●ラスト・ラン…… 雨が降る。しとしとと、空から地上へ。 道路も、人も、建物も、そして道路の隅に放置された錆だらけのオートバイも、全て平等に、冷たく濡らしていく。 しかし。 その日、唐突にそれは起こった。 誰からも忘れ去られ、後は業者による回収を待つだけとなったそのオートバイが、突如として1人でに動き始めた。それに呼応するように、その近隣に同じように放置されていた自転車や原付バイクもゴトゴトと錆ついたモーターを回し、潰れたタイヤを回転させ、走り出した。 自分が出せる限界を超えたスピードを、壊れかけの体で無理やりに出して、それらは走り出した。 先頭を走るのは、錆ついたオートバイ。それに続いて、他の二輪車が走っていく。 向かう先は、町の外れの峠道。 昔は、走り屋達が集まる定番のコースだったのだが、今では事故が多い事と、時代の流れによって寂れてしまっている。そんな峠を目指して、バイクは走る。 完全に壊れ、走れなくなるのも時間の問題だ。 そんなことは分かっているが、それでも彼らは、無理やりに走り続ける。 余談だが……。 この後暫くの間、この町で『首なしライダー』の都市伝説が話題にあがるようになるのだが、それはまた、別の話。 ●峠を攻めろ……。 「先頭を走るのは、錆だらけのボディを持つ銀色のバイク」 モニターに映った暴走二輪車の集団を見ながら、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はそう言った。 「フェーズ2のEゴーレム(クイックシルバー)を筆頭に、フェーズ1の原付と自転車が合計20台程、峠をめちゃくちゃに走行中。早い話が、運転手無しの暴走族だと思ってくれていい」 今のところ、ただ走っているだけで、人を襲ったり、町に出たりということはないようだ。 それでも、このまま放置しておくわけにはいかないのだが。 ましてや、人通りこそ少ないものの、一応一般道路である。そのうち、誰か犠牲者が出る可能性も十分にあり得るわけで……。 「峠は、頂上から道が3つに分かれている。どのコースにも数体のEゴーレムが走りまわっているから。できるだけ早く、殲滅してきて貰いたい。オススメは、こちらも3チームに分かれる事」 こちらも乗り物があれば、効率的に追いかけることが可能だろう。 もちろん、どこかに待ち伏せしておいて、通りかかったのを討つのも1つの手だが。 「やり方は任せるけど、リミットは雨が上がるまで。恐らく、あと四時間ほど。雨が上がると、この峠にも人が入ってくるようになるから」 今のところは、雨による視界不良で封鎖されている。 それでも、封鎖を乗り越えバイク達は峠を昇っていったわけだが。 「二輪車たちの攻撃方法は全て共通しているみたい。魔弾を放つ能力、強力な光による目眩まし、そして高速度での体当たり。自転車、原付、クイックシルバーの順で、速度や威力が強力になるから」 それぞれ、ある程度纏まって3つのコースのいずれかに別れて走行しているようだ。 乱戦になることが予想される。 「そらから、気をつけて欲しいのはクイックシルバー。こいつだけは、一時的に光のような速さでの走行と、攻撃が可能みたいだから」 当たると痛いよ? なんて、気軽に言ってくれるが、恐らくそうとう厄介な相手となるだろう。 「暴走族は、ちゃんと取り締まらないとね」 そう言って、イヴは仲間達を送り出すのであった……。 「あぁ、それと、必要なら自転車が貸し出されるから……」 坂を下るだけなら、自転車だけでもそれなりの速度が出せるだろう。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月06日(火)00:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●峠を攻める 雨の降る峠。