● その日、小さなリベリスタ組織がひとつ、壊滅的な事態に陥った。 「うわあー、やられたー!!」 「せ、先輩ー!!」 「ええい、ここは絶対者たる儂に任せて……ぐっ」 「師匠! どうしてそんな、師匠まで!」 「うう……ダメ、ダメよ……ああっ、溶けちゃう! 身も心も、溶けてしまいそう!!」 「憧れの幼馴染まで……! どうして、どうしてこんなことに……!」 「はやく、はやく行くんだ……ここから一刻も早く……!」 「師匠、ボク、ボクはどうしたらっっ……」 「探せ、箱舟を――そして伝えろ、これは恐ろしい敵だと――!!」 ● ブリーフィングルームでリベリスタを迎えた『駆ける黒猫』将門 伸暁(nBNE000006)の表情は幾分硬く、その敵との戦いがどれだけ熾烈なものになろうとしているのかを語っていた。 「よく来てくれた。 トゥデイズ・ミッションは……とても、とてもベリーハードだ」 深くため息をつきながら前髪をかきあげ、アンニュイな表情を見せるNOBU(28)。 いやイージーって書いてたやん、と突っ込もうとするリベリスタを、ほかのリベリスタが制した。 クリアするだけなら簡単な仕事、なんて言うものは、アークにはもともと散見されるものなのだ。今回もきっと人質を見殺しにすればイージーとか、誰もが笑って明日を迎えられるように心を砕かなければイージーだとか、そういうことに違いない、と。 「それでも誰かがそいつをクリアしなけりゃいけない――そういうことだな?」 悲壮な覚悟を持って伸暁に問いかけるリベリスタに、黒猫はああ、と頷いてみせた。 「この任務(プレゼント)は、ほかの誰にも渡せない。 たとえパエトンに罪がなくとも、ゼウスが雷で射たように! 焼け行くデメテルを救うのは箱舟の、否、リベリスタすべての宿願(ディスティニー)……」 嘆くように天を見据えてその手を掲げる黒猫の、普段よりさらに芝居がかった動作。 「一体、今回の敵は何なんだ。何がアンタをそんなに苦悩させるんだ?」 自分を抱きしめながら「君のその震えるような孤独を、きっと俺が癒してみせる――」とか歌い始めた伸暁の肩を掴んで揺さぶるリベリスタ。 ガクガクと揺られながらもいつもどおりの表情を取り戻したNOBUが、にやりと笑ってぱちりと指を鳴らす。 モニターに映し出された、敵影。 それを目にして、リベリスタたちはみな一様に息を呑んだ。 ――コタツだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ももんが | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月21日(水)23:20 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●そと 「コタツかー、コタツねー。 確かにこりゃーすんごいベリーハードだわー。こんな依頼寄越すとかえげつねーアークマジえげつねー」 元体育館の、閉め切っていてもひんやり寒い空間に響いた『住所不定』斎藤・和人(BNE004070)の言葉に、異論はあれど反論など誰も持たず。 ともかくもう、体育館のどまんなかにででーんと鎮座ましてるそれは、紛うことなきコタツであった。 「こたつは恐ろしい悪魔だ、あたしも何度も飲み込まれたことがあるぞ。 アレに打ち勝つには強い意志が必要だ……みかんなんてあったらもう屈するしかないぞ」 ぐぐ、と拳に力を込めて、『悪を滅すもの』ミャウニャ・テニャニィゼ(BNE004034)。 「そんな悪魔がE・ゴーレム化するなんて、このままでは三高平が、日本が、世界が危険だぞ。 こんな恐ろしい悪魔にこの人数で挑まなければいけないなんて、過酷な戦いになるのは間違いないぞ……」 「我が家には、そもそもこたつがない。みかんはある」 気合を入れるミャウニャの横で、『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)が何やらあっさり。 「千里の道も一歩から、ローマは一日にして成らず。 