●デュラハン、2人 「まったく! 何なんですのっ!?」 感情を高ぶらせた口調でそう叫んだのは、金属鎧を身に纏った少女だった。 少女に似た存在、と表現するべきかも知れない。 「話しかけたレディに向かって無言で攻撃を仕掛けてくるなんて、紳士のなさる事ではありませんわっ!」 そう叫んだ彼女の顔、つまりは頭部は……鎧を纏った左腕に抱えられているのだから。 いや、人間ではないだけで少女ではあると表現すべきか? ともかく当然というべきか、頭部を抱える身体の方には頭はついていなかった。 彼女のものらしい金属製の鎧を纏った身体は、左手で頭部を抱え、右手一本で重く頑丈そうなハルバードを構え……批難の対象へと向けている。 批難された対象も、彼女によく似た外見を持っていた。 全身を覆う金属鎧、左手で抱えられた頭部。 異なるのは終始無言である事と、右腕に手綱を掴み、2頭の頭の無い馬に引かせた馬車に乗っている事だろうか。 無言のまま手綱が引かれ馬達が大きく前足を上げる。 「本当に強引な殿方ですことっ!!」 それに対峙するように、少女がハルバードを振りかぶった。 ●E・フォース『デュラハン』 「外見上デュラハンと呼称される存在です」 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言って、スクリーンにデータを表示させた。 全身を中世風の金属鎧で覆った外見をしたエリューションの頭部は、その左手で抱えられるようにして小脇に存在している。 もう一方の手には手綱を握り、それが続くのは主と同じように頭の無い2頭の馬だ。 その馬たちは古代の戦車に似た外見の馬車へと繋がれている。 鎧を纏った騎士と、馬、そして馬車。個別であっても、ひとつの存在。 「死への恐れや怯えが具現化した感じのE・フォースのようです」 その根源に相応しいというべきか、周囲の者たちへ本人が死ぬ幻影を見せる事で心を乱し、理性を奪うという力を使用してくる。 「それ以外にも、馬車を操っての攻撃等も行ってきます」 突撃し馬車をぶつけてきたり、馬に踏み潰させたり蹴らせたり。 デュラハンに操られたその攻撃は高い威力を持ち、広い範囲を巻き込むらしい。 その動きは機敏で2回の攻撃を行ってくるようだ。 「加えて馬車に乗ったデュラハンは本来と比べると狙い難くなります」 もちろん、馬や馬車には普通に攻撃できる。 「馬が1頭倒されるか馬車が壊れれば、デュラハンは馬車から下りて手綱を剣に持ち替え攻撃を行ってきます」 一方、馬の方も馬車から切り離され独自に攻撃してくるようだ。 「どちらも強力な攻撃ですが、対象は単体ですので馬車に比べると対処し易いかも知れません」 E・フォースが出現するのは、公園の広場となる。 「ですが、その公園に……先客がいるんです」 一般人が? と、困った顔をしたリベリスタたちよりも困惑した顔で。 「その、アザーバイドの方なんですが……」 少女がそう言って端末を操作すると、画面にもう1人…… 金属鎧を纏い、こちらは兜を被らず頭部をそのまま小脇に抱え、もう一方の手にハルバードを構えて、という出で立ちの少女の姿が映し出された。 ●アザーバイド『デュラハン』 「こちらも何と言いますか……デュラハン、なんですけど……」 先刻のデュラハンと比べれば細身ではあるが、右腕だけでハルバードを振るう膂力。 人あらざる者と感じさせはするものの、それ以外は真面目そうな……いや、頭を小脇に抱えている時点でどうしよもないのかも知れないけど。 「こちらは完全にこういう種族の方らしいです」 広場近くに出現しているD・ホールの画像を指しながら、マルガレーテが説明した。 頭がそうやって胴体から離れた女性だけの種族で、伴侶を得る事で首が生え頭が胴につくのだそうだ。 「頭を抱いていた腕に、大切な人を抱けるように……みたいな感じらしいです」 ちょっとロマンチックですよねという少女に幾人かが頷き、幾人かはうーんと難しそうに首を傾げる。 「と、とにかくこの2人というか2体と言いますかが遭遇し、戦いになってしまっているんです」 放っておけばアザーバイドは敗北し、E・フォースは周囲を彷徨い始め……公園の外で一般人に被害が出てしまう。 「ですので皆さんには、E・フォースの撃破をお願いしたいんです」 アザーバイドの方に関しては、それなりに戦闘能力はあるが好戦的な性格ではないので此方から攻撃等を仕掛けない限りは大丈夫だとマルガレーテは説明した。 