●完全解体殺人事件 ある港町で人間の残骸が発見された。 残骸という表現が不適切に思われるかもしれないが、現物を見た人間はとてもではないが、遺体とも死体とも呼ぶことはできなかった。 なぜならば、指の第一関節から臓物の一パーツに至るまで、すべてが全て、徹底的に解体されていたからだ。 元の人間が誰なのかは勿論、それが人間であったのか、どころか生物だったのかすら解らない程に解体され、家の裏庭に捨てられていたという。 発見当初は家の持ち主が犯人だと疑われ、何日も留守にしているという家主を捜索したが、精密な鑑定を行った結果その『人間の残骸』こそが家主であることが判明。 目撃証言によれば、犯人は二本のチェーンソーをぶら下げ、身体中から大量のナイフを鎖帷子のようにじゃらじゃらと垂らした異常者であったと言われるが、そんな特徴だらけの人間の足取りが何故か一向に掴むことができず、事件は闇へ闇へと沈んで行った。 ●ジグザグエッジの男 「その――犯人の名は、ルードリヒ・テスノー」 アーク・ブリーフィングルーム。 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)はモニターに顔写真を表示させた。 「ヴァンパイアのダークナイトだ。彼は町外れの洋館に住む男性だが、時折人里に下りては快楽殺人を起こして行く。場合によっては人に見せびらかすように殺して反応を楽しむとも言われている」 顔写真の横にスペックデータを表示していく。 「ルードリヒは戦闘力のフィクサードだ。その上、解体工具を混ぜ合わせたようなEフォースを十体も飼っている。E能力者であることを差し引いても、人間の考えるような思想体系は持ち合わせていないだろう」 今回の任務は無論のこと。 快楽殺人鬼ルードリヒの、殺処分である。 ●ルードリヒ・『カーペンター』・テスノー 洋館とはいっても、さほど広い空間ではない。 玄関を開け、通路を抜け、広間へと出る。 シャンデリアの光る広間の奥では、赤い作業着の男が大きくない食卓についている。 天井付近をぐるぐると、鉋や鋸、バールや大鋏、金槌や鑢といった解体工具をごちゃごちゃと混ぜ合わせたような、奇妙な物体が蠢いている。 これらがEフォースであることは、もはや説明するまでもない。 そして。 「んんー……次はどんな人間をバラしましょーっかねえ……」 まるでナイフとフォークを操るように、慣れた手つきで片手式チェーンソー(ハンドソーとも呼ぶ)をくるくると回す男。 言うまでも無く。 ルードリヒ・テスノーである。 「迷っちゃうッスねえ……へっへー」 ルードリヒはへらへらと笑うと、テーブルにハンドソーを置いた。 「むしろ相手から訪ねて来てくれたら、嬉しいッスねえ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月26日(月)23:41 |
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■メイン参加者 9人■ | |||||
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●移動車内にて ルードリヒ・テスノー。 人間を生物と分からなくなる程に解体する殺人鬼が人里離れた邸に暮らしていると言う情報を受け、リベリスタ達は未舗装の細道をワゴン車で進んでいた。 「サイコ野郎め、神の名のもとに殲滅してくれる。ヒャッハハ!」 脚をばたつかせて背もたれに寄りかかる『回復狂』メアリ・ラングストン(BNE000075)。 飲料缶を両手で包むように握り、『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(BNE001084)は頷いた。 「そうですね。再生もできないくらい叩き潰して、これ以上迷惑をかけられないようにしてあげます!」 「向うも覚悟してるんだ。