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-煉々戦線-


 ぴくり。
 長く使わなかった感覚が今になって反応を示した。
「なんか、来たな」
 フェイトを得ているアザーバイドの少女は、素足で三高平を出て行った。
「好き勝手、させんぞヒスミィ」


「臭くない国。燃えてる臭いがしないしなあっ!」
 とても良い所だと。黒髪に黒目で黒服の少年は、吹き込んで来た春の風に全身を撫でられていた。その場所、マンションの屋上にある貯水タンクのその上。上手くバランスを取ってはその上から街を眺めていた。
 ふと、少年は手の平を上に。出したのは大玉の炎の塊がひとつ。

 マンションに住んでいる親子が居た。買い物帰りなのだろう、母は両手に荷物を持っていた、そんないつもの風景な帰路。もう少しでマンションの入り口が見える、そんな時だった。ふと、子がマンションの屋上を指さして、言う。
「お母さん、花火ー」
「花火? この時期には花火なんて――……ッ!!!?」
 見えたのは、花火なんてちっぽけなものに非ず。飛んできたのは炎の塊。
 ボッ。という音と共に、母の全身は轟々と燃え上がるのを子はただじっと見ていた。

「ギャハハハハハハ! 燃えろ燃えろ!!
 早く来いよ、シャム!! じゃねぇとぜーんぶ燃やしちまうぞ!!!」


「あーそぼ!」
 ブリーフィングルームに居たのは『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ(nBNE000608)だった。集まったリベリスタ達を見た瞬間、マリアは笑顔で資料をばさりと投げつけた。
「煉獄。炎を自在に操る異世界の住民がこっちの世界に来たのよ。それ、捕まえるから手伝って欲しいの。あ、なんか知らないけど、フェイト得てるっぽいわよ」
 聞いた事がある者は久しぶり、初めてである者は初めまして。
 炎の火力で上下関係と階級が決まる世界――煉獄。その世界での重要人物『煉』という少女はこの三高平で普通の女の子として生活している。だが先日、その『煉』は唐突にこの街から姿を消したらしい。杏里は彼女を探すために万華鏡を使っていて忙しいのだとかで……。
「今日来たのは下っ端の下っ端って感じだけど、捕まえられそうだから捕まえてって杏里が言ってたわぁ。ほんとはぁ、殺したい所だけど、ま、命令ならやるしかないって所なのよ。それに……久しぶりに、マリア、お外(三高平の外)に出してもらえるしねっ」
 キャッキャ。マリアは両手を万歳して楽しんでいた。
「おっそと! おっそと!!
 あ、あのね、行くのは夕方。来たやつの名前はヒスミィ。あとそれに従う兵器がいくつか。大丈夫よ、全部マリアが壊してあげるから捕獲に集中なさいな。
 夜にヒスミィがニンゲン燃やして遊ぶのは阻止しないとだから、夕方に行って待ち伏せするのよ。いい?」
 マリアは早く早くと扉をばこばこ蹴りつけていた。
 そんな光景は目の端に置いておき、リベリスタは杏里の作った資料を見た。
『時間をかけ過ぎると戦闘に介入してくる姿があります。敵とも味方とも取れませんので、用心を。あ、マリアさんの面倒、宜しくですよ』
 と、手書きで書かれていた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:夕影  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年04月24日(水)23:15
 終焉へ向かって突っ走れ
 夕影です、長く停滞していた煉獄ですが今まで関わりなくても問題無しです
 以下詳細

●成功条件:ヒスミィの捕獲

●煉獄の住人:ヒスミィ
・10代前後の少年の姿、凶暴ですが戦闘方法は至極単純
 フェーズ的には2、フェイト有り
 攻撃には全てBS火炎が付き、近接単体の格闘攻撃(神近単ダメ中BS崩壊)と、遠距離まで届く火球を投げる攻撃(神遠複BSショック)をします

●アザーバイド:ジャンク×30
・煉獄で生ける不良品
・個々の能力は低く、かなり弱いです
・近距離技を当てた場合、無条件でBS火炎が着きます
 攻撃は突進(神近単BS業火)

