●臓物ランチタイム 校内にチャイムの鳴り響く。 学生にとってその時は至福の時間。空腹を耐え耐え辿り着いたお昼休み。お弁当を広げて談笑。そしていつもの様に、嗚呼、全く以ていつもの様に、放送が始まった。最高に御機嫌な声と共に。 『ボンジョォールノ皆様!』 『じょるのー!』 『“ソング&ボイスパーカッション”、コンスタンティーノと~……』 『ビビアーナだにょ~!』 普段ならば放送部員の声で始まるそれは――明らかに異質に満ちていた。違和感に顔を上げる者。苦笑する者、されど放送は始まった。 『今日は僕らの来日記念初ライブさ! 嬉しいねぇ、ワクワクしちゃうねぇ!』 『にーたん、今日はどんなミュージックを演奏するのかにょん?』 『んっん~、そりゃ~日本のハラペコキッズの為にエクスタスィなのをぶちこんじゃうよ~!』 『ひゅー! おういえー!』 『それじゃ早速一曲目! “白百合無惨、スプラッタロケンロォ~~~ル!!”』 只管謎な放送にざわつく生徒達。何なんだこれは。何なんだ一体。が、次の瞬間凍りついた。 スピーカーから聞こえてきたのは、いつもの放送部員が泣きじゃくる声。 『嫌、やめて……やめて! こ、ころ、殺さないでぇええ! イヤ、イヤ、イ、ぎ、ぎゃァァアアアあああ゛あ゛ あ゛ あ゛ 』 あああああああああ。悲鳴。悲鳴。ゴキゴキぐしゃりと音が聞こえる。湿った音が。耳障りな音が。 静まり返る。嗚呼冗談なら、悪い夢なら、良かったのに。苦笑も声も凍りついた。蒼褪める。 『ちょーっとこのミュージックは刺激ドキドキだったかな? かな?』 『チョーイイネ! サイコー! にーたんお次は何なんだい?』 『オーケイ可愛い我がビビアーナ! にーたんと一緒に奏でましょう』 『曲名は?』 『“ランチアンドマッドラブ”!!』 『ひょー! あたいそれだぁいすき!』 『準備OK?』 『バッチのグーにょ!』 『『tre、due、uno!』』 音楽が始まる。演奏が始まる。ソング、ボイスパーカッション、リズムに乗って情熱的に。放送される。大音量。 悲鳴が巻き起こった。 更に悲鳴が劈いた。 運動場で。体育館で。廊下で。教室で。 酷いパニック状態。そこに理性と秩序は無く。 斯くして学生達は見る。 死体が、生きた人間を襲っていて―― 鮮血。 ●白昼トラジェディー モニターに映るは、血だらけの惨劇――惨劇――クラスメイトだったモノや、先生だったモノに食い千切られ、引き裂かれ、泣き叫び、泣き喚き、死んで逝く少年少女達。悲鳴と絶叫。 「死の恐怖は死より怖ろしい――とは英国のとある学者の言葉ですが、さて」 そんなモニターから、愛用の事務椅子をくるんと回し皆へ向いた『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)は静かに言い放った。 「『死者が蘇り生者を襲う事件』が発生しましたぞ。但し、Eアンデッドによるそれではございません。 何故か? ――バロックナイツ『厳かな歪夜十三使徒』第十位、『福音の指揮者』ケイオス・“コンダクター”・カントーリオ」 塔の魔女のアシュレイ曰く、『死を最も上手く汚す者』。聞こえたその名にブリーフィングルームに緊張が走った。 「ケイオス様は『楽団』と呼ばれる自身のオーケストラ、所謂私兵集団を統率しております。 此度の事件はその『楽団』のメンバーが引き起こした模様。なんでも彼等楽団メンバーは『死』を操るというネクロマンシー的能力を持つようですが、詳細は不明ですな……。 しかしこれだけは言えますぞ。『楽団メンバーをそんじょそこいらのフィクサードと同一に見ると必ずや痛い目に遭うでしょう』」 腐ってもあのバロックナイツの私兵集団だ、油断は禁物である。 モニターに映し出されたのは紳士然とした男とパンクファッションに身を包んだ少女だった。これが件の楽団メンバーか――血だらけの放送室、楽器を手に揚々と演奏をしている二人。 「彼らは死者を操り兵隊とし、郊外のとある学校を襲撃しております。