人の気配はないものの、しかし、どういうわけか煩いくらいのエンジン音ばかりが、闇の中に反響している。 姿は見えないものの、けたたましいそのエンジン音こそが、奴らの存在の証明にしかならない。 自転車、原付、そしてオートバイのE・ゴーレムが合わせて21体。峠のどこかにバラけて走っている。 「雨で視界は良くねーが、こんな峠で動いているのなんざ、俺等以外にゃ奴らしかいねーだろ」 パーマのかかった髪を雨風に踊らせながら『住所不定』斎藤・和人(BNE004070)がそう言った。 「……安心はできません。せめてコースアウトしないように頑張ります」 双眼鏡で峠から下る道を眺め風見 七花(BNE003013)はそう呟く。そんな七花にチラと視線をやって『BlackBlackFist』付喪 モノマ(BNE001658)が、バイクのエンジンに火を入れる。 「視界も不良だし、足場も悪い。転倒には注意してぇ所だな」 全員の用意が整ったのを確認し、和人がバイクを発進させる。それに続き、七花とモノマも坂を下っていく。3人が降りて行ったのはほとんどが直線で構成されたコースである。 「まぁ、気持ちは分かるよぉ。こう見えてもあたしは運び屋であり走り屋だからぁ」 暴走を続ける二輪車達に想いを馳せながら『外道龍』遠野 御龍(BNE000865)が大型トラックの運転席に乗り込んだ。ゴテゴテと装飾の施された、所謂デコレーショントラックと呼ばれるものだ。 「あぁ、走行にとて、科学はあるものだ……。さて、我らとこの知恵無き暴走車の間の、知識と論理の開きを、見せてやるとしよう」 そう言って助手席の乗ったのは『Dr.Tricks』オーウェン・ロザイク(BNE000638)だ。そんな彼に続き、『おとなこども』石動 麻衣(BNE003692)もまた、トラックの座席の納まる。全員がシートベルトを着用したのを確認し、御龍はアクセルを踏み込み、峠を下る。 「あ、気付けに演歌でも聴くぅ?」 気分はすっかりドライブのそれなのだろう。気楽な調子で御龍は言う。そんな御龍に対し、頬を引きつらせて、強張った笑みを返すのは麻衣だ。 「あの……音楽はいいので、安全運転を」 「まぁ、走行自体はお前さんの判断に任せよう」 と、オーウェンは言う。そんな2人に笑みを返し、御龍はグンとアクセルを踏み込んだ。 仲間たちが全員、峠を下っていったのを見送って『デンジャラス・ラビット』ヘキサ・ティリテス(BNE003891)が、足の調子でも確かめるようにその場でぴょんと飛び跳ねる。 そんなヘキサの様子を見て『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)が、ふっと小さくため息を吐いた。 「光の速さかぁ……やっぱり今まで会ったどんなヤツよりも速えーのかな!」 楽しみだ、とヘキサは言う。一方、アラストールは彼ほど事態を楽観視できないでいた。 「運転手無しの暴走車。ふむ、見事な怪談の種ですね」 厄介事が起きる前に、叩くとしましょう。 そう呟いたアラストールと、その隣でぴょんと跳ねたヘキサの視線の先に、ライトの灯りが見えている。 戦闘の気配を察し、アラストールは腰の剣を引き抜いた。 ●ダウンヒルナイト 「見つけた。追いついて、丁度いいタイミングと位置を陣取るぞ!」 坂を降りはじめて数分、早速和人達は敵と遭遇していた。見つけたのは全部で8体いる原動機付自転車たちだ。アクセルを開けて、一気に加速する和人。 「見晴らしがいいのが、唯一の救いですね」 バリバリと、紫電を迸らせる七花。バイクのハンドルから片手を離し、前を走る原付達に向ける。 手の平から放たれた紫電は、雨粒を蒸発させながら宙を駆ける。 攻撃を察知して原付達が、左右に別れる。