「エリューションの方はかなり強力なようですし、両者と敵対するのは厳しいと思います」 幸いD・ホールは閉じていない。 アザーバイドは来訪早々苦労する羽目になってしまったが、逆に考えれば元の世界にさっさと帰ろう……という気持ちになってくれたかもしれない。 「一応スキル等が無ければ会話は無理ですが、外見が私たちに近いせいかある程度は察してくれると思います」 真面目そうな性格だし、何とかなると思いますと少女は言ってから。 「ただ……異性にあまり免疫なさそうな感じですので、少し気を付けてあげた方が良いかも知れません」 もちろん恥ずかしがったり緊張したりという感じで、敵意とかを持つ訳じゃありません。 そんな言葉を付け加えて。 リベリスタたちは頷くと、公園へと出発した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月30日(金)23:31 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●デュラハンとデュラハン 死への恐怖。 そんなものはあって当然だ。 「だが死は忌避するものじゃない!」 畏れても、けして恐れはしない! 「死に向き合う覚悟が俺にはある!」 『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)は力強く口にした。 (そう! デュラハンという死の権化に!) 「向き合う! 覚悟が! 俺には! ある!」 一々力強く断言する彼の脳内では、アザーバイドのデュラハン(以後デュラたん)にもふもふする光景が展開されている。 「死を抱擁しよう!」 語りつつ脳内で、デュラたんむぎゅむぎゅ。 「死は人が生まれながらに隣に侍る友人である!」 今度はデュラたんに、すりすり。 (って感じなことしたいよね! うひっ!) 「戦闘終わるまでしないけどね! 俺えらい!」 あ? Eフォースデュラハン(以後デュラハン)だ? 「ぶち殺すぞ」 この差である。 同じデュラハンでありながら、別のモノ。 かたや死を告げる悪意の存在、かたや伴侶を求める女性騎士。 「運命的、というには残念すぎる出会いだったな」 呟いてから、『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)は、すぐに気持ちを切り替えた。 「とりあえず迷惑な方をさっさとぶっつぶして、異世界からの友好的な来訪者をおもてなしと行こうか!」 その言葉に頷きつつ、『銀の腕』一条 佐里(BNE004113)は彼方へと視線を向ける。 死を運ぶ首無し騎士。 ならば、そのデュラハンの少女は……死すべき運命にあるとでもいうのだろうか? 「アザーバイドとはいえ、元いたところへ帰ってもらえばいいだけの話です」 佐里は、静かに呟いた。 (生きているのですから、幸せになるべきです) 静かに、けれど……強く。彼女は、口にした。 「死すべき運命があるというならば、私たちがそれを覆しましょう」 ●戦いの場所へ アークに入って初めての実戦。 (ベテランさんにくっついてだけど、初めての命のやり取り) 「普段あんまり心が動いたりはしないのに」 凄く怖い。 『大鬼蛮声』阿曇・凪(BNE004094)は何とか緊張を解そうとしたものの……意識すればするほど、内側から何かがこみ上げきた。 (相手は今まで稽古してきた人間じゃない) 8人掛りで戦わなきゃいけない強さの化け物。 「異界の来訪者も、上手くいけば味方をしてくれる筈だけど……」 胸が、早鐘をうって止まらない。 「戦いが終わっても鼓動がありますように」 小さく、誰にも聞こえぬように呟いて……少年は恐れを、闘志へと変えようとする。 一方、幾度もの実戦を経験してきた者たちは今回のアザーバイドとエリューションについて様々な想いを馳せていた。 「むう、伴侶を得ると首が生えてくるとは面妖な」 『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)も、そんな一人である。 「いや、私が言う事じゃないと言うのは分かってるんですけどな」 私、仮面ですし、怪人ですし、時々着ぐるみですし。 そう、自覚はある。 「デュラハンか……ホント、幻想世界の住人じゃないの」 『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)は呟いてから、まぁ、フュリエなんかもそうだったけどさ、と付け加えた。 ラ・ル・カーナ等の影響なのか、驚きのようなものはそれほど感じない。 