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おねだりしちゃう芋畑


 それは芋畑だった。
 美味しいサツマイモの埋まってる、広大で長閑な普通の芋畑だった。
 ……そのD・ホールとアザーバイドが現れてしまうまでは。



「サツマイモの中にね。虫みたいな姿のちっちゃいおっちゃんアザーバイドが入り込んじゃったのね」
 と、アーク所属のフォーチュナ仲島 オトナ(nBNE000238)は、普通を通りこして若干覇気のないくらいの無表情で、わりとエキセントリックな事を言った。
「それでなんかあれなんだよね。芋を握るとおねだりしちゃうんだよね」
 そして、「言うべきことは全て言いました」みたいな風情で一旦、口を噤んだ。
 でもたぶん明らかにこれは、意味が行方不明の状態なのだった。
 だいたい、「それで」って言ったあたり、前の説明と後ろの説明には何らかの繋がりがあるみたいだったけれど、説明が下手過ぎるのか、言葉のチョイスが間違ってるのか、あるいはそのどれもなのかっていうか、それはわざとなのか、とにかく繋がりについてはいっさい分からない。
 とか思ってたら、覇気のない美形は、また話出した。
 一応続きがあるらしい。ちゃんとしてるかどうかは謎だけど。
「実はとあるサツマイモ畑の中央あたりにD・ホールが出現しちゃってね。で、そこから、顔はおっちゃんで体は芋虫みたいな、すごいちっこいアザーバイドが出てきちゃったのね。20匹くらい。
 それでそのアザーバイド君達はどうもこう、顔はオッチャンでも属性は虫だったのか、サツマイモを齧りながらその中に身を隠す、みたいな状況がめっちゃ心地良かったみたいで、どんどん芋畑の芋の中に身を隠し始めちゃったのね。何だったらもう出てきたくないくらいの感じで。でもサツマイモの中にオッチャン顔の芋虫とか居たらやじゃない。だから早急にこれの送還をお願いしたいわけなんだけど、一つ問題があってね。それが、このオッチャン達の変な魔法なんだよね」
 仲島は無表情に溜息のような物を漏らす。
 残念がっているのか面倒臭がっているのか、なんの溜息なのかは良く分からない。もしかしたらただちょっと息をついてみたかっただけ、という可能性もある。
「アザーバイド入りのサツマイモを誰かが掘り返して見つけちゃったとするでしょ。そしたらオッチャン達は何か慌てちゃってさ『オネダリン』っていう魔法を唱えちゃうんだよね。この魔法の範囲はわりと広くて、近くに居る人全体にかかっちゃうんだけど、これを唱えられるとどうなるかっていうとね。
 一定時間、サツマイモを握るとおねだりせずにはいられない身体になっちゃうの。もしくは、一定時間、おねだりを実行せずにはいられない身体になっちゃうの どう? 分かる?」
 いえ、わかりません。
 サツマイモって単語以外分かりません。
 そもそもなんで、そんな誰得な魔法をアザーバイドが唱えてくるのかが分かりません。
「具体的にはね、その魔法にかかってる最中に『そのへんに埋まってるサツマイモを握ると、おねだりをしちゃう』ってことなんだよね。で、『そのサツマイモと根っ子で繋がってるサツマイモを握っちゃった人は、相手のおねだりを大胆かつマイルドに実行せずにはいられなくなっちゃう』の。だからこれの予防法は、魔法を唱えられたと思ったら他のサツマイモは出来るだけ握らないようにするってことなんだけど、でもこれアザーバイドを探すためにサツマイモは握らないといけないわけじゃない。だからこれもうしょうがないよねやるしかないよねおねだりとおねだり実行頑張るしかないよね。
 と。いうわけで」
 説明のだいたいを大雑把に片づけると仲島は、相変わらずの覇気ない無の表情で資料的な物を皆に配り始めた。
 おねだりルール、と書かれてある。
「あとのことはここにざっくり纏めてみたから。とりあえずこれをさらーっと読んで頑張っておねだりゲームをこなして下さい」
 おねだりゲームってなんですか。
 っていうかサツマイモを握った瞬間ってなんですか。むしろ芋握るアクション要りますか?
「そうそう、あとね。おねだりする側になるか、ねだられる側になるかは、芋を掴むタイミングによって変わるからね。でもまああんまり深く考えないで掴んじゃえばいいかも。そしたら何かこう上手い具合にさりげなく事は進行するだろうから」
 上手い具合にさりげなく進行するって、何が?
「アザーバイドの送還については、発見次第、芋ごとD・ホールの中に投げてくれたらいいよ。オッチャン達は芋の中がすっかり気に入っちゃってるから、多分そこから出ないだろうし」
 というわけで。じゃあ皆、今日も頑張ってね。
 いろいろをざっくり丸投げした仲島は、覇気のない表情でひらひらと手を振った。