●フレイムキラー×2
・見た目は炎で構成された、頭を二つ持った犬
 全長3メートルくらい
・フェーズ的にいうと2
・BS火炎、業火がつく攻撃は無効で、攻撃力分回復
・攻撃には全てBS火炎がつきます
 火拭いたり(BS火炎)、噛み付いたり(BS出血)、尻尾でなぎ払ったり(ノックB)

●場所
・マンション屋上
 出入り口はひとつ
 日が完全に落ちる手前でヒスミィはフライムキラーに乗って屋上伝いにそこへやってきますので、それまで時間があります
 暗闇対策は無くても大丈夫です、敵が明るいので
 一般人対策は必要です、足場と広さには問題ありませんが、マンションの屋上にはフェンスが無いようなので、端に行き過ぎると落ちます

●『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ
・詳細はステシの通り。スキルは葬送曲(高速詠唱有り)、チェインライトニング、堕天落とし(神遠全BS石化ダメ0)
・指示が無ければ好き勝手します
 ある程度自分で考えて戦闘しますが、指示があれば相談に【マリア指示】と書かれた最後の発言を参考にします。が!聞くか聞かないかは解りません

●その他
・25ターン経過すると戦闘に介入する影があります
 それまでに戦闘を終わらした方が吉かと思われます

それではよろしくお願いします
参加NPC
マリア・ベルーシュ (nBNE000608)
 


■メイン参加者 8人■
スターサジタリー
不動峰 杏樹(BNE000062)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
覇界闘士
鈴宮・慧架(BNE000666)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
クリミナルスタア
坂本 瀬恋(BNE002749)
スターサジタリー
ブレス・ダブルクロス(BNE003169)
ダークナイト
フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)
ソードミラージュ
鷲峰 クロト(BNE004319)

●暴れる訪問者
 屋上の端っこに座って、足をぶらぶらさせる『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ (nBNE000608)。
「おっそと、おっそと、たっのしーなぁ♪ 真っ赤な紅茶とサクサククッキーがあれば、もっと楽しかったわぁ」
『マリアちゃん、近くにケーキが美味しいお店があるらしいよ☆ お仕事上手くいったら食べにいかない??』
 屋上の下ではリベリスタ達が通行止めキット等で一般人の侵入対策の労働をしている中、少女は気楽なものだ。そんな彼女に『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)はAFごしに会話をしていた。
「あらあら、気が利くのね。じゃあ早く殺さないと駄目よねぇ? 血の雨がお好みかしらっ」
『捕獲、だ。マリアのジョーチャン、間違えたら拳骨でごっつんだぞ』
「ぶー、瀬恋が言うなら仕方ないわね」
 回線に割り込んだ『ザミエルの弾丸』坂本 瀬恋(BNE002749)の声。それと同時に屋上の入口から瀬恋は現れて、マリアの手を引っ張って連行。
「そんな所に居たら、作戦が駄々崩れだろーが」
「ならしっかりお守りをする事ね……むぐー」
「はいはい」
 マリアは翼を広げ、瀬恋は屋上の壁に足を置いた。そのままマリアの口を両手で押さえて。