酷いパニック状態ですが未だ生存者は多数、されど放っておけばどんどん被害は増え、そして『操られる死者』も被害に比例して増加しますぞ。 皆々様に課せられたオーダーは、この事件のこれ以上の被害を食い止める事ですぞ!」 さて、と一間。メルクリィは機械の眼差しで皆を一望した。 「悲劇を、死を、嘲る者達を看過する訳にはいきません。……悲劇には終幕を。アンコールなど不必要なのですから。 それでは皆々様、どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月02日(日)22:35 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●生きているということは一つの病気である。誰もがその病気によって死ぬ。 燦々と平和的な昼時の太陽。その下で、悲鳴オーケストラ。幕を開けた惨劇。 その学校の運動場に在ったのは、血溜りと、死体の群と、それに蹂躙されている生者達。死が生まれるBGMは、それらとは余りにも不釣り合いな陽気な音楽。 ――何の罪もない命を悪戯に奪われ、剰えその尊厳すら踏み躙られている光景。『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)の端麗な相貌が凍り付く。 「楽団……こんなゴミ屑が存在するなど、最低最悪の気分よ」 不快感に唾棄の言葉、口と同時に足を、そして手を動かしてマグナムリボルバーマスケットを死者の群へと差し向けた。 (一人でも多く……お願い、生きていて!) 願いはトリガーを引く指先と、放つ弾丸に込めて。弾丸の雨。熱感知の力によって選別した対象へ容赦なく襲いかかる――死肉が飛び散る。 派手な銃声に死者達が振り返った。濁った眼玉に映るのは10人のリベリスタ――矢の様に間合いを詰める『影なる刃』黒部 幸成(BNE002032)の姿。 死者に容赦は無用。任務という鉄仮面を被った幸成は表情一つ変えず、言葉一つ発せず、繰り出す気糸で生者へ正に喰らい付かんとしていた死者を縛り上げた。 「救助の為に相参上した。逃げよ、速く」 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で頷いて、生徒はリベリスタ達の方向へと走り出す。その間にも死者が、ミュゼーヌの猛射を受けても平然と動き回るそれらが、幸成の周りに集まって来る。牙を向く。上等だ、と、諸手に凶鳥を構えるや大きく踏み込んだ。 「デコッパチ楽団め……随分と小器用な真似を」 死に至る病とは、絶望であるとは誰の言葉だったか――咥え煙草の紫煙を燻らせ、二四式・改を構え、『足らずの』晦 烏(BNE002858)は思う。ならば、その絶望を祓うまでだ、と。神気閃光。死者達を撹乱すると共に生きている者達へ声を張る。 「お前等ァ! 生きたいのなら頭低くして逃げて来い!! こっちだ!」 成る丈自分を狙わせる為、前に出る。一帯を見る。ざっと見た所、運動場に居る死者の数は20程か――尤も、今も尚増え続けているのだが。 「学校丸々とか隠す気無いよね? ほんと好き勝手やってくれちゃって困るよ」 絶対止めてみせるんだから。決意を瞳に、『魔法少女マジカル☆ふたば』羽柴 双葉(BNE003837)はワンドを握り締めた。周囲に幾重もの魔法陣を展開させ、その中心で魔導式を超高速で組み立ててゆく。斯くして完成させたのは黒き葬り唄、その血を代価に生み出された漆黒の鎖が戦場を駆け抜けた。死者を溺れさせながら。 それに続けと、葬送の鎖と同じ色をした大太刀:真打・鬼影兼久を抜き放ち『自称・雷音の夫』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)は死者へと吶喊を仕掛ける。風見 七花(BNE003013)は深呼吸を一つするとDOGTAGを媒介にしたカラスの式神とファミリアーによって五感を共有した雀を飛び立たせ、Hidden Blade/ABEILLE&HORNISSEを仕込んだ篭手を構えた。 