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混沌迷宮。或いは、攻略不能アトラクション……。

●絶体絶命アトラクション
 秋晴れ、とでも言おうか。空気は乾燥し、冷たい風は吹きすさぶものの、しかし空には雲の1つも見当たらない。そんな絶好の行楽日和。
 異変が起こったのは、ある遊園地。平日であるため、人の姿はまばらだが、それなりの賑わいを見せていた。
 この遊園地の目玉となるアトラクション。「巨大迷宮」で異変は起きた。
「中に入ったお客様が戻ってこないだと!?」
 遊園地のオーナーは、係員からそう説明を受け、思わず声を荒げて怒鳴る。慌てて監視カメラの映像を確認するものの、どういうわけか、監視カメラの調子が悪く、ここ数時間分の映像は残っていなかった。
 この迷宮の入口は4つある。それぞれ、微妙な距離の違いや難易度には差があるものの、どれも大差ないレベル。途中の仕掛けや、アトラクションが違うだけだ。迷宮の中心部にゴールがある。ゴールに辿り着けば、その後は地下から出口へと向かう仕組みとなっている。
 どれだけ迷い続けたとしても、1時間もあればクリアできる迷宮だ。また、途中には何か所か係員を呼ぶことが出来るリタイアゾーンも存在する。
 その筈なのだが……。
「本日、迷宮に入ったお客様は全部で12人。しかし、出て来たお客様はいません」
 深刻な表情を浮かべる係員。その顔には、焦りの色が浮かんでいる。
「それから、さきほどもう1人の係員がお客様を探しに迷宮に入って行きましたが、戻ってきません。トランシーバーも通じない、という状況に陥っています」
「どういうことだ? 監視カメラもトランシーバーも通じないなど、異常事態だぞ」
 首を傾げるオーナー。しばらく何事か考え込んでいたが、やがて何かを決意したかのように大きく頷いた。オーナーは係員から迷宮の地図を受け取ると、迷宮入口へと向かう。
「私が行く。君はこのアトラクションを一時中止する旨を伝えてくれ」
 そう告げると、額に冷や汗を浮かべながらも、オーナーは迷宮へ入っていった。
 数分後。
 迷宮の奥から、オーナーのものらしき悲鳴が聞こえ、それきり彼は戻ってくる事はなかった……。

●どこにも行けない君たちへ……。
「遊園地の客や、オーナーを襲ったのはE・ゴーレム(ぬりかべ)。迷宮の壁がE化したもの」
 集まったリベリスタ達を見回して『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)がそう告げる。
モニターに映し出されたのは、迷宮内部の映像だろうか。非常に不鮮明ながら、オーナーらしき人物の姿が確認できる。
「フェーズ2が1体。フェーズ1が3体の合計4体。見た目はただの壁だけど、自在に手足を出し入れできるみたい」
 画像に映っているのは、沈むようにして壁に取りこまれるオーナーの姿だった。その顔は、恐怖に引きつっている。
「ぬりかべは現在、迷宮内を静かに移動中。見た目は通常の壁と変わりないので、向こうから仕掛けてくるか、或いはこちらが注意して見破らない限り判断は不可能」
 外見上は、ほとんどただの壁である。
 一目見た程度では、見破ることはできないだろう。
「迷宮の地図は、オーナーが持ち込んだ1枚のみ。迷宮のどこかに落ちているみたいだから、拾うことが出来れば、ぬりかべの発見が楽になるかも」
 巨大な迷宮内に、1枚の紙切れ。探すのは、手間だろうけれど。
「また、ぬりかべは電気や電磁波を操る能力を持っている。監視カメラやトランシーバーはそれで狂っているみたい。こちらもAF以外の電子機器はほとんど使えないと思ってほしい。AFも場所によっては繋がりにくいようだし」
 壁に紛れた敵を探し、討伐するのが今回の依頼。
 とはいえ、敵の姿は補足し辛く、また壁に同化し自在に迷宮内を動き回るようだ。
「オーナーや客は、ぬりかべに捕まった後、迷宮の壁のどこかに幽閉されているから。くれぐれも、ぬりかべ以外は攻撃しないようにね。もっとも攻撃したところで、ぬりかべの能力で、ぬりかべが消滅しない限り迷宮を破壊することは不可能だけど」
 念のために気をつけて、とそう告げて。
 イヴは仲間たちを送りだした。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年11月30日(金)23:34
こんにちは、病み月です。
今回は遊園地のアトラクションが舞台となります。
以下情報。