やってやろう」 目をどこか仄暗くして、窓の外を見る『ムエタイ獣が如く』滝沢 美虎(BNE003973)。 僅かに車窓に反射した『斬人斬魔』蜂須賀 冴(BNE002536)が、足元を見つめたまま吐き捨てるように呟いた。 「……外道め」 前を走るメアリたちの車とは別に、白塗りのワゴン車に『深紅の眷狼』災原・闇紅(BNE003436)はごとごとと揺られていた。 「ま、こんな世界だしね。弱ければ死ぬし……」 「そう言うスタンスでいいの? 向うは向こうで殺気立ってるみたいだけど」 「あたしも人のこと言えたクチじゃないしね」 陰鬱なのか憂鬱なのか、感情の沈んだ顔をして述べる闇紅。『薄明』東雲 未明(BNE000340)は肩をすくめて窓に寄りかかった。 「人間を指の第一関節レベルまで解体するんですって? 人間一人を解体するのにどれだけ手間がかかるか考えたら、随分な拘りようよね」 「そーお? 私はいい趣味だなって思うけど。猟奇殺人も見飽きたなあって思ってた私から見てもハイレベルの変態ぶりじゃない」 唇に指をかけて笑う『モンマルトルの白猫』セシル・クロード・カミュ(BNE004055)。 「こういうタイプは綺麗好きで几帳面。積木はぴったり箱詰めして片付けるタイプね」 「猟奇性と狡猾さを併せ持った人格だよね。長い歴史で見てもそんなにいないタイプじゃない? 僕も嫌いじゃないよ」 カタカタと身体を揺するように笑う『SCAVENGER』茜日 暁(BNE004041)。 「人間の解体なんてラクそうに言うけど、すごく難しいのよ。適当に切れば血が噴き出して何リットルも出続けるし、腕の肉ひとつそぎ落とすのでも方向や力加減を調節しないと変に残るし。魚一匹捌くのに手間がかかることを考えたら、想像がつくかしら」 「…………」 『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)が舌打ちをした。 「おっとごめん、気分悪くした?」 「いや……いいよ。世の中、モノより安く扱われる人間だっている。惨殺されるのが最低だとか、言わない」 「ふうん? じゃあ何で怒ってるの」 顎を上げる暁。 涼子はフロントガラスから前を見たまま、表情を殺した。 「ヤツの口調がムカつくんだ。それだけだよ、それだけ……」 ●気狂い大工の家 豪華なお屋敷……などというものはない。 ひび割れた壁に植物のツタが這い、所々に巣食っているのか小蠅や節足動物がごちゃごちゃと犇めいている。 郵便ポストの前に新聞紙が大量に積み上げられていて、地面を埋め尽くすような落ち葉の山がドアの前だけ掃き退けられていなければ、人が住んでいるなどとは思えぬ外観であった。 ドアノブを捻ってみたが、鍵は開いていた。 「はいどうぞ、いらっしゃーい」 通路の奥で声がする。 慎重に進んで行くと、シャンデリアの下がった広間でひとりの男が食事をしていた。 焼き魚に茸の炊込み飯、根菜の味噌汁と漬物と言うオーソドックスなメニューを広げ、器用に箸をカチカチと打ち鳴らした。 「噂の解体屋さんはこちらで?」 「そっすねえ」 素っ気の無い返事をして、男は言った。 「そろそろ来る頃だと思ってたんすよぉ。まあ殺気だってらっしゃるみてーなんで、御挨拶はまた今度ってことで、えーえー……」 箸を置き、テーブルの端に置いたチェーンソーを拾い上げた。 途端、周囲からぶわりとEフォースが沸き出してくる。 にたりと笑う男。 ルードリヒ・テスノー。 「絞めちゃいましょうかね」 「冴、そっちの抑えは任せたよ!」 美虎はそう叫ぶと、片手クラウチング状態から飛び出した。 頭上を数体のEフォースが通過し、ごきごきと生えたバールや鋏がフードの上を滑るように抜けていく。 が、美虎は彼等を完全にスルーしていくと言うつもりではなかった。 床を擦るようについた足跡が黒く焦げ。 Eフォース『解体工具』の中ほどで、ブレーキをかけるように片手を地面につける。 「だーらぁー!」 美虎は爪先に電流を流すと、まるで横倒した車輪が回転するかのようなギリギリの角度で壱式迅雷を放った。 