●下水道に潜む……。 ドロドロ、ずるずると、粘着質な音をたてながら、ソイツは光ささぬ下水道を這いずり回る。 黒い、コールタール染みた体を引きずって、目的地すらないままに、そいつはただただ、下水道を動き回るのだ。ソイツが通った後には、ソイツが残していった体の破片が残っている。 1見すると、スライムのようでもある。 だが、しかしよくよく見れば、気が付くだろう。ソイツの体はヘドロで出来ている。まるで粘菌かなにかのように、ジワジワと動き、地面に貼り付き、何処かへ進む。 ソイツが通った後からは、ソイツと同じ体を持った何かが生まれる。 仲間を増やし、ただ前へ。不気味な音を響かせながら、進むその身は、次第に大きくなっているようだ。 どうやら、水路に沈んだヘドロを吸収しているらしい。 吸収しきれなかったヘドロが、小さなソイツになるのだろう。 それから……。 そいつの通った後の地面は、酸でもかけられたように溶けているのが分かる。シュウシュウと煙をあげるコンクリートに残る、黒い足跡。 真っ黒い、粘菌染みたスライム状のヘドロが、足元を這いずり回っているのだと、想像して欲しい。 それはなんとも……。 なんとも、気持ちの悪い話だろう。 ●光を求めて 「フェーズ2。E・エレメント(ドロドロ)と、とりあえず名付けたけれど……」 君が悪い、とモニターに映ったドロドロを見て『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はそう言った。なるほど確かに、下水道を這いずるそれは、酷く醜悪な見た目をしている。 「正体はヘドロ。下水道を彷徨っているみたい。地上に出たいようだけど……」 今のところ、出口らしい出口は発見できていないらしい。 「とはいえ、時間の問題。視力のようなものがないから、マンホールを見つけられないのでしょうけど、代わりに触覚とか気配を感じる能力に長けているみたい」 通常の方法では、こっそり接近して不意打ち、とはいかないだろう。 淀んだ地下の空気は、ドロドロにとって慣れ親しんだものなのだ。それが多少でも震えれば、ドロドロはその異変に気付く。 「また、ドロドロの体は酸に似た成分で構成されているから。物理攻撃だと、こちらも多少のダメージを受ける」 気を付けて、とイヴは言う。誰が好き好んで、このようなドロドロした物体に触れるのか、とそうは思うものの、場合によっては我慢して触れねばならないのが、リベリスタの辛い所だ。 「また、ドロドロの配下の小さなヘドロが無数に存在している。現在確認されているだけで、30体程。毎ターン3体ずつ増えるみたい」 もっとも、ドロドロを倒してしまえば、それらも消滅するのだろうが。 逆に言うと、ドロドロを倒しきるまでは、増え続けるということだ。 「その他、毒や麻痺にも注意が必要。下水道は迷路のように入り組んでいるから、敵を倒しながらドロドロを探す事をオススメする」 ドロドロを地上に出さない。 ドロドロを地下で殲滅する。 以上が、今回のミッションの内容だ。 「それじゃ、行ってらっしゃい」 地下探検ね、なんて気楽に言って。 イヴは小さく、手を振ったのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月27日(火)22:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●危険な地下道 光の届かない地下。辺りに漂う、汚水の匂い。足元を駆け抜けて行くのは鼠か蜘蛛か。 マンホールを開け、そんな下水道に降り立った8人の男女。それぞれ、地図を手に所定の場所へと解散していく。水音と、彼らの足音が反響する地下道。 感じる気配は、鼠や蜘蛛、それから自分達と、そして無数のE・エレメント達。 