● 彼女はお菓子が大好きでした。 毎日毎日、お菓子ばかり食べて暮らせたらいいのに、と思っていました。 始まりは可愛らしいと言えば可愛らしい、そんな願望だったのです。 しかしその願いが悲劇を生みます。 彼女がその杖を手に入れてしまったからです。 「何でもお菓子に変えてしまう杖」 彼女は、目に入るものを全てお菓子に変えていきました。煩い親も、嫌いな人も、片っ端から、何でもお菓子に変えていきます。好きな人からはどんな味がするのかを知りたくなった彼女は、その人もお菓子にして食べてしまったのです。 嬉しいのか、悲しいのか、そんな事も分からなくなり、彼女はただただ目に入るものをお菓子に変え、それを食べ続けるのです。 ● 「今回は、アーティファクトの回収をお願いしたい」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)がリベリスタの皆に向け、言った。 「物は、何でもお菓子に変えちゃう杖。ピンクと白で出来た、見た目は可愛い杖なんだ。能力も、杖の先を対象に向け念じればお菓子に変化させることが出来るっていう、ちょっと可愛らしさの漂う品なんだが、これが良く良く考えてみると、案外ホラーでさ。生物でも、物体でも、何でもお菓子に変化させられるわけだから、要するに、使い方によっては殺人兵器になってなってしまうということなんだ。そんなわけで、早急に回収をお願いしたいというわけさ」 伸暁は、資料のような紙の束をテーブルの上に滑らせ、皆に行き届いたのを確認してから、話を続けた。 「問題の杖は、とある廃墟と化した屋敷の中にあって、ノーフェイス化してしまった少女が持っているんだ。 屋敷の内部は所々がお菓子になっていて、甘い匂いが漂ってる。彼女が居るのは、二階の奥にある寝室なんだが、この手前に大広間があってさ。この大広間には、侵入者を感知するためのレーザー網が張り巡らされているんだ。これに当たると、少女の護衛、つまりは敵が出現してくる仕組みになっている。 敵の総数は、フェーズ1が8匹と、フェーズ2が3匹。 敵は全て討伐して貰わないといけないけど、探し出して討伐してもいいし、このレーザー網を逆手にとって利用してもいいね。大広間は広いから戦い安いとも思う。ただ、間取り的には、広間の扉一枚隔てた向こうが寝室になってるから。後で詳細を説明するけど、少女のノーフェイスが加勢しやすい構造にもなってることを忘れないでくれ。 で、敵の詳細なんだけど、元はこの屋敷の付近を徘徊していたカラスとこの屋敷で飼われていた犬が、E・ビースト化して、フェーズ1になっている。これが合わせて8匹だ。攻撃行動は、突く、噛みつくなどのシンプルな行動が多い。 フェーズ2については、広間に置かれた石像がE・ゴーレム化しているのが2匹。攻撃行動は、殴りかかってきたり、念のような物を飛ばしてきたりする。元は石像だったけれど動きは遅くはないね。 それから、少女のノーフェイス。これが1匹。問題のアーティファクトを持っている。攻撃行動はこの杖を使用した攻撃だね。広間での戦いを察知したら、恐らくは現れて加勢すると思う。 この杖を使われて、リベリスタの皆がお菓子になってしまう事はないが、身体が固まってしまうことはある。つまり、身動きが取れなくなるんだ。効果は約、3分間程持続する。君達の肉体的、精神的な力によっての誤差はあるけど、それでも誤差は一分間くらいかな。 お菓子の杖については回収後、アークの方へ届けてくれればいい。 敵を討伐した後で、尚且つ物体なんかに向けて使うとかなら、俺は別に止めたりしないから。自由にやってくれて構わない。使い方によっては、人が幸せになれそうなアーティファクトでもあるからさ。 と、まあ。今回はそんな感じだね。それじゃあ皆、宜しく頼んだよ」 って、頼むよとか言いつつ、あんまり人に物を頼んでる感じでもなく、むしろ若干偉そうな風情すら醸し出しながら伸暁は言い、リベリスタ達をぼんやり眺めた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:しもだ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月17日(土)22:47 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●とにかくのっけにカラスとか犬とか。 