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森の中の幻覚


 霧に包まれた森の深くに、一軒の小屋がある。
 アーティファクトは、その小屋の中に鎮座している。
 見た目はただの、大きな箱だ。精巧な模様の彫り込まれた、宝石箱のような作りのその箱は、しかし、子供の身体くらいはすっぽりと収まってしまいそうなくらいに、大きい。
 その大きな箱の中から、もこもこと白い霧が溢れだしている。
 とめどなく、溢れ出し、森の中に漂っている。
 幻覚を見せる白い霧。
 一体誰が何のためにそんなアーティファクトをそこに置いたのか、いつから霧が出現したのか、誰も知らない。
 けれどその霧が、世の中に混乱を招く未来だけは容易に予知できた。



「今回は、アーティファクトの破壊をお願いしたい」
 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)がリベリスタの皆に向け、言った。
「物は箱、大きな箱だ」
 伸暁は、資料画像のプリントされた紙をテーブルの上に滑らせ、皆に行き届いたのを確認してから、話を続けた。
「宝石箱のように、精巧な模様が彫り込まれた高価そうな箱なんだが、子供の身体くらいはすっぽりと収まってしまいそうなくらいの大きさがあってね。実はこの箱の中から、幻覚を見せる霧というのが溢れ出してしまってるのさ。そして今回、君達に赴いて貰う森の中全体に、それが漂ってしまっている。
 幻覚を見せる霧が漂ってる森なんて危険だ。早急に箱を見つけだし、破壊して欲しい。これが今回の依頼の内容だ。
 箱は、森の最奥の小屋の中にある。見つけ出しさえすれば、君達の力で簡単に破壊出来るだろう。ただし、見つけるのは容易ではないと思う。道が複雑だからじゃない。霧があるからだ。しかも、ただの霧じゃなくてさ、さっきも言った通り、幻覚を見せる霧なんだ。
 具体的には、霧の中に何らかの幻覚が見えてしまう、という事なんだが、見る幻覚は、個人によって違う。君達が各々作り出す幻覚だ。それが一体どういうものかは、君達自身の中にしかない。それから、その時身体が触れ合っている者同士は、つまり、手を握っているだとか、そういう相手とは、同じ幻覚を見てしまう傾向にあるようだ」
 それでだ。と伸暁は椅子を揺らしながら、話を続ける。
「依頼の詳細についてなんだが。まず、場所について。
 場所はさっきも言った通り、森の中だ。霧に覆われていて、視界が悪い。道自体は、小屋に向かい、ほぼ一直線に伸びている。幻覚さえ現れなければ至極単純な道のりって事だな。
 敵も出現する。
 フェーズ1のE・エレメントが16匹だ。もちろん全て討伐してくれ。霧に覆われた森の中を、オレンジ色や白色の淡い光を放ちながら飛び交っている。攻撃行動は体当たりだけとシンプルだし、フェーズも1だからさほど怖くはないかも知れないが、いかんせん数が多いし、幻覚を見ながらの戦いとなるかも知れないから、気は抜かないで対処してくれ。
 と、まあ、今回はそんな感じだ。幻覚に惑わされず、無事アーティファクトを破壊してくれると信じてるよ」
 伸暁は、真意の見えない薄っすらとした笑みを浮かべながら、リベリスタ達をじっと見つめた。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:しもだ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年11月20日(火)23:34
そんなわけで。
お目に止めて頂きありがとうございます。
今回も、毎度の如く皆様のプレイング次第な感じの、いろいろと緩いシナリオをお届けしてしまいますこんにちは。
「幻覚」については、細かい事は考えず、いろいろとお気に召すままにやっちゃって頂ければと思います。
皆様のご参加、心よりお待ち申し上げております。


参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
クロスイージス
白石 明奈(BNE000717)
デュランダル
日野宮 ななせ(BNE001084)
デュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
覇界闘士
衛守 凪沙(BNE001545)
プロアデプト
酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)
クロスイージス
高藤 奈々子(BNE003304)
レイザータクト
文珠四郎 寿々貴(BNE003936)