ヘドロより生まれたそれらの討伐が、今回の彼らの任務である。 「動くヘドロねぇ……地下探検とか気楽に言うもんだぜ」 苦々しい顔で呻く『ヤクザの用心棒』藤倉 隆明(BNE003933)が、ワイヤーに鈴を繋ぎ通路にしかける。それを手伝いながら『住所不定』斎藤・和人(BNE004070)が苦笑い。 「まーやるっきゃねーかー。うっわ、俺格好ダッセぇ……」 自分の服装を見直し、溜め息を吐いた。レインコートに鼻までしっかり覆うマスクと、完全に汚水処理に特化した服装。水に落ちないよう気を付けながら、2人は足音を殺して通路を進んで行った。 そんな彼らの視界の端を、ドロッとしたヘドロの塊が逃げて行く。逃げるヘドロはあえて見て見ぬふりをして、ターゲットを探す。 彼らが探しているのは、今逃げて行ったものとは比べ物にならないサイズの巨大なヘドロのEエレメント。さっさとそいつを倒して帰りたい。それが彼らの心境であった。 ●危険なヘドロと、暗い道 「溝掃除ですか。まさに汚れ仕事ですね」 「確かに戦場としてはよくねぇな。さてと、きばって行きますかっ!」 眼鏡を押し上げ『親不知』秋月・仁身(BNE004092)がロープと鈴を通路に仕掛けて行く。即席のトラップだが、ここを通ったものがいた場合、鈴の音が鳴る、というわけだ。敵の接近や通過を知るための仕掛けである。 一方、仁身の前を進む『黒腕』付喪 モノマ(BNE001658)は、拳を握って調子を確かめている。そんな彼の前に、2体のヘドロが水路から這い上がってくる。べと、っと粘着質な音をたて、その体が通路を這いまわる。ヘドロの触れた場所から順に、コンクリートが溶けた。 「お前たちに用はない」 弓に矢を番え、それを引き絞る仁身。仁身を守るように、ヘドロの進路をモノマが塞ぐ。放たれた矢は、まっすぐに片方のヘドロを撃ち抜いた。ジタバタともがくヘドロから粘着質な液体が飛び散る。じわ、と飛び散ったヘドロの破片が仁身の足元から這い上がる。咄嗟に仁身は後退し、纏わりついたヘドロを振り払った。と、同時にモノマが前へ飛び出す。握りしめた拳に炎が灯る。拳を振りあげ、アスファルトを蹴って駆ける。まっすぐに通路を走って、跳んだ。 「地上に出すわけにはいかねぇし、日の光を浴びせる前に引導を渡してやるよ」 大きく振るった炎の拳が、ヘドロを纏めて焼き尽くす。モノマの腕から、ジュっと煙があがった。ヘドロに触れた為に、その酸に似た体液を浴び、焼かれたのだ。拳を振って、付着したヘドロを払う。 燃え残ったヘドロの欠片も、仁身の放った矢が撃ち抜き、殲滅する。何体か、物影に隠れていたヘドロが逃げ出すのが分かった。逃げるヘドロを追うようなことはしない。 「隠れる奴まで相手してたらキリがねぇぜ」 「さっさと消えてくれ」 見つけたヘドロ全ての相手をしている暇はない。 なぜなら、いつのまにか2人の前には無数のヘドロ達が姿を現しているのだから。背後からチリンチリンと鈴の音も響く。どうやら、前後から挟まれたらしい。 面倒な、と呟き仁身はキリリ、と弓を引き絞る。彼の視線の先にいたヘドロが1体、不可視の殺意に貫かれ崩れ落ちた。 どうやら2人は、ヘドロの溜まっていた場所に辿り着いたらしい。 「夏も下水道に潜ったけれど、やっぱり汚れを元にしたエリューションが出やすいのかねぇ?」 懐中電灯で前を照らしながら進む『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)の視線の端に、汚水に浮いた空き缶やゴミ、なんだかよくわからないドロドロしたものなどが映る。 汚れてんなぁ、と呟いて腰の刀に手を添える。 「汚れの中に何か見つかるかもしれん。