● 「全く、とんだ出来損ないですことね」 少女は、ふわりと浮いて優雅に近くの段差へと飛び乗った。出来るだけ高い所から、虫を見つめるような蔑んだ目で彼女を見るためである。 彼女は、ケホッと一度だけ咳をして、喉につかえた違和感を吐き出した。そして卑しい物を見るような目線で、彼女を見上げた。 少女は得意げになる。彼女は悔しそうに唇を噛む。 「魔法少女ラディカルリリカ……『彼』が付けたんでしたっけ? 苦笑を催すネーミングセンスには辟易しますわね」 「……それについては同感ね」 リリカは深く溜め息を一つ吐いて、しっかりと相手を見据える。 「何にせよ、そんな名前は取り下げて、普通普遍の一般人として生きることをお勧めしますわ。何ならアークに行ってはどう? あそこならきっとよくしてくれるでしょう」 「私は、私の目的を果たさないわけにはいか、ない!」 瞬間、足に力を込めて一気に少女との距離を詰める。少女は懐からロッドを取り出すも、構えるより先にリリカのステッキに弾かれた。リリカはすかさず構え、ステッキの先に力を充填させる。放った光弾は見事少女の胸で弾け、少女はやや大きく飛ばされていったが、傷は僅かにその胸に残った焦げ跡しか見受けられなかった。 「魔法少女で居続けたいわけじゃない。でも、魔法少女でなくなりたい。それはあなたも一緒でしょ、カレン」 「下賎なやり方で仲間を集めようとした貴女の言えることかしら?」 カレンの周囲の四つの色の異なる魔方陣が展開される。それらは淡く光り輝き、中心から光線が溢れ出している。それはゆっくりと伸びると、カレンの眼前で絡み合って強い光を放ち始める。 「一人で戦えないなら、貴女はもう戦うのを止めた方がいいんじゃなくて?」 組み上げられた魔力がリリカへと急進する。鋭くリリカに向かうそれはしかし、リリカの手前で急激に屈折して壁に当たり、轟音を立てながら弾けた。光が止んだ後には、リリカの息を乱す音が聞こえた。 「あなたを倒して証明してみせる」 カレンは小さく笑うと、ロッドを振り上げる。すると彼女の周囲に2、3の人魂のようなものが現れた。それらの発生を感じると同時、カレンは軽いステップで走り出した。 「貴女に出来るかしら、ね」 ● 「哀しい魔法少女のお話をしましょう」 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はゆっくりと語りだす。だが聞いている人には、画面に映るどちらの魔法少女のことかは分からない。 「魔法少女ラディカルリリカの持つステッキには一般の人間を催眠状態にする効果がありました。それを魔法少女として相応しくないと思った彼女は、そのステッキの能力を何とかしようと考えました。理由は分かりませんがステッキを壊すことが出来なかった彼女はそれを改造し、一般人に効果のないステッキを作り出して、正義を守る魔法少女としての正しいあり方を模索しました。その結果。 彼女の仲間の少女を催眠状態にするステッキを作り出してしまったのです」 どうしてそうなった。 「分かりません」 和泉は、リベリスタが知りうる限りの最高の笑顔で、そう言った。 「実際問題何がどうしてそうなったかは大した問題ではなくてですね、現実としてこれが起きる所に問題があるのです」 けれども、一人のリベリスタの頭にふと疑念が過る。これはあくまで、一個人が実験に失敗して起きた不慮の事故で、それを収めるべきは当然それを為した本人にあるはずだ。ならばリベリスタが駆り出される理由とは、一体何だ。 「催眠状態にする、というのは確かなのですが、より正確に言えばステッキを持つものの好敵手を生み出します。そしてその際、然るべき装備や能力が対象には付加されるみたいです。そうして生まれた装備が少し問題でして……」 そう言って和泉はリベリスタたちの視線を映像へと向けさせる。催眠状態にある少女が手にしたロッドを振ると、彼女の周囲に人魂のようなものがポツポツと現れ、攻撃を開始した。その様子を見、リベリスタはその正体を即座に理解する。 「あのロッドには装備者の力を高めると共に、エリューションを生成する能力があります。彼女自身が危害を加える相手は限られているので、他所に大きな被害が出るということはまずないとは思いますが、エリューションを生み出してしまう点はやはり問題でしょう。