●始まりは既にカオス。
 それはものすごい笑顔だった。
 でも良く見るとちゃんと目とか笑っていなかった。笑っていなかったけど、声がもう笑っていた。気持ち悪いくらいアメリカンに笑っていた。
 あと、踊っていた。
 なんかもうものすごい笑顔で踊っていた。手とか振って、踊っていた。
 しかも、戦っている。どういうわけか必死に戦っている。
 あと、料理してる。それで食べて嘔吐してる。
 で、なんか倒れてる。きょろきょろして、べたべたして、唱えてる。
 なんか、お経を。
 そう、お経をものすごい唱えてる。なんかもうものすごい唱えてる。何だったら最早、森中がお経だ。いや、森中がお経ってどういうことだ。全然分からない。てか、分からない。なんだこれ。この状況は一体なんだ。一体どうしたというのだ仲間達は。
 てかどういうことだこの事態は。
 今この目に映ってるこれこそが、全て幻覚であってくれたらいいと思うのだけど、それが果たして現実なのか幻覚なのかすら判断がつかない。
 混同し、混乱し、どっちが現実なのか幻覚なのか、どこまでが幻覚なのか現実なのか。
「……えぇっと。私ちょっと頭痛がするので早退して良いですか」


●とかいうちょっと前のこと。
 森の入口に、8人のべりスタ達は立っていた。
 幻覚の見える霧を止めるため、あるいはアーティファクトを壊すため、これから森の中へ入っていこうとしていたのである。
「では幻覚による混乱と不具合を緩和する為、ペアを作って触れ合ったまま探索するってことでいいですよね」
 『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)が皆を見回しながら言う。
「幻覚を生みだすアーティファクト、か」
 そこで『折れぬ剣《デュランダル》』楠神 風斗(BNE001434) が、わりとキリっとした好青年の顔で、唐突に真面目な事を言った。すごい遠い目をして、言った。
「誰かが置いたのか、元々あったものが動き始めたのかしらんが、迷惑なものだ。まあ、それほど危険でもなさそうだがな」
 そしてまだまだ、どこからどーみても誰からも好感をもたれそーな、ストイックで感じの良い青年の顔で森の奥を見つめる。遠い目で。
「と、真面目な顔で語る彼の名を、人は何故か、楠神【よりどりみどりらっきーすけ……」
「わーまてまてまて、いいいい、一体、一体何を言いだすんだいきなり」
 と、さっそく剥がされた。何を。メッキを。誰に。物凄い普通の顔して話出したうさぎに。
「あ、【ハーレム☆ミ】(←最後んところでちょっと可愛く小首とか傾げる)ヴァージョンが良かったですか」
「いえすいません。決してヴァージョンとかの問題じゃなくてですね」
「あーでも毅然とした好青年風の顔がちょっと腹立ったんで、ちょっとお茶目に言ってみました」
「うんみましたじゃない」
「でも意外と風評より真面目そーな人だよね」
 そしたら『息抜きの合間に人生を』文珠四郎 寿々貴(BNE003936)がものすごいゆるーい感じで、「楠神【よりどりみどりらっきーすけべ】風斗だっけー。記載時には、楠神 【ハーレム☆ミ】 風斗だったかな」とかすっかりもう全部言ってしまった。せっかくとめたのに。
「オレの名は楠神風斗だ。他の呼称は存在しない」
「そうそう楠神さんは風評被害に負けない負けない~!」
 と、そこで『ミサイルガール』白石 明奈(BNE000717)が、若干引っ張りすぎだった気もしないでもない風斗の名前のくだりをスパッと纏めた。
「ってことで、ペアはどうする。あ、そうだ。くじ引きで決めようぜ。くじびきくじびき~」
「その前に、希望者があれば、組んで頂いてもいいでしょうね」
 うさぎがまた皆を見回す。
「はーい」
 そこで寿々貴がアンニュイーな声と共に手を挙げた。「すずきさんひ弱なんで、頑丈な前衛さんと組みたいな。回復するよ」
「確かに御婦人を一人で放って置く訳には行かない」
 その声に『生還者』酒呑 雷慈慟(BNE002371)がひっそりと足を前へと踏み出す。「自分で宜しければ寿々貴御婦人の守りに付かせて貰うが」
「おー頼もしいおにーさんと一緒なので、寿々貴さん落ち着いて支援できそうだー」
 って本気で思ってんのか思ってないのか全く真意の見えないへらへらした調子はいつものとである。デフォルトである。「それにしても、もりのおくにあるそのこやにはふしぎなはこがありました。……なんて言うととってもメルヒェン」
「よし! じゃあ残りはくじだな! 誰と当たっても恨みっこ無っしよー♪ ってことでほい。ここは公平にあみだくじってことでどうよ。はいこれ紙とペンな! さーみんなー選んで選んでー」
 明奈が紙をひらひらやりながら、声を張り上げる。
「わー。くじ引きでペアになりながら小屋を目指すなんて、ちょっと肝試しっぽいですね!」
 『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(BNE001084)が、アホ毛をぴよぴよ動かしながら配られた紙に印を書き込む。「はい、出来ましたー」
「でもほんと幻覚見せる霧出す箱とか、そんなん誰が作ったんだろうね。幻覚を見せられた人間のリアクションでも楽しんでるのかな。すごく迷惑な話だよ。あー無事に出られるかなぁ……」
 同じく紙にまた印を書き込みながら、『食堂の看板娘』衛守 凪沙(BNE001545) が言う。
「宝石箱の様と言うがその実、混沌渦巻く悪意の箱か希望の収まるパンドラか。なんにせよフェイトを共有して居ないアーティファクトなど無為な覚醒を促し崩界への足掛かりと成り得る物質。その粉砕に勤めよう」
 自分、不器用ですから。
 って凄い似合いそうな雰囲気で雷慈慟がそんな事を言っている間にも、風斗は受け取ったあみだくじの紙に印を書き込みながら、考えている。
(一体誰と組むことになるか。まあ、誰が来ようともオレは構わないが……)
(…………)
(……え。あれこれまさか……まさかっこ、これはっ……!)
 うっかり気付いてしまった事実に目を見張る風斗。紙を握りしめる手が、軽く震える。
(酒呑さん以外、あとはうさぎ除いて全員女じゃないか……!)
 だいぶ今更。
 何だったらむしろ、天然通り越して悪意すら感じてくるレベルです。が、残念なことに天然です。
(それでも……それでもオレは手を繋がねばならん……! 何故ならこれは仕事だからだ! ……よしせめて手袋でもして、不快がらせないようにしよう)
 でも彼は要するに、やる気のようです。手袋してまで手を繋ごうとしています。手を繋ぐ気満開です。
(これは仕事だ。しょうがないから手を繋ぐんだ。ただ、仕事で手をつなぐだけだ。ただ仕事で女子と手を……)
 って顔を挙げた瞬間、そこには『似非侠客』高藤 奈々子(BNE003304)が。
(…………)
 あ。
 いやうん別に全然いいんですけども。物凄い顔が狼なんですね。
「じゃあ私はここでいいわよ」
「あ、はい。っていうか、それは一体、何を」
「ライトに青セロハン貼っつけてるのよ。霧の中でも自分の居場所をしっかりアピール。青白く周囲が光るのは不気味かしら」
 うふふ。と口を手にあて微笑む奈々子。
「あ、そうですか」
 でもいやほんと別に全然いいんですけど。
 顔が物凄い狼なんですね。



