● 見た目は小学生くらいの少年だった。 彼は実のところ、別世界から現れた干渉因子というやつだったけれど、本人にはその自覚はない。 遊んでいる内に、何だか良く分からない場所に出てしまったなあと、そんな若干の心細さを感じつつも、好奇心に胸を膨らませ辺りを見回している。 そして暫く、その場所を探検してみよう、と決心する。 ● 「今回は、アザーバイドの捕縛をお願いしたいんだけどね」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)がリベリスタの皆に向け、言う。 「見た目は、この世界でいう小学生くらいの少年だよ。どうやら友人たちと遊んでいる最中に、うっかりD・ホールをくぐってこちらの世界へやってきてしまったみたいでね。彼の捕縛と送還を早急にお願いしたいんだ。というのも、彼は子供だからね。別世界の干渉因子だからという以上に、その内、彼の心細さが頂点に達してしまった時がちょっと心配なんだよね。つまり、まだ今はさほど怖がってはいないけれど、その内、周りに誰もいないことや、見知らぬ場所へ来た事への恐怖が膨らんで、暴走してしまう未来も微かに予知出来ててね。だから、最初に出現した場所、つまりこれはこれから皆に向かって貰う廃工場なんだけども、そこで早急に捕縛し、送還して貰いたい、というわけ」 それでね。と伸暁は資料のような紙の束をリベリスタ達に配り始めた。 「依頼の詳細についてなんだけど。まず、場所について。 場所はさっきも言った通り、閉鎖した廃工場だね。まだ内部に機械なんかも残ってるけど、電気は通っていない。D・ホールは、工場を出た外の敷地内にある。でも、アザーバイドは内部に居るからね。彼は最初、リベリスタの皆が到着したのを見て、怒られるんだと思って警戒するんだ。隠れているから、まずは見つけなきゃいけないね。 あと、敵についてなんだけど。アザーバイドの持ってたオモチャが、E・ゴーレム化してる。ロボットのオモチャでね。フェーズは2で、3体出現する。全長は約170センチくらいで、ガコガコ動いて剣を振り回し攻撃してくる。つまり、動きは余り素早くないかな。あと、自分の身体の一部だと思うんだけど、何やら部品のような物を投げつけて攻撃してきたりもするよ。 でね。アザーバイドについてなんだけど。 さっきも言った通り、アザーバイドは最初は警戒して隠れて様子を窺ってる。これをどう捕縛するのか、作戦なんかは皆で相談して貰うしかない。ちなみに、お菓子とオモチャが大好きらしい。まあ、子供にありがちだよね。ただ。この少年には一つ、厄介な能力があってね。それが、「フルオープン」とかいう呪文なんだよね。 元々そういう呪文が彼の居た世界にはあるのか、この世界だけで成立してるのかは謎だけど、このフルオープンという呪文を唱えられると、君達の頭の中がフルオープンしてしまうみたいなんだ。 哲学やポリシーや、趣味、嗜好、妄想、記憶や思い出、願望などなど、頭の中にある事が、露呈してしまう。何がどんな風に露呈するのかは、かけられてみないと分からないけど、一回かけられると、一つ露呈して、露呈してしまったらそれで終わり、という感じみたいだね。つまり、持続性とかはない。とはいっても、頭の中が露呈してしまうのは嬉しくないだろうけど、まあ、皆にはいろいろ頑張って貰いたい。 と、まあ、今回はそんな感じだね。それじゃあ皆、宜しく頼むよ」 って、頼むよとか言いつつ、あんまり人に物を頼んでる感じでもなく、むしろ若干偉そうな風情すら醸し出しながら伸暁は言い、リベリスタ達をぼんやり眺めた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:しもだ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月13日(火)23:35 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●誘き出しだか誘き寄せだか。 なんだか妙に、甘ったるい匂いがした。 それは多分、ホットケーキ的な物を焼いた時に出る匂いに似ていて、っていうか似ているも何もホットケーキだった。むしろ、ホットケーキそのものだった。