まずは簡単な依頼をこなす所より始めるべきです、フランツ坊ちゃま」 淡々と告げる『バットメイド』エルフリーデ・バウムガルテン(BNE004081)に、彼女の雇用契約上の主たる『純情ノーブルシックスティーン』フランツ・フォン・エーベルハルト(BNE004080)がふむ、と声を漏らした。 「簡単な依頼? 果たしてそうだろうか。 簡単な仕事などと言うものは存在しないのだよ諸君、仕事とはすべからく労働だ。 労働とは人間社会を回す歯車のようなものだ。ほとんどの場合失敗は許されない。 簡単だ、と思ってしまえば無意識のうちにその仕事を軽んじてしまうことになり、失敗を招きかねないのだ。 つまり……今回の依頼、全力で行こう!!」 「仕事に手は抜きません。全ては金のため、次に主人のため。 ですがそのようなことはコタツから出てから仰って下さい、坊ちゃま」 「あっれ?」 フランツの首から下は既にコタツの中だった。救いはそれがエリューションではなく、『三高平のモーセ』毛瀬・小五郎(BNE003953)の持ってきたものだったことだろうか。 「炬燵……魅惑の響きですな……」 小五郎おじーちゃん、ロープを数人の腰に結び回っていたりする。その反対側はこの場所が体育館だった名残、各種のネットを結びつけるための金具や、懸垂するための何かよくわからんアレやら、周囲の固定されているものにどんどん結び付けられていく。 「かなり強い魅了能力か、どんなもんよ」 ロープの結び目を確認した和人が、物は試しとコタツにじりじりと近づいてみた。 じりじり。 「…………。」 じりじり。 「……あっ何かドキドキしてきた」 じりじり。 「あっだめだもう辛抱堪らん! 何だろこの敗北感。悔しい……でも入っちゃう……!」 「まだ入っちゃだめ!?」 数人のリベリスタが慌てて和人のロープに飛びついた。 和人ハード。おそるべしコタツ。 「おこたはさいこーなのです~」 『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)、ある意味最強だった。 なんせもう、最初からコタツに入っている。 いやそれだけならフランツもそうだったのだが、彼女の場合はそういう問題ではない。ドラゴンでクエストなあれ風に言うなら『E:こたつ』なのだ。具体的には背中に括りつけてる。 「……なんと恐るべき相手なのじゃ。 わらわの鋼の精神がどこまで耐え切れるかが、命運を分けそうじゃな……」 そう呟いて、『巻き戻りし残像』レイライン・エレアニック(BNE002137)は先に囚われたリベリスタ救出用のロープを握りしめる。 「ご武運を……。終わりましたら、酒とおでんと蜜柑が待っておりますからのう……」 「――『三高平』か。いいチョイスだ」 小五郎の示した酒瓶の銘を読み上げ、和人が口角を上げる。 レイライン、和人、義衛郎、ミャウニャ(年齢順)、4人の潜入班がコタツに向かいあい――そこで義衛郎はあれ? と周囲を見回した。 「そういえば氷雨さんとリースさんは、どちらに?」 ●なか 「こたつが、私を、全力で呼んでるの……」 ひよこ枕を抱えた『微睡みの眠り姫』氷雨・那雪(BNE000463)、言葉は耐えようとしていても体は正直だった。なんせもう、真っ先にコタツに取り込まれていたのだから。 コタツの中の空間は、聞いていた通り異様にだだっ広く、動き回れば遭難の恐れさえありそうだったが、 「こたつは魔性のおんな、なのよ」 ぬくぬくと丸くなった那雪には移動するという選択肢はない。というか取り込まれた者は、もうその時点で皆動く気力など無かったりする。 「メンバーの中で最も高い意志力を持つ我輩、その我輩がコタツごときに負けるはずないのダ」 そう言ってどや顔してたインコこと『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)も、 「コタツごト……キ……スヤァ~……Σ(ΦθΦ)ハッ!」 ゆめのなかへ。探しものはナン(小麦でできた生地を薄く伸ばして焼いたもの)ですか。