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:しもだ  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年11月29日(木)23:18
秋です。
でももしかしたらもう冬かも知れないです。っていうか、冬です。
でも、芋です。そして、イージーです。以下詳細です。

■成功条件
アザーバイド×20匹の送還。(雰囲気)
D・ホールを塞ぐこと。

■おねだりルール。
アザーバイド入りサツマイモを握った瞬間に魔法が発動します。
あとはもうサツマイモを握る度に、おねだりしたりされちゃったりします。
つまりはおねだりしちゃおうなだけの依頼です。ついでにおねだりされちゃおうな依頼です。
何が起こってもそれはきっと魔法のせいです。

ちなみになんか「手で握る」ってとこがポイントらしく、サツマイモを握らなければ『おねだり』は出ません。
踏んだり蹴ったりしても『おねだり』は出ません。逆に出す気がなくても握っちゃえば出ます。握り直せば何度でも出ちゃいます。
おねだりした人の芋の先に誰も居なかった場合は、空振ります。
おねだりはしちゃうけど、なんかおねだりしちゃっただけみたいな感じになります。
あと、魔法によっておねだり中枢(?)がやられてるだけなので、別に混乱してるとかではありません。
おねだり中枢(?)がやられちゃってる以外は普通です。
アザーバイドを全て送還すればその瞬間に魔法の効果は消えます。
つまりおねだり中枢(?)がすっかり正常値(?)に戻ります。

それでは節度を守って楽しい芋掘りを。
(根っ子先のご指名についてもさりげなく承ろうと思います よ?)
皆様のご参加、心よりお待ち申し上げております。


参加NPC
 


■メイン参加者 5人■
デュランダル
日野宮 ななせ(BNE001084)
プロアデプト
アレクサンドラ・イリイニチナ・ディアコノワ(BNE001433)
ダークナイト
紅先 由良(BNE003827)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
ダークナイト
街多米 生佐目(BNE004013)
   