●森の中
「いよいよ霧が深くなってきたか……各々細心の注意を払われたし」
 雷慈慟が、仲間達に向かいAF通信を開始する。
 入口から数メートル進むと、そこはもう深い霧の中にあった。
 手を繋ぐ寿々貴の姿すら白い闇の中にかすみ、はっきりとは見えない。
「御婦人、自分の手を決して離しては駄目だ」
 そして返事を確認するため振り返る雷慈慟。
(何?!)
 自分の見たものが信じられず彼は思わず目を見開く。
(淡い光の中に、失ったはずの仲間達の姿が。あの時の組織の仲間達の姿が)
 懐かしさよりも込み上げてくる怪訝さに、茫然と佇む彼目掛け仲間達が駆けよってくる。
(本当にお前たちなのか。ああ、懐かしい。生きていたのか?)
 けれど、仲間は茫然と佇む彼目掛け、突進する。弾丸にも似た淡い光が飛ぶ。いや、最早敵の姿なのか弾丸なのか。これはあの時あの戦場で振った、弾丸の雨。これは、あの時のカタストロフの砲撃。
(どうして味方を襲うのだ! コレではあの時と同じではないか! 味方の半数以上が混乱し自滅して行ったあの時と!)
「此方への砲撃は直ちに中止しろ! 我々は敵ではないんだぞ!」
 雷慈慟は叫ぶ。声の限り、咆哮のような声を上げる。
 攻撃は止まない。必死に身を交わし、ARM-バインダーで攻撃を遮る。
(どうして味方を襲うのだ! 此方への砲撃は直ちに中止しろ! あの時、我々は大敗を喫し多くの仲間は……友は!)
 次々に甦る記憶。友の姿。仲間の声。
 そして。
(……そうだ。これは、喪ったものたちの姿。喪ったものたちの記憶……)
(自分はこれを喪っている。全て、喪ったのだ……!)
 彼はシールドを振り抜き、外道の書を掲げる。
「忘れなどしない……忘れるわけがない」
 J・エクスプロージョンを発動する。
「あの時の無念……想い……血を吐くような悲劇の重み」
 彼の身体から思考の奔流が溢れだす。
「そしてだからこそ成し遂げるべき事柄は今もこの胸にある!」
(そう、全ては自分の成すべき事のままに!)
 周囲に渦巻き霧と共に彼を撹乱していたE・エレメント達が、その攻撃により次々と花火のように破裂した。

