● 私は『堕ちて』来た。どこからか、、ここがどこからなのかもわからない、ただ、漠然とそうあって、そうなった。それがわかるだけ。 ただ、ココは居心地が良かった。姿形は違うけれど、周囲には同じ仲間が沢山居て、その傍に寄り添っているのは、凄く、落ちついた。 だから、ソレを乱す、時折寄ってくる異物は、嫌いだった、大嫌いだった。 そんなやつらはみんな、私が『喰らって』私の子を産む養分になって貰った。 ふふふ、だって仕方無いじゃない、私だって、もっとこの子達を産みたいし、仲間は傷つけたくない、だったら、邪魔者も消える一石二鳥のこの手を選ばない理由は、無いわよね。 なぜだか異物は私を見ると、驚いたり、逃げようとするけどワタシハニガサナイ。 ――ああ、また、仲間達の堕とした子らを踏む音が聞こえる、無性に腹立たしい音が、速く、耳障りな音を立てるそんなモノは、『喰らって』しまおう。 産めよ、増えよ、満ちよ。ただただ、それだけ。咲き誇れ、わがはらからたちよ。 ● 「いらっしゃい。今回の依頼は山中に潜むアザーバイドの討伐」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はいつものように集まったリベリスタ達に資料を配る。今回の現場は雑誌にも載らないような穴場の紅葉スポットと書かれている。 「目標の居る辺りは丁度中心に一本の大きな紅葉の木が生えて、周囲半径20mくらいがひらけている、出来すぎていると言えばそうだけど、戦うには、視界は良いはず」 その代わり相手の攻撃からも身を隠そうと思ってもそうはいかないとイヴは注意する。 「アザーバイドは白い着物に紅葉柄、そんな服装の女性のように見える。けれど、その顔面の半分からは紅葉の枝が伸び、葉が色づいているわ。単純に言えば人型をしているけど、その本質は植物の方が近い、そんなアザーバイド」 異形だけどとこか風流よね、とイヴはつなげる。秋らしい姿といえなくもないがその実態は上位世界の怪物である。 「それに加えて小型のアザーバイドが10体、どうも人型の子のようね。犠牲者を喰らい、子を産む、そんな結果の産物のよう。紅葉の葉を持つ蝶じみた姿、小型で体力は低いけれど、その分回避に優れていて攻撃が当たりにくいの」 どちらのタイプもBSを中心とした攻撃をしかけてくるから、気をつけて戦ってとイヴは淡々と資料を見ながらアザーバイド達の特徴を挙げていく。 「幸いそういった絡め手を得意とする分、純粋な戦闘能力自体はそこまで高いアザーバイドではない。苦労はすると思うけど、十分、貴方達の刃が届く相手」 だから、頑張ってきて、それにと告げてイヴは続ける。 「……D・ホールは近くにもうなくアザーバイドの送還は不可能。それに、本質が植物なせいか動きたがらず、近づかなければ何もしない、大人しい相手だけれど、安全ではない」 そう、既に子を産んでいると言うことはナニカを『喰らった』ということなのだから。 「相手は近づくモノには何も容赦はない、危険な上位世界の存在者。だから必ず駆逐しなければいけない相手」 本人が平穏を望んでいようが、その身は、居るだけでも、世界の軋みとなるのだから。危険因子は除かなければならないと、イヴは目を瞑り、密やかに告げる。 「どうか、秋空の元、せめて安らかな終焉を与えてあげて」 そういってイヴはリベリスタ達を送り出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:今宵楪 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年11月29日(金)23:13 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●紅葉山中すすみゆく 紅葉茂る山中駆け上る影は8つ。それぞれの思いを持って、戦場へ戦士達は進みゆく。 「あっちが悪いとか世界の仕組みが悪いとか今更言わないけれど、ただ殺した事はいけない事。その責任だけは取ってもらう」 上位の世界だしボトムの常識が通じるかは解らないが、ボトムに来たらボトムの秩序を。そう『破邪の魔術師』霧島 俊介(BNE000082)は相手を断ずる。ココは違う世界、その常識にそぐわぬならば排斥もされようと。 「そういえば紅葉の彩りが見られる季節でしたね。今年の秋は忙しさもありプライベートで出かける機会があまりなかったので……」 高校生にして社長令嬢たる『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)の日常はいかほど大変か。ともあれ彼女にとって今年の初の紅葉狩りは、たいそう危険なものである。 「さて季節外れの紅葉狩りといきますか」 単純な生き方としては正しいだろうが、崩壊が進むし、フェイトを得ることはないだろうし、なにより犠牲者がいるから仕事の手は抜かない。