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<相撲の腹>スモウクィーン

●かっぱ
 最初に言ってしまうと、女相撲というものにもきちんと歴史がある。
 最古の記録は雄略天皇――ある説に拠れば、考古学的に実在が実証される最古の天皇――が女官に相撲を取らせたものだと言うし、江戸期には興行としての女相撲が存在し、田沼意次の長男、意知の好むものであったと言う。
 まあ――そのうち「美女がいない」とか「女同士で組み合ってるの見てもなあ」とか言い出す者が出てきて、やれヒツジと立ち会えだの座頭相撲(盲目の男性が取る相撲である。手探り姿が滑稽であるとして笑うような、或る意味今では考えられない相撲もかつて娯楽としては存在したのだ)の力士と組めだの――最終的には卑猥な見世物となってしまって、お上に禁止されてしまうわけだ。
 さて本題に入ろう。

 過疎も進んで廃村になったある地域。
「えぇいっ、ふがいないったらありゃしないねえ!」
 水のにおいのする洞窟の最奥で、ひとり憤慨するおんながいた。
 いや、おんなと言いきってしまってよいものだろうか、少々難しいものではあった。
 何しろその卵のようなぷるりとしたつやつやのお肌の色と言ったら緑色。
 波打つ豊かな髪が半裸の胸を飾るように隠すもやはり緑色。
 くびれた腰の肉付きの良さは恰幅でなく女の柔らかさ。
 ただしへそはなく。
 色と腹さえ見なければ、燦然と輝く一枚の布だけを身に付けた美しい女の姿であった。
 一枚の布とはもちろん、まわしである。
 力士が己の身に纏う戦士の衣装である。
「あとちょっとだってのに、どんだけ体力が持つもんだか。はあまったく、やれやれだよ」
 髪を掻き上げ、最奥のさらに奥、岩の挟間からこんこんと浸み出す湧水を見つめるおんな。
 あと掻き上げたけど大事なところを隠せるだけの髪は残っている。神秘。
 さても見つめるうちに、湧水はぴたりと止まってしまった。
「――来たか!」
 そこに黒々とした穴が開き、水がどんどん飲まれていく。
 そしてその穴から、半透明の、人型をしたなにやら不気味なものが這い出してきたのだ。

●けっか
「彼女は敗北する。それはスタンドアローンである限り確定事項だ」
 そう告げて、緑もみずみずしいキュウリを削り出して作ったクィーンの駒――だれが作ったんだろう、とか気にしてはいけない。ともかくそれを『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は白い皿から取り上げた。
「皿は気にするな、パンを食べてたらもらったんだ」
 リベリスタたちの何人かは、鞄を嫌う男がどうやってそれを持って帰ったのかを想像したくなった。
 とにかく、白くて丸い皿の上にはキャベツの千切りが細く並べられている。
「この洞窟は集落の奥、さらに渓谷の先にある。
 あたりから集まった水が川を作って――まあ、清流というやつだな。
 最終的には、東京にも届く水だ。ここに、バグホール……そして、アザーバイドが現れる」
 そう言いながら伸暁は、千切りの上にドレッシング(醤油系)をかけた。
「彼女は『かっぱ』ってやつだ。
 長い間、人知れずこの地に現れるバグホールとアザーバイドを潰してきたんだとさ。
 正直、俺も驚いてる。ファンタスティックだ。未知と言うにはあまりにファンタジーすぎる」
 首を振りながらため息をつく伸暁。
「ずっと昔、上位チャンネルからの来訪者はSUMOUに興味を惹かれ、この世界に居座った。
 世界はそれを許したんだ。アザーバイドがフェイトを持つことが、そう多くあるわけじゃない」
 なんでローマ字なんですか。
「己の愛するもののため、特異点の呼ぶD・ホールを片付けてきた戦士の最期は今じゃなくてもいいはずだ。
 そこでアークの出番ってこと――」
 伸暁はリベリスタたちを示した後、皿の横に置いていたフォークでドレッシングたっぷりのキャベツを食べた。
「彼女を助けて、なおかつアザーバイドも倒す。簡単だろう?
 ただし今まで共闘したことのない彼女は、自分より弱い奴には心を開いてくれない。
 まずは彼女と同じ土俵、つまりはSUMOUで打ち解けてくれ」
 洞窟までは送り届けるし、彼女もリベリスタの存在は知ってるよ、と。
 残ったキュウリを齧りながら、伸暁は続けた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ももんが  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年06月15日(水)22:43
STと書いて関取と読む。ももんがです。