それは一見すれば単なる潰れかけのお屋敷だった。 でも中に入ると、潰れかけは潰れかけでも、よくある風化や劣化のための潰れかけではなくて、所々がお菓子になってしまっているための潰れかけだという事が分かる。壁の一部や柱の一部がビスケットになってしまっていて、それらはそっと触れるだけで甘い匂いを放ちながらぱらぱらと崩れ落ちてしまうのだ。 そんなちょっと普通じゃないけど要するに潰れかけのお屋敷に集った8人のリベリスタ達は、今まさにE・ビースト化してしまったカラスとか犬とかを探し出し、つまりはフェーズ1にランクされた敵を探し、発見し、討伐しようとしているところだった。その作戦の詳細については後ほど語るとして、とにかく討伐の様子である。 一階のとある部屋の扉の前に立つ『黄昏の賢者』逢坂 彩音(BNE000675)は、扉を挟んだ向かい側に立つ『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)に向かい、ちらっと合図のような目配せをしていた。 この中にカラスがいるのか。 するとその通りですとばかりに疾風が無言で頷く。 ええそうです、カラスがいます。 そして、多分こんな意志疎通がされたに違いないとか想像しつつ二人を見つめる、『紺碧』月野木・晴(BNE003873)。 とか、そうして無言で合図を送り合っちゃう場面はとっても格好良くて憧れるのだけれど、もしかしたら実際には、「この扉はあれだな、お菓子だな」「ええそうです、取っ手の部分はきっと飴です」とか、真面目な顔してそんな意志疎通だったかも知れないとか思うと、ちょっと笑える。 いや笑ってる場合じゃない。 「さあ、始めようじゃないか」 彩音が勢い良く扉を開けると、というかむしろぶち破ると、そこからすかさず疾風が、中へと飛び込んで行く。「敵の数は確実に減らすぞ、変身!」 って変身の状態が何なのかははっきり分からないけれど、それが装備を身につけることならば、屋敷に入る前から既にもう変身している。なのでそれは、単なる決まり文句とか、口癖とかなのかも知れないので、きっと引っ掛かってはいけない。 とは思いつつも、やっぱり一瞬引っ掛かってしまって「え」とか出遅れてしまった晴の前に、ぎゃあぎゃあと騒ぎ出したカラスの内の一匹が、鋭く飛び込んできた。 「うわっ」と思わず後退した瞬間、『カゲキに、イタい』街多米 生佐目(BNE004013)の放った暗黒がカラスに直撃。 「吝嗇するつもりはなくてな――喰らい尽す!」 とかいう台詞と共に、昨日の眠る前に新たに考案した格好良い決めポーズをびしっと一つ。 その間にも、最初は一匹しかいなかったカラスが、仲間が襲われてますがなみたいに、どんどんどんどん集まって来て、馬鹿みたいに集まってきて、最終的には五匹くらいになった。というか誰も様子みようとか思ってないあたり、馬鹿である。弱いだけでなく、フェーズ1は馬鹿なのである。 「なんやなんやめっちゃ来たやん。この際どんどんいっちゃえー」 『ビートキャスター』桜咲・珠緒(BNE002928) が、仲間達の戦いを見守り指揮し、具体的にはとにかく煽るだけな感じで仲間達を応援する。 こちらは、先程の四人とはまた別の場所に居る四人だ。敵は、E・ビースト化した犬が3匹。こちらもやっぱり、わー仲間が襲われてるーって馬鹿みたいに単純に寄って来て、最終的には3匹になった。 「はーい、いっちゃいますよー!」 珠緒の煽りに後押しされるようにして、『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(BNE001084) が巨大な鋼のハンマーを振り回し敵を殴れば、こちらでは『ヤクザの用心棒』藤倉 隆明(BNE003933) が、物凄い真っ直ぐに敵へと飛び込みぶっ飛ばす。 かと思えば、全身からぶわーっと細い気糸を放出した『必要悪』ヤマ・ヤガ(BNE003943) が、敵の弱点を精密かつ執拗に狙い撃ち抜いている。 