綺麗に整った絨毯に円形の焦げ跡が残り、ミルキークラウンのように跳ねあがった電流を受けた『解体工具』たちがびくんと痙攣する。 そこへ、跳躍した涼子が飛び込みフォールアタック。美虎の攻撃範囲に入っていなかった『解体工具』をまず一発殴りつけると、単発銃をナックルのように握って底部分で別の『解体工具』を殴り飛ばす。その衝撃で中折れした銃に、片手で跳ね上げた弾を込めると手首を返して装填。頭上から襲い掛かってくる金槌型の『解体工具』目がけて発砲した。そこまでざっと5秒。 液体油の中に洗剤を数滴落としていくかのように、『解体工具』が押し退けられていく。 彼女達の作った円と円。その間にできた狭いラインを潜り抜け、未明は複数の残像を出現させる。 「「全く、およそ人体を解体するには向かなそうな道具ばかりね。拘り?」」 分裂した未明たちが同時に囁き、そして全く同時に剣を振り回した。 鉋や鋸といった『解体工具』たちにどかどかと叩き込まれていく。 ひときわ大きなバールの集合体が複雑怪奇に蠢きながら突撃してくる。 「まずは――数を減らす!」 激しく宙へ飛び出したななせが、巨大なハンマーを頭上に掲げる。 宙に浮いた『解体工具』に槌を叩きつけると、そのままの勢いで落下。テーブルへとサンドアタックで叩きつける。 食器は勿論食べ残していた焼魚や味噌汁が飛び散り、そう頑丈でもないテーブルは中ほどでばきりと圧し折れた。 と、次の瞬間。ななせの首が巨大な矢床鋏に掴まれた。相手を振り払おうと反射的にハンマーを掲げるも、その相手というのが矢床鋏自体なのだ。ここでぶん殴れば自分もろとも引っ張り倒される。そう思った矢先、鉄杭が胸に押し当てられ、巨大なハンマーがその上から叩きつけられた。 まるであばら骨が押し開かれるような、想像を絶する感触が走る。 「おーととと、どうしたんすか。ヨタついてるっすよー」 片手持ち用のハンドソーを果物ナイフでも扱うかのように手軽く、そしてやけに繊細に振り回してくるルードリヒ。 力で叩き切ったり圧し切ったりというパワープレイを得意とする冴にとって、この相手は非常に厄介だった。 しかもいやらしいことに、『解体工具』を二体つけて冴を囲み、常闇を乗せたチェーンソーアタックで冴の刀や腕や脚や腰や脹脛や喉や指や、体の至る所にねっとりと染みつけ、動きを執拗なまでに制限させていく。 「ぅ……!」 両手同時に繰り出されたハンドソーを鞘と刀で受け止める冴。 そんな彼女の背中にバールの背が押し当てられ方をぐるりと捻り上げるかのように曲がってはいけない方向へと引っ張られた。まるで知恵の輪を外すかのように、冴の両肩関節が引っこ抜かれる。更にアキレス腱に当たる部分を鋸型の『解体工具』がばっさりと切断。冴は受身ひとつとれずに仰向けに転倒した。 整えたベッドに乗るように、どこか丁寧に腹へと腰掛けてくるルードリヒ。 奥歯が砕けんばかりに歯を食いしばる。 「おっと、イイっすねえその目。『悪い奴をやっつけるだけで良かったのについつい良心とか考えちゃって殺人兵器だった自分が人間らしくなっちゃってそんな自分を誤魔化すために悪くてしょうがない奴をやっつけて元通りになろうとしてるのに思うように心が動いてくれない』って目ぇ、してるなないっすかあ?」 「…………!」 首を跳ねてやりたい。そう思えど、腕は人形か何かのようにだらんと脱力したままだ。 「なにやっとるんじゃコラ、しっかりするのじゃ!」 どこか慌てた声で、メアリがブレイクフィアーをかけてくる。 とはいえ、崩壊や不吉は毎回のように冴を蝕み、ダメージは深刻なレベルに達している。 正直な話、味方の『突っ込んで抑えてとにかく殴って』の戦法に対し、回復の手が全然足りていなかった。元々ダメージ量が多くなりがちな作戦である。相手がこぞってダメージ増幅型である以上、相性は最悪と言っていい。 