逃げ遅れた数体が雷に巻き込まれ、スリップする。 「アクセル全開でぶっ飛ばしていくぜっ!」 宣言通り、アクセルスロットを開けてモノマが加速する。スリップし路面に転がる原付達目がけ、腕を振りあげた。モノマの腕に炎が纏わりつく。 「焼き尽くす!」 倒れた原付達へ、拳を叩きつける。装甲やパーツが砕け、周囲に飛び散った。不意打ち気味に放たれた七花のチェインライトニングと、モノマの焔腕により3体の原付を破壊することに成功するものの、しかし、残りの5体は未だ走行中。 原付を追って、和人がバイクのスピードを上げる。一気に原付達へと接近し、懐から取り出した魔力銃を向ける。しかし……。 「避けて!」 何か、危険な気配を察知したのか、七花が叫ぶ。それを受け、和人がバイクを斜めに倒した、その瞬間。 原付達から、一斉に光弾が放たれた。ガトリングのような勢いで、めちゃくちゃに撃ち出される魔弾を、盾で防ぐ和人。防ぎきれず、肩や脇腹を魔弾が掠めていく。魔弾の一部がバイクのタイヤに命中し、彼の体が宙に投げ出された。 宙を舞う和人へ向かって、2体の原付が向き直る。急ブレーキのけたたましい音を響かせ、泥水を跳ねて方向転換。それでもなお、タイヤの回転は緩むことなく、路面を噛んで跳ねあがる。 「片方は私が」 「なら、もう一方は俺が貰う」 急ブレーキ。モノマの体が宙に投げ出される。器用に身を捻って体勢を立て直したモノマは空中で和人を捕まえると、その身体を放り投げた。 原付達の標的が、モノマへと変わる。 「逃がしませんよ」 原付の頭上に、突如として大鎌が出現した。大鎌を操るのは、七花だ。彼女が腕を振り下ろすのに合わせて、鎌もまた、原付へと叩きつけられる。 プラスティックの外装を貫き、エンジンタンクまで鎌が貫通。油を垂れ流しながら、原付はその動きを停止させる。 「退屈しちまうぜ。まぁ、大した速度だが、これがお前のラストランだ」 突進してきた原付の、残り1体をモノマが受け止める。突進の衝撃を殺しきれなかったのだろう。モノマの体が、大きく後ろへ弾かれる。 しかし、咄嗟に伸ばした腕がハンドルをキャッチ。強引に自身の体を原付へと引き戻すモノマのもう片腕は、炎に包まれていた。原付に逃げられる前に、とモノマが腕を振り下ろし、前輪を吹き飛ばす。 七花とモノマが、それぞれ1体ずつ原付を倒していたその頃、和人は残り3体の原付の前に落下していた。片手に盾を、もう片方の手には魔力銃を握りしめ、原付へ向き直る。 「タイヤを狙うのも、いいかもな」 放たれた弾丸は、吸い込まれるように原付のタイヤへ命中。バランスを崩した原付は、大きくバランスを崩し、傍を走っていた他2体を巻き込み、転倒した……。 「峠といやぁ下りだよぉ」 牙を剥き出しにして笑う御龍の視線の先には、集団となって坂を下る自転車の群れ。カーブを難なく曲がりながら、加速したまま坂を下っていく。 「あたしにおあつらえ向きのコースだねぃ」 なんて、とても25tトラックとは思えない走りで、自転車を追う御龍。 「ま、マウンテンバイクとか、準備してるんですけど……」 いらないですよねぇ、と引きつった笑みの麻衣。いそいそと窓際へ移動し、腕を窓から突き出す。手の平に光の粒子が集まり、魔弾となって放たれた。魔弾は、まっすぐに自転車達へと向かって飛ぶ。 その様子を、オーウェンはジッと観察しているようだ。 魔弾を受け、速度を落とす自転車達。トラックが、その後ろを付いていく。 このまま追いつけるか、とそう思ったその時……。 「……解析完了である」 なんて、冷や汗を垂らしながらオーウェンが呟いた。彼の視線の先に見えるのは、今この瞬間、自転車達が飛びこんでいこうとしている鋭角的な急カーブ。自転車達が、こちらに反撃してこなかったのは、そのカーブでこちらから逃げられると、そう判断していたからだろう。 