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<相撲の腹>Hakkeyoi in the night!

●路地裏に力士は踊る
「てめえ、デブ!どこを見てんだよ!」
 とある繁華街の裏路地に荒い言葉が響く。
 見るからに柄の悪い男が数人、太めな男を取り囲み怒鳴り散らしていた。
「スイマセン、スイマセン」
 太った男はしきりに謝るが、周りの男たちはバカにしたように鼻で笑う。
「アンタ、見るからにデブいんだからさぁ。気を付けてくれないと困るんだよねぇ」
 元は彼らが横に広がり歩いていたのが原因だが、それを全て棚に上げて男たちは謝り続ける男に言う。
「そうそう、アンタ、力士みたいにでかいんだからさ、オレら一般人には凶器なんよ」
 ギャハハハと下品な笑いが響く。
 力士だ相撲だと笑い合う男たちに、太った男が激昂する。

「太ってるだけで……力士だと……相撲だと……馬鹿にするんじゃねえ!」

 裏路地に閃光が走る。

 ぽぽんぽんぽぽぽんぽん
 と、軽快な和拍子と共に、空より降りてきた光り輝く化粧廻しが太った男の腰に装着される。
 錯覚であろうか、タダでさえ大柄な体格が、黒い闘気を漲らせ、ひと回りもふた回りも巨大に見える。
 ドンッ! と、大柄な男……力士となった男が壁に手をつく。
 揺れる裏路地、手形にめり込んだ壁。
 恐怖に震える男たちに、力士が迫る。

「いいことを教えてやろう」

 しこを踏んで、身構える。見合って見合って……
 頭に燦然と輝く大銀杏。
 両国最高峰の戦士の証。
 息苦しいくらいの闘気が裏路地を満たす。

「相撲は世界最強の格闘技でごわす」

 立会い……今や一人のスモウファイターとなった男は全身に力を蓄え、体を低く低く身構える。
 前に出るために、強く剛く前に出るために。
「八卦良い……」

 発気揚々。

「……残ったっ!」
 地面スレスレから射出された力士は黒い弾丸となり、男達に肉薄する。
 鈍い衝撃音と共に裏路地に血の花が咲いた。

●NOBUと相撲の切っても切れない関係
「日本の国技って知ってるかい?」
 ブリーフィングルームに入ってきたリベリスタの一人を指さし、『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は問う。
 相撲だろ? と、答えるリベリスタに、伸暁は指を鳴らす。
「オールライッ。その通りだ。今回はその相撲と関係がないわけじゃあない」
 ポケットから資料を取り出しリベリスタに開示する。
「今回の相手は力士だ。もちろん本物ではないぜ?」
 伸暁の説明を要約すると、とあるアーティファクトの力により力士が目覚めるらしい。
 ……目覚める?
 そのアーティファクトを装着すると相撲界の暗黒面に飲み込まれて力士になるらしい。
 ……相撲界の暗黒面?
「そのアーティファクトの名前は、為衛門の化粧廻し。雷電と言えば聞こえはいいだろう。今回はそれを回収してもらうことになる」
 わあ、伝説級の人が出てきましたよ。
「装着者の名前は厚木 雄一。飲食店勤務。何故かそのマワシに見込まれてしまった可哀想な奴だ」
 それはそれはお気の毒に。
「このままではチンピラ達が血の華を咲かせることになるが、対処はお前らに任せる。出来ればハッピーな方で」
 生かして来いということですね。
「頑張ってくれ。お前達のブレイブあふれる取り組みを見せてくれよ」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:築島子子  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年06月18日(土)22:37
 こんにちは、築島子子です。

 最初に申し上げさせていただきますが、これは<相撲の腹>(SUMOU NO HARA)です。
 大規模イベント<相模の蝮>(SAGAMI NO MAMUSHI)とは全く無関係であること
 ましてや、カッツェSTの『<相模の蝮>Dancing in the night!』とは全くカスリもしない事
 タイトルパロディに関してはカッツェSTご本人の許可を頂きましたことをここに記します。

 カッツェSTありがとうございます。

 では、今回のデータです。
 ◆依頼内容
 アーティファクト「雷電為衛門の化粧廻し」の奪取又は破壊。
 チンピラの生存。
 取り付かれた人は戦闘終了後無事に戻ってきます。気絶していますが……

 ◆アーティファクト「雷電為衛門の化粧廻し」
 装着したものは剛力無双のスモウファイターとなり、戦う力を与えます。
 ぽっちゃり系男子の激昂に反応して姿を現します。
 取り憑かれると下記の敵データを付与し、大暴れします。