 空がきれいだった。
 辺りには視界を遮るものが何もなく、芋畑は広大に広がっている。
 長閑だった。
 と。
 そんな長閑な芋畑に響く声がある。
「休まず耕せポテト!」
 『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)の声である。
「そして喰らえポテト!」
 握った芋で空を指し示しながら、きびきびとした命令口調で喋る彼女は、今日もすっかり凛々しい軍人気取りだったのだけれど、何かが既に若干おかしい。
「ただし、喰って良いのは手に豆がある者のみであるポテト。なんとなれば、それこそが尊き労働の証であり、鉄と血にまみれて務めを果たす労働者こそ人の尊き姿ポテト!」
 おかしいっていうかむしろ可笑しい。っていうか多分、語尾が確実になんかおかしい。
「つまり……」
「つまり、あれだな。芋掘りアハンアハン(西洋人風)と言う訳だなポテト」
 ベルカの言葉の先を浚ったのは、『カゲキに、イタい』街多米 生佐目(BNE004013) である。
 けれど彼女もやっぱり、語尾がおかしい。あと、良く良く考えたら、言ってる事も多分ちょっとおかしい。
「まあ、オネダリン……でしたかポテト。フン、今でこそ元、ですが、我ら軍人をあまり舐めないで貰いたいポテト。この程度の任務、どうということはありませんポテト。此処はどのようなおねだりが来た所で、全て受けて見せましょうポテト」
 支払いさえきっちりしていただければ結構ですが信条である『白金』アレクサンドラ・イリイニチナ・ディアコノワ(BNE001433) が、切れ長の瞳を細めながら、クールに言う。
 ただ、クールに言ってもやっぱり語尾はポテトだった。
「報酬に見合うだけの働きをする事が、傭われ兵たる今の私の本分ですからねポテト」
 とか、仕事ですんでおねだりだろーとこなしますが何か、みたいな、覚悟した感じは分かるけれど、そんな落ち着いた無表情でポテトとか言われたながらこっちを見られてもどうすれば、と、『戦場に咲く一輪の黒百合』紅先 由良(BNE003827)は思った。だいたい、クールな顔して芋握ってるとか、ちょっと可笑しいを通り越してなんかもーシュールだ。
「あと、他の方はどうか知りませんけど、私はポテトとか言ってふざけてるわけではありませんしね」
 知ってる。
 それだけは知ってる。あと多分、他の人もふざけてるわけではないと思う。
 ではどうして皆、語尾がポテトなのか。
 といえばそれはもーアザーバイド入りの芋を掘り起こしちゃった人が居るからだ。
 由良は皆からちょっと離れたところに蹲る、オレンジ色の影に目を向ける。
 原因は多分、あのオレンジ色の彼女が自分でも気づかない内に、もーアザーバイド入りの芋を掘り起こし、握り、オネダリンを発動させちゃったからだ。
 でもそれはことのほかマイルドに、思ってたよりもさりげなく始まってしまっていたので、みんな気づかなかっただけなのだ。
「気分は遠足~♪ おやつは300円まで~、もちろんポテチとスイートポテト~♪ それから語尾にはしっかりポテト~♪ みんなポテト~みんなでポテト~♪」
 歌っている。
 しかも歌の中にさりげなくおねだりを忍ばせている。歌の中でさりげなくおねだりってたから、みんな気付かずマイルドに会話の語尾がポテトだったのだ。
 それでも『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(BNE001084)は、まだまだ気付かず、一生懸命芋を掘り起こし続けている。スコップと麻の袋を手に、うきうき感は満開で芋を掘っている。
 と思ったら、立ち上がった。
 腰をとんとんと叩き、額を腕で拭って、「ふう」などと息をついた。
 で、じーとか見つめる由良の方を向いた。
 目が、合った。
「あー、由良さん! 芋掘り楽しんでますか~! アザーバイドさん、まだ出て来ないですねー! オネダリン楽しみです! わたしはどんなおねだりもどんと来いですよ! 根っ子で繋がる相手は、どなたでも大歓迎! なんなら全員で繋がってたりしても良いかもですね!」
 いや実際もう繋がっていたのだ。
 だから、皆ポテトってるのだ。
 もう宴は始まってるのだ。始まっちゃっているのだ。
「ななせさん。そろそろ気付いて欲しいですわ」
「え?」
 由良の呟きに、きょとん、とした顔を傾けるななせ。アホ毛がふわふわと揺れる。
 なんて長閑。
 とか思ってたら、ベルカがまた、ビシッとした声を張り上げた。
「さあ私も芋を掘るポテト! 芋掘りイワンの名に懸けて、掘るぞー掘りまくるポテトー!」
 そして勢い良くしゃがみ込み、ここほれわんわん。さすがビーストハーフ(イヌ) である。
 うんせうんせ。
「厳密には軍人では無い私だが」(だってただの実験体)
 うんせうんせ。
「しかし祖国を想うシベリア魂は未だ健在なのであるポテト!」(推定7歳頃から日本暮らしだけど)
 うんせうんせ。
「そんな私が、たかがオッサンの顔してるだけの芋虫如きに負けるはずが」
 うんせうんせ。
 お芋さんギュッ。
「ぶえええん! おねえちゃあああん!!」
 大丈夫。
 彼女はちょっと負けちゃっただけなのだ。
 アザーバイド入り芋を掴んで、すっかりおねだり中枢やられちゃって、おねだりスイッチオン状態なだけなのだ。
「おねえちゃああん! さびしかったよおおお!!」
 180センチ近い長身(かつ巨乳)が、飛んだり跳ねたり泣いたり吼えたり。ぼよんぼよん。
 説明しよう!
 ベルカさんは【パブロフの家】における最後の実験体。ナイトメアダウンに於ける全滅から辛くも生還し、独り立ちをし、今では逆に妹的存在すら出来かけている今日この頃ではあったが!
 言わば姉妹の末っ子(12人目)の彼女は、大変なお姉ちゃんっ子だったのである!
 心の奥底でくすぶる「お姉ちゃんに甘えたい」欲は未だ健在だったのだ!
 あと、おねだり側に回ったから、もう人のおねだりは聞かなくて良くな面倒臭とにかくポテトはもうつけなくて良くなったのだ!
 では。甘えたいお姉ちゃんとは誰か。