「ま、曲がれるんですか……」 攻撃の手を止め、麻衣が漏らす。視線の先の急カーブを、ほとんど車体を真横にして通過していく自転車達。所謂、ヘアピンと呼ばれる類の急カーブだ。 このまま、曲がり切れずに崖下へと落下するのではないか、と麻衣は思った。しかし、御龍は楽しそうに笑うと、あろうことかアクセルを踏み込んだのだった。 「大型トラックだから不利だと思ったぁ? 残念、マスドラ持ちなんだなぁ、これがぁ!」 カーブに入る直前に、ブレークをかける。ハンドルを急旋回させ、車体をカーブに突っ込ませる。ふ、っと一瞬内輪が浮いたような感覚。浮遊感、続いて、強烈な重力の波が3人を襲う。 降臨が、路面を削るような音をたてて滑る。素早いドリフト。油断していた自転車達の背後に迫る大型トラック。ゆっくり入って、素早く出る、なんて急カーブのセオリーを、あろうことか大型トラックでやってのけた御龍は、満足そうに笑って見せた。 「狭い日本そんなに急いで、どこへ行く、ってかぁ?」 完全に、自転車達の真後ろに追いついた。 「それなら、遠慮なく『知識』を武器とさせてもらおう」 オーウェンが窓から腕を伸ばす。無数に伸びた気糸が、自転車達を襲う。焼けつくような強い光を放ち、反撃に出る自転車達だが、一手襲い。 気糸に車軸を貫かれ、次々の雨に濡れた路上に転がっていった。数体の自転車を踏みつぶし、トラックが止まる。助手席に座るオーウェンと、運転席の御龍は自転車の放ったフラッシュにやられ、どことなくグッタリしている。鈍化の影響を受けなかった麻衣は、一瞬躊躇うような表情を見せたものの、仲間の治療よりもまずは、敵の殲滅だと判断したのか、トラックから外へ飛び出した。 動きは鈍っているものの、御龍とオーウェンもそれに続き、トラックから外へ。なにはともあれ……。車輪を失った自転車達は、もうこれ以上、走ることはできないだろう……。 ●クイックシルバー 「ふむ、器物の怪……付喪神といったところですかね?」 そう呟いたアラストールの隣を、ヘキサが転がっていった。 「そんな事言ってる場合じゃねぇって」 額から血を流すヘキサ。2人の前には、排気ガスを吹かせながらエンジンを回転させる銀色のバイク。クイックシルバーの姿があった。 峠の頂上でクイックシルバーと遭遇した2人は、そのまま戦闘を行いつつ坂を下ってきていた。2人とクイックシルバーが走っているのは、工事の途中で投げ出された、中途半端なコースである。剥き出しになっていた岩盤に、アラストールが放ったジャスティスキャノンが当たり、落石で道が閉鎖されてしまっていた。 高速移動の手段を持たない2人にとって、敵の進路を絞れるのは不幸中の幸いと言えた。 ただ……不幸だったのは、こちらの人数が少ないことと、向こうの速度が速すぎること。 「テメェの走り、オレが見切ってやるよ!」 とはいうものの、ここに至るまでの数回の交戦で、ヘキサやアラストールが本気を出したクイックシルバーの攻撃を見切れた事はなかった。 「目視出来なくとも、音や超直感でなんとかなるかと思いましたが……」 いかんせん、敵が速すぎる。こちらの攻撃が命中しないわけではないが、今のところ致命傷は与えられていない。 ヘキサがアッパーユアハートを当てることに成功したので、こちらを無視して逃げ出す、ということはないだろうが……。 「ジリ貧……ですね」 アラストールが呟いた。 その瞬間、クイックシルバーが無数の光弾を放つ。乱射される光弾を、剣で受けるアラストール。そんな彼女の真横を、クイックシルバーが駆け抜けて行った。 「くっ!」 クイックシルバーを目で追いかける。しかし、光弾を防ぐことで手一杯なアラストールは、その動きに対応出来なかった。伸ばされた手の平が虚しく空を切る。 