下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






さいかち

●昆虫の王様
 カブトムシと聞けば、多くの人がその姿を思い浮かべることができるだろう。焦げ茶色の、丸みを帯びた頑丈な体つきに、雄々しく生えた立派なツノ。ペットとして飼育されることも多い、まさしく昆虫の王様と呼んでもいい存在である。夏といえば、この王様を探し求めて少年たちが山の中を駆け巡ったものである。
 夏もとっくに過ぎ去り、気温も下がったある日の夜。季節外れも甚だしく、カブトムシが一匹、町外れの採石場に現れたのである。
 ただし。

●超・昆虫の王様
 「大きいの」
 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、そう簡潔に表現した。
 「普通は、大きくても角を含めて7~8cmくらい……それが、今回出たのは」
 このくらい、と両手をいっぱいに広げたイヴだったが、手を戻して続けた言葉は。
 「角を含めて、8m以上」
 とても、彼女の身振りでは表現し切れていなかった。何らかの要因でエリューションビーストとなったカブトムシが、フェーズが進行して巨大化し、ここまでのサイズになってしまったということらしい。
 「特別な能力は持っていないみたい。戦闘には消極的な、ただの大きいカブトムシといったところだけれど」
 その大きさこそ、問題なのだという。少なく見積もっても、そのサイズは通常の100倍。その体積は1000000倍にもなる。体重は体積に応じて同じく1000000倍になるため、通常サイズの個体の体重を約10gとすれば、単純計算で10トン以上に達する。そこにいるだけで地面がめり込みかねない、そんな存在が人里に現れると、大パニックになることは間違いない。
 「そんな状態で、動けるのか?」
 リベリスタの一人が発した疑問は、至極当然のことでもあった。そこまで大きくなってしまっては、自分の力だけでは身体を支えることなどできないはず……。
 「動くことはできて、身体に支障もない。常識はずれだけれど……エリューションだから、だと思う」
 角の先端に込められる力は瞬間的には岩石も粉々に砕くほどのものとなるが、このE.ビーストの性質が大人しく、スピードも早くないため、戦闘力自体はそう高くない。最大の障壁となるのは、その発達した外骨格からなる頑丈さである。生半可な攻撃では、撃破までかなりの時間と労力を要することになる。うまく急所を見つけて攻撃する必要がある。
 「基本的にあまり動かないようだけど、街の灯りに引かれて、住宅街に向かって飛ぼうとする可能性もあるから、気をつけて」
 攻め手を考えつつ、リベリスタたちはイヴの言葉に頷いた


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:クロミツ  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年11月12日(月)00:37
お世話になっております。
クロミツでございます。

今回は単純明快、デカ昆虫をやっつけろ!といった内容です。
向こうから積極的に攻撃を仕掛けてくることはありませんが、
自分の身に危険が迫れば流石に反撃してきます。
とにかくデカくて重いため、接近には気をつけて。

非常に頑丈とはいえ、無敵ではありません。
弱点を見つけ、楽に倒すもよし。
正々堂々、真正面から倒すもよし。
色々と試してみてください。

よろしくお願い致します。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
覇界闘士
付喪 モノマ(BNE001658)
クリミナルスタア
イスタルテ・セイジ(BNE002937)
レイザータクト
恋宮寺 ゐろは(BNE003809)
マグメイガス
シェリー・D・モーガン(BNE003862)
プロアデプト
鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)
ダークナイト
茜日 暁(BNE004041)
インヤンマスター
逢那美 不見火(BNE004109)

