●美喰の館 古い洋館の長い廊下を歩く。前を歩くのは老執事。続くは二人のメイド。 執事は慣れたように歩くが、メイド達の足取りはぎこちない。 「すごいお屋敷だね」 「うん、ホントにすごいね」 少女達は街でスカウトされ、メイドとして雇われた場所は郊外にある古い館だった。 そこで料理の手伝いをするという簡単な仕事だった。その説明を聞いたとき、家出中だった少女は一も二もなく引き受けた。提示された給金が普通のバイトの倍以上はあったからだ。 同じように雇われたもう一人の少女も、行く当ての無い家出した少女だった。 「でも、何だか……」 不安そうな顔で言葉を濁す。その不安は館に到着してすぐに、清潔にするために入浴と着替えを命じられた事だろうか、それとも家出少女ばかりが集められている事だろうか。それとも……。 思案を打ち切るように到着したのは大きな広間。そこには大きなテーブルと大きな椅子。そこに座るのはこの館の女主人、ミス・ヨーコだった。その異様な姿に少女達は言葉も出ない。 1メートルはある特注の大きな椅子からはみ出す体。お腹の肉は垂れてさがり、ゆったりと羽織っているガウンのような赤いドレスから溢れそう。頬のだぶついた顔からは人ではないような違和感さえ覚える。 一人で歩くことすら出来ないのだろう。屈強な身体の男が二人、左右に付いていた。 「今回雇ったのはこの少女達です」 「いいわね、合格よ。早速用意なさい」 執事の言葉に、少女達を値踏みして女主人は鷹揚に答える。 「おお! 楽しみだ!」 女主人に気を取られ、テーブルについていたもう一人に初めて気付く。恰幅の良いスーツ姿の壮年の男性。今日の晩餐会のゲストだった。 「今夜は貴方の為に最高のディナーをご馳走するわ」 女主人がそう告げると、執事がシェフを呼ぶ。奥の厨房から白いコック帽を被ったシェフが現われると、少女達は仕事だと言われ、その後ろについて奥へと消える。 少女はその暗い部屋への入り口が、まるで獣の口のように思えた……。 「お待たせしました両脚羊のスペアリブローストとなります」 供された皿には、骨の付いた肉がこんがりと焼かれ、肉汁が滴っている。 「良い香りだわ」 「これは旨そうだ!」 二人は目の色を変え、肉にしゃぶり付く。言葉も忘れて咀嚼音だけが響く。その姿はまるで獣のよう。 「いや、これほど旨い肉は久方ぶりだよ」 「気に入って頂けたようで、私も嬉しいわ」 満足そうに男はしゃぶっていた骨を皿に戻す。 「日本で両脚羊の肉を食べれるとは思ってなかったよ。流石は美喰倶楽部だ」 「ふふ、ではこれからも援助をお願いしますわ」 「もちろんだともミス・ヨーコ」 二人はワインを手に笑うとグラスを合わせる。 シェフが次の料理を持ってくる。その奥、厨房には先ほど入ったはずの少女達の姿は無かった。唯そこには今日の食材の新鮮な肉が置いてあるだけだった――。 ● 「世界の珍味を味わう食通達の倶楽部があるらしいの」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が話し始めた。 「そこでは世界中のありとあらゆる食材が集められるらしいの」 普通のグルメに飽きた人々が、世界中の珍しい食べ物を求め味わう。 「でも、今回出される食材は普通ではないわ……」 イヴは言葉を濁す。そして嫌悪に満ちた口調で吐き捨てた。 「そこで食べられるのは、人間、よ」 想像するだけで気分が悪くなる。集まったリベリスタ達も顔を顰める。 「それだけなら警察の仕事。でも、この倶楽部を主宰している女主人がノーフェイスなの」 女主人の影響を受けて、部下達もエリューション化してしまっている。 「だから貴方達に少女達の救出と、このノーフェイスの討伐をお願いしたいの」 頷くリベリスタ達にイヴは告げる。 