「死者には安息を、生者には未来を」 出来る事は何でもやって、一人でも助ける。唱える呪文は業火の言霊、炸裂する火柱が死者達を包み込む。が、燃えながらもそれは動くのだ。首を刎ねられても、内臓をブチ撒けていても、上半身が大きく後ろに拉げていても。死をも知らない死者の群。成れの果て。 リベリスタの作戦。それは、先ず運動場に全戦力を投下し、迅速にそこを『安全地帯』として確保する事。さて、吉と出るか凶と出るか―― 「死者が黄泉還るとかやめて欲しいですなぁ……死人に口なしやからこそ世の中上手く回るってもんですがなぁ」 死者共に外へ行かれると大事なお銭が貰えない、そんな理由で門を施錠し『√3』一条・玄弥(BNE003422)は金色夜叉を構えると共に全身から漆黒の闇を生み出した。 「しやかて沸いてくる死者は葬るのみですなぁ、おぃ」 笑いながら欲望色の闇を放つ。くけけっ。奇怪な笑い声と同時に、異変。学校中に満ちていた楽団達が奏でる放送が止んだ――正しく言うならば『強制的に止められた』。 「死を冒涜せし罪人に裁きを下すわ」 硝煙を昇らせる銃を手の中で回したのは『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)、その傍らには『大雪崩霧姫』鈴宮・慧架(BNE000666)。『学校に繋がっている電線を破壊する』という慧架の提案に従い、前者は高速の早撃ちで、校舎は蹴撃による真空波で学校に繋がる電線を破壊したのだ。 電気供給が絶たれた学校は一切の活動を止め、聞こえる音は銃声と戦闘音楽と悲鳴と呻き声と――呻き声――そう、演奏はもう聞こえてこないのに、死者達は平然と動き、リベリスタに、生者に、襲い掛かる。 「……!? 『音』がカラクリの正体じゃない、ってか……!」 腕に喰らい付いた死者を蹴り飛ばし、烏は舌打ちながら蹴飛ばした死者の脚頭腕を弾丸を叩き込む。それでも、動く。もぞもぞと、翅をもがれた虫の様に。 気味が悪い光景だ。悪趣味極まる。故に、『贖いの仔羊』綿谷 光介(BNE003658)は湧き上がる感情を押さえられない。 「死者を呼び出すならまだしも、意思のない死体を『使う』なんて……許せない!」 許せない理由がある。故に臆病さを忘れ、決然と。普段の穏やかな彼を知る者ならばその表情と目に宿した色に驚くだろう。激情。柳眉を吊り上げ露わにする感情。その名は、『怒り』。 (墓で眠る姉さん達が、こんな風に使われたらっ!) あの日、自分が覚醒した日、家族が死んだ日。自分の大切な大切な人。彼等がもし、悪意を以て玩ばれたら――そう思うと。燻る怒り。握り締める手が白み筋が浮かぶ程。 それは、優しい羊が生まれて初めて抱く殺意だった。 「術式、迷える羊の博愛!」 向こうが殺すのならば、こっちは生かしてみせる――頁を開く魔導書 「迷える羊の冒険」。数と丈夫さに任せて襲い掛かる死者達によって傷付けられた仲間を癒すべく、読み上げるのはお伽噺。群れから逸れた羊が羊飼いの元に戻ろうと四苦八苦する物語。その一節一節に込められた術が作動し、癒しの風となって死に満ちた戦場を吹き抜ける。 そして激励の息吹に包まれたリベリスタは武器を握り直し、死者を葬り生者を護るべく只管に奮闘するのだ。 その一方、七花が使役する雀が見張る放送室では。 「あっ! あぁっ! にーたんにーたんどうしよう!」 「どうしたんだいビビアーナ!」 「この部屋使えなくなっちゃったにょー!」 「さてはまさかリベリスタ?」 「アークかも?」 「奴等かな!」 「そりゃ素敵!」 陽気な彼等は、その愉快な気持ちを音楽にするのだ。馬鹿笑いをリズムに乗せて。 血と死を孕んだ風にミュゼーヌが羽織るナポレオンコート・グランディオーズが翻る。幾度か目のマスケット銃から放たれた弾幕が死者達に襲い掛かり、穿ち、撃ち抜く。その後にはぁっと息を吐いたのは一通りの制圧が済んだからだ。 