●サイカチムシと、呼ばれる訳は
 季節は秋、時刻は深夜。街の明かりが遠くに見える、人気のない広大な採石場。そこに繋がる、車一台が通れる程度の道幅しかない雑木林の遊歩道を歩いてくる7名の人影と、その後方からゆっくり走ってくる一台の普通乗用車。
 巨大なカブトムシ、もといエリューションビーストを征伐するためにやってきたリベリスタ達が、採石場へと足を踏み入れた。
『ああ……あれだな。相違ない』
 後方で停止しライトとエンジンを停止した乗用車から、1名の女性が降り立つまでの数秒の間に、先頭を歩いていた『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)の、敵の発見を知らせるハイテレパスが一同に伝わった。
 目下周囲を照らすものは、雲ひとつない空から降り注ぐ月明かりだけ。しかしそれでも、甚だしく巨大な昆虫の王様を照らし出すには十分すぎるものだった。
 何しろ、だだっ広い土地の中央に、漫画であれば、どーん、とか、ばんっ、といった効果音を伴っていそうな存在感で、小山ほどもあるスケールの物体が鎮座しているのだから無理もない。
「まあ、大きなカブトムシ……」
「怪奇! 季節外れの巨大カブトムシ、って所かい?」
「いやぁ、なんかテンション上がるな。男の子の浪漫だね、でっかいカブトムシ」
 小山のようなカブトムシを直視し、感嘆の声とともに真っ直ぐな感想を述べたのは、能面に素顔を隠した逢那美 不見火(BNE004109)だった。彼女の言葉を受け、左右の耳の後ろで結った黒髪を揺らしながら『SCAVENGER』茜日 暁(BNE004041)が興味津々に見上げながら言葉を発し、『BlackBlackFist』付喪 モノマ(BNE001658)が感心したように言い、三人で月明かりに照らされる黒々とした塊を見つめた。
 当のカブトムシ、いやエリューションは、今のところまったく動く気配を見せない。
「本当にすごい貫禄だな……。それはそうと、地形はおおよそ把握できた。聞いてくれ」
 千里眼で周囲を分析していた『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)は、一同に地形を伝えた。
 今現在、リベリスタ達と目標の距離は約50mで、目標の背後、つまりカブトムシを挟んだリベリスタ達の反対側には、高さ十数メートルの岩壁がそびえている。この岩壁が採石場を覆うように展開されており、直径60mほどの、半円形の競技場のような形になっている。後方にはリベリスタ達が通ってきた雑木林が広がっている。
「私達が通ってきた林には……どうやらサイカチの木があるみたいです」
 メガネをずらしつつ、乗用車を運転してきた女性……『メガメガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)がそう付け加えた。
 サイカチは樹液を出しやすく、またそれはカブトムシやクワガタムシにとっては好適な食料になる。その樹液を求めているのか、それともその先の住宅地の明かりにひかれているのか。その意図を読み取ることはできないが、ともあれエリューションの角は林に、ひいてはその先の住宅地に向けられていた。依然として動く気配を見せないが、放っておけばいずれは住宅地へと向かうだろう。
 エリューションが動きを見せない今の状況は、リベリスタ達にとっては戦闘の準備を整えるためにも好都合。一同は目標への距離を詰めると共に、その正面へと立ちはだかった。住宅地への進行を阻止するためのブロックだ。
「本当に見事なカブトムシだが、感心してばかりもいられない。倒すぞ」
 そう言った疾風がアーク製スマートフォンを構え「変身」と続ける。その言葉に呼応するように疾風の身体を一瞬にしてバトルスーツが覆っていく。その横をするりとモノマが通りぬけ、エリューションの側面の岩壁に向かう。イスタルテは、運転してきた乗用車に一旦戻るとエンジンをかけ、ライトをハイビームで点灯した。
 最大規模の昆虫退治が、今ここに幕を開けたのである。