ヘドロとか、骨とか、黒歴史ノートとか」 なんて言いながら、長い棒を水路に突っ込むのは『カゲキに、イタい』街多目 生佐目(BNE004013)だ。片手に長弓を、もう片手に棒を携えている。 前を進む義衛郎と、その後ろから棒を伸ばし水路や通路を突く生佐目。不意に、生佐目の持つ棒の先端を何かが捕らえる。 「……っお?」 水路に突っ込まれた棒の先に、義衛郎が懐中電灯の明かりを向ける。そこにいたのは、棒を這い上がろうとするヘドロだった。咄嗟に棒を手放し、生佐目が背後に下がる。弓を引き絞り黒いオーラを番えた。 生佐目を追って前へ出るヘドロを、義衛郎が腰から引き抜いた刀で食い止める。 「襲ってくる個体のみ排除していくぜ」 義衛郎の刀が振るわれる。生佐目の放した棒ごとヘドロの一部を切り裂いた。 「なかなかの剣士だ。前に立ってくれるとなれば、頼りになる」 引いた弦から指を離す。黒いオーラはまっすぐに飛んで、ヘドロを撃ち抜いた。ヘドロが弾ける。 飛び散るヘドロの一部を避け、義衛郎が壁を蹴って飛び上がった。壁を、駆けあがり天井へ。天井を蹴って、垂直にヘドロ目がけ落下する。刀を構え、一閃。 ヘドロが崩れ落ちた。 だが……。 「うっ……ぐお!?」 地面に着地した義衛郎の足を、何かが貫いた。水中に潜んでいたもう1体のヘドロによる攻撃。水中から現れ、再び水中へと逃げて行く。泳ぐのが早い。すぐに見失ってしまう。 「どうやら、私達が思っていた以上に敵は多いらしいな」 背後に仕掛けた鳴る子がカラカラと音を立てる。生佐目は、義衛郎と背中合わせになって敵からの攻撃に備えるのだった……。 一方その頃、風見 七花(BNE003013)は額に手を当て、呻いていた。 「それにしても下水道ですか……」 歩くだけで、足元に溜まった水が跳ね、靴を汚す。なにかが腐っているような臭気が立ち込め、鼻を刺激する。こそことと時折聞こえる音は鼠かゴキブリか、それともヘドロか。 「さしずめ下水掃除といったところか、とっとと終わらせて帰るとするかな」 隣を歩く『あるかも知れなかった可能性』エルヴィン・シュレディンガ―(BNE003922)がそう返す。仮面の奥で、彼の瞳が鋭く細められた。 す、っとエルヴィンがナイフと銃を引き抜いた。 「後ろは任せた。敵が出てきたら、全力で守って見せる」 そう言って一歩、前へ出る。彼の足元には、ドロドロに溶けたコンクリート。今までも何度か、溶けたアスファルトを見たが、今回のそれは、今までの比ではないほどに範囲が広い。 「了解。背後を守ります」 カシュン、と音がして七花の籠手から短剣が飛び出した。背後からの強襲に備え、エルヴィンと背中合わせになる。 その状態で、進む事数分。経過した時間に比べ、進んだ距離が短いのは慎重に慎重を期して進んできたせいだろうか。 「嫌な臭いだ。隆明のガスマスクを初めて羨ましいと思ってしまったな」 2人が辿り着いたのは、地下道の奥深く。通路は塞がれ、行き止まりになっている。そして、溶けたアスファルトもここで止まり。空気が淀んでいるのか、臭いが溜まっている。 「臭気が強いですね。襲撃に備えます」 七花が言う。暗視を使って視線を巡らせ、周囲を確認する。と、同時に彼女の超直感が、ここは危険だと告げていた。 じっと身動きを止め、敵の襲撃に備える2人。そんな2人の足元で、汚水がぼこぼこと泡立ち始める。しまった、と思った瞬間、大量のヘドロが津波のように2人に襲い掛かる。ヘドロの波の向こうには、巨大な黒い塊が見える。どうやら、あれが探していたドロドロのようだ。 「ドロドロ、見つけました!」 ヘドロの波に飲み込まれる寸前、AFを通じ七花は仲間達にそう告げた。 「見つけたってよ」 「おう。急行して援護するぜ」 隆明と和人は、AFを閉じ七花とエルヴィンの元へと向かう。視界に映るヘドロ達の大半を無視し、前へ前へ。