そこはとある病院の建設予定地。 昼間は甲高い金属音や、重機の動く音が周囲に鳴り響く。まだ鉄骨も組み上がっていない場所。どんな病院ができるのだろうかと、通行人たちは囁き合う。 日中は作業が進み、日が沈むと現場で働く作業員達は家路についていく。しかし、そこに残っている若者が1人。 「さあ、始めようか」 男がそう声を出すと、近くにあったクレーン車とショベルカーが動き出した。その二台の重機に、運転手はいない。しかしながら、重機は男の指示で動いているかのよう見える……いや、実際に動いていた。 男は、建設現場の入り口、蛇腹になっている門が口を開ける。そこには、運悪く仕事帰りのサラリーマンの姿があった。 「やれ」 男の指示で、クレーン車とショベルカーが動き始める。サラリーマンは逃げようとしたが、重機達の動きの方が早い。あっという間に追いつき、そして……。辺りへと赤いものが飛び散った。重機達は容赦なく動かなくなったそれへとクレーンやショベルを振り回す。 「いいねえ、1度やってみたかったんだよねえ。人間の解体をさぁ」 腕を組む工事用のヘルメットを被った男が、『それ』を黙って見つめる。しばらくして、もはや人間の形を成さなくなった『それ』を手に取った。男は恍惚とした表情で、『それ』を握り締めるのである……。 「……工事用の重機を使って、殺人を犯すノーフェイスがいるわ」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は集まったリベリスタ達へと、いつもどおりの静かな口調で説明を始める。 なんでも、病院建設予定地付近で、クレーン車やショベルカーが人を襲うのだという。しかも、運転する人もいないというのに。 「重機はE・ゴーレムとなっている。全て破壊しないと、次は確実に人を襲うわ」 この重機……E・ゴーレム達はフェーズ1。重機だけでも手ごわそうだが、その実、ノーフェイスの方が厄介かもしれない。ノーフェイスはフェーズ2。 ノーフェイスとなっているのは、現場の社員、鍾・潤(しょう・じゅん)19歳。強大な力に目覚め、そしてそれに溺れてしまった男だ。自身の体の一部を重機と化し、こちらへと襲い掛かってくる。 さて、現場となる病院建設予定地だが、昼間は建設工事が普通に行われている。そこでは、鍾も、彼に従うE・ゴーレム達も、なりを潜めているようである。 夜は完全に現場の入り口を施錠してしまうようだが、鍾は事件を起こす際に、入り口を開いて重機を出し、近場を通る通行人を殺害していく。 先手を取るなら、仕掛けるタイミングは作業が終わる夕方、あるいは、作業が休みの休日といったところか。場合によれば、鍾は不在かもしれず、重機だけを相手にできる。ただ、この場合、鍾に逃げられる危険もあるわけだが……。 確実に鍾を捕まえるなら、彼は行動を起こすタイミングを見計らうのがいいだろう。この場合は、被害者が出る可能性も高いことを配慮せねばならない。 「どちらの作戦をとるかは皆次第。でも、確実にノーフェイスを倒して。お願い」 イヴは真摯な瞳でリベリスタ達を見つめ、彼らにこの依頼を託すのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:なちゅい | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月20日(木)23:40 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●誘い出し、伸るか反るか 夕日が沈み、辺りが赤く染まっていく。 終業の鐘が鳴ると、作業を行っていた工事現場の作業員達は作業の手を止めた。背伸びをし、談笑を行いながら片づけを始め、やがて撤収する。 その中で、面白くなさそうに溜息をつき、鞄を抱えて歩き出す男がいた。