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【幽霊船】アンデッドマグロ漁船 ~帰ってきた牛蒡三兄弟~


 セリエバ。それは運命を食らうアザーバイド。
 それを召喚すべく七派フィクサードの『六道』『黄泉ヶ辻』『剣林』の一部が手を組む。
『六道』のバーナード・シュリーゲンはアザーバイド召喚技術を求め。
『黄泉ヶ辻』のW00は運命を食らう異世界の猛毒に興味をもち。
『剣林』の十文字晶はその猛毒に侵された娘のために槍を持つ。 
 召喚場は『万華鏡』の届かない海の上。当てもなく探すには、海は広すぎる。
 しかし手がかりはある。
 召喚場に向かう船。その船が持つ情報。
 それを集めれば、セリエバ召喚場への道を見つけることができるだろう。

●マグロ漁船とは、マグロをとる船のことである!
 荒波に揺れる船上。
 それは『戦場』と読んでも差し支えない程に過酷だった。
 男達が汗だか潮水だか分らぬものを額に流し、ワイヤーを懸命に引く。
 やがてどっしりとしたマグロが船内に引っ張り込まれ、エラに金具をひっかけて男達が運んでいく。
 彼等の屈強な腕ですら数人がかりで一匹を吊上げるのは何も効率の問題ばかりではない。それだけ重量のあるものを、ただ一人で扱える人間などそうはいないのだ。
 そんな中。
「ソニックマグロオオオオオアアアアアアアアアア!」
 茶色い防水服を纏った男が、マグロをなんと『一本釣り』した。
「マグロエアリアアアアアアアアル!」
 続いて別の男が直接海に突っ込んでマグロ抱えて戻ってきた。
「ハイスピイイイイイイドッマグロ!」
 そうして積み上げられた無数のマグロをピラミッド状に抱え、離れた槽へと次々にぶち込んで行く三人目の男。
 彼らは、他の漁船員から途轍もない信頼と敬意を込め、『牛蒡三兄弟』と呼ばれていた。
「釣れ釣れどんどん釣れ! 俺達六道第三召還研究所の名に懸けてマグロを釣りまくれコラアアアア!」
「兄貴ッ! 俺達研究所クビになりませんでしたっけ!」
「どころかマグロ漁船に売られませんでしたっけ!」
「馬鹿やろう! これはマグロ漁船に偽装した六道船だっつってんだろうが!」
「そうでしたね兄貴! あのまま蟹工船にぶち込まれる前に拾って貰えて助かりましたね!」
「遠まわしに死ねと言われてる気もしますね!」
「だがこれで魔方陣のとこまでたどり着けば晴れて研究員の仲間入り! ウィナーよ!」
「そうでしたね、兄貴!」
「頑張りましょうね、兄貴!」
「でもってついでに獲ったマグロを市場で売りさばいて一儲けだ! 遊んで暮らそうぜ兄弟!」
「「イイイイエエエエエアッ!」」
 拳を突き上げる男達。
 彼らは、そう……全てアンデッドだったのだ!

●マグロ漁船バトル!
「マグロ……戦闘開始!」
 きりっとした顔で振り返る『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)。
 コイツ何言ってんだ頭沸いたのかでもそれいつものことかと聞き流すリベリスタたちをよそに、NOBUはノンストップで説明を始めた。
「セリバエ事件を知ってるか。運命を食うというアザーバイトなんだがそいつを召喚しようと三つの組織が動いている。とはいえその召喚場所というのがどこかの海上だと言う。これじゃあ流石の俺達でも感知ができん。と言うわけで、その現場に向かおうとしている敵の船から情報を頂こうという寸法だ。敵組織には六道第三召還研究所、黄泉ヶ辻W00、剣林十文字一味と色々いるが……その中でも今回狙ったのがコイツらだ」

 六道・第三召還研究所、研究員候補。
 牛蒡一郎、二郎、V三の3人である。
 彼等はかつてアーティファクト『ラジカルグッドエンジン』を巡ってアークと戦い、敗れ、職を斡旋してやるぜと珍しくいいこと言った豚によって蟹工船にぶち込まれた……と思われていたが、途中で六道の組織に拾われ『召喚儀式やるから援軍に行け』的な指令と共に目的地への地図と船、そして10体ほどのアンデッドを託されたと言う話らしい。なんか長い。