「まずは目から貰おうか。次は脚だの」 出現する雑魚敵の数はわりと多かった。ただしそれらはどれもこれもさっぱり弱く、武器で殴ったり、ちょっとした技を使ったり、何なら素手でも思い切り殴れば討伐出来る程度だったので、ならば雑魚敵は雑魚敵だけで先に始末しておこうじゃないかと。 彼らは、そんな作戦を立てていた。 そして馬鹿みたいに一丸となって寄って来てくれた雑魚敵達は、すっかり彼らの手により駆除された。 ●とかいうその数時間前のこと。 アークブリーフィングルームの作戦会議。 8人のリベリスタ達が、これから向かう依頼について話合っている。 「さて、目標の数といい質といい、中々に気が抜けない仕事みたいだね」 資料に目を落とす彩音が、独り言のように呟いた。 「そうですね。先に雑魚を散らしておくのはどうでしょう」 テーブルの上で両手を組み合わせた疾風が、皆を見回しながら提案する。 「そうだな。ただ、E・ビーストの位置が曖昧だ」 生佐目が、アンニュイに髪の毛などを弄りながら、浮かんだ疑問を口にする。「まあ、ノーフェイスの位置する場所は結構奥だし、多少ドンパチしてもバレることはなさそうだが」 「んー、まあ千里眼で見渡せばE・ビーストの配置はわかりそうな気はしてるんですよね」 疾風が答える。 「大広間のレーザー網には引っ掛かってやるとしても、いきなりこれだけの数の敵とぶつかるのは少々分が悪いだろう」 彩音が改めて敵の数を確認するように読み上げる。フェーズ1のE・ビーストが8匹。フェーズ2のノーフェイスが3匹。そして頷いた。 「ならば彼の言うように、削れるだけ削ってから戦う方向でいこうか。あまり細かく決め過ぎても何だしな。臨機応変にいこうじゃないか」 「じゃあさ、じゃあさ」 とそこで、会議室の隅などで\荒ぶる甘党のポーズっ/などをとって見せていた晴が、口を挟む。 「どうしても見つからなかったE・ビーストはレーザー網感知でおびき寄せて纏めてどーんって感じだよね。わーいNOUKINばんざーい!」 ってなんか良く分からないけど、ななせもとりあえず傍に居たので、「わーいばんざーい!」とかなんか、一緒に万歳とかしてみることにした。そしたら隣の珠緒も遅れてばんざーいってやって、ちょっとしたウェーブみたいになって、そんな二人の次に座っていた隆明は、二人の何かちょっと期待してるみたいな目に見つめられ、はーじゃあ何かやっときます、みたいに万歳した。 ばんざーい。 とか一連の流れを聞いてるのか聞いてないのか全く分からない感じで、ヤマはぼーっとしている。 「それにしてもなんでもお菓子に変えるアーティファクトか……ごみに使えばリサイクルになるのかな?」 って今のNOUKINのくだりは全くスルーする感じで、彩音が話を戻した。 「上手く使えば問題はなさそうだから試してはみたいですけどね」 敵の情報についての資料に目を走らせたまま、疾風が言う。 「わたしもお菓子の杖って夢見たことはありますけど……このノーフェイスさんはちょっと使い方間違っちゃったみたいですね」 「せやな。うちもお菓子好きやけど。毎日食いたいとは思わんなぁ。ほら、人間って飽きる動物やし」 ななせの言葉に頷いた珠緒が、自らのギターを弄りながら言う。 「せやからアーティストかって飽きられんようにあれこれ工夫するわけやしさ。好きにもいろいろないとアカンわけよ。いくら好きやからってお菓子だけってなった時点で踏み外した感じやんな」 「でもさでもさ、やっぱりお菓子の杖、いいよね!」 じゅわっとまた晴が、\荒ぶる甘党のポーズ/などをとってはしゃいだ。 「だって面倒な宿題とかもお菓子にして食べちゃえばいいんでしょ? で次の日学校で、宿題は魔法でお菓子にしておいしくいただきました☆ てへっ、て言っちゃえばいいんでしょ。ってダメじゃね? 食べちゃ駄目じゃね? 食べても解決全然してなくね? むしろ更に怒られなくね?」 って最後まではしゃぎきってる晴を、すごーい冷たい目で見つめた隆明は、「えうん」ってすごーい冷たい声で頷いた。 途端に晴は、しゅん、っていうかむしろじゅんっとなり、上目使いにもじもじと隆明を見上げる。 