 ◆NPCパーソナリティ
 厚木 雄一 マワシに見込まれ取り憑かれる可哀想な人。飲食店勤務。別に相撲は好きではない。
 春日山 晴彦 チンピラ1 実は相撲を録画してみる程隠れ相撲好き。仲間にも言っていない。
 新井田 駿 チンピラ2 実は近場の開催場所を毎年必ず一回は生で観に行くくらい隠れ相撲好き。仲間にも言っていない。
 鵬 白俊 チンピラ3 実は近所のご老人と相撲談義をするのが日課なくらい隠れ相撲好き。仲間にも言っていない。

 ◆開始時の状況
 リベリスタが介入しなければ、力士とチンピラが接敵した状態で始まります。
 リベリスタの介入によりその前提が覆される可能性は大いにあります。

 ◆敵のデータ
 R-フェイク フェーズ2相応の強さ マワシにより再現された雷電為衛門
 タフで、力も強く、身のこなしもしなやかな、理想的なスモウファイターです。
 EX 立会いエクスプロージョン 戦闘開始時に使用。頭からぶつかっていき、爆発的なダメージを与える。
 EX 発気揚々 P HP自動回復 回復量小
 ぶちかまし:オーララッシュ
 上手投げ:メガクラッシュ
 

 なお、相談期間は短めですのでご注意ください。
 では、皆様、良い取り組みを!
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
アッサムード・アールグ(BNE000580)
ホーリーメイガス
伏見・H・カシス(BNE001678)
マグメイガス
イーゼリット・イシュター(BNE001996)
ソードミラージュ
山田・珍粘(BNE002078)
デュランダル
小崎・岬(BNE002119)
デュランダル
一番合戦 姫乃(BNE002163)
★MVP
クロスイージス
神音・武雷(BNE002221)
ソードミラージュ
リセリア・フォルン(BNE002511)

●あっちむいてどすこい
 とある地方都市の繁華街。
 一本入った裏路地には店舗の通用口やらなにやらあるものである。
 時間は既に夜更け。午前を回ってしまったところであリ、良い子はもうすでに夢の国の住人である。
 その裏路地の入口に看板が立てかけてあり、張り紙が一枚貼ってあった。
「この先工事中立ち入り禁止」
 赤いポールが立ててあるわけでもなく、可愛らしい丸文字での張り紙である。
『サムライガール』一番合戦 姫乃(BNE002163)の作戦である。
 魔法の化粧廻しによって奮起したポッチャリ系により、轢死するはずのチンピラ達をこれで救えると良いなぁ。
 そんな感じで準備した看板である。
 轢死予定の三人のチンピラ達であるが、その看板の張り紙を若干目を凝らして読み上げる。
 夜なので見づらいのだ。決してお頭の出来く良くないからではないはずである。多分。
 今回の登場人物である三人のチンピラ。
 名前を春日山 晴彦、新井田 駿、鵬 白俊という。ご近所様にも札付きのワルと言われるワルモノである。
 そしてご近所様のご老人に好意的に受け止められている、生粋の相撲好きなのである。
 当人同士はそれを知る由もない。秘密なのだ。俺とじっちゃんの。男と男の固い約束の下秘められた真実である。
 そのようなチンピラであるが、この救いの看板に対してどのようなリアクションをするかというと……?
「工事ったって大したもんじゃないだろ、いこうぜ」
 ガン無視である。彼らにとって近道のが重要なのだ。ちょっと怪しいし。