全速力で現場に辿り着いた2人の前には、通路を埋め尽くさんばかりの巨大なヘドロの塊がいた。 どうやらこいつが、ドロドロだろう。鈍い動作で振り向くドロドロ。そのドロドロの向こうには、ヘドロ数体に囲まれたエルヴィンと七花の姿が見える。 ドロドロの体が地面を這って、隆明の足元から伸び上がる。足を被う粘着質な感覚に鳥肌が立つ。 「はぁ……自慢の銃がぐちゃぐちゃになっちまうぜ」 足をドロドロから引き抜いて、銃を構える。襲ってくるヘドロを銃底で殴り飛ばした。ドロドロが弾け、ヘドロを撒き散らす。 「ヘドロなんざ触りたくもねーし」 ドロドロの射程外まで後退し、ドロドロ目がけ銃弾を撃ち込む和人。闇の中で火花が弾け、大口径の弾丸を撃ち出した。弾丸は正確に、ドロドロの頭部(らしき部分)を貫いた。 ドロドロが体の一部を刺にして、迫る。靴底でそれを蹴り飛ばす隆明。ヘドロが跳ねる。 じわじわと体力が削られていくのを感じて、数歩後退する。動きが遅いため、逃げる分にはさほど苦労はしないものの、しかし、七花とエルヴィンを放置して撤退は出来ない。 せめて、他の仲間が来るまでの時間くらいは、と2人は連続して弾丸を撃ち込んでいく。張られた弾幕が、ドロドロの進行を食い止める。時折、ドロドロの体が爆ぜ、飛び散る汚水が2人を襲う。 「無駄な時間は取りたくねぇが……」 「諦めて、近づいて殴るか?」 その方が速そうだ、と和人は苦笑い。それを受け、マジか、と隆明が唸る。銃が汚れるのも、自身が汚れるのも、できれば避けたいところだが。 と、その時。 「ちまちま倒すより、反動覚悟で一気にやっちまった方が負担も少ねぇだろ!」 なんて、怒号と共に2人の間を駆け抜ける影が1つ。風のような速さで駆け抜け、ドロドロや傍にいるヘドロ相手に踊るような動きで打撃を加えて行く。飛び散るヘドロや汚水を無視し、拳を振るう。 戦場に現れた人影は、モノマだった。 数秒遅れて、現場に仁身も到着する。弓を引き絞り、隆明と和人に並んだ。 「貴様を倒してお風呂に入るんだ!とっととくたばれ!」 放たれた矢が、ドロドロを貫く。 ドロドロが爆ぜる。その身が大きく傾いた。ドロドロに駆けよる隆明と和人。銃を握った拳を振りあげ、2人分の打撃がドロドロに襲い掛かる。ドロドロが倒れる。その隙に、ドロドロを跳びこして、七花とエルヴィンが合流する。2人を追って、ヘドロが迫るが……。 「君を倒させるわけにはいかない。これを凌いだら、一気に反撃だ」 ヘドロの攻撃を、エルヴィンが体で阻む。ナイフと銃を交差させ、襲ってきたヘドロに向けて力任せに振るう。気合い一閃。ヘドロが背後に吹き飛んだ。 「えぇ、下水道で倒れるのは勘弁です」 七花の両手から、魔炎が迸る。汚水を蒸発させながら、魔炎はドロドロやヘドロを包み込み、焼いた。ヘドロ達が数体纏めて、崩れ落ちる。 ドロドロを倒すには至らなかったものの、雑魚は一層できた。と、次の瞬間、ドロドロの体が数か所爆ぜた。撒き散らされるヘドロを浴びて、リベリスタ達が苦悶の声を上げる。 その隙に、逃げ出そうとするドロドロだが。 「逃がさねぇぜ」 そんなドロドロの前に、モノマと仁身が立ちはだかった。仁身の放った矢がドロドロを撃ち抜く。ドロドロが怯んだその隙に、モノマがドロドロへと駆け寄る。大きく振りあげた拳を、そのままドロドロに叩きつける。衝撃で、アスファルトが割れた。ドロドロの動きが止まる。 同時に、ヘドロの津波が2人を襲った。ヘドロに包まれ、モノマと仁身が流される。 「絶対者だからって、汚れまで防げるわけじゃないんですからね」 嫌そうな顔をする仁身。ヘドロの波に飲み込まれて、突き出された方手以外見えなくなる。 ヘドロに沈み、今にも消えてしまいそうな仁身の腕を誰かが掴みあげた。そのままヘドロの中から引っ張り上げる。