「美味しいものは人を幸せにするけど、過ぎれば毒となる。貴方達も毒されないように気をつけてね……」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:天木一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月25日(日)22:40 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●洋館 夕日に照らされた古びた洋館。名のある建築家が建てたのだろう、時代を経ても立派な佇まいは変わらずにいる。 そこから少し離れた場所に、リベリスタ達が身を屈め、物陰から様子を伺っていた。 「……二階の奥にマダムとボディーガード。一階の厨房にはシェフ。奥の客間に執事と少女二人が居るわね。はぁ、面倒だわ。もういいんじゃない?」 『夢幻の住人』日下禰・真名(BNE000050)はどこか夢現な表情で、人とは違うものを見ているかのように館を見ていた。その視線は壁を貫き、内部を見通す。気だるそうに、見えた建物の構造を書いていたペンを止める。 「もう少し頼むぜ」 真名が建物の構造を書き起こしていた平面図を、横から覗き込んでいた『足らずの』晦 烏(BNE002858)が頼むと、真名は手を止めないまま顔を上げた。 「はぁ、面倒面倒……裏口があるわね」 「勝手口だな……少女達の居場所を考えると、ここから救出班は侵入したほうが良さそうだな」 ペンを走らせ、真名は書き上げた図面を烏に渡す。 「……終わったわ」 真名は興味なさそうに一瞥すると、視線を館に戻す。 「それじゃあ、あたしらが表で暴れるから、裏口から救出は任せた」 図面を覗き込んだ『孤独嬢』プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)が立ち上がり、帽子を被りなおす。 「私も行きます。出来るだけ敵を引きつけますね」 同じように図面に目を通した、『Trapezohedron』蘭堂・かるた(BNE001675)が続いて立ち上がった。 「派手に暴れてくるぜ、そっちも頑張れよ」 『灼熱ビーチサイドバニーマニア』如月・達哉(BNE001662)が背中越しに、軽く手を振り歩いていく。 「図面はそっちに渡しておくぜ」 烏は手にしていた図面を救出班に渡すと陽動に向かう。 「うふふふふ……陽動のほうが楽しそう、私もこっちに行こうかしら」 真名もふらりとその場を離れた。 「よし、私達も行きましょう」 リベリスタ達は、烏の手にした図面を確認して頭に叩き込むと頷き合い、裏口へと向かう。 ●陽動と救出 「貴様達、何者だ!」 「出前だよ」 ボディガードの誰何にプレインフェザーが軽く応える。 「何?」 「お前らに討伐という名の出前を届けに来たぞ。だから……遠慮なく受け取れ」 達哉は肩から下げていたキーボードを演奏する。そのメロディに合わせ、身体から気糸が放たれ敵を襲う。 「襲撃だぁ!」 ボディガードは叫ぶと同時、避けようとするが身体が動かない、足元にはいつの間にか蜘蛛の巣のように気糸の罠が仕掛けられていた。それが足に食い込み動きを封じる。 「出前はちゃんと受け取ってもらわないとな」 達哉の演奏に気を取られた瞬間にプレインフェザーが仕掛けていたものだった。動きを封じられ気糸が頭部を狙撃する。 「仲間が来る前に倒させてもらいます」 宣言したかるたの姿は異様であった。華奢な女性の見た目とは裏腹に、身につけた武器は重々しく無骨な砲台。それはまるで歩く兵器だった。 かるたは敵に急接近し、その砲を全力で叩きつけた。装甲に守られた砲身で殴ったのである。