「一先ずは作戦成功、ね」 死者達の異常な丈夫さの為に想定よりは遅く――されど決して『手遅れ』とも言えない速さで運動場を制圧する事が出来た。さぁ、時間は無い。次だ。 「エーデルワイスさん、慧架さんは私と体育館へ!」 「合点了解なのですよ~」 「はい!」 「それじゃあ私達は校舎に行くよ! ……皆、頑張ってねっ」 「健闘を祈るで御座る」 「ほな、ぼちぼち行きましょかぁ」 「ここの防衛は私に任せて下さい。御武運を!」 ミュゼーヌ、エーデルワイス、慧架は体育館へ。 双葉、幸成、玄弥、光介、虎鐡は校舎へ。 そして七花と烏は集めた生存者へと振り返った。七花は自らを特殊部隊だと名乗り、これ以上の死者を減らす為にも烏と共に負傷者の手当てを開始した。 最中、私はいいから先に生徒を、と七花へ一人の――そしてこの生存者無いでは唯一の教師が彼女へ言った。生徒を護る為に跳び出してきたのか、酷く血だらけだ。それから彼は問う。「一体何が起こっているのか」と。 「今は詳しい説明をしている暇はありません。ですが、貴方は私たちが守る。生徒は貴方が守ってください」 真っ直ぐな目。その背後で烏は幻想纏いよりトラックを取り出し、七花へ視線をやる。 「じゃ、おじさんはそろそろ行くぜ。……しっかりな」 「はい、お手伝い頂きありがとうございます」 銃を担ぎ直し駆けて行く烏を見送り、七花は件のトラックに乗り込むよう生存者達に指示を出す。 ●人間は死を怖れる。それは生を愛するからである。 「右よし、左よし、両方とも死者だらけやんけっ!」 四方八方より襲い来る死者を金色夜叉の刃で振り払い、暗黒を放つ玄弥の言葉通り――校内はありったけの死に満ち満ちていた。襲い来る死者の群。死角の無い様に行動しているが、こうも多ければ死角なんてあってない様なものだ。 予め校舎内の構図を頭に叩き込んでいたリベリスタ達――玄弥、光介、双葉、虎鐡の四人――の動きに乱れはない。闇と鎖と太刀の黒い色が死者を薙ぎ倒し、光介の呪文が生を鼓舞する。 警戒を怠る事はなく、確実に――最中に双葉は、窓をかち割ってゾンビが手を伸ばしてくる、というゲームを思い出していた。 油断は出来ない。 「運動場に走って! 早く!」 生存者へ声を投げかけ、光介は千里眼によって周囲を見渡した。死者は粗方薙ぎ払ったものの、それらはしぶとい。『全てを倒し切る』のは困難か。 「楽団が動く様子はなさそうです」 「オーケー。一階は私に任せて、皆は上に」 「分かりました――皆さん、次の階へ!」 双葉の言葉に頷き、光介達は進軍を開始する。「運動場へ避難して!」と双葉は生存者達へ声を張り(まー、子供の私が言った所で従ってくれるかはちょっと疑問だけどね)、地面を這いずる死者を蹴り飛ばした。足を負傷した者は背負い、一時も休まず行動し続ける。 一方、烏は集音装置によって悲鳴の聞こえた方向へ駆け付けていた。校舎裏、死者に取り囲まれた生徒達。諦めるなよ、と声を張り、神気閃光。ぐらつきながらも振り返った死者達に銃口を向ける。足を狙って撃つ。徐々に寄って来る。死者の手が伸ばされる。伸ばされる。伸ばされる――今の内に逃げろ。そう叫んで、弾丸を吐き出した。 回復支援の無い状況、そして圧倒的に多い死者達。どこまで『保つ』か。 「静まれ! 死にたくなくば今は兎に角逃げ延びよ!」 幸成はあちらこちらから聞こえてくる悲鳴に負けじと声を張る。その身に纏う黒装束は血を吸って尚ドス黒い。自分の血と、死者のそれ。彼は面接着によって外壁を登り、先んじて上階に向かっていたのだ。下の階程死者は居ないが、それでも一人で相手取るとなれば決して楽とは言えない量。 弾む息を無視して、教室の戸や窓に群がり重力に任せて雪崩れ込もうとしている死者の群に飛び込んだ。纏うのは影の武具。凶鳥の刃が羽ばたき、周囲の死者共を手当たり次第に切り刻む――だが死者達は上半身だけになっても行動を止めず、這いずってでも幸成へ群がってゆく。だがその目に恐怖は無い。生者を生かす為の囮、故に、危険は承知だった。一つの犠牲で他が助かるのであれば。埋もれてゆく。