ともかく、すやすぴょしてたカイが目を覚ました時には、既にコタツの中の空間だった。 目をこすりながら周囲をぐるりと見回すと、3人の知らない人物が倒れているのが見える。 白髭の老人が一人、屈強そうな青年が一人、若い女性が一人。聞いていた情報の通りではある。 カイは少し考えこむ――だが、思考は赤い電熱系の光と熱に遮られてうまく動かない。 ぽかぽかする。 何故だか無性にみかんか、お味噌汁がほしい。 「いつの間に取り込まれたのダ!? ……まぁ良いのダ。 ここで待ってれば助けが来るのダ。ピチピチの女の子希望なのダ」 ええっと、今外にいるアーク女性陣、誰一人外見年齢と実年齢が一致しないんですが――まあいいか。 ●とつにゅう 「いざゆけやおこた!」 レイライン、きりっ! 「危険な任務だけどだれかがやらないといけないんだ……。 皆を護る為にもあたしは命を賭けて潜入するぞ。大丈夫! あたしならできる! 今日はこたつにまけない! 今の所全敗中だけど今日は勝つんだ!」 聞いてる周りが不安になってきた、ミャウニャ。 「全部終わったら本物のコタツでおでんと酒だな!」 軽く笑った和人。 「ちょっと行ってきますね。ゲームでもして、お待ちあれ」 小五郎のみかんをぽっけナイナイしてきた義衛郎。 以上の4名が、おこたぶとんへと決死の潜入行となったわけだが。 「な!? 何という……心地よさ!」 「負け、にゃい……!」 馴染み深い、あの暖色の光の下で愕然とするレイライン。その横でミャウニャも、にゃんこデザインの大斧に体をもたれかけながらも眠気を振り払うように何度も頭を振っている。 「一瞬でも気を緩めたら丸くなってしまいそうじゃ。駄目じゃ、まだ丸くなるな……こらえるんじゃ……」 ミャウニャに肩を貸しながら、レイラインは周囲を見回す。 全部で5人のリベリスタたちがぐでりと溶けているのは、割とすぐに見つかった。 「しかし暑いな……。 こたつで寝ると大概暑くなって外に出ちゃって、最終的に風邪ひいたりするんだよね」 そう言ってみかんを剥きつつ、義衛郎はその場に座り込む。 おこたみかん。その誘惑に乗っ取られ、義衛郎はスムーズにコタツ世界の住人となっていた。 「救出対象が一人増えたんだ、やるだけやってみようじゃねぇの」 和人の放った神々しい光――ブレイクフィアーだ――は、しかし、誰にも何の影響も与えなかった 。和人自身予測していた事態だが、面倒臭いことには変わりない。 「仕方ない、力尽くで――レイライン?」 「駄目じゃ、まだ丸くなるな……こらえるんじゃ……はっ!? わらわ呼ばれたじゃろうか? ああ、そうじゃロープに結びつけて、外の連中に引っ張りあげてもらわんとの。 ……? どうした和人、なんかさみしそーな顔をしとるぞ?」 「……ちっとの間の我慢だ、俺……」 でろんと伸びた那雪を抱え上げようとした和人が、瞼が落ちそうなレイラインに声をかけ――なんか複雑そうに見えなくもない顔で、那雪をもう一度横たえた。 女の子の肌って、やーらかいよね。 ●もっぺん、そと 「ふう……なんて温かいんだジャパニーズコタツは。 初めて見た際は面妖なテーブルだと思ったが……なかなかどうして……」 小器用にみかんを剥きながら、フランツが小五郎おじーちゃんのコタツでぬくぬくしている。 「油断は最大の敵です、坊ちゃま。――血糖が上がると眠くなり魅了されやすくなります。ご容赦を」 その横に立ち、無糖のアイスティーを差し出していたエルフリーデがみかんの皮をひょいと取り上げ、 「こちらも、ご容赦を――えい」 「ああっ、みかんはダメ! かんきつ類は許して! まじめにやりますからー」 じわじわとE・コタツに引き寄せられていたティセにむけ、いわゆるひとつのオランジュミスト。 「ああでも……なんだろうな……。 なんだかこのこたつよりもあちらのこたつのほうが暖かそうに見えるのだ……エルもそう思わないか?」 