けれど、今ここでホットケーキってどういうことなの、っていうか、僕の鼻おかしくなっちゃったんじゃないの、とか思って、『ハティ・フローズヴィトニルソン』遊佐・司朗(BNE004072)が背後を振り返ると、そこでは、思いっきり何食わぬ顔をした雪白 桐(BNE000185)が、物凄い無表情にホットケーキを焼いている。 そう、ホットケーキを焼いている。 っていやもう最終的には何でもいいのだけれど、っていうか、いいとか悪いとかの問題以前に、もう既に焼きだしてしまっているのでわざわざ止めるのも面倒臭いのだけれど、やっぱりこんないつ敵とか出現しちゃうかも分からない場所で、まずホットケーキを焼こうと思い立ったことがエキセントリック過ぎたので、思わず、言った。 「え、ごめん何してるの」 「ホットケーキを焼いています」 顔を上げた桐は言った。うんそれは見れば分かるし、むしろそれだけは分かるし、とか思ったので、質問を変えた。 「うんなんでホットケーキを焼いてるの」 「焼きたてのホットケーキとかは香りがいいですからね、匂いにつられて出てきてくれるかなと。要するにあれです。誘き出し大作戦です」 「でも何かもう、ちょっとした料理番組みたいになっちゃってんだけど」 「全部AFに収納して持って来たんですよ。AFって便利ですね」 って少しの感動も感じさせない無表情で言った桐は、同じ表情のまま、工場内部に向かい、声を上げた。 「おーい助けに来ましたよー。お腹空いてませんかー。一緒にお菓子でも食べませんかー?」 その声に続き、自作と思しき、組み立てられたプラモデルを手にした『┌(┌^o^)┐の同類』セレア・アレイン(BNE003170)が、 「はーい。良い子のみんなー。これで遊ぼうよー。出て来たらこれあげるよー」 って、雑な感じで言って、入口の前を素通り。 続いて、『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650) がそそそそ、と恥ずかしげに歩み出し。 たかと思えば、その手には持参されたかぼちゃのタルトがある。 「私達は決して貴方様を怒りませんよ……むしろ貴方様の冒険を歓迎しましょう。其れと甘い物を食べると幸せな気持ちになれる人も多いですから……良かったらかぼちゃのタルト如何ですか?」 頬を微かに染めながら、柔らかく目を細め、まるで優しさを形にするとそうなりますよね、みたいな顔と声で、工場内部に呼びかける。 そこでぴぴぴ、と桐のAFに着信が入った。 「こちら、潜入部隊のミリィです」 暗視のスキルを駆使して、工場内部へこっそり入り込んでいた『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)が、ひそひそ声で言った。彼女は、この誘き出しだか誘き寄せだかの作戦がしっかり成功するように、中の様子をちょっとだけ窺いに入ってくれたのだった。 「現在、E・ゴーレムはまだ現れていませんが、アザーバイドの姿は発見しました。彼はすっかり匂いと皆の声に導かれ、そちらに向かい移動中ですよ。大丈夫、しっかり誘導出来ています。迷子の子供だというなら、きっちり送り届けてあげましょう。悲しい結末なんて嫌ですから」 さすが、正義の味方リベリスタ。 やっぱり子供なんて意外と簡単。むしろチョロイぜ。 なんて思う人は一人もおらず、こんな所に迷いこんで可哀想だな、とか、早く元の世界に戻してあげたいな、だとか、みんなわりときちんと優しい。 とか思った矢先。 『DOOD ZOMER』夏郷 睡蓮(BNE003628)が、「やっぱりアザーバイドとは言え、子供なんだな。意外と単純だった」とか、さらっともう言ってしまった。すっかりマイルドに言ってしまった。 でも実際、チョロかったのだから仕方ない。彼にきっと悪気はない。あんまりない。ただちょっと元フィクサードで、ただちょっと素直なだけだったのだ。その証拠に彼は、若干感心した表情すら浮かべている。いやほんと、単純過ぎやしないか、それでこの先ちゃんと生きていけるのか、と。 「だが、子供とはいえ侮ってはいけない。ああ見えてフルオープンなどと恐ろしい能力を持っているんだからな。しかし今は一先ず……そのことは考えず、任務遂行に尽力しよう」 って若干むしろ、「フルオープン」の能力をびびってる風情すら、ある。 