●ぼくときみとのおやくそく!
 最初に申し上げさせていただきますが、これは<相撲の腹>(SUMOU NO HARA)です。
 大規模イベント<相模の蝮>(SAGAMI NO MAMUSHI)とは全く無関係であること
 ましてや、pipiSTの『<相模の蝮>ベリルクィーン』とは全くカスリもしない事
 タイトルパロティに関してはpipiSTの許可を頂きましたことをここに記します。

●特異点
 これが過ぎれば休眠状態に。

●バグホール
 ブレイクゲートで一発です。ついでに塞いできてください。

●アザーバイド『ヤオチョ』
 不定形なゲル状の、しかし男性の形をしている謎のアザーバイド。
 その体型、まさにスモウレスラー。弱いですが数がいっぱい。
 一人で戦えばスタミナ切れを起こしてしまうでしょう。
 複数形はヤオチョズ。ぬるぬる。

●かっぱ『メト』
 外見は長いウェーブがかった髪の、緑色の美女。髪の色 緑・目の色 緑・肌の色 緑。
 戦法は真剣勝負のSUMOUスタイル。
 まわしいっちょですが、大事な所は常に何かで隠れる神秘的な力が働きます。具体的にはマスタリング。
 彼女を説得するには、自分たちの方が強いスモウレスラーであると示す必要があります。
 取り組み中だけでもまわしのみ、もしくは水着や薄い服になっておくべきでしょう。
 数人がかりで挑んでもかまいませんが、土俵外からの物言いだけは嫌がります。
 スタミナ不足が弱点。
 なお、つるむような性格ではありません。
 勝者から今後アークから監視されろ、と言われる程度ならば受け入れると思われますが、アークに所属しろ、というのは聞いてくれないと思っていいでしょう。

●清流
 遊びたい?
 仕事終わってからね。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
プロアデプト
雪白 万葉(BNE000195)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
スターサジタリー
百舌鳥 九十九(BNE001407)
マグメイガス
風宮 悠月(BNE001450)
デュランダル
イーリス・イシュター(BNE002051)
マグメイガス
依々子・ツア・ミューレン(BNE002094)
クロスイージス
高崎・千尋(BNE002491)

●セーブ・ザ・かっぱ
「緑色とはいえ、素敵な美女とのお相撲とか素敵!
 という俺も居れば。
 この世界を守ってくれていることに感謝を!
 という俺も居る。
 どちらも俺の心だ。
 ならば、彼女は敵じゃない。同士だ!
 仲良くなるべきだろう、いろんな意味で!」

「危ないんで暴れないでもらえますか?」
「あ、ハイ」
 包帯を巻いた右手をかたく握りしめ、何だかいろんな物が残念な大演説をぶった『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)に、読書を邪魔された雪白 万葉(BNE000195)が冷静にツッコむ。大人しく座る竜一。
「河童。
 何時の頃からか、古より日本各地に妖怪として伝わる存在。
 まさか、現代で本物の河童にお会いできる機会を得られるとは思いませんでした。
 神秘探求の徒としては、見逃せませんね。
 そして……叶うなら、良い関係を築きたいものです」
 タロットをきりながら『星の銀輪』風宮 悠月(BNE001450)が呟く。
「日本では凄く有名な妖怪だったわね。
 アザーバイドだけど仲良くできるかしら。楽しみだわ~。
 ……え。……なにこれ。こ、これはちょっと恥ずかしいわね~……」
 そう言いながら『格闘魔術師』依々子・ツア・ミューレン(BNE002094)は借りた資料書のページをめくり。
 ――たどり着いた目標のページに、一瞬絶句する。
 そこに写るはスモウレスラー。彼女はSUMOUを知らなかったのだ。
「かっぱさんがお相撲とってばーん!って事だよねぇ。
 すごいなぁ。時間があったら、お話ししてみたいよ」
 どこか楽しそうな声は『聖盾』高崎・千尋(BNE002491)。何故か中学女子制服を着ているがれっきとした少年であり、竜一などは性別を確認してはただ驚愕していた。ロリコンめ。
「まさか伝説で語られる存在と出会えるとは驚きですのう。
 河童は相撲が得意と言いますし。これは一筋縄ではいかんかもしれませんのう」
 ある意味同種を見つけた気分なのか。『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)の声は感慨深い。
「確かに、相撲好きの河童の話、は聞いた事が、あるけど……
 まさか本当だとは、思わなかった。
 ずっと、一人で戦って……守ってきてくれた事、には感謝と敬意を表したい、ね。
 だからこそ、死なせは、しない」
 無表情ながらも決意を秘めた声音で呟いた『ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)。
 その言葉に、起きている者が皆一斉に頷く。
 出発前にお腹いっぱいご飯を食べてすっかりおねむの『あほの子』イーリス・イシュター(BNE002051)は、かごいっぱいのキュウリを抱えたまま寝言で応える。
「……かっぱさん……」
 車の振動に合わせて、金髪に付けたエンジェルリングがぴこぴよと揺れる。
 そのさまに、時折石をはねながら進むワゴンの結構せまい車内がいっぺんに和やかな空気になった。
 死を予言された一人の戦士(かっぱ)を助けに行く、そのことに異論のある者は、いない。