「私よりコタツの方が魅力的と、そう仰るのですね」 にじり、とコタツ(@おじーちゃん)から這い出たフランツが、コタツ(@エリューション)に這いずったまま近寄ろうとするのを見て、エルフリーデは表情ひとつ変えずに言い放つ。 「え? エル? エルフリーデ!? 違うんだそんなつもりではない! 世界で一番魅力的なのはお前だ! 僕の天女! 女神! その美しさときたらまるで星の……」 「どちらを選んでも割とどうでもいいのですが」 「エルフリーデぇええ!!」 しれっとあしらうエルフリーデ、抗議するフランツ。頑張れ男の子。 「――む? エルの素晴らしさについて語っていたら向こうのこたつに入りたい気持ちがどこかへ飛んでいってしまったな! 奇跡だ!」 ふと冷静になって歓喜するフランツに、エルフリーデは、でしょうね、と頷く。 「坊ちゃまの足の先が、既にそちらのコタツの中に入っておりますから」 「早く言ってくれないか!?」 慌ててもがくフランツの、しかし体は徐々にコタツに飲まれていく、その時。 「にゃ~!」 こたつむりティセ、渾身の一徹返し! その際に立ち上がる必要があるから、自分のおこたも冷える諸刃の剣! 「でもひっくり返ったコタツは冷えるのみ! 冷えたコタツには何の魅力もないのです。 あたしもよくママに炬燵布団を全部めくりあげられたのです……」 あるある。冬場の布団とか。 ともかくティセの言葉通り、冷気で一気に正気に返ったフランツは脱出に成功する。 一徹返されたコタツは、しかし見た目はただのコタツ――中にいるはずのリベリスタたちの姿はない。そのうえ、たとえ見た目はどうであってもそこにあるのはただのコタツではなかった。 今まで微動だにしなかった4本の足をじたばた動かし、反動をつけて(?)元の体制に戻る。 亀をひっくり返したのを想像してもらいたい。コタツだけど。 はっきり言って馬鹿馬鹿しい光景に、リベリスタたちの間に沈黙が落ちる。 ――頭脳を明晰にする必要がある。エルフリーデはそう考えて、アイスティーに入れるための氷を齧った。 「ああ、これは不覚。体温が下がって暖房がより恋しくなるとは! 坊ちゃま、私がいなくても立派に貴族の務めを……では半休を頂きます」 「え!? エルフリーデえええぇぇぇぇ……」 清々しい笑顔で一瞬にして抵抗を諦めてコタツに消えたエルフリーデを、フランツが引きとめようとしてそのままコタツにダイブした。 「あっちゃ~……」 せっかく助けたのに。そう呟いてティセがE・コタツを覗きこむ。 「もう! こんなものがあるからいけないんだよ! コタツなんて……。うん。このコタツに勝てたら、きっと新しいあたしに生まれ変わってるはず。 コタツがなくても生きていけるあたしに……」 見ていた小五郎の前で、語尾がゆっくり消えて行く。具体的にはコタツの中に。 ――背負っていたコタツも冷えた今、ティセのおこた欲を留めるものはなかったのだ。 取り残された小五郎はコタツの上に写真立てを置いて、E・コタツの布団をめくり、声をかけた。 「蜜柑……おでん……酒……団欒……。早く終わらせて皆で楽しみたくは無いですかのう……?」 のう――のう――のう――…………。 体育館の壁や床に反響した声が木霊する。 「禁断の奥の手を使わざるをえませんのう……。出来れば封印したまま終わりたかったですじゃ……」 やれやれ、とゆっくり首を振ると、「奥の手」の準備のために小五郎はコタツの上に置いた写真立てを見る。 「ばーさんや……すぐ帰ってくるからのう……。こたつよりも、ばーさんの方が魅力的ですじゃ……」 ――フレームの中には、微笑みを浮かべる女性の姿。 ●でもって、なか 「……ぇぇぇえええ!! って、ここは――ぶ!?」 エルフリーデがスタッと瀟洒に降りてきた傍に、フランツが体から落ちてきた。その上にティセがコタツの殻ごと落っこちて、フランツは肺から無理やり空気を搾り出される。 「気づいたら待機班がほとんどコタツの餌食になっとるー!?」 「別に用意してたコタツでぬくぬくしてんのかなーって思ってたんだが……」 状況を把握したレイラインと和人が、あちゃー、という表情を浮かべた。 