●ヨロイの中で、弾けとべ
 リベリスタ達が今まさに攻撃を開始しようかというところだが、エリューションはというと、依然として大きな動きを見せない。
 その姿は、昆虫図鑑に乗っている普通のカブトムシそのものだ。前衛の3人の姿をその複眼で捉えているはずであり、乗用車からのハイビームで正面から照らされているはずなのだが、触角をわずかに揺らすばかりで歩き出そうとしない。
「それにしてもこの大きさっていうのはびっくりというか、大きすぎですよう。やーん」
 車から降り、前衛のポジションへと進み出てきたイスタルテは、目の前にびっしりと並んだ大きな複眼の一つ一つが自分を映していることを認識し、冷や汗をかきながらも気を引き締めた。
 彼女の数十メートル後方では、彼女の乗用車のライトが強い光を放っている。光源を確保することで、リベリスタたちを飛び越えて住宅地を目指すのを防ぐのが狙いだ。
 と、エリューションがようやく動きを見せた。ゆっくりと右前足を上げ、イスタルテの車に向かって歩き始めたのである。ゆっくりと。ゆっくりと……。
「遅ぇな!」
 後方で自分の攻撃に備え、集中してエリューションを見ていた『Le blanc diable』恋宮寺 ゐろは(BNE003809)が思わず大声で突っ込みたくなるほど、その挙動は鈍重そのもの。動くこと自体は問題ないという話ではあったが、問題こそなくとも、移動速度まで100倍増しとはいかないようだった。
「やはり、そんなに大きくては動くのも一苦労なのでしょうか……さぞかしこの世界は窮屈なことでしょうね」
 フライエンジェの翼で10mの上空へと舞い上がった不見火が、その一挙一動を冷静に観察していた。もともとカブトムシの歩みは速くないが、この超大型カブトムシは、脚の一本一本を動かすことが、彼女の目にはひどく大変そうに見えていた。
 しかし、ようやく上がった右前足が地面に着くと、ずぅん、とでも表現できそうな重々しい足音が鳴る。踏まれればひとたまりもないだろうこと、足下への接近が危険を伴うことは間違いない。
「あれじゃ、腹を狙うためにひっくり返す、っていうのも無理そう」
 事前に身体の構造などを下調べしてきていた『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)がぽつりと言った。カブトムシは脚の関節近くにある爪を刺すことで木に張り付くことができる。本体がこのサイズにまで巨大化したことで、張り付くために用いられるそれも同様に巨大化しているため、採石場の地面に深々と突き刺さるほどのものになっていた。この爪でしっかり地面にへばり付いていては、余程の力でなければひっくり返すことはおろか、身体を持ち上げることもままならないだろう。
 最初に攻撃を仕掛けたのは、イスタルテだった。フィンガーバレットから発射された神秘弾が、一直線にカブトムシの頭部に向かって飛んでいったが。
「うわ、ホントに硬いね。跳弾しちゃったよ……」
 暁が驚き呆れて呟いた通りだった。顔に迫る弾丸を反射的に回避しようとしたのか、それまでの動きとはうって変わり、頭を素早く動かしたエリューションの角に当たって見事に跳ね返ったのである。
 一瞬の後、側面に回り込んでいた疾風が、片刃の大型コンバットナイフ「DCナイフ[龍牙]」を構えて距離を詰め、横腹に斬りつけた。果たして、かつんっ、という音とともに鋭利な刃は弾き戻され、疾風は踏まれるのを回避するべく後方に転がって素早く距離を取った。
「普通に斬っても効果が薄いな。当てるのは難しくないが」