 煉獄。
 その響き、なんて久しぶりなものか。以前は此方の世界の情報収集に来ていたか……。今回の狙いは、なんだ?
 だがしかしだ、それがなんであれ阻止させてもらう。『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)は結界を張る準備をしていた――その時。
「どうやら、来なさったみたいだぜ」
 『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)は空気の温度が一気に上昇していくのを肌で感じた。そして轟々と赤く光る、屋上の上。
 そう、この熱さ。この世のものでは無い熱さをブレスはしっている。
「臭くない国。燃えてる臭いがしないしなあっ!」
 ブレスは確認した――ヒスミィだ。ジャンクを従え、フレイムキラーの上に乗っかりながら廻りを見回していた。
「へぇ、アザーバイドでも俺たち人間と同じ姿の奴がいるんだ」
「あぁん!?」
 ヒスミィが振り返る、だがそこには既に鷲峰 クロト(BNE004319)が1mも無い位置に居た。
 両手のナイフ――片方が冷気を纏って――それが鋏の様に交差する。作られた、ヒスミィの背にバッテンの傷痕。
「おお!? はっ! まさかお前等が変な力持った奴等ってンのか!! 超楽しそう、戦おうぜ!!」
「友好的じゃねーなぁ」
 友好的なら楽なのに、そうクロトは思いつつも攻撃の手は止めない。
 クロトはそのままフレイムキラーからヒスミィを掴んで引きずり降ろしながらため息を吐いた。
「楽しんできていいぞ、ジョーチャン」
「キャハッ!!」
 そこに重なる真っ黒な陣から放たれた堕天落し――その場は一気に石像祭りだ。瀬恋から解放された白い翼(マリア)に続いた黒き翼。
「壊される前に、どうにかする!」
 『狂奔する黒き風車は標となりて』フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)がバイデンが持っていた剣をバットの様にふった。
「とにかくまとめてぶっ飛ばす! 闇の瘴気を受けろ!」
 そこから漆黒が放たれる漆黒。巻き込めるだけ、見えるだけ、届くだけのジャンクとフレイムキラーに向って撃ち飛ばした。
「アタシもやるか」
 Terrible Disasterが手に馴染む。壁から屋上の床へ角度を変えて翔ける足。
「なんだかしらねーが、何しに来た?」
 瀬恋の身体がうねりながら戦場を縫った。傷つけるのは異世界の者だけ。つい近い範囲に居たフランシスカとクロトを傷つけそうになったが、足で踏みとどまりジャンクを打つ。
「何しに? ハッ、国取り合戦!! その序章ってかァ!!」
「それも聞き捨てならないけれど、まだ他に用があるんじゃない?」
 『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)が無数の弾丸を放つ。ジャンクを撃ち抜くその勢い、早くも七つのジャンクが炎が消えていなくなった。
「あーそっちぁ、言えねえ……」
「ええ、言わなくてもいいわ。『今』はね?」
 真っ黒な髪に真っ黒な目がミュゼーヌを睨んだ。
「今ァ? この俺になんか吐かせようとしてんなァ。やってみンならヤってみろ……や?」
「あら、石像姿で何を言っても小物に見えるわよぉ」
 マリアの言葉に、にこっと笑う終。ヒスミィがまた死角から攻撃を受け、その膝がガクリと地面に着いた。
「ァんだよ!! 五人じゃねェのかよ!!」
「だーれが五人つったんだよ」
 ミュゼーヌの弾丸に続いて、ブレスの弾丸も屋上の上を行き交った。またひとつふたつとひ弱なジャンクは消えていく。クロトの攻撃も止まらない、執拗にヒスミィを狙うのだ。そのナイフからジャンクがヒスミィを庇った。そしてそれが消えるの繰り返し。
 ヒスミィはの頬から汗が流れた。聞いていた情報ではこんな早くジャンクが倒されたと記録には無かったのだ。つまり、リベリスタが強さを増しているという事。
「なんだよ」
 つい、クロトが聞く。
「なんでもねーよ、ッチ、めんどくせー仕事回されたかよってな」
「不運だと思って、諦めるんだな」
 魔銃バーニーの引き金を引く。魔力を込めた弾丸は炎を纏った。だがそれは綺麗にフレイムキラーとリベリスタを避けてジャンクとヒスミィを撃ち抜いた。
 その瞬間、バリン!!
「あああ゛!? てめェらよォ、あんま俺ォ、なめんじゃねーぞ!!!」
 石化から脱出したヒスミィが動き出す――。
「放火魔。赦しませんからね」
 『大雪崩霧姫』鈴宮・慧架(BNE000666)が構えを取って身構えた。ヒスミィと同じ格闘を行う彼女。その色違いの目が光る。全て、この場で止めて見せると決意して。