「今回の作戦はモーターボートによる襲撃戦になる予定だ。まあ広い海だからどっから攻めようがバレると思うが、逆に海だからこそ逃げ場はない。船上の敵を全滅させ、目的地への地図を奪取するんだ」
 というような状況ならば、敵も当然死ぬ気でかかってくることだろう。
 かなり苛烈な戦闘になることは間違いない。
「だが俺は信じてる……アークのリベリスタならやってくれる、てな!」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:八重紅友禅  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 9人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年11月29日(木)23:22
 八重紅友禅でございます。
 牛蒡三兄弟については過去の依頼『<六道>高速道ハイスピードチェイス ランボルギーニ・グレネード』をご覧ください。
 いや、彼等を知ったからどうってハナシじゃありませんが。
 船を襲って地図をゲットすると言うハナシです。

●牛蒡三兄弟
 ソードミラージュ三人組のフィクサードです。
 10体のアンデッド作業員を率い、襲ってきた敵を迎撃するよう指示されています。と言うか迎撃できなかった死ぬだけなので、フェイトの限りを尽くして襲い掛かってくるでしょう。

 一応ボートでの接近ということになってますが、どの方向からどう攻めようが間違いなくバレるので(牛蒡三兄弟もその辺無駄に機敏なので)余計な手間をかけるくらいなら堂々と攻め込みましょう。
参加NPC
 


■メイン参加者 9人■
プロアデプト
逢坂 彩音(BNE000675)
クリミナルスタア
オー ク(BNE002740)
マグメイガス
風見 七花(BNE003013)
ナイトクリーク
宮部・香夏子(BNE003035)
スターサジタリー
ユウ・バスタード(BNE003137)
スターサジタリー
ブレス・ダブルクロス(BNE003169)
ソードミラージュ
佐倉 吹雪(BNE003319)
ダークナイト
一条・玄弥(BNE003422)
ソードミラージュ
柳・梨音(BNE003551)
   

●六道のためなら死ねる(ラヴィッツ!)
 これまでのあらすじ!
 六道の負け組ソミラ牛蒡三兄弟はアークにぼろ負けして蟹工船にぶち込まれたけどなんやかんやあって偽装マグロ漁船でマグロ釣りつつ六道の仕事に勤しんでいたのだった!
 (※このシナリオはセリバエに関する非常にシリアスで真面目な依頼の筈です)
 ……ということで偽装マグロ漁船にて。 
「兄貴ィ! 今日もマグロ沢山獲れましたね!」
「よしよし、冷蔵室に入れておけよ。俺達の今後の活動資金になるんだからな」
「へい兄貴! それにしてもこのアンデッドたち気味悪いっすね!」
「まあそう言うな。六道で暮らしていればこういうこともある……」
 フィクサードって言うかマグロ漁師として着実に成長しつつある牛蒡三兄弟。
 だが彼等の平穏はいつまでも続きはしなかった。
「兄貴、後方から船影……パターン青、アークです!」
「マジでか!」
 三兄弟は手近な武器を掴んだ。
 その直後に船を襲う衝撃。
 スクリュー部分(実は言う程航行に大事な部位ではない)がはじけ飛び、くるくると回転しながら宙を舞う。
「何っ、いきなり撃って来ただと!? ってことはアークのデストロイ派か! 者どもであえぇい! 敵襲、敵襲じゃあー!」

 一方その頃、十人乗りクルーザーにて。
「三つ子の魂百までたぁよく言ったもンで……三つ子だけに、なぁんつって!」
 『遠洋漁業も即戦火』オー ク(BNE002740)は船から『戦火』の旗を掲げ、ゲラゲラ笑いながら洋酒を浴びるようにがぶ飲みした。
 彼の横で爪をしゃりしゃりと研ぐ『√3』一条・玄弥(BNE003422)。
「突撃して白兵戦。海賊戦法ですなぁ。年甲斐もなく漲りますわ。オークの旦那、運転宜しく頼みますぜぇ」
「おうよ、ブヒヒヒヒッ!」
「クヒヒヒヒッ!」
 人間とは思えん笑い声をあげる二人……の後部席。
「牛蒡三兄弟……あー、あの蟹工船に詰められた連中な」
「あの状態でまだフィクサード活動できたなんて驚きのタフさですよねー」
 三脚に立てたライフルから煙をあげつつ、『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)と『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)は顔を上げた。
「あ、スクリュー破壊できたんで、楽に追いつけますよー」
「つーわけで後任すわ」
「はいはい、っと」
 『黄昏の賢者』逢坂 彩音(BNE000675)は拡声器をひっつかむと、船の上に立ち上がった。
「『牛蒡三兄弟のしょくーん。我々はアークのリベリスタであーる。今降伏するならアークへの勧誘とぉー、スタントマンとしての芸能事務所登録を約束するぅー。監督の目に留まれば俳優の道も夢じゃないよーぉ』」
「き、緊張感のない人達ですね……この依頼、本当にセリバエに絡んでるんですよね?」
「はあ、まあ、たぶん」
 彩音の隣で突撃準備をする風見 七花(BNE003013)と、私関係ないデスヨとばかりにカレー食ってる『第30話:Xディズ』宮部・香夏子(BNE003035)。
「でも香夏子、マグロよりカレーの方が美味しいとおもうんです」
「えっ?」
「あ、でも……マグロカレー? これは行けるかもしれません! 香夏子新境地を開拓したかもしれません!」
「あの、話聞いてましたか?」
「はい、海産物と言えば……私の出番」
 二人の間からにゅっと生えてくる『無音リグレット』柳・梨音(BNE003551)。
「のこらずころころして、マグロをゲットだ」
「あの、セリバエ……」
「待っててね孤児院の皆……今度は、ちゃんとした海鮮だよ……」
「だめっ、この人達話聞いてない……っ」
 目尻に雫を浮かべて口を覆う七花。
「と言うか、何であいつら真面目にマグロ漁業してたんだ。偽装船だったんだろ……」
 無精ひげをなでながら呟く『(自称)愛と自由の探求者』佐倉 吹雪(BNE003319)。
 額に手を翳して目を細めた。
「お、向こうも何か返事するみたいだぞ」