●場所
遊園地のアトラクション「巨大迷宮」
500メートル4方の巨大な正方形の形をしている。一部を除いて屋根が存在するため、空からの捜索は不可能。
迷宮には4つの入口が存在する。そのどれから、或いはゴールから侵入することになる。
迷宮内のどこかには、オーナーの落とした迷宮の地図が落ちている。
ぬりかべの能力により、迷宮を破壊することはできない。

●敵
E・ゴーレム(ぬりかべ)×4
フェーズ2が1体、フェーズ1が3体
迷宮の壁がE化したもの。大きさは通路を塞いでしまう程度。迷宮の壁に潜行し移動することが可能。一見して普通の壁と変わらないため、発見しにくい。
獲物を見つけると、背後から近寄り壁の中に取りこんでしまう。

【塗り壁】→物近単[隙][石化]
音もなく忍び寄り、相手を掴む攻撃。ダメージはほとんどない。
【圧壊壁】→物近範[圧倒]
相手に向かって倒れかかる攻撃。
【紫電流】→神遠複[雷陣]
 壁や地面を伝って電流を流す。
【電塊】→神遠貫[麻痺]or[ショック]
 雷で作った弾を撃ち出す攻撃。


以上になります。
ご参加おまちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
スターサジタリー
フランツィスカ・フォン・シャーラッハ(BNE000025)
ソードミラージュ
リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)
ホーリーメイガス
汐崎・沙希(BNE001579)
クロスイージス
内薙・智夫(BNE001581)
ソードミラージュ
レイライン・エレアニック(BNE002137)
ホーリーメイガス
リサリサ・J・丸田(BNE002558)
ソードミラージュ
災原・闇紅(BNE003436)
インヤンマスター
一万吉・愛音(BNE003975)

