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<相撲の腹>キケンタチアイキンシ

●水無月のミステリー
 生命の息吹に緑が香っていた。
 そよ風に木々が揺れ、木漏れ日が草葉に瞬く。
 だが田園が輝いているのは、陽光の為だけではなかった。
 田植えを終え、成長を続ける青々とした稲穂が真円を描くようになぎ倒されている。
 その円がキラキラと光を放っているのだ。
 誰かが見れば、未確認飛行物体の仕業だと騒ぎ出すかもしれない。
 あるいは誰かのイタズラだと激怒するかもしれない。

 多くの人々は知らないのである。
 この世界には確固たる神秘が存在しているということを。
 草陰に描かれたサークルの上で、踊る五体の人影は小さな羽根をもっていた。
 フェアリーサークルの上を軽やかに舞う妖精の姿に、ただ一つ疑問符を与えるならば、その姿がどう見ても翼を持った力士ということだった。

 ――どすこーいッ!

 ―――どすこーいッッ!!

 白昼の田園に漆黒のバグホールが、翼を持った巨漢達を見守るように浮かんでいる。
 まわし姿の凛々しい男達は、田園に清めの塩を撒き散らし、暑苦しい四股で稲穂をなぎ倒し続けていた。

●かく語る
「田んぼに塩ってやつは難しい」
 毎度お馴染み『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)の第一声は、やはり良く分からない。
「イイ米を作るために、あえてくれてやる奴も居れば、作物がダメになっちまうことだってある。
 闇雲に撒くだけじゃあ、豊穣祈願には程遠いよ」
 なるほど。講釈は理解出来た。
 しかし自分達がここに呼ばれた本題ではないことは、それ以上に強く理解出来ていた。
 付き合いきれないリベリスタが伸暁に問いただす。
「精魂込めて植えられた稲穂を踏み荒らすのは、やめさせたほうがいい」
「つまり?」
「静岡の田舎に暗黒の闘士が現れた。奴等は血に飢えてやがる」
 伸暁が説明を続け、リベリスタ達が要約する。がんばって要約している。
 彼の話は理解しづらいこともあるが、今回のソレは格別だった。
 曰く。
 羽を持つ力士の姿をしたアザーバイド達が、田畑に清めの塩を撒き散らす。
 そうこうしているうちに、地域住民を相撲の技でミナゴロシ――
 どう頭を捻っても、どう反芻しても、それ以上の答えはついぞ出てこない。
 あんまりな事態、いたたまれない依頼に、リベリスタ達は深い深いため息をついた。
 俯くリベリスタ達に、気だるげな伸暁が言葉を続ける。
「奴等がフェアリーテール(夏場所)を開く前に、悪夢の絵本をクローズ・ユア・アイズさ」
 彼はそういい捨てると、足早にブリーフィングルームを立ち去った。

 その場に取り残されたリベリスタ達の心は、残酷な事実に打ちのめされていた。
 夢溢れるフェアリーサークルは彼等の土俵だったのだ……。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:pipi  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年06月18日(土)22:36
 どすこーい!
 pipiでごわす!
 ごく単純な戦闘シナリオとなっているでごわす!
 相談期間が短くなっておりますのでご注意くださいでごわす!

●勝利条件
 五体のアザーバイド『フェアリー』の撃破と、バグホールの消去。

●現場
 幸い、辺りに人影は見えません。
 結界さえ張れば、あとは気にする必要もないでしょう。
 バグホールは良く見える場所にありますので、好きなタイミングでサクっと塞げると思われます。
 戦闘に集中してくださって結構です。

●データ
 強敵となります。
 妖精ではありますが、普通に力士サイズです。
 鈍重ですが、タフで力強いです。
 フライエンジェほどの飛行は出来ません。

『谷乃風 透』(たにのかぜ とおる)
・鉄砲:神遠単
・雲竜:自分付与
・EX一本:大ダメージ、長距離吹飛び

『神林 達也』(かんばやし たつや)
・突張:物近単
・猫騙し:麻痺、ダメージ無
・EX呼戻:クリーンヒットで遠単引き寄せ、ダメージ無

『不知火 淳司』(しらぬい あつし)
・突張:物近単
・不知火:自分付与
・EX残:味方全付与

『山海皇 善仁』(さんかいおう よしひと)
・突張:物近単
・八百長:神遠単怒り、中ダメージ
・EX五輪:累積大ダメージBS付与、BS付与中に山海皇は動作不能

『陰御雷 肇』(かげみかづち はじめ)
・鉄砲:神遠単
・父公:近接範囲回復
・EX不浄:条件付き自動発動、遠全、ダメージ無。不運、不吉。

 他:
・KAWAIGARI:妖精達が協力し合い、対象一人に愛情あふれる稽古をつけます。大ダメージ、出血、流血。

●最後に
 当シナリオは<相撲の腹>(SUMOU NO HARA)となります。
 <相模の蝮>(SAGAMI NO MAMUSHI)連動シナリオとは、全く関係御座いません。
 ましてや水境STの<相模の蝮>キケンタチイリキンシとは全く無関係であることを、ここに明記致します。
 お気軽にお楽しみ頂ければ幸いです。