この問題だけは何とか片付けてきてください。 彼女を倒すか何かしてロッドを取り上げ、破壊してください。生み出されたエリューションもなるべく倒すようお願いします。 またステッキ自体を壊しても彼女の催眠が解けたりロッドが壊れたりすることはないみたいですので、少し注意してください。 では、よろしくお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:天夜 薄 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月21日(水)23:28 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● それは、一つの事件だった。 現れたのは魔法の悪夢。残ったものは壊れた平穏。 魔法は神秘をばら撒き傀儡を仕立てる。 傀儡は踊り神秘を生み出す。 重なる想いは悲劇をもたらす。 魔法少女リベリス☆ナギサ……。 「なんか、始めるものか!」 セルフノリツッコミの勢いそのままに『食堂の看板娘』衛守 凪沙(BNE001545)は戦場へ急ぐ。 「魔法少女に好敵手、ですか」 テレビでよくある光景だ、と『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)は思う。ありがちで、しかし王道故に素敵な関係も、強要してしまうのは何とも美しくない。それに物語として考えれば、この後に来る展開など大体決まったようなものだ。そうでないと盛り上がりに欠ける。 魔法少女になりたくてなったわけじゃなく、魔法少女でいなくちゃいけない。 『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)の読んだ以前の報告書には、リリカはそう語ったと記されている。ならば、魔法少女を魔法少女にした存在がいるということだ。それとは別に、彼女が魔法少女でいなければならない理由。彼女を現状に縛る、理由。 そこから解き放つこと。優先すべきは、彼女たちを救うこと。 「中々面倒な業を背負っている魔法少女じゃな……」 自身もある意味面倒な業を背負った魔法少女(81歳)である『暗黒魔法少女ブラック☆レイン』神埼・礼子(BNE003458)は共感を含むような口調で呟いた。リリカという魔法少女に果たしてどんな過去があるかは定かではない。とはいえ現状魔法少女同士が敵対している状況はあまり良くない。魔法少女は協力し合いべきなのだと彼女は言う。 「一人前の魔法少女になる手助けをしてやろう」 「魔法とは一体何かってのをこの超絶美少女メイガスである私が教えてあげないとだね」 『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)は得意げに言う。最近では魔法少女(物理)や魔法少女(砲撃)なんていう魔法の道から外れたような攻撃方法を持つ魔法少女が多いという。正統派とは何ぞやということを、ここに示す必要があるだろう。ウェスティアは意気込んだ。 前を見る。 二人の魔法少女が緊迫した雰囲気のなか争っている。 後ろを見る。 味方の魔法少女がその緊迫に飛び込む時を見計らっている。 どこを向いても魔法少女。 どうしてこうなった。そのとき竜一が『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)の肩をポンと叩いた。 眼鏡をクイと上げた竜一の目は期待に満ちている。彼はこの状況を至極楽しんでいるようにも見えた。 それは魔法少女という存在そのものを楽しむような、純粋で、どこか下賎な目線であったという──。 ● ポワポワと浮かぶエリューションが突如軌道を変え、魔法少女ラディカルリリカに接近する。リリカは横に飛びつつ、それに向けて魔弾を放った。衝突した魔弾とエリューションは小さな火花を散らして弾け、消え去った。リリカは額の汗を拭う。先ほどから、カレンは一歩たりとも動いていない。 「どうしたのかしら、貴女の決意はその程度?」 魔封少女カレンは、どこか愉しむようにリリカを見下ろす。カレンがゆっくりとロッドを振るうと、彼女の周囲には再びエリューションが浮かぶ。