●迷宮へ
 この遊園地の目玉として開設され、今尚人気は落ちない巨大迷宮。しかし、そんな迷宮に異変が生じていた。今日一日、入った客が誰も出てこないのだ。その異変の解決に乗り出した遊園地のオーナーもまた、姿を消した。解決に乗り出したのは、8人の男女。アーク所属のリベリスタ達だった。
「正に混沌迷宮でございますね。けれど、解けない迷宮はないのでございますよ」
 LOVE! なんて叫んで迷宮を歩く『愛の一文字』一万吉・愛音(BNE003975)は、式神・影人を先行させる。
 影人は、主の命令に従って8人に先んじて迷宮を進んでいく。迷宮の中にはEゴーレム(ぬりかべ)が4体。今現在、そのどれとも遭遇していない。
 不気味な静けさに満ちた迷宮だ。足音だけが、天井や壁に反響して耳に届く。
「時間が惜しいし、さっさと進みましょう……」
 不機嫌顔でそう呟いたのは『深紅の眷狼』災原・暗紅(BNE003436)だ。じっと、壁や天井を眺めて敵が潜んでいないかを確認している。
「遊園地か……。以前遊びに行った時は楽しかったもんじゃが、今回は命がけのアトラクションに挑戦とはのう」
 やれやれ、と呟いたのは最後尾を歩く『巻き戻りし残像』レイライン・エレアニック(BNE002137)だ。猫耳をひょこひょこと揺らし、敵を探す。そんなレイラインの隣では『青い目のヤマトナデシコ』リサリサ・J・マルター(BNE002558)が心配そうな顔をして、俯いている。
「レイライン様、何か感じたらすぐに伝えてくださいませ……」
 そんなリサリサに向かって、レイラインは深く頷いて見せる。
「うう、捕まった人たち、大丈夫かなぁ……急いで助けないとっ」
 小さく震える『やわらかクロスイージス』内薙・智夫(BNE001581)がマジックで壁にチェックを付ける。地図がない以上は、こうでもしておかないと道に迷ってしまうかもしれない。地図を持ったまま迷宮に入ったオーナーが行方不明なのだ。どこかに地図が落ちているようだが、今の所発見できていない。
「嫌だけど任務を達成できなかったら……もっと嫌」
 ぼそ、っと蚊の鳴くような声で呟いたのは『水底乃蒼石』汐崎・沙希(BNE001579)だ。普段は主に念話でしか会話しない彼女が、一言程度とはいえ声を出すのは実に珍しいことである。
 けほ、っと沙希が小さく咳き込んだ。
「サテ、探索かメンドクセェ」
 愛音の隣を進む『光狐』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)が頭の後ろで手を組んで、そう言った。視線の先には愛音の影人がとぼとぼと歩いている。
「巨大迷宮とかって、そんなに楽しいかしら?」
 首を傾げて迷宮を見回しているのは『吸血婦人』フランツィスカ・フォン・シャーラッハ(BNE000025)だ。眼帯に覆われていない赤い目が怪しく光る。くるり、と後ろを振り返ったフランツィスカの視線が、背後に迫った壁を捕らえる。先ほど通って来た道だ。しかし、いつのまにか壁で塞がれている。
「来たようじゃの」
 フランツィスカが声をかける前に、レイラインがそう呟く。同時に、最後尾にいたレイラインとリサリサが前に飛ぶ。先ほどまで2人がいた場所を、壁から伸びた黒い腕が通り過ぎた。

●迷路と怪異
「今のアタシは少しばかり機嫌が悪いからね……容赦なしでさっさと潰すわよ」
 ただの八つ当たりだけどね、と呟いて小太刀片手に駆けて行く暗紅。空ぶったぬりかべの腕を追って刃が宙を舞う。ぬりかべのボディを刃が削る。振り抜いた勢いを殺さないまま、身を捻って方向転換。返す刃で更に斬撃。ぬりかべは暗紅の攻撃を避けるために壁へと潜り込んで行った。
「逃がさないよっ!」
 ぬりかべが壁に沈む直前、駆け寄った智夫がマジックを振りかぶる。マジックでぬりかべのボディに×印を付けた。
 ぬりかべが壁に潜り込む、しかし、智夫の付けた目印はしっかりと壁に浮き上がっている。そのまま壁伝いに移動する×印を追って、レイラインが駆ける。
「的は大きいんじゃ、思いっきり叩き込んで動きを止めてやるわい!」
 猫の爪のような武器を振り回すレイライン。×印目がけ、それを叩きつけた。淀みない動きで、流れるように斬撃を加えていく。しかし……。
「うきゃん!?」
 壁から撃ち出された雷の弾が、レイラインを直撃。そのまま彼女を付き抜け、背後に迫っていたリサリサまで纏めて撃ち抜いた。絶対者持ちのリサリサはダメージを負うだけで済んだが、レイラインはそうはいかない。
 体が痺れ、動けないレイライン。そんな彼女へと、腕が伸びる。レイラインを庇うようにリサリサが前へと飛び出した。
「ワタシの力は護りの力……皆さまの盾となる事に何の躊躇いがありますでしょうか……」
 前へ出たリサリサを黒い腕が掴んだ。
『ぬりかべ、見ためは嫌いじゃない』
 そう書かれたスケッチブックを沙希が放り投げる。と、同時に動けないでいるレイラインと傷ついたリサリサに手の平を翳した。淡い光が2人を包む。レイラインの麻痺とリサリサの傷が癒える。光が消えると同時に、落ちて来たスケッチブックを沙希はキャッチ。着物の裾を翻し、姿勢を整える。そんな沙希の隣を、リュミエールが駆け抜ける。青い風の如く疾駆するその姿。手にしたのはナイフと短刀。壁を蹴って上空へ、そのまま天井を蹴ってぬりかべに迫る。ぬりかべにナイフを突き刺し、切り降ろす。
「ぬりかべって、日本の妖怪なんだってな」
 そう言ってナイフを引き抜くリュミエール。次の瞬間、ぬりかべが動く。
 ぬりかべは、すっと壁から出るとそのままリュミエールへと倒れかかる。しかし、リュミエールとぬりかべの間に人影が割り込んできた。リュミエールを付き飛ばし、ぬりかべの射程外へ。代わりに、人影が押しつぶされる。潰されたのは愛音の作りだした影人だ。
「愛音と量産型がある限りお味方は倒させないでございますよ!」
 新たな影人を作り出しながら愛音が言う。ぬりかべが起き上がった。が、しかし、そこへ一発の弾丸が命中。ぬりかべのボディに罅が入る。弾丸を放ったのはフランツィスカだ。
「私、迷路とか好きじゃないの」
 そう言って笑うと、フランツィスカは愛用の機関銃の引き金を引いた。放たれる無数の弾丸が当たるを幸いにと、ぬりかべのボディを撃ち抜いていく。次第に、ぬりかべの体が崩れ、後に残ったのは瓦礫の山。それもすぐに、塵となって消えた。
 暗紅は、長い髪を掻きあげるとフンと、小さく息を吐いた。