「でもほら食費軽減にはなるから……」 「おう」 「やっぱり、お菓子の杖っていいな……って」 「うんまー何でもいいけどよ。とりあえずなんか可愛いくて腹立つから殴っていい?」 「つまるに如何に望みを抱こうとも、その論拠――砂糖菓子が如きもの。このアーティファクトは脆く崩れ去るが、世の定めだ」 生佐目が、アーティファクトの資料を手の甲でぺしぺしとやりながら、呟く。 「そうだの。ノーフェイスの仕業故、きっちり始末を付けねばならぬは確か。ヤマの仕事だ。きっちり送ろか」 「ほな、状況まとめてみよか。まずはEビーストを捜索・殲滅。探す時は千里眼とかのスキルを活用してやな。で、その後、大広間での戦闘や。侵入者感知のレーザー網に引っ掛かって、出て来た敵をどんどん蹴散らす。その際、ノーフェイスのアーティファクトを特に狙って奪取を狙う。そんな感じやな」 珠緒のまとめに、皆が、頷く。 「さあいざ往かん――闘争の河岸へ」 ●そして彼らは今まさに、大広間での戦闘を開始しようとしています。 AFで通信を行いながら、二つの班に分かれていた8人が、左右の廊下から大広間の扉に向かい走り込んでくる。 一瞬のアイコンタクトで合図を送りあった後、扉がだーんと開かれた。 途端にビィィィィーッと鳴り響く、電子音。大広間のレーザー網が、誰かの足なのか手なのかをさっそくもう感知したらしい。音と共に、広間の石像が動き出している。 すかさずその内の一体に向かい、疾風が飛び出した。それと同時に隆明が飛び出し、もう一体のE・ゴーレムをきっちりブロック。 疾風が舞うようになめらかな動きでDCナイフ[龍牙]を操り、雷を帯びた攻撃で敵の身体を斬撃し、体制を立て直すため一旦距離を置くと、続けてななせが「Feldwebel des Stahles」を振りかぶり、突っ込んでくる。 硬い石の身体に、鋼のハンマーをガッツーンとブチ込む。疾風の斬撃で脆くなっていた腕のあたりが、その衝撃で破裂し砕け散る。その頃隆明は、もう一体のE・ゴーレムを追い詰めている。拳には光るGANGSTER。大口径のリボルバーを改造したナックルダスターで、とにかく真正面からぶん殴る。真っ直ぐ行ってぶん殴る! 間にも大広間を駆け抜けた晴が、寝室のドアの前でノーフェイスの出現を待ち構えている。 待ち構えている。 待ち構えている。 ので、いきなりバーンッ!! とか扉が開いた瞬間、一瞬ひっとか全身の毛を総毛立たせ、むしろ驚いたから出たくらいの勢いで、全身から気糸をぶわっさー。 とか、ギャロッププレイで敵を拘束しようとしたのだけれど、一瞬早くお菓子の杖で、ビーっ! ノーフェース、杖からピンクとか黄色のなんかメルヘンチックな色の光線、ビーっ! あっちにも、ビーっ! ひーっなんでやー。と固まってしまった晴の後ろで、やっぱり同じように固まる隆明。 いやなんで俺なんだよ、おいおい。美味くねえぞ。俺多分普通に食っても美味くねえぞ。いやまあ違う意味で食べるなら美味……いや、美味くねえし! とかなんか、喋れないけど内心で喋ってみたりしつつ回復を待っていたら、そこでギャイーンと鳴り響くギターの音。 え? ギターの音? 「はー、やっとならせるがなー。もうノーフェイスさんも来たんやし、思う存分歌ってええよね?」 珠緒が、愛器を手に聖神の息吹を発動する。というか歌う。どんどん歌う。惜しまず歌う。それでは聞いて下さい聖神の息吹。 「それは~♪ ある雨の日のこと~♪ 君に~」 とかいう間にも、後方で待ち構えていたヤマと彩音が、同時にノーフェイスの杖を握られた手を狙い攻撃を繰りだす。 「彼岸で食う菓子は大層甘露と聞くぞ。…今度備えてやる故、今はおとなしう、逝ね」 そしてその体中から放たれるピンポイント・スペシャリティの気糸。 「私も君のその手をひたすら攻撃させて貰うとしよう」 彩音もまた、希望の輝きと名付けられた弓を構え、ピンポイントでその手を狙い打つ。 的確に的を射抜くかのような二人の攻撃に、ギャーっという敵の悲鳴が迸り、見た目可愛いお菓子の杖が、空へ舞う。 そこへすかさず滑り込んで来たのは、生佐目だ。 