●ツリー炎上 11月に入るとすでに、街にはクリスマスのイルミネーションがちらほらと登場している。 とくに商店の前には、いち早くクリスマスツリーが設置されるものだ。 スタンダードな緑のツリー、ちょっとお洒落なホワイトツリー、光ファイバーの入った最新ツリー。 てっぺんに輝くスターは、キリストの誕生を報せたベツレヘムの星。リンゴやベルの色とりどりのオーナメント。見ているだけで心が浮き立つ聖なる木である。 そのもみの木が、炎上した。 「何だ、小火か?」 冬の乾燥した空気ではありうること、と慌てて消火にあたりながら量販店の店員がぼやく。 「あ、あっちのクリスマスツリーも燃えてる……!」 「何だって!?」 次々と燃えるもみの木に店員は目を剥いた。 もみの木の緑と、炎の赤のクリスマスカラーに胸は躍らずざわめく。 そして被害の広がる街中で異様な姿を見つける。ハロウィンも終わったというのに、仮面の男が立っている。 ●11月の気持ち 「ジェラスのfireは天をも焦がすってね」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が相変わらずの気障な仕草で言った。 「街中でクリスマスツリーが燃え上がる事件が乱発してる。市民は放火犯だと勘違いしているようだが……とんだミステイクってやつさ。分かってると思うが、実際はエリューションの仕業だ」 伸暁の示すブリーフィングルームのモニタには、燃やされたクリスマスツリーの位置が地図上に赤い点で示されている。確かに火災の規模が大きくないとは言え、小火では済まされない数だ。 「ジェラス……嫉妬ってことは、クリスマスのリア充を妬んだ奴の怨念とか?」 「いや、犯人はノヴェンバーさ」 推測を口にしたリベリスタの一人に、伸暁はさらりと返す。 「10月のハロウィンが終われば、街はすぐに12月のクリスマス一色。11月の立場はナッシングだろ?」 「はあ?」 にわかには理解しがたい。 ないがしろにされた11月の無念の思いがE・フォース化した、ということだろうか。 「奴は12月のメインイベント、クリスマスを潰す気だ」 変わり者で有名な伸暁のことなので一概には言えないが、ふざけたところも見えないのでマジなのだろう。 「ノヴェンバーは仮面をかぶった男の姿をしてる。今はちまちまと商店のツリーを燃やしてるが、今度は丸川デパートの前の巨大ツリーを爆破する気だ。奴はいわゆる爆弾魔……bomberさ。オーラで作られた爆弾を扱う」 丸川デパートのクリスマスツリーと言えば、市外からも見物客が来るというほどの立派なものだ。あれが爆破されるとなれば、神秘の秘匿が難しくなりそうな惨事になる。 「そして、もうひとつ、プロブレムが残ってる。ノヴェンバーは、ハロウィンナイトで粗末に捨てられたカボチャ達も味方につけてるんだ。エリューション化してるカボチャは5体。こいつらは体当たりやなんかで攻撃してくるんだが、いざとなると自爆する」 さりげなくとんでもないことを言いやがって。 「自爆をモロに食らったって致命傷になるようなダメージじゃないから、安心だろう」 「安心じゃねーよ! ところで、その11月のエリューションがかぶってる仮面ってのは何なんだ?」 自分は痛い思いをしないからなのか、元々の性格によるものなのか飄々としている伸暁に質問の声が飛ぶ。 「奴がかぶってるのは、ガイ・ホークスの仮面だ。ガイ・ホークスを知らないか?」 聞いたことがあるような、ないような……日本人にとっては、その程度の名前である。 「ガイ・ホークスは、イギリスで発覚した火薬陰謀事件の主犯として捕まった男さ。それに因んでイギリスじゃ、11月にこのガイ・ホークスの人形を燃やす行事がある。別名、『ボンファイアー・ナイト』だ」 11月の爆弾魔の夜が来る。 「クリスマスが、BOMB! ファイアーされちまうまえに……よろしく頼むぜ? プリーズ・トゥ・リメンバー・ノヴェンバー。