「よし、もう一息だね」 そこへばーん、と飛び出したのは『猟奇的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216) で、シャターッと、トランプを何かこうとにかくシャターッと、右手から左手に鮮やかに移し替えながら、「わー楽しーこれ楽しー。めっちゃ楽しー」って楽しいアピールし過ぎて逆にな感じになりつつも、入口の前を素通り。 た後には、ただでさえ和む容姿の『贖いの仔羊』綿谷 光介(BNE003658) が、さらにマイナスイオンとか放出しながら、持参した和菓子をもぐと一口頬張り。 「甘いんだけどなー、一緒に食べたいなー」 そして、微妙に何か色気のある目で、って自覚してるのかどうか分かんないけど、とにかく何か色気のある目で、工場内部を、チラ。 ちらちら。 っていうか何で上目使いなのか分かんないけど、和菓子頬張りながら、上目使いに、ちらちら。 「つーか、まあ皆何か若干から回ってる気がしないでもないけど、あれだよ。皆、君が友達のとこに帰れるように頑張ってるだけだから、怖くないよ。迷子の子がいるなら送り届けんのが大人の役目ってもんだからね。ここには友達もいないし日も暮れたら寒いし早く帰って友達や親を安心させてあげな」 最後に、背伸びしたい18歳のジャッカル君(司朗18歳・シークレットブーツ着用)が、入口に向かい、手を伸ばしながら、言った。 「だからそろそろ、帰ろう」 ●そして始まるフルオープン。 「そんなわけで虎美達はね、君を元の世界に戻したくて来たのね」 虎美が、ホットケーキを頬張るアザーバイド少年に向かい、この世界の事情とかについて一通りの説明をした。 っていうのをちゃんと聞いてんのか聞いてないのか、分かってんのか分かってないのか、最終的には何だか良く分からない顔で少年は頷き、とにもかくにもホットケーキを頬張る。よっぽど美味しいみたいだった。 「あと、この玩具達は持って帰って貰ってもいいですよ」 E・ゴーレム化してしまったオモチャの代わりになるようにと、用意していた物を差し出しながら、ミリィが言う。 「ただその代わり、君が持っていたオモチャは私達の方で貰ってもいいですか? あれが気に入ったので、交換したいんですが」 「なるほど。交換とは上手いですね」 ホットケーキ焼き担当の桐は、傍で聞こえる会話に、感心してるのかどうかは分からないけど、とにかくうんうん、と頷いている。 のだけれど、セレアは見ていた。 その手の中にある瓶を。明らかに何か絶対やばそうな物が入ってそうな色の中身の瓶を。 しかも彼は何食わぬ顔で今まさに、その瓶の中身をホットケーキの上にシロップとしてかけようとしている。 いや、料理上手な彼のこと。確かに、他の瓶の中に入っていたものは美味しそうなシロップばかりだったし、あれだって実は美味しいかもしれない。たとえ他の瓶の中身は、果物を刻んでシロップにつけたやつだろうなあとか、ちゃんとその果物の正体もはっきりしているものばかりで、あの明らかに得体の知れない奴とは違ったとしても、あれはあれで何か珍味とかかも知れないし。 いやいやしかもその前に、あたしがあれを食べると決まったわけではないし。 と思った矢先。 「これは、セレアさんの分」 とか。何か多分今、はっきり聞こえた。 「え」 とセレアは無で美形で、最早何か若干作り物めいた横顔をチラ見する。「あれ? なんですか」 「ん? なにがですか」 「いやあたしの分ってどういうことですか」 「なにがですか」 「えその瓶の中身ってなんなんですか」 「なにがですか」 「いや明らかに何かそれってえ。まさかまたあたし狙われてるんですか。いつもみたいにか弱く細々と吸血鬼しながら生きてるだけのあたしを、何食わぬ顔して甚振るんですか、そうなんですか、そうなんですね!」 「なにがですか、っていうか今のは若干苛っとしたので本気で甚振っていいですか」 「ちょ、ちょっちょちょ、ちょっと少年! 彼に、雪白さんに、フルオープンを! 早く! はははは早く!」 とか言っちゃったからかどうかは定かではないけれど、アザーバイドはまるで弾かれたかのように唐突に、フルオープンを唱え出し、唱え出し、唱え出してしまった。 その効果で、ぶおおんとかなんか、リベリスタ達の頭から飛び出す漫画みたいな吹き出し。 