 また、タイトルをお借りすることを快諾して下さった水境STへ、この場を借りてお礼申し上げます。
 ごっつぁんでした。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
インヤンマスター
宵咲 瑠琵(BNE000129)
プロアデプト
鬼ヶ島 正道(BNE000681)
クロスイージス
ラインハルト・フォン・クリストフ(BNE001635)
ホーリーメイガス
襲 ティト(BNE001913)
プロアデプト
ウルザ・イース(BNE002218)
クロスイージス
キャプテン・ガガーリン(BNE002315)
インヤンマスター
石 瑛(BNE002528)
ナイトクリーク
ジュノ・アンダーソン(BNE002533)

●ティンクル☆フェアリー
 真昼の田園で、半裸のあられもない肢体で妖精達が大股を広げている。
 中空では、きらきらと陽光が反射していた。
 ――塩。である。
 妖精達の体は、それはもう見事にむちむちとしていた。
 だが、まるで美しくもなければ淫靡でもない。
 でかい。
 でかいといっても人間の大きさを逸脱しているというわけではない。
 妖精と聞いて誰もが脳裏に描く小人姿と比較して、異様に巨大であるというだけである。
 その様はまるで地響きが聞こえてくるかのようであった。
 つまり半透明な羽をもったおすもうさん達が、まわし一つで力強く四股を踏んでいるのである。

「ふむ、神事と言うより惨事じゃのぅ」
 的確すぎてぐぅの音も出ない。
 この力士達の所業は如何なるか。水田に塩を撒き、青稲穂を踏み荒らすなど言語道断な話だ。
 だが、それを止めるためにやってきたのが『泣く子も黙るか弱い乙女』宵咲 瑠琵(BNE000129)なのである。
 幼女の手によって強固な土俵(結界)が張られた。
 そもそも炊き立ての米ですらない稲を土俵にするような連中なのだ。
 いかに妖精界の暗黒闘士といえど、新米力士以下のアマチュアであろう。
 しかしまあ、このクソ暑い日差しも結界もなんのその。
 ひたすらにどすこい、どすこいと繰り返す力士達を見ているうちに、『静かなる鉄腕』鬼ヶ島 正道(BNE000681)の脳裏に何かが閃いた。
(よもや彼らは妖精などではなく、不祥事続きの角界に憤りボトムチャンネルに舞い降りた天使……ッ)
 一瞬の気の迷いに正道は首を振る。
 悪しき風習や反則を技として昇華しているのだ。真っ当な存在ではなさそうだった。
 実に正しい見解だが、所変われば見る目も変わるのか、ご機嫌な向きもある。
「Oh! これが噂の日本の国技SUMOUなのですネ。生で見るのは初めてねッ」
 外国人観光客のような興奮した口調で目を見開いたのは『audacia paula』ジュノ・アンダーソン(BNE002533)である。
「ユーの言う通り。確かに彼らは異界の存在ではあるが、その相撲に淀みはない。間違いなく国技だろう」
 アメリカ国籍を持つ彼女に相槌を打つのは『地球・ビューティフル』キャプテン・ガガーリン(BNE002315)だ。
 こちらは一応国籍不明なのだが、なぜだか非常にそれらしい。
 たしかにこれは、東洋の神秘であるSUMOUファイターに合い間違いないのだろう。
「異世界でも通じるとは正に神秘でありますね」
 やはり日独ハイブリッドの少女『イージスの盾』ラインハルト・フォン・クリストフ(BNE001635)が率直な感想を述べる。
 流石ガイジンさん達である。一人ハーフだが気にしてはいけない。
 あまり見ていたい世界ではないが、ともあれアレと戦わなければならぬ。
 リベリスタ達が近づこうとも、お構いなしに四股を踏み続ける暑苦しい男達に向けて、瑠琵が宣言する。
「技量審査場所を開催するのじゃッ!」