 場面は戻って偽装マグロ漁船。
「兄貴ィ! あいつら降伏勧告してますよ! ナメられてますよ!」
「ええい拡声器を貸せぃ! 『ダァレが降伏なんぞするかぁ! 職を斡旋するとかいって蟹工船にトバされたことを忘れちゃいねぇぞぉ! 俺達雇いたかったら現金持って来い!』」
「『そうだそうだ! ケンタのパーティーバーレル持って来い!』」
「『あとハーゲンダッツギフトセットで持って来い!』」
「『おいお前ら一万ちょっとで買収されてんぞ! とにかく、我々は交渉には応じなぁい! 止められるもんなら力ずくで止めてみろってんだぁ!』」 

●牛蒡三兄弟の本当のデビュー作は魔剣自然薯(つまり当時から負け組)
「ひゃっはー皆殺しダァー!」
 ご想像頂きたい。
 小舟に喧嘩売った直後、57歳の爺さんが全身から瘴気噴出しながら飛び掛ってきたとしたら、出る感想は一般的にはこうじゃないだろうか。
「お、オバケェェェェェ!?」
 マグロの背骨(意外に頑丈)を高速で振り回し、玄弥の奪命剣連打を器用に受け流す牛蒡三男。
 て、ンなことやってる間に旧式のスク水にフード被った童女が無表情で飛び込んでくるのだ。
「わかった、ならば皆ころころだ」
「オバケェェェェェェ!?(パート2)」
 マグロ引っかけ器具を二刀流で振り回し、梨音のナイフ捌きを撃ち弾く牛蒡次男。
 そんな彼等の船の周りを小舟で周回しつつブルーチーズもぐもぐするオーク。
「オバ……あ、ブタか」
「アークのブタめコノヤロウ! よくも俺達を蟹工船なんかに入れてくれたな! うっかりカニの缶詰にトラウマできる所だったろうが!」
「アァン? 命あってのモノダネって言葉しらねぇのかい。フゴッ」
「あ、オーさんそのまま近づけて下さい。バッドムーンフォークロア届きそうなんで」
「おじょーちゃン、その呼び名だとあっしオッサン呼ばわりされてるみたいなンだけど?」
「カレーうまうま」
「聞いてねえ!?」
 動き回る小舟からバドロア流し込むという、場合によってはけちょんけちょんにされそうなズルい手を使いながらカレーを貪る香夏子。
 アンデッドたちもつい癖で船の端っこに行っちゃうもんだからばしばし巻き込まれて船外に落下していくと言う文字通りのタナボタ撃破を続けていた。
「楽そうでいーなー……あ、狙い目発見ー」
 ユウもライフルでしっかり狙いをつけてインドラの矢を発射。
 迎撃しようと銃を持ち出してきたアンデッドたちがばらばらと海へ落下して行った。
「アークにくればお姉ちゃんが美人だぞーい……と危ないっ!」
 ひょいっと身をかわすユウ。
 先刻まで座っていた場所に敵の銃弾が叩き込まれた……わけではなく。
「アークのリベリスタよ、ここで会ったが百年目!」
 マグロ包丁を振り上げ、牛蒡長男が船へと直接飛び込んできたのだった。
「――覚悟!」
 無数の残像と共に繰り出したマグロ包丁が船員たちの首をばっさりと跳ねる……とは、ならず!
 吹雪がバックラーとナイフで牛蒡長男の攻撃を受け止めていたのだった。
「船があんなじゃ、もう召喚場所まではたどり着けないだろ。今の内に降伏すればまだマシだぜ?」
「甘いな。貴様等の船を頂戴すれば任務自体はモーマンタイよ。マグロは泣く泣く置いていくがな!」