ボディガードは腕でガードしようとしたが、その腕をへし折り、勢いのまま吹き飛ばし、壁に叩きつけた。 「ぐはっ、ここは逃げ……」 「あぁ残念ねぇ、あなた逃げられないわよ。うふふふふ……」 ボディガードが背を向け、屋敷に入ろうとした背中が貫かれる。真名は緩慢に歩き、手にある金属の爪で苦も無く刺し貫いた。その刃は骨と骨の間を抜け、肉を裂き、臓器を貫き、刺し殺す。何度も何度も。 それでもまだ息のあるボディガードに向かい、烏は散弾銃を構えた。 「楽にしてやる」 引き金を引く。それは正確に頭部を撃ち抜き。命を奪った。 「中に入るぞ」 プレインフェザーはドアノブに手を掛け、扉を開けた。 屋敷の裏手、勝手口の前でリベリスタ達は突入のタイミングを図る。 「術式、おののく羊の閃き」 『贖いの仔羊』綿谷 光介(BNE003658)が五感を高めて周囲を探る。 「陽動を始めたようですね」 耳を澄ませ、入り口方面の戦闘音を聞き取る。 「しっ! 一階の客間から執事が出ました」 急ぎ足で玄関の方へ向かっていくのを透視した光介は見た。 「行ったみたいです。ボクたちも行きましょう!」 光介がそう言うと、『Manque』スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)が切っ先の欠けた青い刀身の剣を振り抜く。音も無く鍵を両断し、扉を開けると先頭で突入する。 素早く駆け、客間の扉を開く。中にはメイド姿の二人の少女が。 「こんにちは。私はスペードです。あなた達を、助けにきました」 スペードは一つ深呼吸を入れ、少女達に話しかける。その言葉に困惑する少女達。 「家出した少女ばかりを集めていることを、不思議とは思わないかしら?」 この屋敷に集められた少女達がどうなったのか、スペードは真相を告げる。 「そ、そんな。うそ……」 「でも、確かに変なところあったよ」 少女達は信じられないと思いながらも、スペードの真摯な言葉に真実を見て動揺する。 「君たちも何かおかしいと思ったでしょう?」 光介が少女達に尋ねると、それに震えながら頷く少女達。 「とにかくここは危険です。安全な場所まで私達が守ります。だから安心してください」 『銀の腕』一条 佐里(BNE004113)が少女達を安心させるように、笑みを作って言葉をかける。 「あ、執事が戻ってきます!」 光介が足音に気付く。先ほど聞いた音と同じ。執事が視界に現われる。 「何処に行くおつもりですかな?」 「ひっ」 礼儀正しい老執事。だがその相貌はまるで家畜でも見るように冷たかった。 「この人たちは連れて行かせてもらいます」 スペードが少女達を庇うように立つ。 「主への献上物を奪われるわけには行きませんな。狼藉者には消えて頂きましょう」 執事は懐からペーパーナイフを取り出すと、切り掛かってきた。 スペードはその一撃を紙一重で避ける。勢いのついたその攻撃はまるでバターでも切る様に、客間の扉を切り裂いた。 それを見た少女達は声にならない悲鳴を上げる。 「この人たちは、死なせない! 私たちが守ります!」 少女を守る為、佐里は前に出て小振りの剣を構える。襲い来る執事。その動きを読み解く、予測し、思考が加速した世界でその剣を振るう。 刃はナイフを持つ腕を抉り、執事の攻撃を逸らせた。その隙を狙う青き剣。 「死を告げよう……災いあれ」 青の刀身が禍々しい黒に染まる。スペードは剣を振るう。その刃は執事のナイフを持った腕を斬り落とし、傷口は黒く侵食され塗り潰された。 「ぬぅあああああああ」 絶叫する執事を光介の魔法の矢が射抜く。執事はナイフを拾い上げ、広間へと駆け去る。 「終わったら、必ず迎えにきますからここでじっとしていてください」 光介はここが屋敷で一番の離れた部屋で安全だと説明して、少女達に待っているように諭す。 