いいね、歌詞になりそうだ」 一人で悦に入った伸暁に対するリベリスタ達の溜息は尽きなかった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:碓井シャツ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月03日(月)23:49 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●宴の支度 昼間は経済の中心地たるビジネス街も、企業戦士が帰宅した21時を過ぎた頃にはゴーストタウンの趣である。 閑散とした街をひとり歩いていると、残業の空しさが身に沁みる。帰り遅れた企業戦士は肩を落としていた。 「今日も一日、お仕事お疲れ様でしたぁ☆」 「え?」 そんな平凡なサラリーマンの目の前に差し出されたのは、そこの自販機で売っている何の変哲もないホットココアだった。 スペシャルだったのはココアではなく、手渡してきた人物の方……サンタである。ただのサンタではない。ミニスカサンタだ。そして美少女である。しかも四人いる。 「はい♪」 四人のうち、羽毛のような白の髪に緑の瞳の少女……『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)が男の手にココアを握らせて笑みを浮かべた。 あざとい。だが、そこがいい。それがミニスカサンタである。 ぽーっとしている社畜を置いてミニスカサンタの集団が歩き出すと、後にサンタクロースが二人続き、カボチャのお化けが転がり、ビジネススーツの美人が続いた。 この仮装集団こそがリベリスタの一行であった。 「サンタクロースに扮してノヴェンバーの注意を引き付けるのは、良いアイディアだと思いますけれど、あの……このサンタの服、妙にスカート短すぎません?」 『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)が丈の短いスカートの裾を下に引っ張りながら、恥ずかしそうに言う。 「あたしは、11月っぽい服を着てこようかとも思ったんですが、あまりネタが思いつかなかったんですよね」 葉月・綾乃(BNE003850)のスーツ姿はオフィス街によく馴染んでいた。仮装パーティー内のビジネスOLが如く、メンバー内では浮いていたのだけれども。それがジャーナリストである彼女の客観性というものなのかもしれない。 「11月の行事と言われると……確かにあまり思い浮かびませんね。どちらかと言えば影の薄い時期なのでしょう」 「七五三がディスられてる件についてー」 綾乃の言葉に同意した彩花に口を挟んだのは『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)だ。 中等部の制服にサンタ帽をかぶっただけの恰好だが、もともとが赤い制服なので彼女もまた、立派なミニスカサンタと化していた。 「おじさんもそう思ったんだが……七五三は祭りじゃねぇか」 スナイパーのおじさんも今日ばかりはサンタのおじさんなようで。『足らずの』晦 烏(BNE002858)は白い付け髭の合間に煙草をはさむ。 「じんじんもお髭が白い方がいいんじゃない?」 同じくサンタ服の『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)に向かって、とらが絵筆を取り出した。 「えっ、そんなんで塗ったらわしの髭がごわごわになってしまうぜよ……アーッ!」 ツリーの前に髭が犠牲になった。 丸川デパートのツリーは8mを超える立派なものだ。 12月に入れば、24時までイルミネーションが点灯しているということだが、11月の今は消灯している。 「フッ、今年も孤独の風を感じる季節がやって来るか……まだ1か月近く先なのに既にクリスマス気分とは、随分な事だ」 クリスマスとは馴れ合わない。『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)は名物ツリーから目を逸らし、どこか遠い目をした。 ハロウィン衣装のパンプキンボディーを孤独の悲哀に満たし、影継は眉間に皺を刻む。シュールである。 