●そっちむいてどすこい
 厚木 雄一は飲食店に働くごく一般のぽっちゃりマンである。ヒーローではない。
 バイトで入った飲食店、楽しく働いている時に、正社員で本格的に働かないかい?と言われ、大学を中退し、籍を置く。
 主任を任され、馴染みの客も増え、今では良い感じで仕事をする毎日である。
 このポッチャリはこの仕事の名誉のポッチャリだ。そう思って毎日を生きている。
 そんな雄一に事件が起きたのはゴミ出しで裏口を開けたその時である。
「ひぎゃぁ!!」
 衝撃と同時に悲鳴が上がる。ちょっと女の子らしからぬ悲鳴である上にこれまた盛大にのたうちまわっている。
「痛いでござるです! 骨が折れたでござる! 複雑骨折でござるです! 救急車ぁ!」
 これは上記の工作をした姫乃の悲鳴である。
 君の語尾の方が複雑骨折しているよ。と思いながら、雄一は大丈夫かい?と声をかける、ぽっちゃりマンは紳士なのだ。
 だがその紳士に対して冷たい視線を投げかける四人の女の子。だれもが見目麗しくございます。
「え、えっと、君たち?」
「……サイテー」
 二人の銀髪の少女のうちポニーテールの方『蒼銀の剣』リセリア・フォルン(BNE002511)が冷たく言い放つ。
 雄一の繊細なハートは冷たい言葉に凍りつく。ひ、酷い。
「大丈夫、姫乃さん?」
「傷は浅いですよ。今なら医療費三割引です」
 もう一人の銀髪、『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)と『残念な』山田・珍粘(BNE002078)……あ、那由他・エカテリーナでしたね。ごめんなさい。は、姫乃を気遣い立ち上がらさせていた。
「だめだよー。貴方はこっちに面を貸してくれないかなー?」
 雄一の肩を叩き『キーボードクラッシャー』小崎・岬(BNE002119)はニコリを笑っていう。小悪魔なスマイル。
 俺ってどうなっちゃうの? 雄一は引きずられるままに路地裏に更に引っ張り込まれた。
 両手両足に華である。羨ましい事この上なし。

●行きますかはっけよい
 男は静かに集中する。
 心、波なき湖面の如き。明鏡止水の極み。
 黒い廻しをしっかりと締めた牛頭の男『星守』神音・武雷(BNE002221)は、静かに対決の時を待つ。

「歴史的な価値もある品だ。破壊せずすめばよいが……」
 言いつつ『通りの翁』アッサムード・アールグ(BNE000580)は剥き出しの土肌に輪を書く。
 直径は十五尺、現在の実寸にして4.55m。見事な土俵である。
「どっちでもいいですよ。人に憑くような物、いろいろ大変ですし……」
 その土俵の準備を手伝う『双面転廻魔王角』伏見・H・カシス(BNE001678)は塩を準備し、力水を置く。
 準備はアッサムードの指示により行われる。
 顔は仮面で分からないが、アッサムードの名前はどう聞いても中東系なのだ。
 なのに、どうしてこんなに相撲に詳しいのかしら?と、カシスは首を捻る。
 格好なんてブーメランパンツだし……
「それに関しては色々思う所もあるだろうが……我々が決めることではないかもしれないな」
 アッサムードは顎に手を当てて言う、その視線の先には集中を続ける武雷がいた。
「帰ってきましたよ。ターゲットも一緒です」
 五人の少女がぽっちゃりマンを連れてやってきた。
 その顔がなんだか死刑台に上がるみたいな表情になっていた。お可哀想に。

「うー、痛いでござるー」
 裏路地にわざとらしく呻く姫乃の声が響く度に、雄一は落ち着きなさげにびくりと肩を震わす。
 連れられてきたはいいけれど、視界の端に見えるのは何だろう……土俵?
 パンッと音が響く、見ると那由他が手を宙に翳している。
「何、ただの人払いですよ」
 涼やかに笑う那由他。その名前、本名だったらよかったのにね。
「さ、はじめよっかー」
 周囲を厳かに見渡し、岬の爽やかな死刑宣告が響いた。
 雄一の顔が青ざめる。

●いらっしゃいはっけよい
「晴彦、お前、道違ってんべ。絶対ココじゃないだろ。人少なすぎだし」
「駿、お前、バッカ、俺が間違えるわけないだろ。白俊も何か言ってやれよ」
「俺は、これから食うラーメンのこと以外を考えるつもりはない」
 この頭の悪い会話はチンピラ三人のセリフである。
 彼らが結界の範囲内の入ってから結界を貼られてしまったのだ。不慮の事故である。
 そんな裏路地を仲良く歩く彼らの両国魂(スピリッツ)を揺さぶるような言葉が不意に耳に飛び込んできた。
 重ねて言う、彼らがここにいることも、このような言葉が飛び交う現場に居合わせたのも、不慮の事故である。
 言葉を変えて言うなれば、フェイトの導きなのである。

「きゃはは、でぶーい、あなたすごく邪魔。おすもうさんみたい。スモウが許されるのっておじいちゃんだけだよね」
 イーゼリットがドヤ顔で言ってのける。
 ぽっちゃりマンも、若年の相撲好きも、双方のハートを少々抉る一言である。
「太いですおデブでござる。まるで力士ですね。相撲取ればいいと思うでござるです。この横綱! この少年相撲横綱! この学生相撲横綱! 今の夢も実は両国国技館で一番取ることなんでござるですよね」
 これは姫乃。長文でござる。今まで痛いと転げまわっていたとは思えない滑舌でござるです。
「え、そんなに太ってるのに、お相撲さんじゃないの? 信じられなーい」
 どこまで本気かわからない那由他の言葉。ああ、でも、雄一の顔色が……
「えー相撲ー? 八百長が許されるのはプロレスまでだよねー」
 ダメ押しの岬の言葉が引き金を引いた。大暴発である。