彼はそのまま現場を後にする。 それを見計らうかのように、停めてあった乗用車から出てくる人影が工事現場の入り口へと近づく。 「失礼します。鍾・潤さん……で、よろしいですか?」 『闘争アップリカート』須賀・義衛郎(BNE000465) がその男に声をかける。男……鍾はさほど冴えない男に見える。しかし、この男こそ、今回の事件の首謀者に他ならない。リベリスタ一行はあらかじめ、彼が今日シフトに入っていることを確認し、接近を試みたのだ。 「現場職務の良い話があり、この度声をかけさせていただいた次第です」 『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂・彩花(BNE000609) は鍾に名刺を差し出す。大御堂重工支部の社長と書かれたそれを、鍾は食いつくように見つめる。 「よろしければ、コーヒーを飲みながら話などいかかですか」 いわば、引き抜きである。今の仕事に対してうんざりとしていた鍾にとって、この上なく興味をそそられる話だった。 「は、はい……是非!」 彼は何の疑いも抱くことなく、義衛郎と彩花についていった。 その様子を6人のリベリスタ達が見守る。一行は完全に去るのを見届けていた。 「うまいことやりはったなあ」 2人がどう鍾を誘い出すか興味を持っていた、『さすらいの猫憑き旅人』桜・望(BNE000713) 。巧みに敵の心理をつく作戦に、彼女は舌を巻いていた。 「いいから、さっさと避難させるぜ」 『スーパーマグメイガス』ラヴィアン・リファール(BNE002787) が現場へと真っ先に突入していく。そこには、まだ、帰宅していない作業スタッフ達の姿があった。 「おい、ここは部外者は立ち入り禁止で……」 現場監督らしき人物が一行へと怒鳴り散らしてくる。ラヴィアンは早速、魔眼で見つめる。すると、その監督はそれ以上声を荒げることなく、他の作業員達へと帰宅を促す。作業員達は監督の変貌ぶりに違和感を覚えたようだったが、上司の指示とあらば従わざるを得ない。個々に帰宅の途へとついていく。 「偉い人が重機のメンテナンスの為、作業員がこの後来るそうですよ」 それまで、雀の姿をした式紙を使って鍾の様子を注視していた『』風見・七花(BNE003013) も、作業員達の避難に当たる。それなら仕方ないと、帰宅する作業員もいたようだ。 その最中で、『リジェネーター』ベルベット・ロールシャッハ(BNE000948) は作業現場に結界を展開していく。これで、新たに立ち入る者はいなくなるはずだ。 さて、避難は順調に進む。それでも残業がと帰宅を渋る作業スタッフもいたのだが。 「ここが運命の分かれ目だって親切に教えてやってんだ、とっとと出て行きな」 『住所不定』斎藤・和人(BNE004070) が仕事を行う作業員へと個々に声をかける。彼らは和人をメンテナンスの作業員と勘違いしたのだろう。ちゃんと点検しろよと愚痴を吐いてから現場を後にしていった。 しばらくして、現場にはリベリスタ達以外に人気がなくなってしまう。一行がその現場を観察すると、入り口そばにプレハブ、そして、現場中央には大きな穴が掘られてある。基礎を作り、鉄骨をくみ上げている途中で作業は止まっていた。 そして、所々に工事用重機が置かれてある。 「皆さん、あの2台です!」 『贖いの仔羊』綿谷・光介(BNE003658) が千里眼を使って現場をくまなく眺める。本来、無機物を透視して遠くまで眺めることができる能力。しかし、それは逆に使うと、E・ゴーレムとなった物は見えてしまうということ。 それまで普通の重機として大人しくしていたクレーン車とショベルカーの2台から、駆動音が起こり始めたのである。 ●重機の速やかなる撃破を! その頃、義衛郎と彩花は、鍾を喫茶店へと連れてきていた。場所は工事現場から一区画ほど離れた場所。