●八卦良い――
 瑠琵の掛け声に陰御雷関が腰を屈めて嘯いた。
「女子供は、土俵から出て行くでごわす!」
 やはり日本語である。
「どすこーい!」
 陰御雷に呼応するように、力士達は地に低く拳を握り込んで仕切りの姿勢をとりはじめる。
 輝く塩が大地に撒かれた。
「塩をそこに撒くのはストップです!」
 初の任務に立ち向かうジュノの叫びを皮切りに、立会いが始った。
 だいたい何なのだコレは。
 そもそも相撲とは本来、大地の豊かさを願って神々に捧げる戦いだったはずである。
 なのにこの妖精達は神聖なる力士を騙り、その姿を真似て、斯様な狼藉を働いているのである。
「田んぼを台無しにするなんてありえない! 農家さんに謝れ!」
 呪符を閃かせた『未来の主演女優賞?』石 瑛(BNE002528)が叫ぶ。
 華麗なポージングと共に、リベリスタ達を強固な守りの結界が包んだ。
 同時に各々も己が能力を引き出す術を身に纏いはじめている。
 その中で先に仕掛けたのは『ライアーディーヴァ』襲 ティト(BNE001913)だ。
「妖精ってのはもっと夢のあるもんだお!」
 心の叫びと共に放たれた魔術の矢が、陰御雷の胸に吸い込まれる。
「伴天連の術でごわすかっ!?」
 光と衝撃がほとばしり、暑苦しい苦悶の表情を激しく照らしあげた。
「どすこーいッ!」
 他方ではキャプテンと山海皇関が初めの強い当たりを繰り広げていた。
「ユー達の国技とワタシの地球技、どちらが勝るかいざ立会い、だな」
 地球の命運を背負った拳が、正義の光を纏って唸りをあげる。
「ごっつぁぶふぁッ!」
 横面に鱈子唇が3の字に曲がり、飛び散る唾液が夏の空をファンタスティックに彩った。
 饐えた饅頭のような頬が一気に紅潮する。
 汚ッたねぇイチゴマシュマロである。

 嘆かわしい光景に、翼の少年が首を振る。
(この仕事始めたときから、いつかこういう日が来るんじゃないかなって思ってたんだよね。
 異世界から来た神秘的な生き物との邂逅――
 お互いにどういう感情を抱き合うか解らない。だけどお互いに戦う運命なのは確かなんだ。
 戦うのは怖くないよ。ただ、どういう感情を抱いてしまうのか、解らないのが怖かった。
 もし倒すべき敵を美しい、なんて思ってしまったら、その戦いは救いのない悲劇になってしまうから……)
 フォーマル姿の少年は天を仰ぐ。
 心の瞳に涙を湛えて『鷹の眼光』ウルザ・イース(BNE002218)が印を切り、右腕が宙を薙いだ。
 その悲しみの理由は推し知るべし。辺り一面に音無き協奏曲が震える。
 小さな指揮者を遠巻きに、五対のコントラバスが――
「どすこぇぁぁぁあイッ!?」
 ――アンコ型が重低音をかき鳴らした。
「……人生って、悲しい事ばかり起こるよね」
 力士達のうめき声に、少年は心中で二度目の涙を流した。
 その構図があまりに『絵になっていた』からだ。
 さらに、悲しみは凍てつく氷雨を呼び寄せる。
 瑠琵の秘術が炸裂した。
 力士達は、はふはふと白い息を吐き出し、贅肉がぷるりと震える。
「やはりアマチュアじゃのうッ!」
 技量審査は順調に進んでいるようだ。

 だが力士達も押されてばかりではない。
「どすこーーーい!」
 谷乃風関がガチガチと歯を鳴らしながら突進し、突出した正道を突っ張る。
 精悍な胸板と掌が強かにぶつかり合った。男と男の真っ向勝負だ。
 だが男正道には、この程度で土などつこうはずもない。
 そのとき不知火、神林、陰御雷が動いた。
 地響きと共に、力士達が両掌を前にして男同士の決闘に次々と割り込みをかける。
 のこった! のこった!
 突進する三枚の分厚い肉壁を押し返し、正道はなおも土俵に立ち続けている。
 拮抗する力と力。額に青筋が浮き上がる。
 そして正道は四人の力士達を押し返した。
「まあ、世の中なんとかなるもんでございます」
「わっ!」
 瑛が歓声を上げた。
 力士達の巨体と比べればずいぶん小さく見える正道だったが、歴戦で培った力はそう簡単に折れるものではない。
 凍える霜の元で、なお汗にまみれた力士達がもんどりうってよろめく。
 とはいえ、精悍な正道に尚勝る体格の力士四人が相手では、あまりに多勢に無勢というものである。