「大統領選で恩赦された七面鳥でも食ってようぜー」 「せっかく運命に愛された七面鳥さんを食べてしまわれるのですか?」 『Manque』スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)は岬の言葉に驚きの声を出したが、手渡されたのが普通のフライドチキンのようだったので安心する。 ツリーの前で一足早いクリスマスパーティーが開催されようとしていた。 ●食材調理 その楽しい時間を妨げるように、パン、と音が鳴った。 『まだ……11月なのにクリスマスパーティーだなんて許されない……』 怨嗟の声が響く。夜闇から、分離するように仮面の男が現れる。 リベリスタ達の狙い通り、ノヴェンバーの目下の憎しみはツリーではなくサンタ服でクリスマスを満喫しているリベリスタ達へ向けられているようだ。 「こんばんは、ノヴェンバーさん」 礼を尽くすようにスペードが挨拶をする。とらは素早く周囲に強結界を形成した。 「あぁ……ガイ・ホークスってアレか」 どうりで聞いたことがあると思った、とノヴェンバーのかぶっている仮面のデティールを見て烏が呟く。 「今は某クラッカーどもの象徴になっちゃてるし、本当運ないよねーガイ・ホークスー」 身も蓋もない言い方をする岬だが、その言葉は間違っていない。ガイ・ホークスの顔は、実際の人物像とかけ離れて独り歩きしている。 『11月を忘れるな。11月を……』 「火薬陰謀事件の犯人に扮するという選択肢しか持ち得なかった貴方自身が、11月の影の薄さを身を以て証明してしまっているのではないですか?」 流れる水のようなしなやかな構えから、彩花は一気に間合いを詰める。そんな悲しい証明を完遂させるわけにはいかない。雪崩の如き勢いの拳がノヴェンバーを狙う。 パン、と小さな爆発が彩花の拳を弾いた。彩花は怯まない。ノヴェンバーを一歩もツリーには近づけまいと、むしろ一歩前へ出た。 『11月は生まれ変わる! 炎によって民の記憶に刻まれる!』 ノヴェンバーが大仰に言った背後からカボチャのE・ゴーレムが次々と飛び出す。てんでバラバラの方向に跳ねていくジャック・オ・ランタンを前衛組がブロックに走った。 「さーて、11月そのものには恨みとかないですけど、エリューションなら話は別です。遠慮無くやっちゃいましょう!」 5体すべてのカボチャにリベリスタがあてがわれたのを後衛で確認し、綾乃が素早く攻撃、防御についての指示を出す。こと戦闘行動の効率化においてはレイザータクトのお家芸だ。 「ノヴェンバー、10月も12月も11月と変わらんやないか! 被害妄想はやめんかい!」 最終防衛ラインのツリー前で仁太が、思春期の厨二病患者のようなことを言っているノヴェンバーに訴えかけた。 『気休めはやめろ……11月だけが特別ではないのだ……!』 「ハロウィンはお化け嫌いやから関係なくて、クリスマスは独り身で関係ない。……うん、10月から12月まで何もない、何も変わらない日々ぜよ」 過ごす人間によって特別か特別でないかなんて、たやすく変わってしまうものだ。何月か、などというものは関係がない。 そう自らの例を持ち出して説く仁太に、聞いてはいけないことを聞いてしまった、という風な如何にも申し訳なさげな視線が綾乃から送られた。 「……別に寂しくないぜよ」 孤独の風が、胸の隙間に吹き込んだ。 「ノヴェンバー……お前もきっとリア充達が盛り上がるのが許せないんだろう。そうだろう、そう決めた。その志、俺が受け継ぐ!」 高らかに宣言したのは影継だ。斜堂一族だけでなく、11月の意志も受け継ぐ気概らしい。 「俺はハロウィンの記憶を保つ者……パンプキンブレイダー!」 そのうえ10月の意志も受け継いでいた。 影継のカボチャの着ぐるみ姿にE・ゴーレムの戦闘意志は揺らいでいる。あれ、この人ってカボチャ好き? それだったら仲良くしてあげないこともないんだかんね、という言葉が聞こえてきそうである。 カボチャのE・ゴーレムと仲良くするか? 答えは否、だ。 影継の魔銃が抜き放たれる。カボチャの顔を削り取るような連続射撃音が夜に響く。 「食べごろに刻んでいくよーアンタレス!」 