 この場合、年上のお姉さんが居ればそれに該当す……と思ったらアレクサンドラ・イリイニチナ・ディアコノワ一択だった。
 わんわんわん。サーシャお姉ちゃーん! わんわんわん。
「わたしがんばってる! がんばってるから! ほめてほめてほめてうわおおおん!!」
 とか、言ってる事は可愛いけれど、物凄い怖いくらいの勢いで一目散にアレクサンドラへとダダダダダダズサーッッッ!!!!
 いや据わった目が怖いです。
「ふむ。まったく上位世界には奇異な存在がいるものですポテト」
 とか、犬ベルカがわりと凄い勢いで懐いてくるのを、ふわーっとクールにいなしたアレクサンドラは、芋から這い出たアザーバイドをじーっとガン見した。
 いやん、おじさん恥ずかしい。
 と思ってるかどうかは定かではないが、アザーバイドはほんのり頬を桜色に染める。
「早々に畑ごと焼き払ってしまいたい所ですが、そうもいかない……ですね」
 え? 今なんか凄い不穏な事考えてる? おじさん、大丈夫よね。おじさんのこと、殺したりしないよね。え、え?
 と、思ってるかどうかは定かではないが、アザーバイドはわりと焦った顔で芋の中へ引き返していく。
「では此処は大人しく、彼らの送還任務を遂行しましょうポテト」
 そしてアレクサンドラは芋を振りかぶり……投げたー! ピュー。D・ホールへドーン!
 というのをちょっと眺めて、何事もなかったかのようにまたしゃがみ込む彼女。
「さて、芋掘りを続けましょうか」
 また、クールに呟くはずだった。
 はずだったけれどその口は、「頭を撫でて下さい」とか、言っている。
「え」
 ぎょっとしたように動きを止めたベルカに見つめられたけれど、
「え」
 むしろ、自分が分かっていない。
「同志アレクサンドラ・イリイニチナ、今、なんと」
 いや知らない。
「確か頭を撫でて下さいとか言ってたなポテト」
 意外としっかり聞いてる生佐目である。
「私もそう聞こえたが……同士アレクサンドラ・イリイニチ」
 と、二人に詰め寄られ、アレクサンドラは観念したような溜息を一つ吐いた。
「……いえ、若干ではありますが。心の底に可愛がられたい願望がなきにしもあらずなので……頭を撫でて頂きたくなったというか……その……子供の時ぐらいしか、機会がなかったもので」
 えーなにそれかわいー。
 っていうかちょっと恥ずかしそうに投げやりになってる感じがまたかわいー。
「よかろー。撫で撫でー」
 とか、芋の先を握ってた生佐目がぴょこぴょこちょんちょん、とアレクサンドラの頭を撫でた。
 撫でた。
 のはいいけど、その手のデジカメはなんですか。
「こういうのも記念だからな。デジカメでこの姿、保存しておこうか」
 パシャ。え。っていうか何記念? 撫でられ記念?
 とかいう間にも、由良が、ポテトとか撫でられとかではなくて、お金とかお菓子とか肉まんとか目に見える物をねだってやりますわ。とか、決意しながら芋を握っていた。
 で、
「大きい胸がほしー!」
 とか、叫んでいた。
「……………………」
 ん? お金より……巨乳?
 それも確かに、目に見えるっちゃ目に見える物だけど。
「あれ。こんなはずでは……」
 いえ由良さん、ひんぬうがよっぽど辛かったですかそうですか。それとも、巨乳ベルカさんを見てたらなんか、巨乳もいいなとか思っちゃいましたかそうですか。
「ではこれをどうぞ胸元のあたりに入れてくださーい!」
 と。芋の先に居たななせが、アホ毛を揺らしながらやってくる。
 芋を両手にやってくる。
 そしてその芋を彼女の胸にあてがい、どーん。
「よし! 胸がおっきくなっちゃいましたっ!」
 って言ってる顔がもーマジだ。めっちゃ真面目だ。痛々しいくらいに真剣なのだ。
 そうだ彼女は本気で良かれと思って胸に芋……。
「じゃあこの姿も保存だな。ま、こういうのも記念だからな」
 デジカメを構えた生佐目が通り過ぎざまにまたパシャ、と。
 いやだから何記念。巨乳記念? それとも痛々しい記念?
「じゃあ今度はわたしの番ですよ! ななせおねだりしちゃいまーす!」
 え、でももうやりましたよね。語尾に「ポテト」をつけてお話して欲しいって。
「あれはレベル1のおねだりです!」
 え、レベル1ってなんなの。レベルとかあるの。っていうかなんで今、答えたの。
 って言ってるあたし、誰なの。
「わたしもお芋大好きですのでオイモバイトさんになってしまったアザーバイトさんの気持ちも少しは分かるんですよね……」
 そしてななせは、唐突にそんな事を語り始めた。ちょっと切なげに。
「でもアザーバイト入りですとちょっと困りますから、お芋の平和を守るために頑張ります! というわけで、レベルにぃ! ぎゅーって抱っこして欲しーい!」
 って、いや全然繋がってないですけど大丈夫ですか。なんでアザーバイドの事ちょっと語っちゃったんですか。その小芝居いらなかったですよね。
「ではわたくしが」
 と。歩み出たのは由良だ。
 芋の先に居たのは由良だったのだ。
 けれど、黒いフード付きの黒装束に身を包んだ彼女がそろそろと歩み出る様子はまるで、何らかの悪い儀式を企む人みたいでもありちょっと心配……。
「さあぎゅー! かーらーのー高い高いーですわー」
「わーい高い高いですー!」
 とか思ったら凄い平和だった。
 全然平和だった。
 芋畑は長閑だった。
「と、まあここまでやっておいてなんだが、別に芋を手で掴む事はないわけだポテト。だから大型のスコップで掘り返して、そのままゲートに放り込めば問題あるまいポテト」
 スコップ(大)を手にした生佐目が今更なことを言う。
 というかもしかしたら、アクセス・ファンタズムの中に入れていたスコップ(大)の存在を、すっかり忘れてしまっていたのかも知れない。
 アクセス・ファンタズムに入れておけば、持ち運びも楽だしね。とは、アークの誰かが言った言葉だが、何を入れていたかをうっかり忘れてしまうことはたまにある。
 便利だけど。
 便利な故に。
「では私が、皆のために作業が捗るようおねだりしてみるか」
 そして生佐目は、何故か般若心経を唱えつつ、おねだりをした。