リリカの表情が、僅かに歪む。 「逃げるなら今のうちですことよ? 逃しませんけど」 「逃げるつもりなんて、ない!」 リリカの掲げたステッキの先から光が漏れだし、周囲に雷光が拡散する。粉塵を上げつつ荒れ狂うそれの隙間を抜けて、エリューションが一体、リリカの元へと飛んだ。轟く雷鳴が鳴き止んで、彼女は無防備になる。リリカは、息を呑んで目を瞑った。 「まてぇいっ! なかなかの魔法少女っぷりだ。だが! 日本じゃあ、二番目以下だ」 突如飛び込む竜一の叫び声。合わせるように、二つの人影が現れた。 「暗黒魔法少女ブラック☆レイン、参 上♪ラディカルリリカ、助太刀させて貰うよっ」 「くっきり登場 過激に登場 絶大に登場 颯爽登場! 魔法少女 シャルロッテー」 礼子と『初めてのダークナイト』シャルロッテ・ニーチェ・アルバート(BNE003405)が戦場に飛び込むと、リリカと、カレン、そしてエリューションたちは一斉に彼女たちの方に気を取られる。黒衣のゴスロリに身を包んだ彼女の姿はどこか、悪い方の魔法少女っぽくもあるが多分気のせいだ。多分。 「魔法少女シャルロッテ☆マギカ はっじまーるよー」 「魔法少女一杯だねー、夢の競演っぽい感じ?」 続いて飛び込むリベリスタ。味方にも敵にも蔓延る魔法少女を横目に、『魔法少女マジカル☆ふたば』羽柴 双葉(BNE003837)は自分も程々に頑張ろうと考える。こう、恥ずかしくない程度に。 「なんですの、あなたたちは」 突然の乱入に、操られているとはいえカレンは驚きを隠せない。 「こんにちは、魔法少女。お節介焼きに来ました」 義衛郎はリリカを守るように彼女の前に出る。次いでリリカの横に双葉が素早く近寄り、話しかけた。 「協力するよ。カレンを助けなきゃならないんだろう?」 「……ええ」 カレンと同様に驚くリリカは、以前のアークとの邂逅のこともあってか、すぐに状況を把握したようだ。双葉の提案に、快く応じた。 「子供の夢を壊す悪い魔法少女は止めなきゃいけない。それは正義の魔法少女としての義務だから、ね」 「夢を壊す、ね」 リリカは哀れむように、カレンの方を見る。カレンはようやく事態を飲み込んだようだ、表情に余裕を持たせている。 「こんな茶番劇、子供に見せたくないな。深夜番組に回すべきよ」 「公営放送で流せない程、ぐちゃぐちゃにして差し上げてもよろしくてよ」 カレンは高飛車に笑う。彼女の感情に呼応するように、周囲を舞うエリューションも僅かに光を帯びた。その様子を見ながら、凛子はクールに言い放った。 「そんな美しくない結末は、よろしくありませんね」 「貴女が望む望まざるに関わらず、その結末を与えるのは私ですことよ」 ニヤリと、カレンは邪悪な笑みを浮かべる。 その時、遥か上空から降り立つ一つの影があった。それはカレンの邪悪を引き裂くように優雅に舞い降りた。 「共に切磋琢磨し力を合わせて戦うべきである者達が、互いに傷つけあう様を見るのはとても悲しい……」 ウェスティアの声は哀し気に空気を震わせる。風が泣くような金切り声を上げる。それはまるで、二人の魔法少女の悲劇に震えるように。 「誤った理を正すために、ゴス仮面ここに推参だよ……!」 「魔法のステッキによって引き裂かれた友情を再び美しく咲かせます」 凛子はその顔に悲哀の感情を浮かべながら、静かに言った。 「突然現れて、馬鹿げたことを言われたものね」 カレンは嘆息を漏らしつつ言った。だが表情は、まるで子供のように愉快さに溢れていた。 「戯れ言は一掃して差し上げましょう」 ● 「さあ、お行きなさい」 真っすぐと突き出されたロッドの軌跡を伝うように、エリューションが飛ぶ。 「雑魚はあたしたちが引き受けるよ」 前に出た凪沙に向けて、エリューションは閃光を放つ。それは僅かに反応の遅れた凪沙の目を眩ませるが、構わず彼女は冷気を纏った拳を振り上げて、一心に振り下ろす。エリューションはそのまま地面に叩き付けられて大きく震え、動きを鈍らせる。 「リリカさんはカレンさんを、頼みます」 義衛郎はそう言いつつ、素早い動きで敵を切り刻む。 「……ええ!」 エリューションの体当たりの対応に苦慮する義衛郎を見ながら、リリカはカレンの方へ向かう。義衛郎が攻撃の一部を受け流し、その勢いでエリューションに斬撃を加えると、エリューションは空気に溶けるように弾けた。 