目の前で見てしまったのは美月。怪しい。怪しすぎる。 けれど、すぐ見つかってしまうのも面白くない。美月は首を傾げて「さて、どこでしょう♪」と“うっかり”違う雪だるまを追いかけ始めた。 「えいっ」 それには気付かずシエルが手を伸ばし捕まえたのは、ダミー。ほろりと崩れる雪だるまに、「悔しゅうございます」と零してみせる。本当は、幸せな追いかけっこの時間が少しでも続くようにと、シエルは思う。 「あらん、これも外れねぇん」 ボコンとまた別の雪だるまを崩し、ステイシーが首を傾げる。ユキは走りながら感じていた。 (また違うよ、お姉ちゃん!) くすすっと笑みを零しそうになった時、聞こえてきたのはフウの声と、美味しそうな匂い。 「あー油揚げうめー、マジうめーわー!」 「ちょっと! ちょっとでいいから!」 「こら! ユキ対策だって……あ、あれ反応してないか!?」 「がぶー!」 「こらー!」 (フウのばかああああ!) ベルカの油揚げにはフウがぴったり食い付いていた。それでも動きが不規則になったユキだるまを見つけて、ベルカが追跡を開始する。 それから逃げるようにきゅっと角を曲がって、別の雪だるまと交差する。ダミーの方を追いかけたのは旭。旭が息を吸う。 「えへへ、ユキちゃんみーつけた!」 「え!?」 明後日の方向に叫ばれたそれに思わずぎょっとした目の前に居たのは義衛郎。慌てて平静を取り戻して走り出すユキの前、トンと壁を蹴って跳躍する。そして着地するや多数の幻覚を展開した。攻撃は、無い。 ただ驚かすだけの義衛郎の優しいスキル。 「!!」 それでも思わずびびくっとしたユキだるまは、ついに耳がぴょこんと飛び出した。それを見逃さないのが嶺。ふわりとその前に立ちはだかって、 「お姉ちゃん、分かんなくなっちゃいましたよー?」 首を傾げる仕草は仲間の合図。じりじりと逃げようとするユキだるまを旭が遮って、 「ユキ、つーかまーえたぁ!」 だだだだっと走ってきた真独楽が、油揚げ囓りのベルカがぎゅっと捕まえて、ユキだるまは遂にぽんっと小さな女の子の姿へと変わった。 「つかまっちゃったー。でも次は負けないよ? 次は――」 「雪合戦、でしょ?」 真独楽の楽しそうな答えに、うんっとユキは笑顔で頷いた。 ●激突、ユキ合戦! 「ゆっきやコーン♪」 「こんこんです♪」 空き地に戻ったユキが両手をぱっと広げれば、一瞬にして降り積もる真っ白な雪景色。楽しそうな声に合わせて、美月も歌う。 「僕はユキの方に行くね。ユキだけじゃ心配」 自信満々のユキに対し、フウは隣に浮かびながら不安げにリベリスタ達を見る。 「あっちに参加したいのですが……勝負ですし」 ううっと唸る美月の前、進み出たのは義衛郎とシエル。優しくフウの頭を撫でてやって。 「折角だし、この二人の仲間にしてもらうわ」 「私もご一緒させて頂きます。フウ様、ユキ様、頑張りましょう」 今一度全身のエネルギーを防御に回すステイシーの前、嶺が進み出た。義衛郎の視線が、嶺に宣戦布告を向けているのに気がついたのだ。 「なあなあ、負けた方が今日の夕飯当番な」 「ということは今日の夕飯当番はそっちですね、いいでしょう!」 話はついた。ベルカがゆっくりと片腕を挙げる。 「宜しい同志諸君。それでは、いざ――開戦ッ!」 その腕が、空を切って振り下ろされた。その指揮は皆を奮い立たせ、駆けさせる。 「負けないよう! 皆、雪玉ここにあるからねえー!」 「旭ナーイス! まこは動きを止めちゃおうかなー……メルティキスの応用だよ!」 