 とかいうその頃、寿々貴は手を離した先で動く雷慈慟の姿を懸命に追っていた。
 なんか物凄い戦っている。でもまあ無事そうなので、一応見守っている。ディフェンサードクトリンもオフェンサードクトリンもやっておいたし、みんな強いしきっと大丈夫だろー。とか、そんな感じで。
(でも例えばこれは一見普通の森だけど、騙し絵みたいに方向や距離の感覚を狂わせたりするのかも知れない。あ、じゃあきっと仲間の声が色んな方向から聞こえたりするんだ。でもまぁそんな惑わす声はきっと偽物に決まってるだろうね。うん。仲間の姿を見たらきっと偽物だ。特に、意味不明な事してる仲間はきっと偽物……)


 ――紙芝居風「うさぎとななこ」
 むかしむかしあるところに、奈々子というおおかみがいました。奈々子は女子ながら、仁義を重んじ、任侠道に生きるおおかみでした。
 そしてうさぎがいました。うさぎは、うさぎという名前ながら狸でした。あと、わりと何時もキョトンとした様な無表情でさらっとマイルドに的確な指摘などをしたりする狸でした。
 そして今、うさぎの目には、クレヨン画の世界が広がっています。めっちゃ3歳児が描いたみたいなクレヨン画です。でもちょっと頑張れば前衛的と解釈出来そうな気もするクレヨン画です。鼻とかすんごい尖がっています。あと目の位置が左右全然対象じゃないです。ずれまくりです。でも、笑っています。めっちゃ笑っています。
『HAHAHAHA』
(……ウワー笑ってるよ……)
 そこへ明らかにクレヨン画じゃないE・エレメントが飛んできました。
(分かりやす過ぎですね。おっと)
 戦闘が始まればうさぎは、ペアと触れ続ける事に固執しません。メルティーキスで次々に、E・エレメントを成敗していきます。
 そしてハッと気付くと、奈々子が笑っていたのでした。
 クレヨン画と共に。仲睦まじく。
『HAHAHAHA』
 って一体どう見えているのかは謎ですが、とにかくめっちゃ楽しそうです。手とか繋いでます。と思ったら、スキップとかし出しました。これはもしかしたら、森の中で戯れる動物たちとかに見えているのかもしれません。というか、実際奈々子にはそのように見えているのです。森の愉快な動物達と温泉に行く幻を見ています。
「わー温泉なのに冷たいわねー」
 そりゃそうです。それはただの水溜りです。めっちゃ水溜りです。けれど彼女を責めてあげてはいけません。彼女の目には森の癒しの温泉に見えているのです。
「わー美味しそうなお料理ね」
 いえ、泥です。
『HAHAHAHA』


「わーみんなー歓声ありがとなー!」
 その頃明奈は手を振っている。
 舞台の下々に居るファンの皆に向けて。
「皆、集まってくれて本当にありがとう……ワタシ、こんな夢みたいな舞台に立てるなんて思ってなかった!」
 それじゃあ歌います! 聞いて下さい「みさいる☆がーる」
 最早彼女の中では「バールのようなもの」はステージマイクだ。飛んでくるE・エレメントはファンの投げる蛍光テープだ。掴んで投げて、振り付けの合間にバールで撃ち返し。
 振り返りざま、コケティッシュな笑顔でキメ☆
「わーわーわー」「あっきなちゃーん」
「浅黒い肌がたまんなーい」
「黒ストキュートー!」
「もっと黒スト全面に押し出してー」
「もっと黒ストー俄然黒ストー」
「皆ありがとー! じゃあアイドル明奈ちゃんの突撃ファンサービスいっちゃうぞー!」
 マイクでライト(E・エレメント)をべちーん! べっちーん!べっちーん!
 という彼女とコンビを組んでたのはななせなのだけれど、もちろん明奈ちゃんはステージで忙しいのでずっと手は握っていられない。
 なのでななせはムーディな小路を憧れのあの人と並んで歩いている。
「わたし。こんな風に一緒に貴方と歩けるなんて思ってなかったです」
(注:相手、木です)
「え? 手ですか……はい、いいですよ」
 憧れのあの人の申し出に、上目遣いで頷くななせ。
(注:相手、木です)
「えっ。こ、今度は腕ですか……! はい……頑張りますっ」
 そして彼の手にそっと腕を絡ませるななせ。
(注:相手、木です)
「ええ! だ、抱きしめたい?! こ、ここでですか。そんなぁ……こ、困りますよ……」
 そしてななせは、あの人を見上げそっと目を閉じる。
「だけど貴方が望むなら……いいですよ! ななせ、捧げます!」
 そして彼の硬い体にそっと巻きつける、腕。
(注:ええそりゃ硬いでしょうよ。だって木だもん)