「来たな!」 ヘキサが腰を落とし、瞬時に移動できる体勢をとる。次の瞬間、クイックシルバーの体が、銀色に輝いた。それを見た瞬間に、ヘキサは宙へと飛び跳ねる。岸壁を蹴って、上へ。 ヘキサが飛んだ、その瞬間、彼の足元を目にもとまらぬ速さで何かが通過していく。一瞬遅れて、風圧がヘキサの体を弾き飛ばす。 「光速だろーがなんだろーが、オレに当てられねーならゼンッゼン『遅ェ』ぜ!」 クイックシルバーが光速の域に達することができるのは、ほんの一瞬。また、発動の際に体が銀に光ることも、これまでの戦闘で解析済みだ。 それでも、その速度が脅威なのは変わらない。クイックシルバーがぶつかった岸壁が崩れる。 「一瞬で、捕らえられますか?」 隣に着地してきたヘキサへ、アラストールは問いかけた。ヘキサは、ふん、と鼻を鳴らして笑う。 それを見て、アラストールもまた、小さく笑う。 「かかってこいよ!」 ヘキサが叫ぶ。と、同時にクイックシルバーが動く。排気ガスを撒き散らし、エンジンから煙を上げながら、タイヤを高速回転させる。 クイックシルバーが走り出す、その直前、アラストールの剣から放たれた閃光が、襲い掛かる。クイックシルバーは、その場で急旋回することで、その攻撃をかわす。 それを見て、アラストールは笑った。狙いは、クイックシルバーではなく、その背後。 戦闘の過程で、すっかり崩れやすくなった岩壁だ。閃光が、岩壁を揺らす。壁が崩れ、岩雪崩が起きる。 大きな岩が、クイックシルバーにむかって転がる。それを確認し、クイックシルバーの体は再び銀色に輝いた。 空気を切り裂き、クイックシルバーが消える。 次の瞬間……。 「速いは、速い……だが、それだけだ」 眩く輝くアラストールの剣が、クイックシルバーの車体に突き刺さった。 どれだけ光速で走ろうと……。 いくら、姿を捕らえることが出来なかろうと……。 真っすぐにしか走れないのなら、捕らえることは出来る。ましてや、降ってくる岩で、走行ルートが制限された状態なら、尚更それは、容易となるのだ。 だが……。 「………う、っぐ!」 短い悲鳴をあげ、アラストールの体が大きく宙へと弾き飛ばされた。クイックシルバーの突進を止めようとした代償が、これである。内臓を傷つけたのか、口から血を吐きながら宙を舞うアラストール。 そして、動きの止まったクイックシルバーに駆け寄る影が1つ。 「ボディへし折る気で蹴っ飛ばすからな! 覚悟しろよ!」 素早い動きで、右脚を振りあげたのはヘキサだ。白い髪を振り乱し、クイックシルバーのボディを蹴りあげる。宙に浮いたクイックシルバーのタイヤが空転する。 更にそこから、身体を捻り左足を叩きつける。体を回しながら、何度もクイックシルバーを蹴りあげるヘキサ。その度にクイックシルバーの装甲は壊れ、飛び散っていく。 やがて……。 プツン、とクイックシルバーのライトが消え、その動きを停止させた。 「お前の最後の走り……スゲー速かった。壊れかけだなんて到底思えねーよ」 横たわる銀色の車体を前に、ヘキサは呟く。 元々壊れかけで、今は完全にスクラップと化したクイックシルバーが、彼の言葉に答えることはなかった。ただ、雨に濡れ、エンジンから細々と煙を上げるだけである。 「そろそろ、雨が止みそうですね」 アラストールがふと空を見上げる。 雨は止み、雲は風に流され月が姿を現した。月の白い光が、クイックシルバーの車体を優しく照らす。 他の仲間達が迎えに来るまでの間、2人は月明かりを浴びながら、じっと銀色の車体を見つめていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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