もこもこっと雪玉を積み上げていく旭に、真独楽はその視線をユキ、フウに移す。そして、ピンクの髪を翻して次に現れたのはユキ達の間合い。一気に詰め寄ってにっと笑う。 「ユキ様、フウ様、ほら、此方に」 「え、わ、わっ、ええいっ!」 慌てたユキとフウにシエルがささっと雪玉を渡す。すかさず風を伴って豪球に変えるフウ。 「危ない、行ってますよ旭さん!」 「わあっ」 再び翼をはためかせ、状況を見つめていた嶺が呼ぶ。迫る雪玉が旭の積み上げた雪玉を丸ごと狙う。慌てて手を伸ばすが、届くか、如何か―― 「でーふぇんす、でぃーふぇんす!」 ざっと現れたのはステイシー。 「……わふっ、すごい」 その豪球がその豊かなお胸で受け止められた。思わずぽかんとお胸を見つめるフウの頭をユキは小突く。さり気なく自分のぺたんこ胸を触ったのをステイシーは見てしまった。が。 「おふぇんす、おふぇんすッ!」 シエルから受け取った雪玉を、ユキも続けてステイシーへと投げた。主に、お胸へ。 「あらぁん、効かないわよぉん?」 フウ程の威力も無く、ぺしょっと当たって胸の谷間に消えていく雪玉にユキはぐぬぬと歯を食いしばる。 「大丈夫、ユキさんもユキさんで可愛いよ。……そらよ!」 そんなユキを慰めて、義衛郎は大人げなく雪玉を全力投球。序でにお胸から目を逸らしたフウもそれに続いた。 向かうはベルカ。 「なんの! ポリスチレンバリヤー!」 即座に取り出されたのは秘密兵器発泡スチロール。軽い! そして断熱効果はバツグン! 「欠点は割と衝撃に弱い事だ。だからあまり激しくするな、フウ!」 「ええ、ご、ごめんなさい!?」 ドカカカっと雪玉が当たり、嫌な音を立て始めるポリスチレンバリヤー。思わずきゅんと鼻を慣らす。 思わず胸を打たれた美月だが、ぐっと拳を握り直す。 雪合戦。 それは雪玉を投げ合う競技。つまり射撃。スターサジタリーの輝く時。 「いざ、ゴーです!」 「わたしも! 真独楽さん隣行くねぇっ」 雪玉を積み上げ終えた旭が走る。真独楽はおっかなびっくりしているフウから視線を義衛郎へ。そして、 「義衛郎の動き、とーった!」 「おわぁ!?」 放つ気糸が義衛郎を束縛する。投げようと手にしていた雪玉を落として藻掻く義衛郎に、嶺がくすりと笑った。 「夕飯当番、決まりましたね」 「なんの、まだまだ!」「まだまだ!」 義衛郎の言葉にユキも奮起する。するが、 「ミミルノひっさつの――おおゆきだまごろごろこーげきっ!!」 「え……」 目の前にあったのは雪玉。それも超おっきなゆきのたま。『くまびすはこぶしけいっ!!』テテロ ミミルノ(BNE003881)のちっちゃな身体に似合わない、おっきな雪玉が転がす先から巨大になって、 「あわっ!」 転んだテテロを巻き込んでも止まらない。ごろごろとユキへ一直線へ転がっていく。 「ちょちょちょ」 「いけません、被害が出……」 「わ――――!!」 どっかん。 ユキが慌てて作った大きな雪だるまと、テテロだるまが正面衝突。シエルが案ずる近辺被害には至らなかったも、巨大な雪柱が立ち登った。けほけほとむせるユキの前にはまだ少しだけ残った雪だるまガード。それを――えいっと蹴り飛ばした、旭。 えへへっと笑ってファイティングポーズを見せた旭に、ユキは今度こそ笑顔で後ろに倒れ込んだ。 「ユキのー、負っけだぁ!」 ●柔らかく吹く風に、白い雪は舞い 雪玉から救出され、くちゅんとしているテテロを義衛郎はまず助けてやった。 大丈夫かいと声をかけるも、そういえば今回自分が最年長者。三十路半歩手前という現実を思い出してしまう。 