●洞窟にて
「つまり、勝ったら言う事を聞けって事か?」
 艶やかな緑肌のかっぱ、メトは胡乱な目を向けた。
「こちら、が勝ったら……ね」
「共闘をもーしこみたいのですっ!」
 天乃がこくりと頷き、すっかり目の覚めたイーリスが元気良く続ける。
 フェイトを持つアザーバイドはそんなリベリスタ達を見回し、ゆっくりと目を細める。
 その様子を見た竜一が、もう一押しの交渉を仕掛けるべく一歩踏み出す。
「上を目指すなら、ぶつかり稽古が必須。今の自ぶ「ようし分かった! どっからでもかかって来な!」
 緑色の両掌で己の脇腹をバシーンと叩き、高らかに宣言。
「早!」
 遮られた竜一が思わず突っ込んだ。
「あたし相手に相撲をしに来たんだろ? そりゃこっちも応えなきゃだ!」
 そう言ってメトはおもむろに己の髪を一房握る。
 ぎゅるるッ、と異様な音を立てて伸び、蛇の如くあたりを這う髪の束。
 それはリベリスタたちの足元をぐるりと取り囲み、なおも動きを止めずに量を増すばかり。
 明らかに見知らぬ技に、リベリスタたちの間に緊張が走る。それを見て、メトは涼しい顔で笑った。
「まあ見てなって」
 それは囲んだまま幾重にも編みあげられて、一つの形をなして行く。
「ええと……これは?」
 おそるおそる問いかける悠月に対し、メトの返事は誇らしげだった。
「見ての通りさ!」
 緑の髪で出来た綱は円状に這い、囲った地を揺らし土を盛り上がらせ小石を排する。
 やがて落ち着いた頃、その場に出来ていたのは直径15尺(4.55m)ジャストの円陣。
 ――緑色の土俵、完成。

●かっぱ5番勝負!
「いや、河童と相撲なんて良い経験になりますな」
 一番手、九十九。
 いつもと同じ仮面を付けたまま、裸にマントをひるがえし……って怪しすぎるよ!? おまわりさーん!
「くっ、チョコマカと……!」
 メトが呻く。
 九十九の取り組みは受け流しや避けを重視した物であり、彼女の突っ張りはいまいち振るわない。
「ふっふっふ、これでも避けには自信があるのです」
 九十九はそう言いながらも、油断無くメトを観察していた。
 スタミナ切れを狙うと共に、彼女の実力の程を測ろうとしているのだ。
 その仮面の間近で、メトの両手が打ち合わされた。

 ぱぁん!!

 猫騙し。
 ※空間が歪んで見えるほどの衝撃と轟音を伴う、スタングレネードの如き威力の。
 溜まらず平衡を失う九十九の隙を逃すメトではない。
 決まり手、押し出し。

 二番手、イーリス。
「かっぱさん! はじめましてなのです! わたし未来のえーゆーなのです!! よろしくなのです!」
「英雄だって? そうか、あんた横綱を目指してるのか!」
 誤解が生じた気がするが、それはそれとして。
 イーリスの戦法は、九十九とは真逆の真っ向勝負であった。
 がぶり四つ。互いのマワシを掴み合い、肩を密着させて押し合うさまは正に名勝負。
 見守る他のリベリスタ達の意気を大いに盛り上げた。
 熱い、熱い闘いであった。
 カメラアングル(?)を信じ裸一貫の覚悟を決めていたイーリスだったが、周囲の反対により、緑色のマワシ(メトの髪製)を進呈された。ついでに周囲の草木や緑や金の長い髪、季節はずれのトンボ達もいろんな意味で神秘を秘する仕事を完璧にこなしていた。その後ろでは潔すぎる脱ぎっぷりやら汗に塗れる女たちの姿を前にビデオ・デジカメ・携帯を所持する竜一が疑われたり冤罪を訴えたり否決されたり追い払われたりヘッドロックかけられたり各種機器を没収されたりしていた。
「何でだよ!」
 閑話休題。
「わたし! どひょうからてんをつくきょぼくとなるのです!」
 全身に気合を漲らせ粘りに粘るイーリスは、なるほど幾重も根が張った巨木の様に押されども押されども土俵際で踏ん張り堪え続けてみせる。
 だが、組み合ったメトがニヤリと笑う。
「良い気迫だねえ。だが……! 気合だけじゃ、横綱には届かないよっ!」
 イーリスの押す勢いを利用する形でマワシに手をかけ引き倒す。
 決まり手、引き落とし。