3人は店に入ると、最も奥側の席に座る。 「それでは、こちらに目を通していただいてもよろしいですか」 彩花は鍾へと予め用意していた資料を差し出す。それに目を通させるだけでもかなりの時間を要する。もちろん、2人の目的は時間稼ぎだ。 「これも……これも、いいな」 会社の資料の中には、重機の説明だってある。鍾はとりわけそういった資料へと夢中になり、幾度も目を通していた。その目は少し、いや、かなり淀んでいるようにも見える。 (そろそろ、始まったか……?) 義衛郎は1度、アクセス・ファンタズムにちらりと目をやる。まだ、仲間からの連絡はない。 一方、現場ではE・ゴーレムとリベリスタ達との戦いが始まる。2機の重機は、別々の場所に停められていた。 ラヴィアンは後方から瞬時に魔術を組み上げる。異なる4つの属性の術が光となり、狙ったクレーン車へと飛んでいく。 「エンジンをぶっ飛ばしてやるぜ!」 ラヴィアンの放つ光は、クレーン車へと次々にヒットしていった。しかしながら、クレーン車はうまく機体を動かして狙いを逸らしている。ただ、その攻撃でクレーン車はその機体の色を紫に変色させていた。エリューション化したことで、毒というものを味わう重機。その様子は実にシュールだ。 その間に、望も前方へと陣取る。 「あーし達が前で引き付けるからみんな攻撃よろしくねっ」 彼女は、クレーン車の注意を引きつけるべく、前方へと駆けた。そして、望は足元から自身の影を伸び上がらせると、その影は彼女を援護をすべく動く。彼女は死の刻印を敵に刻むべく、間合いを詰めていった。 七花もクレーンへと攻撃を仕掛ける。七花は頭上に真っ黒い大鎌を魔力で作り上げ、クレーン部分を薙ぎ払う。普通のクレーン車ならば、その大鎌はやすやすとクレーンを2つに切り裂いたことだろう。 「思った以上に硬いですね」 エリューション化しているそのクレーンは1度の攻撃では折れることがなかった。 一方、和人は狙いが手薄なショベルカーへと迫る。彼もまた、後衛にダメージが及ばぬよう、その身を張ろうとするのだが。 「ガチ重機相手に体張るとか、初体験なんですけど!」 いくらリベリスタとはいえ、重機相手に立ち向かうという図はかなり勇気がいる。覚醒していない人ならば、キャタピラに潰されただけでもお陀仏なのだ。 そこにショベルが彼を薙いでくる。決して軽くはない一撃。しかし、並の人間でない彼は、それに耐えて見せた。 「けど負けねー!」 和人は自らが手にする改造銃とアームガードを輝かせる。銃で殴りつけた後でアームガードを叩き込む! その連撃でショベルカーの表面が目に見えてヘコんでしまうが、まだまだショベルカーは動きを止めることなく、ショベルを振り上げんとしている。 コンセントレーションで自身の能力を高めていたベルベットが、ショベルを見据える。 「敵が人を解体する重機ならば、私は重機を解体する兵器ですよ」 彼女は腕に装着させたキャノンを、ショベルカーへと差し向けた。 重機の動きは遅い。しかしながら、1撃の威力はそれなりの重さがある。重機から振るわれるクレーン、そして、ショベルの威力はリベリスタ達にとっても脅威だった。 「あーしの回避力を舐めて貰っちゃ困るよっ」 望はそんなE・ゴーレムを翻弄し、攻撃をうまくかわしてはいたが、それでも、全てが避けられたわけではない。広範囲に届くクレーンやショベルは、こちらのメンバーをも解体せんと体力を削り取ってくる。一撃を受けた彼女は、思った以上のダメージに怯んでしまう。 「か、回復しなきゃ……!」 後衛に攻撃がいかないよう重機の手前に立つ望、和人。光介は彼らの減った体力を回復せんと、詠唱を行う。それが完了すると、微風が生み出される。 「できることをやらなきゃ……」 彼は次に傷つく仲間の回復へと当たっていく。 さて、見た目どおりにタフな重機達。しかしながら、機体はいたる所がヘコみ、駆動音にも異音が混ざり出していた。 