「特に『崩壊』がネックじゃ……ダメージ100くらい常にオマケされてるようなもんじゃが、かといって解除に集中しとると本来のダメージ補修が追いつかん……」 忌々しげに爪を噛むメアリ。 そして彼女の踵が、びちゃりと何かを踏んだ。 「…………」 誰にでも分かるように形容するならば。 不揃いなグミ菓子とワインのボトルを滅茶苦茶に床に叩きつけてばら撒いた跡……といった様子だった。 これが全て、人体の一部であることが、超直観をパッシブしているメアリには嫌と言う程わかった。 「う……ぶ……!」 口を押え、こみ上げる胃液をこらえる。 「後で死体にゲロ吐きかけてやる……この糞外道……!」 シャンデリアに片手をかけ、闇紅は器用に逆上がりをした。 後を追って飛来する丸鋸型の『解体工具』を振り返り、吊り下げている鎖を一本千切ってガクンと足場を下げて『解体工具』を回避。すれ違いざまにナイフで撫で切ってやった。 ひたすら頑丈な相手なのでいまいちダメージ量は見込めないが、これを続けていれば負けはしないだろう。 とのみち足止めが目的だ。 そうこうしていると、明後日の方向から魔閃光が飛来。丸鋸を貫いて破壊。ばらばらと砕けた破片が地面に落ち、暁はその一つを摘み上げた。 とりあえずと言った様子で口に含み、がりがりと咀嚼する。 「あ、意外とマズい」 「当たり前でしょ。普段何食べてるの……」 「石とか?」 「人間の発現じゃないわね」 すとんと地面に降り立つ闇紅。 そんな二人を狙って大鋏がシャキンシャキンと自己主張しながら突っ込んでくる……が。 反対側から放たれた数発の弾丸が大鋏に命中。無数の火花を散らした後、ネジ部分を破損させて分裂した。が、そんなのはお構いなしとばかりに大鋏改め大ナイフが飛来。セシルは自ら踏み込むと、銃の持ち手に指をひっかけ回転。ナックルダスターとして握り込み、ブレードを殴り落とした。 「相手も馬鹿じゃないみたいね。こっちが複数体狙いで突っ込んでるのを見るや否やさっさとバラけてる。こっちは陣形気にして集中攻撃したいのに、あっちはじわじわこっちの総力削るだけでいいんだからね……」 迎撃行動と言うより盛大な嫌がらせである。狡猾な猟奇殺人鬼と言われるルードリヒらしい動かし方と、言えるかもしれない。 「さっさと片付けないと、そのうちバラバラにされちゃうわよ」 ●ルードリヒ・『カーペンター』・テスノー 雑魚を片付けるのは楽勝だった。 ……などと言えば、嘘になるだろう。 一分足らずで冴を無力化したルードリヒは『解体工具』を引き攣れて他の仲間たちに襲い掛かった。それもどういう考え方なのか、倒しにくい順にと闇紅の弱体化から始め、しかし誰一人トドメを刺すことなく順繰りに、総なめにするようにひとりひとり潰して行くのだ。 無論リベリスタ達は必死に抵抗を繰り返し『解体工具』を全て倒し切ることに成功したが……その頃既に、ルードリヒはへらへら笑いながらメアリの胸元を切り裂いていた。 「ほら回復しないとみんな死んじゃうっすよー、頑張って頑張って」 「この……!」 右肘関節と左手首関節を外され、必死に相手を蹴りつけるぐらいしか抵抗の術は無い。 「何がカーペンターじゃ、浪漫の欠片もない解体作業じゃこんなもん。切り刻めばいいってもんでもないわ!」 「うわー心が痛いー。ボク胸が痛くて死んじゃうっすよぉー、ッハッハハハハハハ! 所でオジョーチャンの胸はどんなっすかああああ!?」 鉄板底の安全靴でチェーンソーをぐちゃりと押し込む。 メアリは大きく身体を痙攣させ、そしてぴくりとも動かなくなった。 ルードリヒは途中から漆黒を解放し、闇ナイフを鎖帷子のようにじゃらじゃらと身体中に垂らしている。その一つが砕け、身体に魔閃光のオーラが捻じ込まれた。 「本当……好きなんだねぇ……」 脚をあらぬ方向に曲げ、壁に寄りかかり、暁は言った。 「工具もさ、解体もさ……両方かな、あは。Eフォースが生まれちゃうくらいの感情濃度と現象密度だもんね」 「どうなんでしょーねー。いつの間にかこうなっちゃったとしか、言えないっすねぇ」 手を翳し、漆黒の光を溜め打ちするルードリヒ。