「太ってるだけで……力士だと……相撲だと……馬鹿にするんじゃねえ!! これはただ、ポッチャリしているだけだー!!」
「「「相撲を、相撲を馬鹿にするんじゃねぇ! あれは! あれは全く違うもんなんだよ!! 魂が、篭っているものなんだよ!!」」」

 一人のぽっちゃりマンと三人の相撲好きの叫びが路地裏に響きあった。

 瞬間、路地裏に黄金の光が溢れた。

●いくぜのこった
 ポンポポポンポンポポポンポン
 軽妙な鼓の音が通りに響く。相撲中継に流れているあの音を思い返していただきたい。
 黄金の光を発して、中空に現出する化粧廻しの姿は(見る人によっては)神々しく映る。
 雄一は手を掲げ、化粧廻しを受け入れる。
 腰に装着される化粧廻し。
 瞬間、雄一の体は空中を舞った。
 俗に言う変身バンクである。

 肉と筋肉により構成された鋼の肉体。怪力無双の豪腕。巨躯にありえぬ俊敏性。頭上に掲げられるは日ノ本最高峰戦士の証である大銀杏。
 相撲史上最高のスモウファイター、雷電為衛門。その生き写しが、ここに産まれたのであった。
 しかして、生き写し。フェイクである。R-フェイクと呼称付けた物の、彼の事をRAIDENと称するとしよう。

「相撲を侮辱したものは、お主らでごわすか?」
 チンピラ三人に詰め寄るRAIDEN。歩くたびに地響きがするものと思って戴きたい。
 当の三人はぉぉ、力士だァ……と感無量でまともに聞いていない様子。
「え?いえ、私たちですよ」
 思わず指摘するリセリア。
 振り向くRAIDEN。くわっと目を見開く。
「女を土俵に上げるわけにはいかんでごわす!」
 そういうもの?リベリスタの間に微妙な空気が流れた。
「取り組みを行いたいものと見なして宜しいかな?」
 いつの間か幻視で行司姿のアッサムードが間を取り持つ。
 幻視である。力無きものならばともかく、ある者ならば、見えるのはブーメランパンツなのだ。
「土俵があり取り組み相手がいるならば……」
 RAIDENは不敵に笑う。最強の自負がそこにあった。
「もちろん。居るからこそ声をかけたのだよ、RAIDEN関」
 アッサムードが目配せをする。
 土俵の傍らに立つカシス。そして、土俵の上には、武雷が待つ。
「本日の注目の一番、RAIDEN関vs武雷関。立会いしていただけますかな?」
 相撲を前にして、RAIDENがNOというわけが無かった。

 そして始まる大一番。
 満員御礼。千客万来。
 座布団も飛び交う好取り組み。

 Hakkeyoi in the night!
 力士すら眠らない夜は廻る!

●のこったのこった
 RAIDENの前に立つも、武雷の心は落ち着いていた。
 良い関取だ。強靭かつしなやかで理想的な相撲取りだ。
 生み出したアーティファクトの傍迷惑な性質が悲しかった。
 ダイナミックに撒かれた塩に歓声が上がる。
 チンピラのみならず、リベリスタからも、視線を感じる。
 相撲、よかばい。
 拍手一つ。
 全力で踏む四股は、地面を揺らす。
 目の前は最強の力士。素晴らしか。
 左手を突く。練り上げた気が盾の形に具現化する。
 みっともない相撲を取るわけにはいかんばい。
 見合って見合って……
「発気良い!」
アッサムードの軍配が振るわれる。

「のこった!!」
 二人の力士は全力で衝突した。
 ごしゃっ!!
 生身の人間同士では起こり得ないほどの衝突音が響く。
 飛び出したRAIDENと武雷。二人の闘気がぶつかり合う。
 RAIDENの立会いは剛。
 轟く衝撃が辺りを揺るがせ、風すらも巻き起こした。
 武雷の立会は柔。
 矛のような立会いの衝撃を、巧みに受け流しつつも、押し負けない。
 立会勝負では、RAIDENが上手であった。
 受け流しつつも、浮き上がった、武雷の体。
 懐に入り込まんと進む。
 張り手で応戦する武雷、だがRAIDENは巧みにいなす。
 その勢いで、RAIDENは廻しを取る。
 がっぷり四つ。横綱ならず大関だが堂々たる横綱相撲である。