 次なる攻撃を繰り出すそうとする疾風を全く意に介さず、しかしやや速度を上げて、エリューションはまっすぐに乗用車をめがけて進む。元来、頑丈なカブトムシである。巨大化したことで、その硬度も恐ろしく強化されているのだ。
 しかし、ずんずんと歩くそのすぐ眼前で閃光弾が炸裂した瞬間、エリューションはびくりと歩みを止めた。
「はいよ、こいつは効くんだね。硬くて重いなら、まずは動けなくしちゃったよ」
 集中を経て放たれたゐろはのフラッシュバンが、ダメージにこそならなかったが見事にエリューションを怯ませ、その場に硬直させていた。
『なんたる巨躯、なんたる硬度。だが、それでこそ対峙する価値があるというものだ』
 戦闘力こそ恐れるほどのものではなさそうだが、一筋縄ではいかない相手に、シェリーは戦意を燃やしていた。彼女は意思疎通をハイテレパスにて行うため、彼女の強い思念は全員に伝わってくる。自分の周囲に展開した魔方陣によって高まった魔力を集中し、それぞれの魔方陣から魔力の弾丸を発射した。
『妾の攻撃は、掠るだけでもただでは済まんぞ』
 正確に狙って撃ち込まれたマジックミサイルが、角に阻まれることもなく、見事その頭部を捉えた。次々と炸裂する魔力弾に複眼の一部を潰され、エリューションは1歩、2歩と後ずさる。
「良い感じだね。このまま押しきっちゃえるかな!」
 回り込んできた暁が、誰も巻き込まない立ち位置を確保し、暗黒の瘴気を側面から放った。瘴気を吸ったエリューションは、さしずめ殺虫剤をかけられたかのように身を震わせ、苦しみはじめた。
 のたのたと悶絶するカブトムシの背に、影がひとつ、飛び降りた。
「カブトムシの背中に乗る日が来るなんて、ガキの頃でも思わなかったぜ」
 面接着を利用して岩壁を登っていたモノマが、後退してきたカブトムシの背に飛び乗ったのである。
 モノマが飛び乗ったのは、背の前羽の上だった。万が一、羽を広げられては振り落とされてしまうため、ハイバランサーを活用して移動し、前胸の角(上についている短い方の角)に到達したところで、がっちりと掴んだ。
「角や皮膚を狙ってもあんまり効果がありません! こういうとこを、狙ってやって!」
 カブトムシの上で腕を燃え上がらせたモノマに向け、側面へと移動したあばたが大声で伝えながら、愛銃「マクスウェル」の銃口をカブトムシに向け、放った。コインをも撃ちぬく程の正確無比な精度で放たれた銃弾は、前胸と前羽の隙間に入り込み、比較的柔らかい側胸部に着弾した。
 直後、イスタルテもあばたに倣い、バウンティショットを発射した。先に放った最初の一発こそ角に阻まれてしまったが、側面から放った弾丸は吸い込まれるように隙間へと侵入し、再び側胸部に命中した。
「なるほどね。ここんとこ、か!」
 痙攣しているかのような動きを見せるカブトムシの上で、モノマは狙いを定めた。角から手を放して片膝をつき、前胸と前羽の隙間……前胸の縁を片手で掴んだ。恐るべき業火を帯びた腕を振り下ろす先は、あばた達と同様、その隙間。人間の腕であれば問題なく入る程の幅があった。そして苦しんでいるとはいえ、エリューションの動きは普段相手にしているものと比べてもはるかに鈍重。攻撃を外さない理由がなかった。
「思いっきり、ぶん殴って、やるぜっ!」
 力強い声と同時に、ずどん、という重い音が響く。次の瞬間、カブトムシの頑丈な外骨格の隙間から炎が噴出した。大きく身を震わせたカブトムシの脚にかかる力が弱まり、ずるずると6本とも伸ばして崩れ落ち、腹を地につけた。どすん、と周囲の地面が揺れた。