幸成の身体が、死者の中に。喰らい付かれる。手が足が身体が。引き摺り倒されて、天井も見えぬ程に。伸びる手が。剥きだされる歯列が。 「幸成さんっ!!」 上階に辿り着いた光介が悲鳴の様に彼の名を呼んだ。ぐちぐちと肉が貪られる嫌な音が聞こえてくる。それでも、悲鳴一つ発せずに幸成は言葉を返したのだった。生存者を、と。 「ほな善は急げやで」 真っ先に動いたのは玄弥、施錠されたドアを蹴破って隅で震えていた生徒達ににやぁ~と笑う。曰く、生きて貰わないとお銭が貰えないから走れ、と。 現時点で救える者は救っている。だがその代償にリベリスタの身体は傷付いてゆく――運命は、削れてゆく。 ●なぜ死を恐れるのですか。まだ死を経験した人はいないではありませんか。 相変わらず楽団が仕掛けてくる様子はない。元から戦意は無かったのだろうか。傍観しているのか、はたまた。 「運動場へ走って! 速く!」 銃火で死者を押しのけつ、ミュゼーヌ、エーデルワイス、慧架は駆ける。回復支援が無い故にじりじりと傷が増えているが、立ち止っている暇はない。体育館へ。血の臭い。見渡せば――上階の僅かな足場に生存者達。ドアを押さえているが長くは保たないだろう。 「正に『デッドオアアライブ』ですね……相手はゾンビ、情け容赦は溶鉱炉にでも捨て去るわ!」 ターゲットロック、ファイア。弾丸ジェノサイド。目に映る全てにありったけの弾丸を死者達の脚に叩き込み、機動力を殺ぐ。そこへ襲い掛かるのはミュゼーヌの猛射撃だ。徹底的に、死体を破壊する。 「諦めちゃ駄目よ! あと少しだから――頑張って!! 必ず助けるわ!」 上階の生存者を叱咤激励し、マスケティアは鋼の足音と共に駆ける。襲い来る死者を蹴り飛ばし、銃火。 流石に数が多い――だが、こちらが吐き出す弾丸の方が数は上だ。数の暴力、嗚呼、全く以て数の暴力。運命をBETした。伸ばされる死んだ手がリベリスタ達を掴む。喰らい付く。赤が散る。 斯くして大音を立てて扉は開かれる。 生存者達の見開かれた目に映ったのは――血だらけになりながらも生存者の下へ到達した、リベリスタ達で。 ●死への絶望なしに生への愛はありえない。 互いに情報連絡を綿密に。更新され続ける情報を聞きながら、運動場の七花はまた一人をトラックへと誘導した。中に居るのは負傷者ばかり、そしてこれ以上乗せる事は出来ない。運転席の教師に目を遣り、頷いた。発進する。解錠された門を、トラックはフルスピードで走ってゆく。これで死者はもう手が出せまい――一先ずの安堵。 「残りの皆さんは、うんと遠くまで走って下さい。いいですか」 残ったのは比較的元気な者達。七花の指示に、蒼い顔をしながらも頷いて彼等は走り出す。 「――現時点での生存者の脱出、完了しました。皆さんご無事ですか」 『かなりギリギリ、ね……チームに負傷者がいるわ』 『こちらもです。これ以上は……』 通信から聞こえたのはミュゼーヌと光介の声。これ以上の活動はリベリスタ達の命の危機にも関わって来る。 思考の一間。そして下すのは、撤退。残った死者達を押しのけて、最後まで生存者を救うべく足掻いて、行動を開始する。 救えるだけ救った。本当に限界まで。それでも被害は決して小さいとは言い難いが、多くの生存者が居る事は確かだ。これ以上事件が拡大する事も無いだろう――いつの間にやら放送室の楽団達も何処かへ気配を消している。 「楽団め……この騒ぎの報い、いずれ必ずや返させて貰うで御座るぞ……」 傷を引きずり、幸成は吐き捨てた。 そしてリベリスタ達は、死に満ち満ちた学校を後にする―― 「いやぁ噂に違わず凄い奴らだ!」 「楽しみだね! 楽しみだね!」 「あぁ楽しみだ! 演奏(コンサート)は始まったばかりなんだから――」 未だ胡乱、混沌はその口を開いたばかり。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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