 ――そしてそんな二人はうっかり手を握ってしまったのです。
「わー警備員。何してるのー。アイドル明奈ちゃんが襲われちゃってんじゃないか! ってえー! 日野宮さんなんでー! ワタシのファンだったのかよー!」
(明奈はアイドルになった自分と追いかけてくるファンななせの幻覚を見ている)
「え。あれ。ああ。そうなんですね。私の大好きな貴方はアイドルだったんですね!」
(ななせは大好きな人が実はアイドルで、ステージの上で自分を恋人だと発表してくれた的な幻覚を見ている)
「え、ど、ちょ、ちょっとまっ」


「そりゃやっぱり、ここはチョコレートフォンデュでしょー」
 その頃凪沙はこのように、無難に食べ物の幻覚を見ている。
 隣では風斗が、にへらにへらしてる凪沙の顔を見て震えている。震えている。
 ぶるぶると震え……ふる……ぶる……ぶるぶる……。
「うわああああ!! どああああああああああ!!!」
 そんな彼の目に映るは、扇情的な格好の女性の幻覚のどアップ。
 けれど彼の名誉のために説明しておくと、彼だって一応当初は無害な幻覚になるようぬいぐるみの想像とかしてたんである。なのに繋いでる手の感触を意識した途端。そしてそれが女性のものであると意識した途端、こうなってしまったんつまり少年はフォローしようがなくスケベなんである。
「わーそんなに放り込んだらあふれちゃうよー!」
「そ、そんなー! 恥ずかしいー!」
(ちがうちがうちがうちがうしっかりしろ風斗! オレはそんな人間じゃない! おのれ破廉恥なアーティファクトめ!)
「悪霊退散! 怨霊退散! 煩悩退散!! 南無南無南無南無」


 そして寿々貴は霧の中に響くお経を聞いた。
 なるほどこれが幻覚なんだねと理解した。つまり風斗のように見せかけた幻覚が唱えたお経、と解釈した。
 だから彼女はハイ・グリモアールで突っついてみた。
「!!」
 お経の最中に突然背後から押されつんのめる風斗。彼は凪沙に寄りかかり、寄り掛かられた凪沙がちょっと飛んでそこに居たななせの手を掴み、ななせは明奈に抱きつき、抱きつかれた明奈がわたたと後退し雷慈慟にぶつかり手を握り、バランスを崩した雷慈慟が奈々子の手を掴み、そして奈々子もやっぱりうさぎの手を掴んだ。
「あたた。なんなんですか一体……」
 顔を挙げたうさぎが見たものは。

 目が合った。
 それはものすごい笑顔だった。でも良く見るとちゃんと目とか笑っていなかった。笑っていなかったけど、声がもう笑っ……。
 ……。
 …………。
 ………………。
 エ。テカナニコノジタイ。
「……えぇっと。私ちょっと頭痛がするので早退して良いですか」

 でも小屋はもうすぐ目の前なんだった。



●アーティファクト破壊
雷慈慟「やっとたどり着いたな。この箱に……」
風斗「おのれ破廉恥なアーティファクトめ! 絶対に破壊してやるからな!」
凪沙「え? 破廉恥って?」
明奈「でもこれなんでもいいけど、宝石箱っていうか衣装箱だよなサイズ的に」
奈々子「とにかく壊す」
ななせ「みんなで一斉に攻撃して壊すのはどうですか!」
うさぎ「いいですね! 迷惑千番にも程がある! さあ一刻も早く破壊しますよ!」
寿々貴「わーこの模様気になるー写真とっとこー」
明奈「よーし! バールは物をぶっ壊す時が一番輝く! と思う! いくぞー!」

 ばっこーん。

 こうしてE・エレメントと傍迷惑なアーティファクトはリベリスタ達によってきっちり始末され、森は平和を取り戻したのでした。



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
そういうわけで。
結果は成功でございます。皆様ご苦労様でございました。

当シナリオにご参加頂いた皆様には、誠に感謝です。
また機会がありましたら、ご参加お待ちしております。