モノマが自力でヘドロから這い出てきた。 「やぁ。遅れて悪いな」 よ、っと軽く手を上げてモノマに声をかけたのは義衛郎だった。腰の刀を引き抜いて、すでに戦闘の用意は整っているらしい。体のあちこちから血を流しているのは、ここまで来る間に幾度も戦闘を繰り返してきたからだろうか。 「疼く、私の、手……」 義衛郎の後ろで、弓を構えているのは生佐目だ。じっと、瞳に静かな激情を湛え、ドロドロを見つめている。番えられた弓に、黒いオーラが収束していく。 矢に蓄えられたオーラは、彼女の受けた痛みに対する呪いのオーラに他ならない。禍々しい矢だ。 ドロドロに向け遠距離からの攻撃が、次々加えられていく。ジリジリと、コンクリートを溶かしながら後退していくドロドロ。次第に奥へと追いやられ、逃げ道を失う。 もがき、時に反撃してくるドロドロ。地面に広がったヘドロが硬質化し、無数の刺になりリベリスタ達を襲う。しかし、すぐに七花が刺を焼き尽くしていった。 「用意はいいか?」 義衛郎が生佐目に問う。生佐目は無言で頷いた。それを受け、生佐目の頭上を飛び越え、義衛郎が天井へ跳ぶ。天井を蹴って、壁へ。壁を蹴って、ドロドロへと刀を構え襲い掛かる。 一閃。闇の中に、刀が閃いた。 頭部を守るように交差されていたドロドロの腕(らしき部分)を一刀のもとに切り落とす。露わになったドロドロの体へ、無数の矢と弾丸の嵐が襲い掛かる。 そして……。 「暗黒の存在たる我が身。滲みでる狂気と戦慄は、隠せぬか……」 なんて、呟いて、生佐目が矢を放った。禍々しいオーラを纏った矢は、真っすぐに宙を駆け、ドロドロを撃ち抜いた。ドロドロが闇に包まれる。闇の中、ドロドロはもがくものの、逃げ出せない。その身が端から、次第に崩れて行く。 やがて、ドロドロの体は完全に崩れ、そこには大量のヘドロばかりが残った。 ●危険の果てに、求めるものは 「報告等やるべきことはありますが……」 ドロドロを始末した後、帰路の途中。マンホールから差し込む明りが目に入ったのを見て、七花が突然、そう呟いた。 「それよりもシャワーです。私達にはそれが必要です」 それを聞いて、他の仲間達も苦笑いを浮かべる。彼らの体は、誰として綺麗なままのものはいない。汚水に塗れ、異様な臭いを放っている。 「速効で帰って速効でお風呂に入る!」 拳を握りしめ、仁身がそう宣言した。 「あぁ、風呂でも入ってスッキリするか」 エルヴィンもそれに続く。仮面を拭きながら、溜め息を吐く。 「その前に、仕掛けた罠を回収しないと」 「後でよくないか……? それはそうと、どこか銭湯でも寄らないか?」 義衛郎が、傍にしかけてあったロープと鈴を回収。その隣では、生佐目が髪に付いたヘドロを拭い、そう言った。 「無理だろうよ。汚れ方が半端じゃねぇ」 自身の体を見降ろし、モノマが言う。 「ぐわー、今すぐ風呂入りてぇ!!」 頭をガシガシ掻いて、和人が叫ぶ。 もうじき地上だ。マンホールに向けて梯子を昇りながら、隆明はそんな和人にお疲れさん、と声をかける。マンホールを押しのけ、地上に。強い光が、隆明を包み込む。 「終わった! この解放感! 美味い酒が飲めそうだが……」 まずは風呂とメンテだな……。と呟いて、隆明はがっくりと肩を落とした。 地下下水道で、ヘドロの怪物を殲滅した彼らに残ったのは、大きな疲労感と、それから服に染み付いた異様な臭いと、汚水。そしてこびり付いたヘドロの汚ればかりであった。 危険な任務の果てに、彼らは熱いシャワーと心地よい湯を求めるのである。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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