だがエリューションを幾ら倒した所で、カレンによって再び生成されるばかりだ。エリューションの対応は当然しなければ増え続けてどうにもならなくなるが、やはり発生源であるロッドを破壊しないことには、終局を迎えることは無い。 「早いとこぶっ飛ばして、目ぇ覚まさせてやらないとな」 竜一は全身の闘気をそのままエリューションにぶつけ、吹き飛ばす。エリューションはフラフラと宙を漂い閃光を放つが、竜一の攻撃と比べればその勢いは余りにも弱々しい。 「うざったい連中ですわね」 微笑みを浮かべつつ、カレンは悪態を吐く。優雅に振るったロッドからは、再びエリューションが生成される。エリューションは発生するやいなや飛んでいくと、カレンに接近しようとするリリカと礼子の動きを遮った。 「私の本気の一部をみせてあげるのー。 ガラアキだよー、いいのー?」 のんびりとした声でシャルロッテの放った黒色のオーラは、地面を切り裂くような勢いでエリューションとリベリスタの間を抜け、カレンへと向かっていった。カレンは焦ったように目を見開くが、一体のエリューションがフワリと彼女の前に移動して、それを庇った。 「でかしましたわ!」 カレンはエリューションの身体に付いた黒色の傷を見ながら、すこぶる嬉しそうに言った。そしてシャルロッテの方を見ながら立ち位置を変える。 「遅い! 戒めの鎖!」 双葉はしっかりとカレンの位置を視界に収め、黒鎖を具現化させる。それはカレンを守るエリューションを巻き込みながら、彼女を飲み込んでいく。 「そのロッド、こっちに渡してくれないかな? 渡してくれないなら、ちょっと痛い目にあってもらうよ!」 咳き込みながらその海から逃れたカレンに、礼子は大きく切り込んだ。礼子の得物に宿る禍々しい気を感じたカレンは小さくロッドを振るい、エリューションを召喚して自身を守らせた。はね飛ばされるエリューションの動きを見ずに、カレンは言った。 「好き好んで、得物を渡すバカは戦場にいるはず無くてよ?」 行きなさい、とカレンが言うと、エリューションは礼子とカレンの射線を遮りながら、礼子に向けて飛んだ。礼子は自身の周囲に暗黒の瘴気を漂わせて、デスサイズを思いきり振るった。 「邪魔だよ!」 ● 舞い降りた癒しの息吹が、リリカを含む周囲のリベリスタを回復した。凛子は仲間と、リリカに視線にやりながら、その状況を確認する。そして一旦エリューションへと視線を映した。 カレンによって次々と生み出されるエリューション。その数こそリベリスタを圧倒していたものの、それを生み出す勢いは、決してリベリスタがそれを倒す勢いに勝ってはいなかった。その要因としてはリベリスタが的確にエリューションを撃破していたこと、そしてカレンが自分へと攻撃してくるリベリスタへの対処に追われていることがあるだろうと凛子は考える。 ただしそれは現状の話だ。いつリベリスタが倒れるとも限らないし、逆にカレンのロッドの破壊がいつなされるかも、定かではない。万全は期すべきだ、と凛子はもう一度癒しの息吹を生み出した。 「……きりがありませんね」 義衛郎が斬り飛ばしたエリューションは、大きく旋回してその全力を以て彼に突撃する。エリューションが彼に打撃を加えたその隙を突いて、凪沙は鋭く蹴撃を加える。エリューションは僅かに浮き上がるような仕草をすると、やがて空気に溶けた。 「エリューションのいない間に、なんとかしないとね」 そう言って、凪沙はカレンの方を見る。 「燃やし尽くしちゃえ!」 双葉の叫びと共に立ち上がった炎が、周囲のエリューションごとカレンを飲み込んでいく。カレンは炎を渦から逃れながら、ロッドに意思を込める。ロッドの先に充填された光が分裂して飛び、それらがリベリスタに当たると耳を劈く破裂音を立てながら弾けとんだ。 「負けるわけには、いきませんわ!」 カレンはリベリスタと距離を置こうと背走する。だがカレンの方へと、竜一が駆けていく。 「君たちは、悪い子じゃない。だが、その手にあるものは、その優しさすら汚してしまうものだ! 破壊させてもらう!」 「お黙りなさい! 私は、リリカを倒さなければなりませんのよ!」 カレンは素早く構えると、ロッドの先に光を充填される。その光は今まで放ったそれよりも、遥かに大きい。 