その景気のいい音に端を発したパーティーナイト。岬のダンスの相手は勿論、ハルバードのアンタレスだ。剣風気迫の真空刃がカボチャの顔を整形していく。 「ハァイ♪ どうしたのー、顔が暗いねぇ~? 一緒に遊ぼうよ~」 一番遠くに跳ねたカボチャをブロックしに行った、とらの位置取りは計算されている。この戦いの中心からは少し離れた位置からは、敵のすべてが視界に収まる。 とらの口元に、好戦的な笑みが浮かんだ。 赤いイミテーション・ムーンが上がる。とらの放ったエネルギーが過ぎ去る季節たちに本物の不吉を告げた。 『どうして……嫌うの……あんなにもてはやしたクセに……』 頭の半分が欠けたカボチャが泣き言をこぼした。 「ハロウィン嫌ー、の前に腐ってそうなカボチャは嫌ぜよ! 汚物は消毒やー!」 「まあ、一ヶ月も前のカボチャじゃねぇ」 仁太のパンツァーテュランが火を噴く。その後を次いで烏が放った閃光がカボチャ共を焼き払った。 瞬間、烏の前のカボチャがぶるり、と震える。烏は咄嗟に半身で躱す。 派手な爆発音が轟いた。 「……っ、自爆するときは身震いする、ね」 肩に突き刺さったカボチャの種は、確かに致命傷には遠いが烏に血を流させた。べったりと右半身についたカボチャペーストをうんざりと手で払い、烏は別のカボチャに銃を向ける。 季節の移り変わりなど関係ない。生ゴミは生ゴミだった。 自爆の兆候さえ分かってしまえば、カボチャなど恐れるに足りない。 「冥王星まで飛んでけー! ホームランー」 カボチャの身震いを見逃さず、岬がメガクラッシュで打ち上げる。ツリーのトップを飾るスターよりも輝く光る星になることだろう。 調子を上げていく面々に対して、無理が出てきたのは彩花だ。短すぎると言っていたスカートが爆風によって千切れ、更に短くなっている。 『次は何処を吹っ飛ばして欲しい、12月の配下よ』 彩花は息を整える。自然に眠る力を身の内に取り込む特殊な呼吸法だ。 背後にそびえ立つモミの木から生命力が流れ込んでくる。 「こう見えても頑丈さには自信がありますから」 お嬢様は拳に冷気を纏わせ、意志の強く灯る瞳でノヴェンバーを見据えた。 ●パーティーナイト 道化のカードが夜気を切り裂く。 とらの魔力で出来たカードが、最後に残ったカボチャに破滅をもたらす。 「っと、危ない」 どうせ自爆するなら、とツリーに向かって跳ね上がったカボチャを綾乃はすかさず真空刃で切り裂いた。二重の防衛線は厚い。 「よく考えてみなよ」 とらは、粉々に砕けたカボチャに言う。 「季節は廻る、メリーゴーランドみたいなもんだよ。 想像してみて。街はどんどんキラキラに飾られて、今日眠って起きたら、もっと楽しい事に近づいているんだよ? ワクワクしない?」 ハロウィンは過ぎ去っても消えるわけじゃない。また戻って来る。 どの馬が正面にくるかが問題じゃない。その回転自体がきらきらと輝いている。 『季節が過ぎゆくのに不満はない……だが、11月はまだ主役になってないじゃないか……』 とらの言葉に答えを返したのは彩花と向き合っているノヴェンバーだった。 「ていうか、12月消えても価値は変わらないっしょ? それどころか、暗に自分達は12月に劣ってるって言ってるようなもんじゃない?」 『黙れ黙れ黙れ……!』 ノヴェンバーの周囲に無数の爆弾が生成される。 「ノヴェンバーさん、聞いてください! 11月の象徴であるあなたがツリーを爆破してしまったら人々は悲しみ、11月を嫌いになってしまうのではないかしら?」 聞く耳を持とうとしないノヴェンバーの気持ちを和らげようと、スペードは自らもガイ・フォークスの仮面を手に前へ出た。 『無視されるぐらいなら、憎まれた方がマシだ!』 スペードの優しさにノヴェンバーは憎しみで返した。 ボン、とノヴェンバーの右手側の爆弾が炸裂した。スペードは顔の前で腕を交差させて爆風から身を守る。 烏の狙い澄ました銃弾が爆弾を射抜いたのだ。千切れたノヴェンバーの右腕が地面に落ちて消える。 『貴様……貴様ァ……!』 「Hanged, drawn and quartered(首吊り・内臓抉り・四つ裂きの刑)」 激昂するノヴェンバーとは対照的に、烏の声は夜の静寂を乱さない。 