「すぐに戻りますから、お待ちくださいね」 「怖い思いをさせますが、却って安全なんです。もう少し我慢してください」 スペードと佐里も安心させるように声を掛け、少女達と別れると仲間の元へと急いだ。 ●暴喰 「……危ないわよぉ」 真名の声と同時に、中からの殺気を感知したプレインフェザーは開けた扉から飛び退く。先まで居た場所を火炎が飛び過ぎる。 扉からリベリスタ達は攻撃を警戒しながら侵入する。入るとそこは開けた玄関ホールになっている。シェフが中央に立ち、階段の上には巨漢の女性とボディガードが立っていた。 「晩餐会には早いわね。招かれざる客人にはお帰り願おうかしら」 リベリスタ達を見下ろしながら、ミス・ヨーコは侮蔑の籠もった声で言い放つ。 「お忙しいところ失礼。晩餐までには済ませますので」 かるたは砲身を向けて戦闘態勢に入る。 「ナイスバディだな、女主人……こうなってまで好きなモン食いてえかあ?」 「どう見ても食いすぎだな。暴食で身を滅ぼすんだ、典型的な終わり方だろ」 プレインフェザーと烏が軽口を交わす。 「フォアグラみたいなもんだな。僕が捌いてやろう」 達哉がミス・ヨーコの身体を見ながら、笑って言う。 「マナーも弁えない奴らだね。いいわ、ここで新しい食材にしてあげる!」 ヨーコは手摺りに登ると、二階から跳躍した。ずずんと、地震のような振動が奔る。 「美味しく頂いてあげるから、大人しくなさい」 にんまりと赤い紅の引いた口を広げた。 部下のシェフが炎を放つ。リベリスタ達は散開して避ける。更に追撃しようとするシェフの前に立つ男。 「お前の相手は僕だ」 達哉はシェフを睨み付ける。 「料理は……いや、それ以前に技術とは人を幸せにするためにあるものだ。その技術で人を不幸にしてどうする下衆野郎が!」 「くくっ、貴様は丸焼きにしてやる」 シェフが炎を放つ。達哉はその攻撃を受ける。 「この程度の火など温いな。知り合いの中華の達人の方がよほどいい炎を使う」 平然とした顔を作り、駆け出す。そのままシェフの懐に入り、腹に掌底を叩き込む。その衝撃に前屈みになったところに回し蹴りで叩き込んだ。シェフが勢いよく倒れた位置、それはヨーコの居る方向だった。全て計算された動き、全身から気糸を放ちまとめて狙い撃つ。 気糸はシェフを貫き、ヨーコをも撃とうとした瞬間、ボディガードに割り込まれ、代わりにその黒服に穴を開ける。 「そこに居たら狙い撃ちだぜ」 プレインフェザーも敵がまとまっている瞬間を狙い、気糸を撃つ。それは狙い違わず、先の攻撃で傷ついた同じ箇所を撃ち抜く。 体勢を立て直し、ボディガードとシェフが反撃を放つ瞬間。烏の放つ強烈な光が辺りを照らす。目が眩み、僅かに逸れた軌道をプレインフェザーと達哉は容易く避ける。 かるたはシェフに接近する。手にした砲は携帯の為に無茶な軽量化を施し、遠距離からではまともに当たらぬ獲物。ならば、近距離から撃てばよい。砲を目の前に突きつけ、発砲。凄まじい反動を抑える。放たれた砲弾はシェフの右肩から先を木っ端微塵に吹き飛ばす。 「次があったらまともな料理人になるんだな」 達哉はシェフに止めを刺した。 奥から足音が聞こえる。姿を現したのは片腕を失った執事。 「主様、大丈夫でございますか」 「当たり前でしょう。ほんとに役に立たない奴ばかりね、さっさと倒して頂戴」 執事は通路を出てヨーコの近くまで駆け寄る、その背後に真名の姿があった。いつの間にか、執事が来るのを察知していたのか、静かに、その背後から爪を振るった。 「なっ!?」 「ふふふ、隙だらけ。油断したから……死ぬのはあなた」 右の爪で胸を貫き、左の爪で首を切り裂いた。血飛沫が絨毯を染める。 「吹き飛びな!」 ヨーコは全力で真名に走りよる。