 場面転換が激しい事をお詫びするとともに、偽装マグロ漁船内の様子をご覧いただこう。
「頭を狙って怯めばいいけど……」
 彩音は弓弦をいっぱいに満たすと、アンデッドの顔面めがけてピンポイントシュートを放った。
 首から上が吹っ飛んでいくアンデッド。
「ぐあああああ俺の頭が吹っ飛ん――うぶ、思ったより揺れるだと!? 三半規管がストリームでうぶおおおおお!?」
 サッカーボールの如く転がって行く頭を追いかけてふらふら走って行くアンデッドボディ。
「…………ひ、怯みはしてないけど」
 なんだろうこの不条理系アンデッドは。
「まあ、ともかく、です」
 船外側のタラップを使ってよじ登って来た七花は、ガッツポーズに似た体勢で顔の前に両拳を構えた。両手の小指だけ立てて、フックに引っ掻けて構える。
「何故マグロ漁船なんかに偽装したのかは分かりませんが、アンデッドは残らず掃討させてもらいます!」
「フ、小娘如きにやられるものかよ!」
 ナイフとフォーク(フォーク!)を両手に構えて突っ込んでくるアンデッド。彼のフォークが七花に突き刺さった……と見せかけてそれは残像であった。
 いつの間にか背後に回っていた七花が後頭部を殴って脳シェイク。更に残像を増やして両側面から脇腹にブロー。最終的に残像を正面側に収束させ、相手の胸にパンチを叩き込んだ。
「……ンッ!」
 パンチと同時に小指に力を込める。飛び出しナイフが体内にめり込み、僅かにアンデッドの背中から突き出た。
「お、やってんな!」
 一足遅れてブレス登場。
 船外からの敵を撃退しようと群がったアンデッドたちを烈風陣で薙ぎ払って海へ落とし、それでもしつこく食い下がる敵にデッドラかまして放り投げる。
「ブレスさん!」
「分かってる、この船のマグロは俺が貰ったぁぁぁぁぁ!」
 銃を構えて思い切り乱射するブレス。
「マグロ!?」
「マグロは渡さない……!」
 ナイフ片手に目をぎらつかせる梨音。
 第一回マグロ争奪戦が今ここに幕を開けていた。
「ち、地図は……」
 七花は若干置いていかれつつも、本来の目的を忘れることなくアンデッド討伐に勤しんだのだった。