額を貫通した光に、暁は一度壁に後頭部を叩き付け、絵筆で乱暴に描いたような血の跡を残して床に崩れ落ちた。 「ふう……ふう……」 喉を微妙に切られ、ギリギリのところで呼吸をするななせ。彼女と共にルードリヒを囲むように立ち、未明は剣を引き摺った。 痛み故に身体が動かないと言うなら、我慢すれば良いことだ。苦しみ故に呼吸がままならぬと言うのなら、耐えれば良いことだ。 しかし関節と保護部分がねじ切られて動かせないのでは、喉を圧迫されて空気が通らないのでは、我慢も耐久も関係なくなる。 「わたしの、全力全開……受け切れ――ますかっ!」 息を無理やり吐き出すように叫び、殴りかかるななせ。 彼女のハンマーがルードリヒに直撃し、壁に一度跳ね帰り、未明は迎え撃つように剣を叩きつけた。 バレーボールのように跳ね返され、ルードリヒは床をバウンドする。 「痛……つっ」 一度外れた肩を片手で無理矢理はめ込み、損壊したままの可動部を無理やり振り回すのだ。激痛が走るのは勿論のこと、勢いで再び肩の関節が引っこ抜けてしまった。腕を抑えて蹲る未明。 「ギリギリって感じっすねえ」 「アンタもね……」 闇紅は顔を土気色にし、焼け焦げた衣服とジグザグに凍結した左腕と時折びくびくと痙攣する脚を引き摺り、血まみれになった身体をゆっくりと起こした。 「どうしたの。動かない人形にしないと何もできないクズなの?」 ゆっくりと息を吐き、立ち上がる。 トップスピードのかけ直しは、しない。当たり前のようにブレイクし続けてくるこの場において、時間稼ぎにもならないことは既に承知している。その対価として手ひどい傷を負ったが、闇紅とて失敗をループさせる程愚かではない。 小太刀を握り直し、素早く飛び掛る。 チェーンソーで弾くルードリヒ。その瞬間を狙ってセシルと涼子のバウンティショットが彼の身体に叩き込まれた。 衝撃に倒れてしまわぬようバランスをとるルードリヒ。しかし素早く飛び掛って来た涼子の拳が、ルードリヒを強制的に転倒させた。 もう一発殴ろうと拳を振り上げる涼子に対し、ルードリヒはハンドソーを掲げる。それも、拳を受け止めるためではなく、涼子の肩に突きつけるようにだ。 腕がもげたのではないかと言う程の衝撃が走り、涼子は仰け反る。 しかし歯を食いしばり、起き上がろうとしたルードリヒにヘッドバッド。 テーブルの残骸を背もたれにしたセシルが唯一自由な片手で銃を連射。ルードリヒの手からハンドソーが一本抜け、床を滅茶苦茶にダンスした。 それを踵で踏み壊し、冴がよろよろと近づいてきた。 左腕がだらんとしたまま動かない。刀を口に加え、握力の尽きかけた手で刀の柄を掴んだ。 「邪悪、斬るべし……!」 フォームを完全に無視した、もはや倒れ込むかのような斬撃を叩き込み、ルードリヒの腕に刀を突き立てる。 そのまま血を吐きながら床を転がり、うつ伏せで停止する冴。 マウントポジションをとっていた涼子も、あたまをぐらんと揺すって横向きに転倒。 まるで床に縫い付けられたかのようなルードリヒへ、美虎がずるずると身体を引き摺ってくる。 手首の辺りを斬りつけられ拳が握れず、肘と片膝だけで芋虫の様に這い、なんとか枕元までたどり着いた。 「あー、これはそろそろ、アレっすかね?」 「年貢の、納め時だ……死ね、殺人鬼」 肘を振り上げ、全体重をかけてルードリヒの眉間に叩き込む。 『ぼぎゅん』という、人間の頭部が損壊する音が鳴る。 殺人鬼、ルードリヒ・『カーペンター』・テスノーは死んだ。 彼の手にかかって死亡した人間の数は不明。 そして彼が何故このような偏執的殺人行為に勤しんていたかの理由も不明。 何もわからぬまま殺人鬼は死に。 そしてこの世界にまた一つ死体が生まれた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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