「影人が地図を見つけたようでございます!」
 先行していた影人が、地図を片手に戻ってくる。それを受け取って愛音は地図を覗きこむ。現在地をチャックし、迷宮も半ばに差し掛かったことを確認。
「迷宮とは人類の英知が……あ、いや、愛が解くものでございます!」
 一瞬素に戻りかけるが、慌てて愛を信仰する自身の性を思い出した。地図を確認。残りのぬりかべは3体。姿は見えない。このままゴールまで辿りついてしまうのか、とそう思った矢先。
「……」
 とん、と沙希が地図の一部に指を置く。そこはつい数分前に通過した地点。地図によると、そこを通ればゴールまでの最短ルートとなるわけだが。
『ここには壁があった』
 と、スケッチブックに書き出す沙希。
 本来通路がある筈の場所に壁がある。それはつまり、そこにぬりかべが居たということだ。影人を先頭に、引き返す一同。目的の場所に差し掛かった所で、急に影人の姿が消えた。
「迷路を解く鍵は……まばゆいほどのLOVE!!」
 影人と小鬼を作り出し、進ませる愛音。と、また数体、今度は壁に辿り着く前に側面から伸びた腕が影人を捕らえ、取り込んでいった。どうやら、この辺りにいるぬりかべは1体ではないらしい。
「曲がり角の先にいるのが、他の客とは限らない……。悪意のある神秘かもしれないのにね」
 クスクスと笑うフランツィスカ。機関銃を構え、前に出る。傍に立っていた沙希が耳を手で塞いだ、次の瞬間、躊躇なくフランツィスカは引き金を引いた。蜂の大群のような弾丸の嵐と、轟音が視界と周囲を埋め尽くす。壁や天井に反響し、響く銃声。弾幕。おおよそその辺りに居るだろうと当たりを付けて、壁を撃つ。
 と、皆の見ている目の前で壁の一部からパリパリと電気が迸る。電気はそのまま、地面や壁を伝って、8人に襲い掛かる。逃げ遅れた沙希と、攻撃中のフランツィスカ。それから、愛音が電気を浴びる。一方、リュミエールと暗紅はそれぞれ床を蹴って駆けだしていた。リュミエールは通路を塞ぐぬりかべを、暗紅は壁に潜むもう1体へと斬撃を放つ。
「足止め優先……。沙希は下がってフォローお願いするわね」
 暗紅が言うと、沙希は無言で頷いて後衛へと下がる。入れ替わるように智夫とレイラインが前へ。
「圧倒的速度と火力ダ」
 壁にナイフを突き刺し、それを足場に飛び上がるリュミエール。彼女が避けたのは雷弾だ。後衛に迫る雷弾を智夫がマントを翻し受け止める。
「後衛は任せて。布陣はしっかりね!」
マントを放り投げ、一歩前へ出た智夫。彼女の手から強い光が迸る。神気閃光。側面のぬりかべが動きを止め、壁から浮き上がる。その隙に、レイラインが前へ。暗紅と共に踊るような動きで、斬撃を加える。
「大人しく……崩れ去るがよいわ!」
 レイラインが爪を壁に叩きつける。ぬりかべは砕けて消えた。しかし、ぬりかべが最後に放った電流を浴びて、暗紅はその場に膝を付いた。小太刀がカランと音をたて地面に転がる。暗紅の治療をするために沙希は前へ。沙希をフォローするために、レイラインとフランツィスカが傍に控える。
 リュミエールが交戦中のぬりかべ目がけ、フランツィスカが弾丸を撃ち込んだ。向こうも時期に終わりそうだ。再び、ぬりかべが雷弾を放つ。雷弾はリュミエールの肩を掠め、後衛へ迫る。しかし、雷弾の前にリサリサが飛び出し、それを受け止める。
「大丈夫です……護りに徹すればそうそう倒れることはありません……。皆様は存分に攻撃に集中されてください」
 苦悶の表情を浮かべ、そう告げるリサリサ。ぐら、っとよろけるリサリサを愛音と小鬼が支える。
 無言で頷いて、一旦下がっていたリュミエールは再び前へ。リュミエールを援護するように、フランツィスカの弾丸と、智夫の放つ閃光がぬりかべを襲う。
 ぬりかべに肉薄したリュミエールが、両手に持ったナイフと短刀を目にもとまらぬ速さでぬりかべに突き刺した。連続して放たれる刺突の嵐。ぬりかべが砕け、塵となって消える。 
 消え去ったぬりかべの向こう。本来なら通路が伸びている筈のその場所には、しかし、もう一枚の壁があった。
「そんな……もう1体!?」
 リサリサが悲鳴を上げる。崩れ去ったぬりかべの向こうに隠れていた最後のぬりかべが、通路に並んだリベリスタ達へと特大の雷弾を撃ち出した。視界は白く染まり、耳はバリバリという雷音を捕らえる。
 逃げる間もなく、8人へと雷弾が襲い掛かった。