七花は再度、魔力で作り出した鎌でクレーンを薙ぎ払う。ついに、クレーンを真ん中から二分してしまった。 クレーンはずしりと重い音を立てて地面へと落下すると、土ぼこりを上げる。大きな音を上げたはずではあったが、ベルベットが張った結界もあり、気づいた部外者はほぼいない。 「やりましたよ」 にっこりと微笑む七花。しかし、まだショベルカーが残る。ショベルを振り回して応戦するショベルカー。ただ、1体で奮闘するも、リベリスタ達にあっさりと追い込まれてしまう。 「重機の頭ってどこになるんでしょうね」 ベルベットは思う。エンジン部が心臓とするなら。クレーンは腕。キャタピラが足なら……。ベルベットは後衛にいたままで運転席を狙う。操縦席を射抜いた彼女の銃砲。ショベルカーは妙な駆動音を上げて、しまいにはそのエンジン音も止めてしまったのだった。 ●将来の殺人者を止める為 アクセス・ファンタズムで現場にいる仲間からの連絡を受けた義衛郎と彩花が頷き合う。話を切り上げて席を立ち、店の外へと3人は出て行く。 そして、店の前で彩花が話を持ちかける。 「すみません。今の現場も見てみたいのですが」 「いや、それは……」 どうせ辞める職場。そう考えた鍾だが、同じ業界の者に現場を見せるということは……。多少の守秘義務を持っている彼は、同業他社の人間を現場へと入れるわけにはいかないと考えたのだろう。あるいは、何か後ろめたいことでもあるのか。……例えば、E・ゴーレムとした重機。 「この話、前向きに検討させてもらいます」 鍾はそそくさとその場を去ろうとする。それを義衛郎が制した。 「待って下さい、まだ話は……」 しかしながら、それが彼へと疑念を持たせる結果を生んでしまう。彼は背を向けて走り去ろうとする。 「ちっ」 「気づかれました。皆さん、救援を頼みます!」 義衛郎は走る鍾を追いかけた。彩花は急いで仲間達と連絡をとり、彼女もまた鍾を追うべく駆け出す。 しばらく追いかけっこが続くが、鍾の方が先にスピードダウンする。鍾は人目につかないよう裏通りを走っていた。その為、リベリスタ2人も心置きなく武器を抜く。 義衛郎は太刀を抜き、巧みな剣術を使って切りかかった。実体化した幻影とともに鍾を翻弄する。 「ちっ、何者だお前達は!?」 期待を抱いていただけに、彼の憤りは激しい。鍾はついに戦う決心をし、その両腕をクレーンとショベルに姿を変える。 「上手い話には裏があるってね」 義衛郎もまた、2撃目を与えるべく構えた。そこへ彩花が鍾へと迫る。 「人様が苦労して造った重機を玩具にした報いは受けてもらいます」 彼女はその身の一部を重機に変えた鍾の体を掴み、思いっきり地面へと投げ飛ばす! 地面に叩き付けられた鍾だが、すぐに体勢を整える。そして、彼は右腕のショベルで2人を薙ぎ払う。ショベルでの衝撃が、2人の体へと衝撃として残ってしまい、彼らの体を弱体化させてしまう。 2対1の攻防が続く。鍾は隙を見て逃げようとするが、2人は攻撃の手を止めてでも鍾の逃走を防いだ。 「しつこいんだよ……!」 鍾はキャタピラへと足を変化させてリベリスタ達をひき潰さんとする。リベリスタ達は肩で息をし始めていた。抑えるだけでももはや精一杯な状況……。 そこへ、救援が現れる。工事現場から駆けつけた仲間達だ。 「格好悪いんだよ、てめーら悪党ってのは! 存在も、魂も!」 真っ先に飛び出すラヴィアン。彼女は素早く術式をくみ上げていく。鍾の目を狙って完成した術を放つ。 「くそ、最初から俺を狙ってぇっ……!」 力を解放した鍾は逆上する。怒り狂う彼を、駆けつけたメンバー達が取り囲んだ。 「だましてごめんやで……でも仕方ないけん……」 望は済まなさそうに鍾へと訴え、全身から気糸を放つ。ノーフェイスとなった鍾を止めることはもう出来ない。それが分かっているからこそ、彼女は悲しげな表情を見せる。 