さりとて、全く抵抗がないという訳でもない。 アザーバイドの方は……ロマンチックかは微妙なライン。 (けど、大切な人を抱けるように、か) 「いつか、そんな相手が出来たらいいね」 誰にいうでもなく、そんな言葉が口からこぼれる。 「やーん、どっちもデュラハンとか、凄く紛らわしいですよう」 『メガメガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)はちょっと泣きそうな感じではあるものの、取り乱してはいなかった。 気弱げではあっても、為すべき事は十二分に心得ている。 アザーバイドと共闘しE・フォースを倒す為に。 (あまりのんびりしている暇は無さそうですし) だから、仲間たちと共に公園へと急ぐ。 やがて8人の耳に戦い音が響き始め、目に公園の広場が、そこで戦う両者の姿が飛び込んできた。 「首無し騎士が2体ーでもどっちに味方するかなんて明々白々だよねー」 (ハルバード使いに悪い奴はいねー) 『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)はそう言いながら、黒のハルバードを取り出した。 「いざ尋常に助太刀と行くぜーアンタレス!」 ●死を告げる者 手綱が強く引かれ、首の無い馬達が向きを変え突撃した。 鎧を纏った身体に抱えられた少女の顔が、痛みに歪む。 そんな戦場に、リベリスタたちは乱入した。 レイチェルが全体を見渡せるように位置を取りながら仲間たちへと翼の加護を施し、イスタルテは清らかな福音でアザーバイドの少女を癒す。 癒しを受け驚き、少女の発した誰何の言葉を、エルヴィンは能力によって正確に理解できた。 「こんばんは、異世界からやってきた素敵なお嬢さん」 少しでも緊張させないようにと少し距離を取って穏やかな雰囲気を発しながら声を掛ければ、少女は対峙するデュラハンから目を離さずに問いかける。 彼女を庇うべく竜一と九十九が前進し、E・フォースへと距離を詰めた。 エルヴィンはそのまま、デュラハンの少女へと話しかける。 「君が声をかけた相手は、存在していてはいけない悪いモノなんだ」 もし良かったら戦いを手伝ってもらえないかな? 「大丈夫、君の事はしっかり護らせてもらうからさ」 穏やかな口調で提案し、にこっと微笑みながらウインクを送れば……少女の顔が、傍目からでも分かるくらいに真っ赤になった。 「あ、いえ、その、あの……と、とても助かりますわ」 とっても強そうだという言葉には、私などまだまだ未熟でと強く否定したりもしつつ、彼女は寧ろと感謝の言葉を述べ共闘を快諾する。 その時には既に、竜一と九十九は戦車の前に立ち塞がり、E・フォースのデュラハンと対峙していた。 言葉は通じない。 故に、態度で示すべき。 故に、デュラたんを守るように……竜一はエリューションの前へと立つ。 (ただ背中で語るべきだ) そう――君を守る――と。 (どや)←但し、この顔である。 とはいえ背を向けて顔を見られないせいか、漂わすセンスフラグ故か……ちょっと心を揺らす事には成功したかも知れない。 九十九も彼女に対して敵対的な姿勢を取らないようにと注意しつつ、庇えるように位置を取った。 「デュラさんはやらせはしませんぞ」 魔術によって軽量化された盾を構え戦闘態勢を整える。 「対戦車戦用意!」 一方で岬は混乱を警戒して皆と逆側に、E・フォースを挟んで反対側になるように位置を取り、即座に攻撃を開始した。 凪は少女のアザーバイドへ敵意が無い事を示すように、視線が合った際、出来る限りの柔和な笑みを浮かべお辞儀をしてから戦闘態勢を取る。 「アザーバイドではなくE・フォースならば、遠慮はしません」 佐里は敵の移動を妨害するように位置を取りつつ、集中によって脳の伝達処理能力を向上させた。 手綱を引き馬を、馬車を操ったデュラハンは、前衛たちに馬車をぶつけ、首の無い馬たちに踏み付けさせる。 そして…… 周囲の者たちは一瞬、凍りつくような感覚を味わった。 デュラハンの剣が自分の胸を貫き、あるいは首を刎ねる光景。 首なき馬達が自分の体を、粉々に踏み潰す光景。 表情だけは何とか崩さぬように堪えようとした凪は、歯が音を立て冷たい汗が内を伝うのを他人事のように実感した。 瞳に映った……ように思えた幻影が、少年の心をかき乱す。 それを打ち消すように、皆の受けた傷を癒すように、癒しの息吹が一帯を包みこんだ。 高位存在へと呼びかけながら、レイチェルはアザーバイドの少女に視線を向ける。 