「さあ、かかってらっしゃい。今度は私がお相手しますわ」
 3番手、依々子。普段の導師服と同色の、紺の水着には可愛らしいフリルとパレオ付き。
 本人いわく、
「運動用じゃ微妙だし。お仕事でも、こういう所は大切にしないとね~」
 だ、そうで。
 はてさて新機軸の魔術を生み出すべく修めた格闘技の技術と予習の成果か、一夜漬けとは思えない立ち回りを見せた彼女は、メトに終始押されながらもなかなか決め手を打たせない。
「シィッ!」
 メトの豊かな右胸に依々子の掌打が突き刺さる。それは相撲ではなく空手の技術。
 依々子は試合前に他の格闘技の技術を使って良いかと確認していた。
 かっぱが力強く一向に構わんと即答した事は言うまでもない。
 立ち会いなれぬ他流の技に翻弄され、劣勢のメト。
「捕まえたわ~!」
 突っ張ってきた緑の腕を掴んで引き寄せ、たわわな緑の胸を背に乗せようとする依々子。
 それは柔の技、一本背負い。
 一同がこれは決まったと息を詰めて見守る中、メトが口の端を上げる。
「そいつには負けられないねえ!」
 確かにそれは異流の技であったが、その実、相撲にも同様の技がいくつか存在するのだ。
 決まり手は、引き手に逃げていなして見せたメトの二丁投げ。柔道で言う払い腰であった。

「細身にマワシは似合いませんね」
 溜息をついた4番手、万葉。
 彼は勝つ事よりも早期の敗北を防ぎ、徹底してメトのスタミナを奪う戦方を取った。
 ぶちかましやツッパリなどで押し攻められれば避け、いなし、受け流し。
 マワシを取ろうとする手を払い土俵の中を逃げ回る。
 それまでの取り組みを観察して、彼女が派手な決着と大技を好む事を見て取った万葉はともかくメトの狙いを起点から妨害する事を優先した。
「そこだっ!」
 メトの手がついに万葉のマワシを掴む。だがヴァンパイアの青年は焦らない。押し引きのバランスを取り、力の拮抗の保持を狙い意識を集中……した途端。
「そぉい!!」
 即座にその手を外したメトに両肩を思い切り叩き落とされた。
 決まり手は叩き込み。
 かなり無理矢理なやり方だった辺り、彼女にも焦りがあったのだろう。
「……はぁっ、はぁっ……。さあ! 次は、どいつだい?」
 額の汗を手の甲で拭い、声を上げるメト。