「死に場所はオールド・パレス・ヤードでとは行かないが、死に様まで再現されちまいそうなのは身の不幸だねぇ。 ……尤もガイ・ホークスを形どったからには、そうなる定めだったかも知れねぇが」 『道連れだ……11月はただでは去らん……』 カボチャを始末し終えたリベリスタ達に囲まれる格好になり、敗北を悟ったノヴェンバーが一際大きな爆弾を作り出す。 ノヴェンバーの背後で肥大していく爆弾は先ほどまでの規模と比べものにならない。爆発させる訳にはいかないが、ノヴェンバーを攻撃すれば誘爆を免れないだろう。 どうする。刹那の間に交わされる目配せ。緊張。 「A penny for the Guy!(ガイ人形の為に1ペニー頂戴!)」 その張り詰めた静寂を破ったのは、スペードの囃し声だった。 仲間の思いがけない行動に皆が呆気にとられた顔でスペードを見る。 「忘れてしまって良い月なんて、ひとつもありません。11月であるあなたにも、人の夢になってほしいと、願う」 ノヴェンバーもやっとそれが気休めでも何でもなく、心からの言葉なのだと気づいたようだった。11月のお祭りに参加しているスペードを満身創痍のノヴェンバーが見つめる。 「そうだ! 11月が無ければ一年は成り立たない。11月もまた、立派な一年の一部だ!」 「そぉそぉ。10月も11月も、秋のいい季節なのに、ネガネガして楽しまないなんて勿体無い」 影継もとらも同意の声を上げる。 「ボンファイヤー・ナイト……ガイ・フォークスの人形を引き回し、最後には燃やすその風習も現在は廃れ、花火を楽しむ行事となっているようですね」 スペードは11月の思いにまっすぐと向き合い、優しく語り掛けた。 「あなたが、ボンファイアー・ナイトを具現するEフォースであるのなら爆弾すら産みだすそのオーラで、夜空に綺麗な花火を作ることもできないかしら? きっと、美しい思い出と共に、11月の記憶は人々に刻まれることでしょう……」 ●宴の始末 「夜空がファイヤーされるとはなー」 予想外の事の成り行きに、さすがの岬も驚きの声をあげた。 「いいんじゃないかしら? 爆弾事件より、よっぽど素敵ですもの」 ボン、ボン、ボン。 ツリーの上空を彩る花火を見上げ、彩花が笑みをこぼす。冬の花火も乙なものだ。 スペードも満足そうに11月の花火に酔いしれる。 「いやー、11月やっつけちゃいましたね。この調子で12月の24日あたりにイチャつきそうなカップルも、片っ端からやっつけにいきませんか?」 綾乃が伸びをしながら言うのに、仁太は首を横に振って悟りの目を返した。 「カップルを一掃しても独りは独りぜよ……」 「え、駄目ですか、やっぱり」 もともと本気で言ったわけでもないが、口をとがらせてみせた綾乃の耳に本気と書いてマジと読む雄たけびが聞こえてくる。 「仕事が終わったら好きにしていいよな。あのツリーを斬り裂き11月への手向けとする! うおおぉ! 斜堂流・聖樹断裂斬!」 もちろんのこと、根本的にノヴェンバーの目的をはき違えている『パンプキンブレイダー』影継であった。 「ちょっと影継さん、何してますの!?」 見咎めて阻んだのは『ツリーの守護神』彩花である。 「邪魔をするな! HA☆NA☆SE!」 爆弾魔よりも性質の悪そうなパンプキンブレイダー恐るべし。斜堂流の恐ろしさを今、クリスマスツリーさんは味わっていた。 「やー、そろそろ独身の独り身は寂しい季節です」 綾乃は完全に傍観の体で新たに始まった闘いを眺めやり、しみじみと呟く。 「独り身? 気ニスンナ。クリスマス終わったら、どうせすぐ正月だっ!」 そんな綾乃の肩を抱いて、とらが笑う。 「まだ七面鳥食べきってねー」 「……何だか、酒も欲しくなるねぇ」 フライドチキンのパーティーセットを頭にのせて訴える岬に、パンプキンの匂いの漂うサンタのおじさんが新しい煙草を咥えながら言った。 二次会の雰囲気を漂わせながら、リベリスタ達の12月は到来したのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|