「ノー! ノー! アンフェアデース!」
 状況を打開すべく、己が影を従えたジュノが、放つ気糸で陰御雷を縛り上げる。
 これはまた塩辛そうなボンレスハムが出来上がったものである。
「行きますよッ」
 そのハムをついばむように、瑛の呪符が一羽の鴉となり肉襦袢に突撃した。
「おいどんの玉のお肌がぁあああッ!」
 これは痛い。
 腕を振り上げビシリと決まる必殺のポーズに、哀れな力士がぽろりと涙を零す。
 泣きっ面に蜂とはこの事か。
 さらに。
「火力支援でありますッ!」
 ラインハルトが白刃を振り上げ、魔弾を放つ。
 極限の集中に裏づけされた眩い弾丸は、狙い違わず陰御雷のはちきれそうな胸元に吸い込まれた。
 閃光に続く激しい炸裂音の中で陰御雷が喚く。
「KAWAIGAってやるでごわすぅッ!!」
 とはいえ満身創痍の身に、気糸がさらに食い込むばかりだ。
 突如劣勢となった不知火と神林が妖しく視線を絡め合わせる。
 何が始ろうというのか!?

●嗚呼、不浄
 不知火が正道の腕を掴みあげる。
「くッ!」
 激しい立会いで負傷した正道に、谷乃風と神林が突撃をかける。
 力士達の熱烈なKAWAIGARIが行われようとしている。
「1人に対して複数で囲んで強者のつもりでありますか……
 否、断じて否であります。誇り無き力は所詮、暴力に過ぎないのであります!」
 咄嗟の事態とはいえ、既に少女の心算は決まっていた。
「私はラインハルト・フォン・クリストフ。イージスの盾であります」
 紅の外套をはためかせ、小さな少女が巨体の前に立ちふさがる。
 正道を狙う二人の飛び膝が、輝く盾に次々と吸い込まれた。
 地響きをたて、土煙が舞い上がる。
 驚愕の形に飛び出す力士達の瞳を前に、少女は高らかに宣言する。
「盾は折れず、曲がらず。壊れない。私が居る限り好きにはさせないのであります!」

 一方キャプテンとがっぷりと四つに組み合った山海皇が、宇宙服の脇下に汗ばんだ腕をぬるりと滑り込ませた。
 豊満すぎる胸の谷間にヘルメットを挟み込み、船外活動装置をがっしりと握りこむ。
「Oh! マイガッ」
 ジュノの悲鳴の中で、五輪砕きの姿勢が決まった。
 相撲であればここで勝敗は決まるが、地球との戦いは終わらない。
 頚椎を攻める禁じ手に、キャプテンの間接が軋みをあげる。
「例え土俵を割ることがあろうとも、地球を割ることなどは出来ない!」
 苦しい体勢に喘ぎながらも、キャプテンは脱出の力を緩めない。
 そこへ舞い降りたのは天使の羽――傷癒の符であった。
「一人じゃ大変ですからね」
 瑛の温もりが、地球を守るオゾン層のようにキャプテンを包み込んだ。
 ジュノが走った。向かう先はキャプテンの元だ。
 至近の銃剣からほとばしる弾丸は気糸を纏って山海皇に迫る。
 二本目のポークハムが完成した。
 さらに軽やかなティトのスキャットに乗せて慈愛の歌声がキャプテンの傷を癒す。
「柏手や四股踏みとか見れば判るけど、相撲とは古来から神に奉納する神事なんだぉ」
 そうだ、もっと言ってやってほしい。
「巫女として断言するお。君達、相撲を舐めるな!」
 これまたご尤もである。
 癒し手達のバックアップに背を押されるように、リベリスタ達の快進撃が続く。
 ウルザが印を切り、瑠琵が呪符を放つ。
 閃光に焼かれ、氷雨が降り注いだ。
 角界の勇士達は正道の腕を取ろうと、ジュノを突っ張ろうと次々に遅い来るが、目を眩まれた身の上ではなかなか立ち回りについていくことが出来ない。
 銃剣で張り手の猛撃をいなしたジュノが、遅れ来る微風を切り裂き、陰御雷の頭部に破滅の力を纏った銃剣を突き込んだ。
 そこへ正道の正確無比な正拳が叩き込まれる。

 だが、そのとき悲劇は起こった。
 度重なる集中攻撃に陰御雷関のまわしがゆっくりと綻び、転び出でたる――メンテナンスちゅぅ~。
 絶叫が聞こえたかもしれない。
 不幸極まる空気の中で、倒れる陰御雷を指差し瑠琵がケタケタと笑う。
 ただただ、それだけが救いだった。