一方ではミャウニャが、那雪を頑張って揺り起こそうとしている。 「こんなところで倒れるべきじゃないんだ。帰るべき場所があるんだろ、生きて帰ろう?」 「救出……だめ、わたしからこたつを取り上げるのは、だめなのよ……」 「コタツは良いゾ~。隣り合わせに座っテ、ふとした拍子に触れ合う太ももが堪らんのダ。 誰か早ク、生足を入れてくれないかナ~、そしたラ縋り付くのダ~スリスリなのダ~」 羽毛のせいで頭に熱がこもりやすいのか、やはり横になったままのカイの言動も、どこか怪しい。 「くそう、何とかして正気を取り戻してもらわねば……そうじゃ! この件が片付いたら皆と食べようと思ってたのじゃが、致し方無い。 ――喰らうがよい、おでんエアリアル!」 自棄を起こしたか、レイラインがにゃにゃにゃにゃー!! と、おでんを寝込むリベリスタたちの口に突っ込んで回る。あっつあつやで! 「あつつあっつ!?」 「口の中火傷した!」 「は、はふはふ」 アークのリベリスタの多くはそれで目を覚ましたが――問題は。 「これで全員目を覚ましたかえ。 ふう、良かっ……あ、しまった気を抜いてもうた……わらわとした事が、油断したわい……。 でも、皆救えたし……わらわは、まんぞ……く……」 \ニャーン!/ 丸まってしまったレイライン本人と、おでんエアリアルでも目を覚まさなかった、先に取り込まれていた3人である。というかおばーちゃん何してはるんですか。 「これは……魅了された人を抱えてロープを登っていくしか、なさそうだな」 義衛郎が手を口元に当てて考え込んだ時だった。 「聞こえますかのう……? 今から5秒後に放水を開始しますじゃ……。自主避難が出来る方は早くお逃げ下され……」 「水!? 5秒!!?」 遠く聞こえてきた小五郎の声に、何人かが一斉にツッコミを入れ、同時にコタツの中は一気に慌ただしくなった。慌ててロープを掴む者、寝こけたままのリベリスタを抱えあげようとする者、コタツに隠れる者――。 「5……4……3……」 5秒。言ってしまえば1ターンの半分の時間。その短時間でできることなどそうそうない。 「2……1……発射ですじゃ……!」 ざばっしゃーーーーん! ●さいごに、そと ずぶ濡れのリベリスタたち、計12人が這々の体でロープを上り、エリューション・コタツから脱出した。 そのあとは――中に誰もいませんよ、なコタツの命運など完全に尽き果てていた。 「ふぅ……恐ろしい敵でしたなぁ……。 皆でこたつに入っておでんや蜜柑を楽しむとしましょうかのう……。大人組には酒も振舞いますぞ……」 小五郎の誘うコタツに、皆一斉に足だけでも、手だけでもとひしめき合っている。 「あー、やっぱ一仕事終えた後の酒は最高だ。これで熱燗なら――」 髪の水気を絞りながら、和人はおっさんくさいことを言う。 「オッサン臭ぇ? 黙ってろ」 そんな、いえ、まだお若いかと。おっさんとかそんな滅相もないです、ハイ。 「へくしっ! ふぇくしっ!! あたし夏服だから……!」 こたつ布団に包まってがたぶるするティセ。ついでに言うなら防具は水着。――11月の寒空である。 その様を、ミャウニャの髪を拭いてやっていたエルフリーデがじっと見つめ、レイラインとティセの猫耳を見比べ――最終的にレイラインを見た。 「うう、恐ろしい相手じゃった……あれ、メイドさん、何でこちらをじっと見てるのかの?」 「――ところで私、猫が好きでして」 言うなり、ごそごそと何かを探り始め――取り出したのはネコジャラシだった。 「え、ちょ、何を取り出して……!? 猫の因子があるからといってわらわがそんな物に飛びつく訳 \ニャーン!/」 その様子に、ティセのしっぽもぱたりと動く。 「これぞ、日本の冬の醍醐味ですな……」 三高平のモーセは、なんだかしみじみとそう呟いた。 <終わっとく> |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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