●世の中には都合とか利益とかに関係なく意地で社畜を続けるヤツもいる
 さて……。
 なんだかんだで必死の抵抗を見せ、リベリスタ九名に対し意外と善戦した牛蒡三兄弟。
 だがスタミナ面で弱い彼等はそうそう長く戦っていられるわけではなかった。
「「くっ……強い!」」
 異口同音に呟くと、牛蒡次男と牛蒡三男は甲板の端まで追いやられていた。
 七花の両拳からナイフが突きでて、二人の顎に突きつけられる。
「ここまでです。そろそろ投降しませんか」
「フ、貴様等は忘れているようだな……」
 にやりと笑う三男。怪訝に眉間を寄せる七花に、彼は自信満々に言った。
「我等三兄弟の中でも最強の長男が貴様等のボートにハイスピードマグロアタックをかけた。今頃あのボートは我等牛蒡三兄弟のものとなり、憎きブタたちはチャーシューの具材にされていることだろう!」
「そのブタってのはあっしのことかい?」
 ずいっと横から生えてくるオーク。
「そうそうその悪人ヅラ……ってうおお!?」
 仰け反った牛蒡三男をひっつかむと、その場に強引に蹴倒した。
 うつ伏せ状態で顔を上げると、しおしおになった牛蒡長男が吹雪に引っ張られて甲板へと上げられていた。なんかその仕草だけ見てるとマグロ釣りの様子に見えなくもない。
 抵抗しないようにユウもライフルの銃口をしっかりと頭に合わせつづけていた。こういう時、飛んでる人って便利。
「ふう、意外と手こずったぜ。ボートに俺残っといて幸いしたな」
「そうでなくてもあの人数相手に勝ち残れる人ってそういないと思いますけどねー」
「あ、兄貴ッ!?」
 玄弥がぬるっと現れ、クローを次男の首に引っ掻ける。
「降伏しなきゃあヤるだけやからなぁ。仄暗い海の底で魚の餌になるとええんちゃうかあ?」
「くっ、アンデッド漁師たちはどうなった!?」
「くけけけけけっ」
 舌を出して痙攣するように笑う玄弥。
 次男の髪の毛を掴んで引っ張ると、息のかかる近さで見下ろした。
「今頃重石と一緒に小魚のおうちになっとるころやのぉ。けど十本じゃ足りんのや。あと三本くらいあったらええのぉ……!」
「ヒ、ヒイイイイイ!」
「…………」
 七花は沈黙のまま牽制ポーズを続けた。
 自分から言っといてなんだが……どう見ても自分らが悪役にしか見えない。ちょっと牛蒡三兄弟を助けたくなってきた。
 準備が整った所で、彩音が両手を翳して『全員注目』のポーズをとった。
「もう一度降伏勧告をするからよく考えて答えてよね。条件は一度目と一緒。ただしこれを受け入れなかったらオーク君経由の蟹工船以下の待遇が待ってるとだけ付け加えておくよ」
「くっ、騙されるか……!」
「我等三兄弟、常に誰かの下で仕方なく仕事をし続けてきたが、意地だけは貫き通して生きてきたつもりだ。なあ兄貴!」
「おうよ!」
 それまでしおしおだった牛蒡長男の目がぎらりと光った。
 袖の内に隠していたマグロの小骨を取り出し、素早くその場を離脱する。
「何ッ、こいつまだ手を隠してやがったのか!」
「フ、悪党とは意地と美学で生きるものよ!」
 くるくると飛翔し、次男と三男のもとへと着地する。
 高速でナイフを振るい、二人を助け出すと、三人でビシッとポーズをキメた。
「我等牛蒡三兄弟。煉獄の底に落ちるとしても、意地だけは通す益荒男よ!」
「そうっす兄貴!」
「一生ついていくぜ兄貴!」
「よし、行くぜ――!」
 それぞれの武器と魂を手に、牛蒡三兄弟は同時に敵へと踊りかかったのだった!

 ――10秒後。

「「ごめんなさいでした!!」」
 土下座する牛蒡三兄弟。
「あれぇ!? さっきの威勢は!? 敵が最後の抵抗を見せて逃げていくシーンとかじゃなかったの!?」
「九人のリベリスタ相手にそんな芸当できたら人間じゃないですよもぐもぐ」
 船の淵にこしかけて平和にカレー食ってる香夏子。
 その横ではマグロの山をしこたま回収してきたブレスと梨音がほくほくした顔で合流していた。
 抱えたマグロを愛おしそうに撫でる梨音。
「今度はマトモなごはんが手に入った……帰ったら捌いてあげるからね……」
「一匹だけだからな。ククク、残りのこいつをうっぱらって豪遊だぜ。酒池肉林……おっと、女の子いるしおねーちゃんは我慢すっか!」
「いいけど、どうやって売る気なんだそれ。漁師に横流しするにも顔利かねえと弾かれるぜ」
「えっ……?」
 既に休憩タイムなのか、ちびちび酒飲み始めた吹雪に言われ、ブレスはびしりと硬直した。
「まあまあ、それは後にしようや」
 ぱちぱちと手を叩くオーク。
「おい牛蒡三兄弟。ワルってのは馬鹿じゃ勤まらン。アウトローの先輩として言うならな、楽しく遊んで暮らすにゃ『正義の味方』やるのが賢いンだ。強い光の影、そう言う所に真のアウトローは潜むもンさ。そう、正義のためならどンな悪いこともできるし、真面目なフリしてりゃお姉ちゃンだって買い放題。ラッキースケベフルコンボだってあるンだぜ?」
「おいオーク、俺達が誤解される発言はよせ」
「間違ったこと言われてないんだが、なんだろうな、この感情は……」
 その一方で、牛蒡三兄弟は打ちのめされたように屈服していた。
「俺は……俺たちはサラリーマンだった。一生そのつもりだった。フィクサードになっても、俺たちはサラリーで生きていくことに決めていた。正義の味方になるつもりは、最初からない」
「そうかい……」
 ボトルの中に残った洋酒を一気飲みして、オークは空のボトルを船の外へと投げ捨てた。
「まあ、死に様を選べるってのも幸せなもンだぜ」

 その日、三人のフィクサードがこの世を去った。
 彼等は悪党であり負組だったが、それ以上にサラリーマンだったと言う。
 彼らの船に残されていた地図から、セリバエ事件の真相に迫るのは……また後の話である。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした
さらば、牛蒡。
リベリスタたちはこの結果として、『セリバエ召喚場の地図』をゲットしました。