真名は予測していたのか、大きくステップを踏み避ける。だが突進は止まらない。その先に居たかるたを巻き込み倒れる。かるたはまるでダンプカーにぶつかったように吹き飛ぶ。 「大丈夫ですか!」 そのタイミングで入ってきたのは救出班のメンバー。光介が駆け寄り治療を行なう。 「術式、迷える羊の博愛!」 癒しの風が吹き抜ける。清らかな力がかるたの傷を癒していく。 「闇よ、負の力よ、全てを喰らい尽くせ」 スペードが自らの生命力を削って暗黒の力を引き出す。剣を振るい、刃に宿らせたその力を解放した。闇はヨーコとボディガードを包み込み、その命を削る。 「これ以上被害者が出ないように、ここで倒します!」 佐里は飛び込み、剣をボディガードに突き立てる。よろめいた敵の頭と胴に散弾が撃ち込まれる。ボディガードは顔と胴を穴だらけにして絶命した。更にはヨーコにも弾は飛ぶ。だがヨーコは倒れない、胸に当たった弾丸は脂肪で止まっていた。 「痛いし、邪魔くさいわね!」 ヨーコは近くにいた佐里を弾き飛ばす。佐里は階段にぶつかり落下した。光介が治癒に駆け寄る。 「あなたのような外道を放っては置けません。ここで排除させてもらいます」 傷ついた身体を起こし、かるたは武器を構える。 達哉が牽制に気糸を放つと、プレインフェザーは死角から足を狙う。 「まだ……戦えます」 佐里も瀕死の一撃から気力で起き上がると、剣を構えた。 真名は爪で肉を削ぎ落とし、烏はそこに銃弾を撃ち込む。 ヨーコは突撃しようとしたが、足に負った傷で動きに精細さ失う。 そこにスペードが暗黒の力を叩き付ける。佐里も刃を突きたてた。 光介の光に癒され、かるたは突撃する。一直線にヨーコの前に、砲を突きつける。発砲――。 ●人喰い 巨大な骸が転がっている。それは吹き飛ばされ原型を留めていなかった。 リベリスタ達が客間に行くと、二人の少女は部屋の片隅に、肩を寄せ合い震えて蹲っていた。 「もう大丈夫ですよ」 「約束通り、迎えに来ました」 佐里と光介が優しく声を掛ける。 「家族の手を離れて一人で生きて行こうとしたら、それなりの覚悟や色んな力が必要なもんだ。それを確実に手に入れたら、その時こそ本気の家出してやんな」 家出少女の私が言えた義理じゃないけどなと、プレインフェザーは自嘲的に笑う。 「そうだな、まずは一度家に帰りやり直してみろ」 「親も心配してるだろ、子供を持つ僕が言うんだから間違いないぜ」 烏と達哉も親身になって少女達を諭す。 「不安だったのは、家族と離れてしまったからではないかしら? その不安をあなた達の親も感じていると思いますよ」 スペードの言葉に、少女達は頷く。プレインフェザーが記憶を操作し、エリューションに関する事は忘れてしまう。だがこの大変な経験は彼女達を変えることだろう。 「今回が初犯、などということはないでしょうから」 叩けば幾らでも埃が出てくる組織だろう。かるたの提案で、本部に伝え倶楽部の後始末を頼む。 リベリスタは少女達を送りながら屋敷を去る。 「うふふふふ……」 真名は屋敷を一度振り返ると、笑う。それは何か楽しい事を見つけたような、童女のように無垢な笑顔だった。 人気の居なくなった屋敷。一人の恰幅の良い壮年の男が中に入る。荒れた屋敷の状況に何が起こったのかと驚いた顔。男は何かに気付いた。それは何処かで嗅いだことのある匂い。 息も荒く男は近付く。まるで蜜に群がる虫のように……。物陰には赤く濡れた破片があった。男はそれを手に取り、大きく口を――開けた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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