「わ……すごい…頑張れ! 武雷さん! そこ……違う! 何やってんのよ!!」
 応援するカシスはどんどんヒートアップ。頭のスイッチがカチカチ切り替わること忙しない。
「こ、これが、スモウ。これが、スモウレスラー……なんて、恐ろしい」
 目の前の激闘に震えるようにリセリアは言う。この胸に迫る高揚感はなんだろう?
「わ! のこったのこった! 頑張って武雷さん! やー、負けちゃう!」
 イーゼリットはキャーキャーと大歓声。隣にいるチンピラ3人組と同じようなテンションである。
「はいはい、のこったのこった。頑張ってください。え?なんですか?私だって真面目に応援していますよ」
 そうだよね、なゆなゆに真剣味が薄いのは素だよね!
「ウシさん頑張るでござるです、負けたら座布団投げるでござるですよ!」
 姫乃は大はしゃぎで武雷を応援する。座布団の準備は十分だ。
「雷電……聞いたことがあったような……知っているか、の人はもっとほそかった、しんくのいなずま、でもないよねー」
 目の前の取り組みとは違うところに気を取られている岬。
 違いますよ。

●大金☆
「RAIDEN関に廻しを取られました。武雷関には厳しい展開になってきましたね、駿さん」
「そうですね、晴彦さん。けど、武雷関はなんとか堪えていますからね、これからの展開に期待したいところです」
「おおっと、ここでRAIDEN関が――!」
 3バカである。

「のこったのこった!」
 アッサムードの軍配が翻る。
 土俵の中心で、武雷とRAIDEN。二人が組み合っていた。
 姿勢は依然、廻しを取ったRAIDENが有利。
 武雷は指先だけしっかりと食い込ませて耐えている。
 ふんばりどころばい。負けるにしても恥ずかしくない負けにしたか。
 武雷の額に珠のような汗が流れる。
 瞬間、RAIDENが動いた。
 武雷を引き寄せ、腰にのせ、一気に捻り投げ。
 武雷は廻しを掴み、投げられて堪るかと耐える。
 意地と力、技量と根性、決着の時は近づく。

「あー! だめ! RAIDEN、空気読んで馬鹿ー!」
 身を乗り出して応援するカシス。すごい格好になってますよ、お姉さん。
「……凄い、力と技量がせめぎ合っているわ。これが、真剣勝負……頑張って、武雷さん!」
 いつの間にやらリセリアも立ち上がって応援を始める。
「あー! ちょ、ちょっとタイム、タイムとかないの!?」
 すっかり出来上がったイーゼリットは座布団を手に立ち上がる。
「もうすぐのようですね。スタンバイしましょう」
 ナイフを手に立ち上がる。クールだね、なゆなゆ。
「座布団タイムでござるですか?ござるですか?」
 姫乃は座布団投げたい気持ちでいっぱいなご様子。
「さすがに両肩からレーザーを出したりはしないだろうし……あ、思い出した、パワーウェーブが飛び越せない人だねー!」
 岬さん、それも違います。
「あれー?」

「ぬぅぅんっ!!」
 RAIDEN渾身の投げにより、武雷の体が浮かび上がる。
 ぶぅんっ!
 腕を振り切る豪快な投げ。
 浮遊感に逆らうために強く握りしめる。
 それは……

 布面積の大きい化粧廻しをつけたまま相撲を取る力士はいない。
 このRAIDEN、化粧廻しのアーティファクトにより再現された存在。
 化粧廻し無しでは存在できない。
 今回RAIDENの使用した技は、ダイナミックかつ豪快な投げである。
 そして、武雷の掴んだ物は……それは。

「……不浄負けってことで」
 手にしっかりと握り締めた化粧廻しを見て、武雷は苦笑した。

●終幕
 観客(リベリスタ)の投げる座布団に埋もれた雄一に向かって三人の馬鹿が近づく。
 すっかり相撲好きとして意気投合した三人は憑き物が落ちたような顔をしていた。
 三人は雄一を掘り出すと、称えるように言葉を掛けた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
地響きがするような書き出しを書きたかったのですが、さすがに躊躇した築島です。
これは、ギャグ……なのでしょうか?
相撲の腹自身がそういう雰囲気でしたが

あと、アーティファクトの化粧廻しは無事にアークに保管されました。

皆様に満足していただけたら幸いです。


これは、一人のぽっちゃりマンが三人の友人を得る。
それだけの話である。
だから――怒らないでいただきたい。