●熱く、熱く
 終のグラスフォックが戦場を冷気で染める中、負けない程の速度でマリアへと向かったヒスミィ。
「てめェの技、なんかやばそージャァン!!」
「させると思ってるのか?」
 その間に杏樹が入る。最初からヒスミィをブロックするために近くに位置を取ったのが幸か。
「邪魔すぎんぞ!!! てめぇからイきてえってかァ!!」
 杏樹がヒスミィの炎を纏った拳を腹で受け止めれば、胃の中のものが逆流して吐き出す。だがそれでチリッとマリアの逆鱗が鳴った。漏れ出した魔法陣が怒り狂って回転する。
「こノぉオ、アンジュ傷ツけてタダで済ムと思っテんじゃアァ無ィわよォォオ!!!!!」

 ――教会に、堕天使が住み着いたらおかしいかな?

 ――おかしくない。ここには吸血鬼もいるしな。

 優しくしてくれた貴女だからこそ。
「アアァガガガガギギギギギギギギ!!!!!」
 仲間を巻き込まんばかりの雷の暴走――だが、ぽすんとマリアの頭の上に手が乗っかった。
「これが終わったら外での遊びに付き合ってやるから我慢しろ」
 瀬恋の声。そして瀬恋の手。強くて、重みがあって。
「ギギギギギギギギギ……ギ……ぃ、い、い……」
「マリア、私は大丈夫だ……」
 杏樹の声。
 マリアのチェインライトニングは精密に敵を射抜いた。
 それとほぼ同時に回転蹴りから繰り出された真空刃が豪速で飛んで行った。慧架の一撃だ、それは一体のジャンクを消し飛ばす。
「数が多いかと思いましたが、順調な様ですね」
「マリアのおかげだもん」
「ふふ、後でフィーリングベルのお菓子でもご馳走しますよ」
 慧架がにっこりとマリアに微笑んだ。数秒前まで鬼の形相だった堕天使だったがお菓子と聞いて満面の笑みをした。
 ま、そのお菓子パーティーの前に仕事は片付けなければ。
 未だ元気なフレイムキラーが終に噛みついた。炎がちりりと髪の先端を焼くのに苦笑いする終の背後。
「貴方の同類と思しき駄犬は、かつて私が駆逐したわ。貴方達も同じ様に、地獄に叩き落としてあげる!」
 そう、以前ミュゼーヌは煉という少女を攫おうとした同型のフレイムキラーの息の根を止めている。
「ッチ」
 舌打ちしたヒスミィ、それもそうだ。ミュゼーヌの乱れない弾丸は全てのジャンクを消し飛ばすのだ。ジャンク自体に罪は無いものの、戦闘を邪魔なのであれば、恋する乙女を邪魔するのなら、絶対に負ける訳にはいかない。
「てめえ、いつかその面ァ、燃やす……!!」
「やれるものなら、やってみなさい」
 ミュゼーヌのその声の後、フレイムキラーに向かう風ひとつ。
「やりなさい、フランシスカ」
「はいよ。でかいワンコロ、覚悟しなよ!」
 フレイムキラーでさえ真っ二つにできる程に大きいか、回転の力任せに巨鉈を振るフランシスカ。
 捕まえろとの命令、なら、叩き潰して捕獲する! 敵が暴れ馬ならなおさら、その方法が妥当だろう。
 振り切った巨鉈から暗黒の直線が飛んでいく――攻撃に気づいたフレイムキラーは終から離れ、屋上を奔る。
「逃げ切れると、思うなっての」
 その犬の背後をぴったりと漆黒は線を描いて辿る。ついに追いつかれたフレイムキラー。犬の形を構成する炎に漆黒がぶつかり、そこがぶれた。
「もういっちょってとこ?」
 フランシスカの目の前、ふたつの影。
「頼んだわ」
「任せとけ」
「おっしゃぁ!」
 ブレスと瀬恋がほぼ同時に出た。ぶれる炎のフレイムキラー。ハニーコムか、インドラか、全体攻撃に巻き込まれて体力のすり減った犬なんて敵じゃあ無い。
 ブレスがCrimson roarを強く両手で握り、大きく振り被った。ガアアと吼えるフレイムキラーだが、今更そんな威嚇――怖くもなんとも思えない。
 銃剣は叩き下ろされた。久しぶりに煉獄と戦闘できるのなら綺麗な姉ちゃんがくればよかったものを、なんだか糞生意気な餓鬼が来てテンション下がるし。そんな苛立ちと一緒にフレイムキラーの炎を二つに別つ。
「アタシが一匹頂いた!!」
 斬られたフレイムキラーに追撃は続く。
「ぶちのめされる覚悟、できたかァ?!」
 言葉を解っているのか、この兵器。でもそんなの関係ない。
 少し離れた先で瀬恋は断罪の弾を撃つ――一発二発三発四発、それは止まらない。弾が当たれば当たる程フレイムキラーの形はぶれ、最後には火が消えて何もなくなった。