 5番手は団体戦。竜一・天乃・悠月対メトの三対一である。
「私は単独で立ち会っても勝負にもならなさそうですので……」
 という悠月の申し出にメトは快諾し、むしろ楽しみだと言う顔で挑む3人を見回す。
「うぉおお!」
 真正面から竜一とぶつかる。竜一の目は真剣だ。なお、顔の下半分はメトの肩に隠れて見えない。
「いいねえ、やりがいがある!」
 メトは竜一と組み合いながらも、隙を見て足を払い悠月に土を付ける。しかしその一瞬に油断が生じた。
「……結城、チャンス」
 天乃の足払いが、メトの足を刈る。
 ちなみに普段から穿いてない彼女はマワシとさらしの代用に包帯と絆創膏を駆使している。
 一瞬バランスを崩し、慌てて竜一のまわしを掴み直そうとしたメトの片手を天乃が払い、差し手の上からまわしを掴み上げた竜一が気合の叫びを上げた。
「これが、愛と友情の上手投げだあああああああ!」
 メトの視界がぐるりと回り、どん、と体に音が響き、彼女は己が黒星を喫したことを悟る。
 その耳に竜一の勝利宣言が届いた。
「……これがチームプレイの力。一人で出来る事など限られてるのさ」
 決まり手、上手投げ。
 リベリスタ達の勝利だった。
「おそらく嫌いであろう戦法を取らせてもらいました、私の事もいけすかないと思われたかもしれませんがご自身の体力を省みて有効だとは思ってもらえませんか? 様々な策をとり皆で勝利を目指す、これが協力です。少しは納得してもらえましたか?」
 大の字のまま茫然としているメトに歩み寄り、万葉は滔々と語る。
 それは万一でも彼女に不満を言わせない為に組み立てられた万全の論理だったのだろう。が、
「うっしゃあ! あたいの負けだ!」
 こいつ人の話聞いちゃいねえ。
「こんだけ強けりゃ言う事は無いよ、なんでも聞いてやろうじゃないか!」
 立ち上がって胸を張るメト。それにしてもこのかっぱ、ノリノリである。
「戦うべき敵の名はヤオチョズなのですっ!! 名前からいってとんでもない巨悪なのです!」
 イーリスもノリノリだった。
「ボク達と一緒にヤオチョを倒しましょう」
 頷く千尋も嬉しそうな顔。彼は何をしていたかと言うと、観客に徹し、時々座布団を投げていた。
 本人の意識がどうなのかは定かではないが、いわゆる男の娘にあたる彼には相撲姿がどうしても気恥ずかしかったのだ。ただ、今はメトとの話し合いが上手く言った事が純粋に嬉しい様子。
「自らの敗北を知り、君は、一皮向けた! さあ! ともに戦おう!」
 竜一もノリノリでメトとガッチリ握手をし、爽やかに宣言。
 ……に紛れて真正面から正々堂々と、カメラがなくとも心のファインダーがあるさとばかりに直視なう。
 もっとも、メトの神秘は今に至ってもいろいろな方法で守られていたのだが。
「いざという時のために連絡をとれるようにしたいのだけど」
 依々子などは携帯まで取り出していた。
「あ、ごめんここ圏外なんで持ってないんだわ」
 このかっぱ、どうやら購入を検討したことがあるらしい。

●ごっつぁんです
 結論から言うと、ヤオチョズは非常に弱かった。
 そりゃもうめちゃくちゃ弱かった。力はそこそこあるのだが、守りと早さと体力がまったくなかった。
 ただ30分間ひたすら10秒に3体ずつ、しめて540体。ぬるり、ぬろりと現れるだけで。
「面倒くさい!! こいつらめちゃくちゃ面倒くさい!!」
 その悲鳴は、はたして誰のものだったのか。
 ようやくブレイクゲートでD・ホールを壊せた時には、皆ぬるぬとである。
 依々子が腕から垂れたぬるぬるに眉をひそめて弱音を吐く。
「うわあ、ぬるぬるしてるわね。気持ち悪いわ~……」
「ぁん? それならちょっと行ったところに――」

●うちにかえるまでがえんそくです
 メトが皆を案内した先は、清流流れる河原である。
 リベリスタたちは思い思いにぬるぬるを落したりイーリスの持ってきたスワンボートで遊んでみたり。
 梅雨中とはいえよく晴れた暑い日の水遊びは、気持ちが良い。
「尻子玉はオレのだ!」
「取らねぇよ!」
 竜一の声に笑いながらメトが返す。手にはリベリスタからもらったキュウリ。
 その横でイーリスと九十九も、キュウリに味噌をつけて齧っている。
 川の流れで良く冷えたキュウリは、普通に美味い。
 悠月は目を閉じ、水のせせらぎを静かに聴いて、楽しんでいるようだ。
「相撲勝負。今度は……一対一」
 天乃が、メトの前に立って告げる。
「仕事は、終わった……これで、しがらみなく出来る……準備運動には、丁度良かった、でしょ?」
「お? やんのかい?」
 にやりと立ち上がったメトが、髪の毛で土俵を作り始める。
「わたしも、やるです! お友達になりたいのです!
 そして! いつか、勝つです! わたしっ! ゆーしゃなのです!」
 イーリスも挙手し、跳び跳ねるように立ちあがった。
 おっしじゃあこの次はイーリスな、とメトが笑う。
 なんだなんだ? とリベリスタたちが集まって観客が増えていく。
 九十九が即席の行司を始める。
「見合って見合ってー」
 土俵上で見合う天乃とメト。
「はっけよい」
 天乃が、メトに声をかけた。

「今までありがと……これから、もよろしくお願い、します」

「のこった!」

<了>

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
ノリノリ。

成功です、お疲れ様でした。