「邪魔は、させませんわ!」 射出された魔弾は、真っすぐにリリカへと向かっていた。迫り来る魔弾に、リリカは思わず腕で自分を守りながら、目を閉じた。 それは、リリカの手前で弾けとんだ。リリカは目を瞬かせながら、自分の前に立ちはだかるその姿を見る。 「お嬢さん、大丈夫ですか?」 「は、はい……」 唖然として凛子を見るリリカを余所に、カレンは酷く憤った。 「そんなやつ助けて何になるんですの!?」 カレンは再びロッドをリリカに向けつつ、叫んだ。 「どれだけ助けたって、私が──」 『目を覚ませっ!!』 凪沙が脳内に直接そう語りかけると、カレンが僅かに怯んだ。その表情は、理性と催眠の最中にあるように、大きく歪む。 無防備な彼女の身体に黒鎖が巻き付いた。縛り上げられた彼女は、もはや攻撃など出来はしない。 「リリカ、今だよ! 貴方の魔法でカレンの目を覚まさせるんだよ!」 「……うん!」 リリカはステッキの先に魔弾を充填する。それは彼女の意思の強さを示すように、光り輝いた。 「私は、私は──!」 もがくカレンにリリカは魔弾を放つ。僅かの抵抗も出来ないまま、カレンはその手に握ったロッドを破壊される。それが崩れ落ちるのと同様に、カレンの身体も、蹌踉けた。 礼子は素早く彼女に駆け寄って、カレンを抱きとめる。そして決めポーズをして、リリカに言った。 「ミッションコンプリート、正義と愛は必ず勝つ!」 リリカは静かに、笑みを零した。 ● 戦いが終わるやいなや、凛子はリリカに近付いて、彼女の手にするステッキに手を伸ばす。だがリリカは反射的にそれを抱きしめると、凛子の手をかいくぐる。その様子を見ながら、竜一は問うた。 「なぜ君は、そうまで魔法少女でいなければならないんだ」 リリカは何も言わず、竜一の顔を見る。 「リリカ、君も分かっているんだろう? そのステッキは手に余る」 「周囲に迷惑掛けてるの、解ってるんでしょう」 竜一と義衛郎はリリカを追及する。現状彼女はステッキで事件を起こしている。それを使いこなせる自身も無いのに、持たせたままでいるのも問題だ。 「速やかに渡してくれると後々が楽なんだけど……拘ってるみたいだし、やっぱ大事なものなんだよね? 誰かと約束したのかな……教えてくれると嬉しいんだけど」 リリカは少しの間顔を伏せてから、決心したように言った。 「これはね、ゲームなんだ。『彼』を倒すまでのゲーム」 『彼』は彼女に魔法少女の能力と武器を与えた。そしてそれらは『彼』を倒さない限り永遠に彼女を縛り続けるものなのだ。彼女が武器、つまり『ステッキ』を失うということは、自身の力で魔法少女の呪縛から逃れる術を失うことと、ほぼ同義なのだと彼女は話す。 「これがなければ自分にはたどり着けないだろう。私に能力を与えた彼はそう言った。だから、これは渡せない。自分の手元にあれば幾らでも直せるけど、渡しちゃったらどうにもならないから」 「使いこなせる自身はあるのか?」 竜一はリリカを真っすぐ見て、問うた。リリカは瞬時に、毅然とした口調で返す。 「使いこなさなきゃいけないの」 自身の運命を微塵も疑わない。そんな目線を、竜一は理解した。 「分かった。俺は信用しよう」 「効果が止められるのなら、構わないが……」 「今は休止状態。その間に私がどこかに行けばいい。あとは何とかする。信じて」 義衛郎の懸念に、リリカは強い口調で返答する。義衛郎は首筋を書きながら、役所の番号を教えた。 「ま、困ったときはお気軽にどうぞ」 「どんな形でも、正義の魔法少女を目指すならいいよね」 「子供の夢を裏切らない、危ない事はしない。私はこの二点さえ約束してくれれば良いよ。また失敗したらその時はその時で手伝えば良い話だしね」 双葉の言葉に、リリカは笑顔で応える。 「全く、頑固なんですからあの子は」 正気を取り戻したカレンはリリカの様子を見ながら言う。 「でもうまくやるでしょう、あの子ならきっと、ね」 私も頑張らなくてはいけませんわね、と呟きつつ、リリカが去るのを待って、カレンも姿を消した。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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