●迷宮攻略、駆け抜けるリベリスタ
 閃光。雷音。揺れる迷宮。全てが収まり、周囲には焦げくさい香りが漂っている。通路を塞ぐぬりかべの放った雷弾によるものだ。漂っていた煙が晴れて、通路の様子が露になる。
「仲間が倒されない事を最優先だよ」
「すぐに回復します。もう少しの辛抱を……」
 そこに立っていたのは、防御用マントを掲げた智夫と、魔力による盾を展開したリサリサだった。服や髪が焦げ、皮膚には火傷も見受けられる。雷弾を放たれた瞬間、2人は咄嗟に前へ飛び出し仲間達の壁となったのだ。
 とはいえ、完全には雷弾を防げたわけではないようで。
 2人の背後では、仲間達が地面に倒れている。死者も重傷者もいないようだが、それなりのダメージを負ってしまっているようだ。けほ、と小さな咳をひとつ零し、沙希が立ち上がる。
『こちらは私が』
 沙希はスケッチブックにそう書くと、筆を宙に走らせる。書かれた文字は『息吹よ、在れ』。周囲に光が散って、仲間達の傷を癒していく。麻痺が解けた者から順に立ち上がっていく。
 ぬりかべは、一瞬躊躇うような動きを見せたが、地面と壁に電流を流しそのまま通路を進んで、逃げて行く。追いかけようとして駆け出した智夫とリサリサがもつれるようにして、地面に倒れた。お互いに、真正面から雷弾を受け止めたことで、限界が近いのだろう。
「任せトケ」
「回復役は、重要だわ」
 沙希に2人を任せ、リュミエールと暗紅はそれぞれの獲物を手にぬりかべを追って駆けて行った。小鬼を連れた愛音と、機関銃を手にしたフランツィスカ、猫の爪のような武器を担いだレイラインも後に続く。
 