「何の目的でこの世界に来たかは知らねーが好き勝手はさせねぇ。ボコボコにされたくなきゃ大人しくとっ捕まりな」
「つかまんねェ……まだ、負けてねーっつってんだ!!」
 残り、フレイムキラーとヒスミィ一人。だが確かにヒスミィは息一つ切らしていないのがクロトには引っかかっていた。
 やはり煉獄の下っ端と言えども戦国に身を置くだけにタフで負けず嫌いか。何をしに来たかは解らずとも、この少年が強力な戦闘員である事には変わりは無いのだろう。
(下っ端でこれなら、もっと上の奴等は……)
「ま、どう吼えようと、捕まえて見せるけどな」
 クロトはそう言うと幻影剣を振りかざす。その前に終のグラスフォックが周囲を凍てつかせる。
「もしかして」
「あぁ?」
「冷たいの苦手?」
「うっっっっせえ!!!!」
 どうやらこのヒスミィ、寒いのが嫌なようでグラスフォックから必死の形相で逃げていた。かわした凍結、だがすぐにクロトの幻影剣が肩を切り裂く。
「こんな所まで女の子追いかけて来たんだ~、好きなの??」
「だっだだだっ、誰がシャムの事なんか!!」
「そのシャムって誰だよ」
 終がくすくす笑い、ヒスミィが顔真っ赤に染めた。だがクロトは重要な一言を聞き逃さなかった。
「下っ端だと、この程度の炎か?」
 立ち直った杏樹。だが相手は今はフレイムキラーだ。マリアの雷と重なり、精密な射撃でフレイムキラーの頭を撃ち抜く、そこの炎がボッとぶれた。
「そろそろ、消えてもらいたいのですが」
 慧架がフレイムキラーに接近――すぐさまその巨体の頭を上から抑えて地面に叩きつける。だがしかしだ、この兵器には頭がふたつだ。片手で一つの頭を、もう片方は踵落ししながら地面に叩きつける芸をしたのだ。
「頭が二個なら、まあ仕方ないでしょう」
 落した足の間から、ちらっとパンツが見えた気がした。
「さっきは瀬恋にやったけど、次はわたしだね!!」
 どうやら最後のフレイムキラーにもオネムの時間が来たようだ。フランシスカが再び大きすぎる獲物を振り上げた。
 振りあがった両腕の間から紫にくすんだ瞳がギラリと光る。それをフレイムキラーは恐怖と感じたのだろう、キュウっと喉を鳴らす。
「でもだめ、壊す。赦さない、赦してやらない」
 戦いはなんて楽しいものかな。
 振り落とす獲物、溢れ出る漆黒――獣の頭をかち割ったと同時にそれは蒸発して消えていった。
「さて、と」
 ちら、フランシスカの眼がヒスミィを見る。
「で、あとは貴方だけだけど?」
 そしてミュゼーヌが武器のチラつかせながら迫った。
「ち、チッ、チィ!!」
 ヒスミィはじりじり背後へと足を動かした、だがそれも終の俊足の回り込みによって阻止される。
「あんだよ、殺すなら殺せよ!! 八対一なら俺なんてすぐだろ!? ナァ!!!!?」 
「殺すつもりはないから、安心なさい。貴方に用があるの。大人しく付いてきてもらえるかしら」
「は、はぁ? な、なに言ってんだよ」
 ミュゼーヌが言ったその言葉、ヒスミィには理解ができないようだ。
「戦争ってのは命取るか取られるか、だぜ? なのに殺しに来た俺に大人しくついてこいだぁ……?」
 この青い空の世界は、どうにもこうにも調子が狂う。
 だから――。
「だから、大人しく連行とか屈辱だからよォオ!!!」
 ヒスミィは腕を上げ、炎を作る。それが遠距離にも届く業火の珠。