 それはさておき。激しい立会いに、さすがのリベリスタ達も息が上がってきている。
 ラインハルトが仲間達の積もる不幸を振り払う。
「背中は任せてくださいッ」
 攻めも演じる瑛であったが、状況を見極め即座に動ける術は身についている。
 猫のようにしなやかな腕を交差させ、放つ癒しの符が正道を癒す。
「太った妖精なんて見たくないぉ」
「消えてなくなれ!」
 ウルザと瑠琵が、力士達に猛攻を加え続けている。
「もう顔も見たくないぉッ!」
 足元おぼつかぬ山海皇に向けて、ティトが光の矢を放つ。
 煌きが乱舞し、濡れた胸板を鮮やかに彩った。
 ――もう十分すぎる光景だ。
「諸君の技は石の上にも三年といった風に鍛えてきたのであろう」
 山海皇に向けてキャプテンの――地球の怒りが噴火した。
「だが…地球の上には四十六億年だ!」
 気合一閃。重量級の一撃に山海皇の巨体がゆっくりと沈んだ。

 決め手。南極ドライバー!

 リベリスタの反撃が続く。
 ただでさえ暑苦しいのだ。いい加減に辟易するというものであった。
 吹き荒れる猛攻の風に谷乃風と不知火が倒れた。
 そして――

●角界の天使達
「勝ち星は貰い受けるのじゃ!」
 四面楚歌の戦場の中で一人立ち続ける小兵の神林は、蒼白な顔で再び地に拳を握る。
(呼び戻し? 引き寄せる? だからなんだと言うのだ)
 これまでの修行を痛烈に後悔しながら神林が目を閉じる。
 待ったなし。いよいよ結びの一番である。
(儘よ!)
 八卦良い――のこったっ!

 だがこれはあっさりと決まった。
 度重なる光と氷雨の嵐に、神林は既に足元をふら付かせている状態だったのである。
 漆黒の鴉の一撃で、最後の力士に土がついた。
 勝ち星を挙げたのは瑠琵である。
 戦いが終わった。
 土がついたのは五人。いずれも力士であった。
 リベリスタ達の完勝である。

「強敵でありました。SUMOUファイター恐るべしであります」
 疲労困憊のラインハルトが静かに呟く。
 この力士達が、はたして最後の力士なのだろうか?
 瑠琵が小さく独りごちる。
「奴等は力士の中でも最弱、今に第2第3の力士が――」
 や、ややや! もうこれ以上はっ! あったらどうする?
 それにリベリスタ達にはもう一仕事残っていた。
 バグホールへ向けて、妖精達が一人、また一人と投げ込まれる。
 結局、被害らしい被害は田んぼの妖精環だけではあった。
 とはいえ、倒れた稲もこんな事件がなければ美味しいお米になれたのだ。
 そんな事を考える瑛の中には、ちょっぴり悲しい気持ちもある。
 しかし、同時に彼女は感謝の気持ちも忘れない。
 倒れた稲の分もたっぷり食べて、夢の女優を目指し続けるのだ。
「Oh! チョットなごり惜しいわね」
 ジュノが呟く。もしかすると、初めて間近で見たRIKISIの姿だったのかもしれない。
 それもアザーバイドである。これまた初めての経験なら無理もない。

 力士重い。ものっそい重い。
 戦いに疲弊した体で力む戦士達は、紛い物の妖精等ではなく本物の力士となっているのかもしれない。
 担ぎ上げられる力士達の巨体がぷるぷると震えていた。
 既に立つ力も残されていない力士達は、リベリスタ達の背で泣いていたのだ。
 大の男がおいおいと男泣きである。
 キャプテンも泣いていた。
 激しい戦いだったにも関わらず、美しい地球には一滴の血も流れてはいなかったのだ。
「地球に生まれた相撲という格闘技。それは一つの地上に生まれた宇宙だったのかもしれないな」
 禁じ手を技として、悪習さえ模倣する妖精達ではあったが、思い返せばそこだけは潔い戦いっぷりだったのかもしれない。
 すると、これはやはり腐敗した角界への警笛なのではなかろうか。
 そう思い込むことにした正道であった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 ぴかぴか、はふはふ、ぷるぷる、ずしん――で御座いました。
 字数との戦いとなってしまいましたが、お楽しみ頂ければ幸いです。

 暑い中で暑苦しい依頼に参加して戴き、ありがとう御座います。
 本当にお疲れ様でした。
 では、再びご縁があることを願って。
 どすこーいッ! pipiでごわした。