Dホールが開いてるなら、彼女とは戦う必要はない。 ここじゃ生きづらいだろうから、元いた世界に帰ってもらおう。 「……ま、その為にアレを倒しちゃおうかっ」 少女は元気に、断言した。 ●それぞれの力 死の幻影によって消耗し回復の為の力が尽きるのを警戒したイスタルテは、エリューションの遠距離攻撃が届かない範囲を意識して位置取りを行っていた。 もちろん回復が必要となれば構わず踏み込むつもりである。 もっとも、現在そこまで状況は追い詰められていなかった。 回復は不足していないと判断した彼女は、掌に意志の籠められた聖光を創りだす。 エルヴィンも周囲の力を取り込む事で自身の魔力を高めながら、アザーバイドの少女を庇えるように位置を取った。 共闘を受け入れてくれた事に感謝を述べ、心強いよと口にすれば、彼女は言葉を詰まらせつつハルバードを振るう。 「俺が、デュラたんを、守る!」 竜一も全身の闘気を爆発させながら斬撃をヘッドレスホースへと叩き込んだ。 「『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』と言うことわざを知ってますかな?」 (この状況に良く合ってると思いませんかのう。くっくっく) 集中によって動体視力を強化した九十九は、精密な射撃で仲間たちと同じ馬を攻撃する。 岬も同じく言葉を口にしつつ、全身のエネルギーをアンタレスへと集束させ一閃を放った。 直撃を受けた馬は留め具を軋ませ、馬車を揺るがせる。 それを治めるようにデュラハンが手綱を強く引きしぼる。 「乗り物なら、小回りは利かないでしょう!!」 震える足に力を籠め振りあげると、凪は高速の蹴りによってカマイタチを発生させ首無しの馬へと放つ。 続くように佐里が距離を詰めた。 (真っ向勝負では話にならないでしょう。正面以外から打ち込むとしましょう) 「いかに防御が厚くとも、隙を見つけ、作らせ、突き崩していければ……!」 敵の動きに、自身の一手一手に意識を集中させ、計算によってヘッドレスホースの動きを推測し、隙を突くように攻撃を仕掛ける。 それでも、デュラハンの手綱捌きによって敵は簡単には直撃を許さない。 戦車と馬達が前衛たちを襲い、リベリスタたちの攻撃が馬車を曳く首無しの馬を捉える。 万全の状態から一撃で膝を折らせるような強烈な攻撃を、佐里は運命の加護の力を得てかろうじて耐え凌ぐ。 激しい攻防は短時間で、次の段階へと移行した。 馬車を曳く1頭が倒され、デュラハンが手綱から手を離す。 馬車を降り剣を抜いた首無しの騎士に従うように、残ったもう1頭が馬車から切り離された。 「さてさて、死への恐れや怯えは誰だって持っているもの。私だって怖いです」 そう言ってから九十九は、でも……と続けた。 「それを克服するのもまた生きるって事ですよな」 ●戦いに抱くもの 死の幻影ー? (まだアンタレス使えてないから死ぬのは嫌だけど、同じハルバード使いに取り乱してるとこ見られるほうが嫌だろー) 「気合い入れてくぜーアンタレス」 岬はハルバードへと呼びかけながら、炎のように揺らめき伸ばされた刃をE・フォースへと向けた。 「片手じゃ出来ないハルバードの使い方を見せてやるぜー」 デュラハンを仲間たちと挟み込むように位置を取り、オーラを纏わせた刃を叩きつける。 凪も一気に踏み込み、デュラハンの懐へと飛び込んだ。 「阿曇流角力……」 死の具現の騎士に、叫びと共に……今までの自分の修練を全てを。 回避され反撃を受けるのも厭わず、少年は幾度となく拳を振るう。 血の匂いに酔ってでも、戦いに馴染もうと自らを奮い立たせる。 「張子崩し!!」 運命の加護によって戦い続け、完全ではないものの一撃が目標を捉えた瞬間……少年は破壊の気をデュラハンの内側へと注ぎ込んだ。 佐里は攻撃を続けながら、敵の動きを確認する。 デュラハンの少女が狙われるようなら注意を引く事も考えていたが、幸いというべきかE・フォースは自分たちへの攻撃を重視しつつあるようだった。 仲間たちの傷を癒すべくレイチェルは光のオーラを鎧へと変えて纏わせ、詠唱によって癒しの微風を呼び寄せる。 癒しの力を揮いながら、少女は前衛たちと共に戦うアザーバイドの少女へと視線を向けた。 助かるのは事実だけど、心強いかと言われると…… (実力が不安、っていうんじゃなくって、実力があっても肩を並べるには複雑すぎて、さ) でも、普段は手を取れない相手だから……こういうのも悪くはない。 そう思うのも事実だ。 