 ガァン!!!
 ドゴォ!!!

「ぃ、ぎ、がふっ」
「おーおー、テンション高いねぇ」
「燃やすのが楽しいと言うのなら、自分で受けてみるのもいいんじゃないでしょうか」
 炎を生み出していた手のひらを、ブレスの弾丸が容赦なく射抜く。ヒスミィの手首には綺麗に風穴が空いたというもの。
 慧架の炎の拳がヒスミィの腹部にめり込んでいた。細くなった瞳がどちらも蒼かったのは一瞬だけ。
「ボコボコにされないと捕まらなかったってか」
 クロトが苦笑いしながら倒れ伏すヒスミィの姿を見ていた。
「マリアが殺さなかっただけ、はなまるってやつだよ」
 歯ぎしりすりマリアを見ながら、フランシスカは肩を落とした。

●やっぱりこの人だったみたいです
「杏樹。杏樹……大丈夫?」
「ああ、問題ないよマリア。心配してくれているのか?」
「え……ちっ、違うわよ、ただ、なんかこうむずむずしただけなんだから!」
 戦闘後、ヒスミィが伸びている横でマリアは杏樹に抱きつきながら、そんな会話をしていた。

 ――しばらくもしない時だった。

「……嗚呼、どうやら私が来るまでも無かったか」

 煉。という煉獄の×××。炎の翼が背中に生えていた。
「やっぱり、おまえか」
 ブレスが髪を掻きながら彼女に言った。黒目黒髪、シンプルな姿の少女。
「ん。これが煉って奴か。アザーバイドがフェイトをねぇ。確かにフェイトの気配がする、それも沢山だ」
 クロスが煉を珍しそうに見つつ。ブレスは背中のアレを指さした。
「なんか、背中に生えてんぞ」
「うむ、一目に付くかもしれなかったが急ぎだったのでな」
 すぐに隠した羽。ブレスは、ああそう、そういう事もできるんだな、と一言ため息を吐いた。
「フォーチュナの探査は恐れる程に視えているのだな。……どいてくれ、ミュゼーヌよ。そやつは」
 煉が全てを言う前にミュゼーヌが、フランシスカにふん縛られているヒスミィを隠すように煉の前に立った。
「貴女はもう、戦わない選択をした筈よ。それに彼は生かす様に言われているわ、杏里にね」
「……そうだったか。いや、私のせいですまない。だから自分の起こした災厄は自分で払おうと思ったんだが……悪いな、また借りを作らせてしまった」
 煉は顔を斜めにしかめっ面をした。そんな空気の中、終が言う。
「とりあえずさ、煉ちゃん。まず、靴買いに行こう?」
「……うむ? ああ、そうだな……つい、こんな姿で来てしまった」
 裸足だった。靴無いと、怪しまれそうだ。
 だが終にマリアが彼の服を掴んで引っ張りながら。
「ちょっと、終。マリアとケーキは? ねぇ、ケーキは!? ねえねえねえねえ!!」
 と、不安を口にしながらダブルブッキングが発生していた。
「いいもん、慧架、クッキーたべたいの」
「はい、いいですよ」
 慧架の眼はいつものオッドアイに戻っていた。

 とりあえずは、この一件は平和に終わった様だ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
遅れて申し訳ございません
依頼の結果は上記のとおりに成りました、如何でしたでしょうか
まだまだこの話は続きそうですね
それではまた違う依頼でお会いしましょう