鍾は気合で糸から逃れる。それを和人、七花が狙う。和人が改造銃から銃砲を放ち、七花が魔力の大鎌で切り払っていく。 仲間達が攻撃を繰り出す間、光介が鍾を抑えていた2人の回復へと当たった。先ほどの戦いで連戦となっているメンバーも、傷ついている。 「術式、迷える羊の博愛!」 光介は彼らの傷を確認してから詠唱を始めた。彼が言葉を紡ぎ終えると、癒しの息吹がリベリスタ達へと吹き付ける。 「ぐがあああっ!」 さて、能力を解き放ち、理性を失いつつある鍾。彼は近場にいるリベリスタ達へとクレーンを振り回す。彩花がそれをもろに食らって吹き飛ばされてしまう。 「やはり、ノーフェイスに何を言っても無駄ですかね。とにかく、全力で滅ぼします」 ベルベットは周囲に気糸を張り巡らされる。それが鍾の足元へと絡みつき、彼の動きを封じてしまう。 「う、うああああっ」 そこに畳み掛けられるリベリスタ達の攻撃。単身でリベリスタ8人と戦う彼は、すでに瀕死の状態まで追い込まれていた。 ラヴィアンは 彼女は詠唱を始める。流暢な言葉で紡がれ、具現化した4つの属性の術。 「正義の魔法、遠慮なく貰っとけ!」 にいっと笑みを浮かべたラヴィアンから、立て続けに光が放たれる。それらは全て、鍾へと浴びせかけられていく。 「ぐあああああっ!」 叫び声が周囲へと上がる。光が収まると、それも止まった。彼はがっくりと倒れ、20歳に満たないその生涯を閉じたのだった。 ●あったはずの未来 予定通りとは行かなかったが、ノーフェイスとE・ゴーレム達を全て倒すことができたリベリスタ達。 「自分の力が認められず、腐る気持ちは解らんでもないが」 もう動かなくなった鍾を哀れみ、義衛郎が呟く。それは決して人殺しの免罪符とはなりえない。 「覚醒前の鍾さんは、重機を使って、何かを築きたいわけではなかったんでしょうか?」 光介が言うように、鍾にも志す動機があったはずだ。大型免許の取得を行うその行動は、それを示している。 「でも、基本が出来ていないと、応用などできないのです。下積みは大事なのですよ」 このまま仕事をしていても、失敗していたかもしれないとベルベットは言う。彼はいろいろと焦りすぎていたのかもしれない。 「自分の夢の為、得た技能を試したいというのは私にも分かりますが、方法が……」 重機に乗って事を成そうとした鍾。七花は万華鏡で最初に目撃された未来を思う。リベリスタ達が止めなければ、彼は重機を使い、無関係の人を殺害していたのだ。 元々重機に携わる彩花にとっては、それが許せなかった。 「重機だって、沢山の方の手で組み上げられた物です。それを悪用とした報いだと……私は思います」 「ああ、せっかく力に目覚めたってーのに、なんで悪事に使おうとしたんだか」 ラヴィアンは倒れる鍾を見て呆れていた。いい方向にその力を使えば、彼が望む、違った未来があったかもしれないのだ。 「神秘に気に入られなきゃ、いずれは世の中を知って真っ当な大人になれたかも知れねーのにな」 和人は逆に考える。目覚めてしまったからこそ、鍾はこうなってしまったのではないかと。嫌になるねぇと、和人は独りごちる。 (癒すことで、ただ居場所を得たいと思ってしまっている自分も……目的と手段を違えた1人なのかもしれない) 光介は仲間から背を向けて考えていた。力に目覚めたからこそ、それを使って居場所を作っている彼自身。そんな自分に少しだけ感傷を覚えながら。 「次の命は世界に愛されますように……」 望の言葉に合わせ、銘々が鍾の冥福を祈る。力に目覚め、道を外してしまったが為に未来を閉ざしてしまった若者へ向けて……。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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