●最後の最後は、盛大に
「終わったか?」
 動かなくなったカブトムシの上に乗ったまま、モノマがこんこんと前胸角の付け根を叩くが、反応がない。
「頑丈だったけど、弱点を突いちゃえば存外一気にやっつけられたね」
 暁がスカートを直しながらカブトムシに近づき、倒れたその姿をまじまじと見る。
「大きさって、それだけで暴力だよね。この角に突かれることがなくて良かったけど」
 頭の長い角は頭を上下に動かすことで角も動く。角が長いほど、大きいほど、強力な力を発揮できるため、危険度は増す。このカブトムシの角は、身体の半分ほどもあろうかという長大な角を持っていたため、万が一これに突かれた場合には、無事では済まなかっただろう。よかったと安堵する暁の後ろで、ゐろはとシェリーが並び立っていた。
「考えてみりゃ、外でカブトムシ見るの初めてなんだよねアタシ。ちょっと写メしたいから誰か横立ってくんない?比較対象」
『人との比較対象ということならば、上に付喪が立っているだろう?』
 そんな会話をはじめて、リベリスタ達の気が緩みかけていたその時だった。

「皆様……! まだ終わっておりません!」

 一人、中空で待機していた不見火の目が、大きく伸びたカブトムシの後脚が、ぴくぴくと動き出すところを映していた。

「また動き出すぞ、離れるんだ!」

 不見火の言葉をいち早く飲み込んだ疾風が、素早く仲間達に指示を出した。一同の反応は素早く、即座に全員が飛び退き、走り、エリューションから距離をとった。
 これによって、約100°の範囲で横薙ぎに払われたエリューションの角を全員回避できたといえるだろう。脚に力を込めて起き上がりざまに繰り出されたエリューションの唯一の反撃は、虚しくも空を切り、勢い余って岩壁に直撃。無数の石つぶてを飛ばしながら岩壁を削りとっただけの結果に終わった。細かい石がリベリスタ達に降り注いだが、いずれも重大なダメージには至らない。
 と、前胸角にしがみついて上に乗っていたモノマが、切迫した声で叫んだ。
「マズイぞ、こいつ!」
 踏ん張って立ち上がったエリューションが、前羽を広げたのである。カブトムシが羽を広げているといったら、その目的はひとつしかない。
「街の方に飛ばせちゃ駄目ですよう! 後ろ羽を攻撃しましょう!」
 イスタルテが、フィンガーバレットの銃口を向け、皆に言う。弱っているとはいえ、こんな巨体が住宅地に飛来すれば大惨事は免れない。
「羽を広げてる今、あの背中なら攻撃が通りやすいはず!」
 イスタルテとあばたの言葉に応え、リベリスタ達は一斉に動いた。それと同時に、エリューションが最後の力で後ろ羽を大きく、激しく羽ばたかせた。
「付喪さん、上から降りて!」
「わかった! でも、最後にもういっぺんだ!」
 暁の言葉を受けて羽を広げた背に飛び移ったモノマが、前羽によるガードが無くなったエリューションの背に、再度、焔腕を振り下ろした。比較的柔らかい部位に重い一撃を撃ち込まれ、身体を1mほど浮かせかけていたカブトムシの身体が、どすんと地べたに墜落した。
 すぐさま背を伝ってエリューションの後方にモノマが降りる間に集中していた力を、暁が黒いオーラに変えて放出した。激しく動く後ろ羽の一部を魔閃光が削り取ったが、カブトムシはその飛翔運動を止めようとせず、再度巨体を宙に浮かせかけた。
『先程の妾の攻撃が通じきらなかったのは屈辱。だが仕方ない、逃がしてはならない』
 シェリーが再び放ったマジックミサイルが、上空へと舞い上がった後、急旋回してエリューションに襲いかかる。今度は頭部ではなく、モノマが攻撃したのと同じ箇所、むき出しになった背中だ。全弾、標的を無駄なく捉え、先ほどとは異なり確実なダメージを与えることに成功した。
「さーてと、飛ぶ力も無くなってきたっぽいし、仕上げだ。また止めるよ!」
 身体が大きくなっても、カブトムシはカブトムシ。自分に使用された技、攻撃に対しての学習能力は十分ではなかった。そのため、再度眼前で炸裂したフラッシュバンへの対策などあるはずもなく、またしても完全に無防備な状態となった。そしてその隙に、イスタルテのバウンティショット、あばたの1$シュートが飛来し、左右の後ろ羽を貫いた。
「少々お可哀想ではございますが……仕方の無いことですね。どうかお恨みあそばしませんよう、安らかに」
 不見火がはるか上方から放った式神の鴉が、強力な攻撃を受け続けて脆くなったカブトムシの背に突き刺さった。
 もはやエリューションには飛ぶ力も残っておらず、まさしく虫の息。羽を広げたまま、またもや地に伏せた。
「打たれ強い上に生命力もかなりのものだったが、これで、終いだ!」
 強烈な電撃を纏った、疾風の電光石火の武舞が、エリューションの背を捉えた。落雷を思わせる大音響とともに、余剰の電撃が四方に放出され……静寂が訪れた。

●戦い済んで、朝が来る
「あー、もう朝じゃん」
 ゐろはの声に皆が空を見上げた。戦闘終了後。リベリスタ達がエリューションの骸を火葬で弔った時には、既に空は白んでいたのである。
「戦うのもそうだったけど、デカすぎて弔うのにも随分骨が折れたねー……僕もう眠いや」
「戻って、ゆっくり身体を休めるといたしましょう」
 暁と不見火が疲れを口に出す一方で。
「俺は大丈夫だぜ。ちょっとこれから林を歩いて行くかな。久しぶりに虫とか動物とか、探したい気分なんだよ」
 まだまだ元気なモノマである。
「帰りは、人数は限られてしまいますが、私が車でお送りできますよ」
 やや眠そうに目を擦りつつ、イスタルテが元気よく皆に言う。
 かくして、車に乗って帰る者、林に突入する者、徒歩で帰路につく者……。リベリスタ達は戦場を離れ、朝焼けの空の下、日常へと帰っていった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
皆様、大変お疲れ様でした。

すべてを反映させることはできませんでしたが、
素晴らしいプレイングをありがとうございました。
巨大カブトムシに反撃すらほとんどさせずに勝利できました。

カブトムシ以外の虫が同じように巨大化したらどうなるか……
という想像もしてみたりしてみていなかったり。

改めまして、ご参加いただき有難うございました。
今後とも、よろしくお願い致します。