「庇い役は……柄じゃなかったの」
「色々試してみるゾ」
 体勢を低くして、床を這うように駆け抜ける暗紅と、天井と壁を蹴って飛び跳ねるリュミエール。連続して放たれる2人分の斬撃。刃の嵐。それを受けながらも、ぬりかべは背後に下がっていく。放たれる電流を避けながら追いかける2人。踊るような動きで振り回される刃は、止まる事はない。
 しかし、不意にぬりかべがその動きを止めた。
 2人の振る刃が、ぬりかべのボディに突き刺さる。その瞬間、ぬりかべが前のめりに倒れかかった。目を剥くリュミエールと暗紅。背後に下がろうとするものの、刃が抜けずに一瞬遅れる。その隙が致命的だった。
 回避し損ね、ぬりかべに押しつぶされる。
 その瞬間、2人のぬりかべの間に小鬼が飛び込んできた。
「迷宮を制すのはLOVEでございます!」
 小鬼がリュミエールと暗紅を突き飛ばし、代わりにぬりかべに押しつぶされ消える。飛ばされた2人を受け止めたのは、愛音だった。ぬりかべが起き上がり、電流を放とうとするが……。
「今でございます!」
「えぇ」
 クスリと笑って、フランツィスカが前へ出た。通路を塞ぐぬりかべ目がけ銃口を向ける。放たれた無数の弾丸に貫かれ、ぬりかべの動きが鈍る。
「やっぱり迷宮探索なんて好んでするものでもないわねぇ……まぁ、それでもそこそこ暇つぶしにはなるかしら?」
 なんて、呟いて。
飛び散る薬莢の中で、フランツィスカは妖しく笑う。
銃弾の嵐が途切れた瞬間、レイラインが駆け抜けた。高々と爪を掲げ、床を蹴って飛ぶように走る。
「元の子供達が笑顔で遊ぶ場に戻すために、頑張らねばな!」
 怒号と共に駆け抜けるレイライン。一瞬、その姿が消えたように見えた。トップスピードに乗ったまま、ぶつかるようにして爪をぬりかべに叩きつける。一撃、二撃、三撃と続けざまに爪が宙を舞う。
「終わりなのじゃ!」 
 トドメとばかりに、ぬりかべの中心に爪を突き刺す。ぬりかべは砕け、塵となって消える。ぬりかべが砕けた後も、レイラインの動きは止まらない。スピードの出し過ぎで、急には止まれないのだ。
 そのまま駆け抜け、やっと彼女の足が止まった。
 そこには、大きなゲート。ゴールと太字で書かれている。ぬりかべを追って、彼女達はゴールに辿り着いたのだ。
 びゅん、と大きく爪を振って塵を払う。そんなレイラインの背後で、囚われていた人々がどこからか現れ地面に倒れる。ぬりかべが消滅したことにより、解放された客達だろう。その中には遊園地のオーナーの姿もある。
「皆を安全な場所に連れて行ったら、愛音たちも乗り物を見て回るのでございます!」
 倒れた人々の無事を確認しながら、愛音はそんなことを言うのだった……。
 遊園地の異変、ここに解決。
 ふぅ、とため息を吐いてレイラインはゴシックドレスの乱れを整えるのだった……。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。依頼は成功です。
迷宮に巣食う怪異、無事討伐完了。とらわれた人々も、無傷で救出されました。
いかがでしたでしょうか。お楽しみいただけたなら幸いです。
それでは、そろそろ失礼します。
また縁がありましたら、別の依頼でお会いしましょう。
今回は、ご参加ありがとうございました。