無表情に佇む桐の頭からも、それを思いっきり引き攣った顔で見つめるセレアの頭からも、アザーバイドと話をする美虎やミリィからも、和菓子とかタルトとか食べつつ、「彼はきっと冒険したいお年頃なのですね。勇敢な少年の冒険譚に華を添えてさし上げとうございます」とか、「シエルさんは相変わらず優しいですね」なんつって光介といちゃこら、ではなくて、優しくアザーバイドを見守っていたシエルの頭からも、同じく和菓子とかタルトとか食べつつシエルといちゃこら、ではなくて、優しくアザーバイドを見守っていた光介の頭からも、E・ゴーレムの出現を見張るため、工場入口の前で待機していた睡蓮と司朗からも、次々と飛び出す、漫画みたいなフルオープンの吹き出し。 そして以下、ちょっとしたカオス。 「あーこれ、ちょっと失敗しちゃいましたね。焦がしちゃったなあ……まあいいか。これも一応持って行きましょう。セレアさんならきっと美味しいと言ってくれるでしょうし」 「それ絶対この瓶の中身についての記憶ですよね」 「なにがですか」 「でも、焦げてただけなら、意外と良心的かも」 「ええ、焦げてるだけなら」 「え?」 「え?」 「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん」 「そうここで主人公の台詞が入るんだ。俺は正義の味方。それが俺に課せられた使命。うん。よし。これでよし」 とか何か独り言を言いながら、自作漫画を書いちゃう記憶。それは、中学二年の夏のことだった。 「ってなんだこれは、どういうことだ!」 「わー夏郷さん、めちゃくちゃ大人に見えたのに、意外とガ……」 「違う。これは何かの間違いだ。僕は記憶喪失のはずだ。高校生以前の記憶はないはずなんだ。だからこれは違う。何かの間違いだ。こ、こんな中学生だったなんて、これじゃ小学生低学年じゃないか! 違う! 違うんだ。何かの、何かの間違い……」 「でも僕の靴がシークレットブーツだってことは内緒だけどね」 「はっ」 「はっ」 「そうして私が玄関先で三つ指ついてお出迎えすると、光介様は優しい笑顔で微笑みながら、ただいま帰りましたと照れくさそうに囁かれるのです。ええ、お帰りなさいまし、光介様。今日も一日お疲れ様でした。お風呂にしますか? それともお夕飯? お風呂上りにはお肩をお揉み致しますね。私の手が柔らかい、ですか? そんなにじっと見つめないで下さいませ……ああ、お恥ずかしい……」 「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん」 「いやほんとそういうシエルさんの優しい所が大好きなんですよボクは。あと羽の手触りも大好きで……。しかも撫でさせてもらう時に、シエルさんがちょっとくすぐったそうに『ひゃう』とか言っちゃうのも大好きなんですよね。柔らかくて、ふわふわで、柔らかくて、ふわふわで。ああ、二回言っちゃった。とにかくもうできれば1日中ずっと触らせてほしいっていうか、でも羽だから。羽だから、いいよね。大丈夫だよね、嫌がったりしないよね、気持ち悪くないよね、気持ち悪くはないよね、大丈夫だよね」 「とか、思い切り完全に草食系男子の見た目で綿谷光介は意外とへ……雄だった」 「え、誰だ今の」 「はぅ……ご本人様の目の前少しだけ平穏な夢を観る事お赦し下さいまし……」 そんな中、何かわかんないけど巨大なロボットがガシガシ動いて戦ってるみたいな映像――Byセレアさんの頭の中。さらに何かわかんないけど、二人の美少女が見詰め合ってるきらきらした映像――Byセレアさんの頭の中。ついでに何かわんないけど、二人の美青年が……ピー……――Byセレアさんの頭の中。 に続いて、今日も冴えわたる美虎のブレイン・イン・ラヴァー! 燃え上がれ妄想! 脳内会話大・放・出! 「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃ……え? 虎美はいつだってお兄ちゃんの事しか考えてないよ! 嬉しい虎美愛してる? えーそんな! ありがと私も嬉しいよお兄ちゃん! 愛してる! ぺろぺろぺろぺろぺ……」 「わー、子供は見ちゃだめですー! これ以上はなんか駄目です!」 「あ、ミリィさん。