そこにぽんと嶺が肩を叩く。 夕飯当番とその笑みが有無を言わさない。 「まだ雪合戦する? まこかまくらもイイと思う。あ、ねえ、その前に並んで、せーの!」 パシャリ。 輝くような声は真独楽から。雪合戦の続きを楽しむようにフウとユキと走り回って、ふと立ち止まっては写メにその姿を写して残す。 「フウ! 投げられた雪玉をどちらが早く取ってくるか勝負しないか?」 「油揚げのおねーさん!」 ベルカの挑戦にフウはひゅんと飛んで隣に並ぶ。 「ふふ、それなら私が投げます。これもスターサジタリーの輝く時なのです!」 それっとかけ声一つ、美月が放った雪玉にベルカとフウが走り出す。追いかけようとしたユキを捕まえたのは嶺。見ればユキはちっちゃな姿に狐の耳が出っぱなし。それが嶺にとっては反則的に可愛く見えて、もふもふモフる。まんざらでもないユキはフウを忘れてきゃらきゃらとくすぐったげに笑い出し、ふとその胸元にかけられた、雪のような色合いのジラソルクォーツのペンダント。 「わっ……」 手招きすれば、ベルカと一緒に息を切らしているフウには風が吹いているような模様のセラフィナイトの首輪が添えられた。 「み、見てみて、ユキ!」 「こっちも、フウ!」 プレゼントを見せ合って笑い合う緑の風と白い雪。 ユキに手渡されたのはもう一つ、ステイシーから、雪景色の写真集。 「この世界でも、雪は素敵なのよぉん♪」 例えば樹木が白く染まっていたり、白い山が湖面に反射していたり。ユキは目を丸くする。 そう、雪は、悪い事ばかりで無い。しんしんと降り積もる雪は春に大地を潤し、大地に浸透し土を柔らかくし、豊作を齎す。 無邪気な二人はその象徴の様――シエルはインスタントカメラでその姿を写して、手渡した。 「またお逢い出来ます様に……」 言われてフウは気付く。そう、自分は早くユキを連れて帰ろうと思っていた事。おずおずとリベリスタ達を見上げれば、春の空の様な笑顔が返ってきた。 「また遊ぼうね、絶対だよっ!」 真独楽が二人の頭を撫でて、お耳をもふもふしながら言う。ちょっぴり寂しいけど、きっとまた会える。 「だって、もう、お友達だもん!」 その言葉に、二人はにっこりと満面の笑みを浮かべた。 「もっちろん! 今度は負けないよ? もっともっとおっきな雪だるま、もっと綺麗な雪景色、ちゃんと雪が積もった時に、遊びに来る!」 ユキが雪と共にふわりと舞う。その姿は白い小さな狐となって。 「次は僕も追いかけっこ、皆としたいな」 フウが風と共にひゅっと舞う。その姿は変わらず、緑の小さな犬。 「「ばいばい、おねーさん、おにーさん達!」」 雪と風は混ざってきらきら輝き、大きく尻尾を振るう。――重なり合う別れの言葉と一緒に、違う世界の穴へと風を残して帰って行った。 少し寂しいけれど、この穴は塞ぐもの。美月、義衛郎、シエル、真独楽が一緒にその穴を閉じてしまう。 まだ少し降り続ける雪を見上げて―― 「さて、みんなに温かい飲み物でもご馳走しようか。寒いし」 振り返って義衛郎が笑う。 まだ少しだけ降り続ける、残り雪。きっとまた会えたなら。 「また雪の無い季節に来るかもしれないわねぇん。だって、どじっ娘だったものぉん」 知らぬが仏。次があれば、いつの日か。 ステイシーの言葉に笑いながら、寒空の十一月をリベリスタ達は締めくくったのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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