「悪いがこれはお預けだ――何、皆が代わりにいいものをくれるだろう」 とか何かいいながら、お菓子の杖をきっちりキャッチ。ずさ、ぱしッ。そしてまた、後方にズサーっ! 「お菓子の杖が私の手の中に……」 ふふふふふ。 とか、そんな明らか怪しい笑い声を放ちながら、彼女は体から暗黒の瘴気を放出。むしろうっかり地で出たんじゃないかと思うくらい、マイルドに放出。 「わーなんか体が動き出したー! ありがとー!」 その間にも珠緒のスキルで体の硬直から回復した晴は、よーし、反撃ー! とばかりに、杖の無くなったノーフェイスに突進している。 「甘いお菓子最高だよね! それは超わかるけど、でもね、人は食べちゃダメだったんだよ」 死を刻む、メルティーキッスをその頬に。 「ま、そういうこったな」 同じく硬直を解いた隆明が、その腹にドン、と拳を叩き込んだ。 ●お菓子にしちゃう杖。 「ゲェァーハーハァー! お前もビスケットにしてやろうくぁー!」 そして今、うっかりお菓子の杖を手に入れてしまった生佐目がお茶目にアーティファクトを振り回していた。 あっちにビーッこっちにビーッ、そっちにビーッそっちにもビーッ。 「ははー生佐目様ー。こちらの家具も是非お菓子にしちゃってくださーい」 ポニーテールを揺らしながら、晴がその周りをぴょんぴょんと飛び跳ねている。 「よかろー。びー」 「わーい。おかしーおかしー。そしてここで飛び出るマイ蜂蜜です。どーん」 と、懐から蜂蜜を取り出した晴は、ただでさえ甘いだろうお菓子にそれを遠慮なくドバーっとぶっかけ、胸やけしそうなくらい甘いそれをじゅるじゅるぱっく。 「はあん。至福の時だあ……」 「うわーやばい、あの子やばいで。あんな食い方してたら、絶対はよ死ぬで」 珠緒がイチゴタルトをそれとなーく頬張りながら、顔を引き攣らせる。 「んー。だな」 とかまーあんまり興味ありませーんみたいに相槌を打った隆明は、それより何より、ノーフェイスになってしまった少女を「この子が悪かったわけではないと思うからね」と、きちんと弔ったりしていた彩音のスイカ胸をちら、と。 見た瞬間に、彩音にもーばれた。 「今、何を見てたんだ、君は」 「うんあれだな。甘いものも美味いよな。これはこれで酒に合うんだぜ。どうよ、飲むか?」 そんな中、杖の威力で現れた個人的至高のお菓子である「鬼まん」を見つけた疾風は、今まさに、その味とかを確かめようと口に含み。 「……この鬼まん……うまいな」 「あ。祭雅さん。鬼まん楽しんでらっしゃいますかー! じゃあ、それにも俺の蜂蜜かけてあげるねー!」 「うわ、いらないいらない、いら、わー!」 「なるほど。蜂蜜かけか。こう見えてヤマも甘味には目が無うての。それも中々美味そうだ。ちと楽しませてもらおかの」 「いやいやいやいやアカンアカン、絶対やめといた方がええって!」 「あ、じゃあななせもいっきまーす!」 「いやいやいやいやアカンアカンアカン、いかんでええ、いかんでええって」 「ぐぇっへっへっへー! ほらほらどんどんお菓子にしてやるぞー。んー。やっぱりここで突如として現れるブラウニーはうまいだろうな。よし。生地もしっとりとしていてべたつかない、すっきりとした甘さのブ――まぁなんでもいいや」 「わーチョコブラウニー! 蜂蜜との相性は抜群! さあ、これにも蜂蜜を」 「やめろやめろ。何をしているんだ、ちょ、はちっ、蜂蜜、蜂蜜かけすぎだろ!」 「アカン。あいつをとめな。みんな餌食や。蜂蜜魔人の蜂蜜の餌食やでー!」 「蜂蜜魔人て。うんいやもう、そのネーミングも若干どうなの」 「知るかー。誰か、その手から蜂蜜を取り上げろー!」 「わー助けてー。蜂蜜は駄目だって、絶対いやだー、くそっい、いやー!」 そんなわけでリベリスタ達は、蜂蜜魔人の蜂蜜をきちんと没収し、今日も世界の平和のために活躍した。 じゃなかった。 きっちりノーフェイスを討伐し、危険なアーティファクトを回収し、世界のちょっとした平和に貢献したのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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