アザーバイドナイス隔離」 「この隙に彼をD・ホールまで送ってきます!」 「というわけでセレアさん。このホットケーキを是非、どうぞ」 「いや、というわけでがもう既に分からないんでいいです」 「あんなけ恥ずかしい頭の中を晒しといてどういうことですか」 「いやそれは全然関係ないですし、別に晒されちゃっても意外とあたし、大丈夫ですし」 「ボクは、駄目です。暫く立ち直れそうもないです……」 「光介様……」 「僕もだ。これは何かの間違い……」 「うっせえ。ちびじゃねえよ」 「誰も何も言ってないですよ」 「ぺろぺろぺろぺろぺ」 ブチン。(何故かショートしたように強制終了で吹き出しが消えた音) 「さて」 その頃アザーバイドは、ミリィと共にD・ホールの前へと移動していた。 「ここが君の家への帰り道ですよ。もう道に迷ったりしないで下さいね?」 彼女に見送られながら、アザーバイドはD・ホールの向こうへと消えて行く。この何だかとっても不思議な冒険の話を、友達に聞かせてやろうと胸を躍らせながら。 「……バイバイ」 ●そんなこんなで残ったE・ゴーレムの駆除について。 リミットオフ状態で駆け出す桐が、デッドオアアライブの発動と共に、その一見すれば華奢にも見える全身の闘気を一気に爆発させた。 突風が吹き荒れる中、彼の手にある巨大な剣「まんぼう君」が、がっこーんと一体目のE・ゴーレムの足を叩き割る。バランスを崩し、膝をつく敵めがけ、虎美の手にある二丁の拳銃が交互に弾丸を放出した。的確に相手の腕の付け根を狙い撃ち落としたかと思えば、背後から新たにE・ゴーレムが二体出現。 「これで三体揃ったみたいだね」 虎美が素早い動きでその場を退くと、背後からすかさずミリィの放った神気閃光が、凄まじい勢いで並んだ二体を焼き払う。 「討伐完了が1です。一体は重傷、残りの一体は無傷です」 その間にも、状況を見据え、しっかりアナウンス。 そこへ飛び込んで来たのは、司朗の放った斬風脚のかまいたちだ。 風の刃がE・ゴーレムの身体にめりこみ、削り取るように切り刻む。その攻撃が終わらぬ内に、セレアがチェインライトニングを解き放った。 バリバリバリバリ! と、鋭い音と共に荒れ狂う雷が、派手な明滅を繰り返しながら、E・ゴーレムの身体を突き刺して行く。 その頃、光介は、マジックアローで後方からの支援をしようと頑張っていた。 頑張っていたけれど、なんだかさっきの自己嫌悪から立ち直れず、そんな自己嫌悪から立ち直れない自分にまた自己嫌悪し、自己嫌悪から立ち直れない自分にまた自己嫌悪している自分にまた自己嫌悪……ループである。完全に、悪循環である。 「くそー頑張れボク! ショックで戦えないなんて絶対駄目だ! 行くぞ、ま、マジックアロぉ……」 ぴゅー……。 って頑張ってみたものの、未だかつて見たことがないような覇気のなさのマジックアローが出た。 ガーン。と、肩を落とす、光介。 精神的ダメージが半端ない。二倍で半端ない。 と、そんな彼の背中に、そっと差し伸べられる最愛の恋人の柔らかい手が。 「光介様……その心、私で癒せますか」と。 「え」 「癒しの息吹よ……」 瞳を閉じたシエルは、頬を赤らめつつも、そっと光介の頭を撫で撫でして、撫で撫でして、撫で撫でした。 まーただ撫で撫でしただけなのである。 「私は、変わらず光介様の事が好きですよ……」 「シエルさん……」 その瞬間、光介の体中に漲る活力。やる気だ! 元気だ! ほらもうすっかり元気だ! 男って……。 「さあ最早敵は虫の息ですよ。後方から支援を!」 指揮を執るミリィが、光介を振り返る。 「任せて下さいマジックアロー!!!」 とか、強いかどうかはさいておいて、はしゃいだ感はそりゃもう半端ないマジックアローが、ぴゅーっと勢い良く空を飛んだ。いっぱい飛んだ。どんどん飛んだ。ちょっとしたパーティみたいに、飛んだ。 後にはちゃんと、光輝くオーラを纏った睡蓮が、サポートするかの如くその背後から、しっかりE・ゴーレムへと弾丸を叩き込み、きっちり敵を始末した。 どーん。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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