「ただ、運命の加護はないんだし、あなたは無茶したらいけない――いや、」 いいか。 ふと、そんな風に思えて。 「やる気があるなら、思いっきり暴れちゃって!」 レイチェルは彼女に呼びかけた。 「しっかりサポートするよっ。まっかせてっ!」 アザーバイドに呼び掛けるレイチェルとエルヴィンの2人にイスタルテは声を掛け、互いの状況を確認し合う。 元々多くの力を蓄積している上に能力を使い分ける事で消耗を抑えているレイチェルや、周囲の魔力を取り込んで力を回復させるエルヴィンとは異なり、イスタルテの持つ癒しの力は限定されたものだ。 それを最大限有効活用する為に、彼女は慎重に位置取りを行い、回復と攻撃を使い分ける。 癒し手達の尽力によってチームは少なくとも混乱の恐怖からは完全に解放され、負傷の面においても充分継戦能力を維持していた。 もっとも、幾人かは力の面で限界に近付きつつある。 (デュラたんが正面から全力で向き合うタイプのようだからね) 「それに俺も付き合ってやらんと!」 竜一が真正面からデュラハンへと爆裂する一撃を放ち、九十九はもう1頭の馬を足止めすべく銃弾に魔力を付与する事で貫通力を増大させた。 岬は凪と佐里が危険と判断し、2人を庇えるように位置を取る。 凪は無限機関によって戦う為の力を生みだしながら気を練った掌底を放ち、力が尽きれば拳に炎を纏わせ打撃を繰り出した。 佐里も自身の処理能力を総動員して敵の動きを予測し、敵の急所を、隙を付くようにしての攻撃に全ての力を注ぎ込む。 そして、竜一の放った斬撃がE・フォースの体を引き裂いた。 「そんな騎士の格好をしても、心は騎士にはなれていないようだな!」 騎士の身が揺らぎ、まるで幻か何かのように……形を失い、薄まってゆく。 九十九が押さえる馬が残ってはいたものの、集中攻撃によって決着はすぐ訪れた。 ひとつの戦いが幕を閉じる。 直後。 「デュラ子さんが大丈夫そうなら一合でいいから勝負したいなー」 ハルバード使いに悪い奴はいないけど、すべてのハルバード使いはライバルだよー 岬がそう言って、視線をアザーバイドの少女へと向けた。 エルヴィンが慌てて通訳すれば、少女は少しだけ驚いた顔をしたものの……すぐに納得した様子で頷き、エルヴィンに肯定の意思を伝える。 「それじゃあ、我流・ボクとアンタレス、一手馳走仕るぜー!」 岬に応じるように、ハルバードが構えられて。 両者は渾身の一撃を、目の前の相手に繰り出した。 ●それぞれの帰還 「ご、御免なさいまし! と、突然だったのでつい……」 竜一をぐもっとさせた少女は、顔を真っ赤にしたまま慌てて謝罪した。 頭を落としそうになったりしてる辺り、相当に動揺したのだろう。 無論、それで怒ったり不機嫌になったりする竜一ではない。 寧ろその状態で可愛い発言をして、別の意味で動揺させる……そういう誇りを持った青年ではなかろうか? 「お疲れ様、今回は災難だったね」 皆の言葉を通訳しつつ、エルヴィンはデュラハンの少女へと話しかけた。 「でも、この世界はこんなのばかりじゃないからさ」 これに懲りずに、また遊びに来てくれると嬉しい。 「デートならいつでも受け付けてるからさ」 そう言って微笑めば、少女はいっそう顔を赤くして……礼を言いつつ、視線を逸らす。 「お互い無事なら万々歳ですな」 九十九も通訳を頼み、またお会い出来たら嬉しいですなと挨拶した。 「せっかく繋いだ命です。大切にしてください」 それと……良い方が見つかるといいですね? 訳してもらい、お元気でと……佐里は笑顔で彼女を見送る。 彼女のいた世界、ちょっと興味はあるけれど。 (でもたくさんいたら怖いかなぁ) そう思えば、苦笑いが少しだけこみ上げて。 凪も小さく手を振って、初めてあった異邦の人に別れを告げた。 バイバイと、寂しくても別れを告げるのは竜一も同じ。 「本っ当に、驚きましたけど……でも、皆様と逢えて良かったですわ」 そう言って、彼女は少し寂しげに……でも笑顔で別れを告げ、D・ホールへと足を向けた。 彼女が消えたのを確認すると、皆が能力を使いゲートを破壊する。 (私にもいつか、大切な人が出来るかな?) 「……なんちゃって」 苦笑してから佐里が発した、本部へ報告しにいきましょうという言葉に頷いて。 リベリスタたちは、公園を後にした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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