「オイモバイトさんさようならー! 次来たら、そのまま焼き芋にしちゃいますからねー?」
 ブレイクゲートを発動したななせが、閉じていくD・ホールに向かい手を振っている。
「そしてこれからの時期は、なんといってもやっぱり焼き芋ですよねっ!」
 穴が閉じ切ると、バッと仲間の方を振り返り、言った。
「まぁ、折角掘った芋だ。色々手を加えるのもいいが、ここはオーソドックスに……焼こう。固形燃料しかなかったけど、いいかな?」
 木の枝とかでなんかごそごそやりながら、生佐目が言う。
「ええええ。お芋は昔の時代、ご馳走だったんですの。残したら勿体ないですわ」
 ただ焼き芋をするだけなのに、なんか「ふふふふ」とか不穏な笑い声を漏らしながら、由良が頷く。
「なんかその……すっかり失礼しました同志アレクサンドラ・イリイニチナ」
 すっかりもうテンション上がりきって止まらない犬、みたいになってたベルカが、我に返り、謝る。
「フム。いえ私もすっかりお恥ずかしい所をお見せしました。仕事に貴賎はないと言いますが……やはり選ぶべきだったかもしれませんね」
 アレクサンドラが、眼帯を弄りつつ独り言のように呟いた。
「あ、火がつきましたね!」
「さあ焼き芋だー」
 何はともあれ、アザーバイド達の送還は無事終わったのである。
 あとは焼き芋を食べるだけ。
 リベリスタ達の目の前で、美味しそうな匂いを含んだ白い煙は、どんどんきれいな空へととけてった。




■シナリオ結果■
成功
■あとがき■

そういうわけで。
結果は成功でございます。皆様ご苦労様でございました。

当シナリオにご参加頂いた皆様には、いろんな意味で誠に感謝です。
また機会がありましたら、ご参加をお待ちしております。