そう呟く『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)はそれでもやはり敵対するのも勿体ないとも思い、寂しさを感じていた。 寂しさを感じるのは七海だけではない。今回は植物と意識を交わす、フェリエ達も多くいたが故に。 「例え居る世界が変わったとしても、樹がその振る舞いを変える事は無い当然であり仕方のない事、ですが……」 『風詠み』ファウナ・エイフェル(BNE004332)もその一人。自身は変化の理由を理解していくために進んでこのボトムチャンネルへ来た、けれど、その樹は違うと分かっていても、それでも。 「あの子の気持ちも分かるけど、此処は皆の世界だもんね」 『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)はそう割り切って戦う80歳児。ポジティブで子供っぽくても、やるときはやる、彼女らしさが故に。そして彼女は周囲の木々へ些細な御願いをする、こっそりと、自分達の存在を教えないでと。 「さて、相手は人型な植物のアザーバイド」 言葉だけなら、植物に親和性のある自分たちだと親近感が沸きますね。そう感じていたのは『桃源郷』シィン・アーパーウィル(BNE004479)、けれど彼女も肯定はしない。まぁ、でも。うん、彼女は駄目ですね、と。ありのままを受け入れる彼女でも、この世界になじめぬその存在は、きっとダメなのだと。 「植物に扮してただその場所にあるだけならば。世界に祝福されていたのならば、良かったのに」 そう、寂しげに呟く『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)は植物と交感する能力でもって、件のアザーバイドの位置をより具体的に察知する。そう、確かに世界に祝福されていたならば、結果もまた違っただろう。されど彼女たちが今から相手をする者は世界に愛されなかった、唯それだけ。 それ故にリベリスタ達はアザーバイドを討たねばならない位置を特定した上で彼らは事前の作戦通りに二手に分かれ、その戦場へと赴いた。 ●紅葉会合対峙とす その淑女はただ紅葉の木に寄り添い、眠るように目を閉じ呼吸していた。されどその姿は異形、顔の半身より木が生えたその淑女は上位世界より来た利子災厄の元なり得る種子。そしてその眠りを覚ますかのような足音が彼女を目覚めさせる。 「また、新しい邪魔者が来たの、何度も、懲りない愚かなことね」 身を起こしそう呟いた一言が正しく聞き取れるのは雷音のみ。 「來來、氷雨!」 そしてその雷音の放つ氷結の雨を受けてアザーバイドも理解する、これまでの餌ではなく、明確な敵が来たと。 「ここはボトムチャンネルの日本っていう四季のある国で、その一つの山の中。四季っていうのは春夏秋冬で、今は紅葉が綺麗な季節だよ。そ、あんたが一番美しく咲き誇る時さ」 自身の周囲に五芒星の盾を描き出しながら俊介はライオンに通訳して貰いながらアザーバイドへ言葉を紡ぐ。 自分の居場所がなんなのか、そして問いかける。 「何故、殺した」 その詰問は核心で、どんな人かも分からない、けれど殺意も害もないはずの人たちを殺したアザーバイドへのやるせない怒りとわかり合えない残念な気持ちを込めた問いかけ。 「何故? 貴方達はお腹が減らないの? 子を産みたくはないの?」 そしてその答えは残酷で、断定的な物。彼女にとって、それは当たり前の行為で、なんら以上ではない。それが故に簡単にわかり合うことはきっと出来ない。 「初めましてだね、申し訳ないけど貴女を懲らしめさせて貰うよ?」 フェリエの共感能力を持ってそうルナは言葉を告げる。貴方が皆を大切にし、ただ静かに暮らしたいという気持ちは分かると。自分達もそうだったからと。けれど今此処にあるのは違う世界、そこにいるべきではない物は排斥されると。 言葉と共に彼女のフィアキィは舞い踊る。氷をまとい、アザーバイド達を凍らせる。 「そんなことは、知らない、私は墜ちてきただけだ! 私はただ此処にあり、此処で栄える!」 二重の氷を振り払い紅葉零女は叫ぶ。ただ有りたいだけだと、その存在を誇示するように。そして叫び声を上げる、この世の物ならぬ、異世界の声を。 そしてその声は雷音達を縛り上げる歌声となる。けれどリベリスタ達もそれは承知の上、だからこそ今回はチームを分けたのだから。 「気が付けば冬は目の前、秋の彩りも徐々に枯れ始めつつあるようです」 残念ながら紅葉も彼女も今日限りで見納めになりそうですね。そう言い切って彩花は紅葉麗女へと肉薄する。彼女の愛用の象牙色のガントレット、それに神気をまとわせ十字に砕く。十二分な一撃は確かにアザーバイドをとらえる。されどけしてそんな一撃のみで下せるほどには甘くない。 されど攻撃の手はゆるまない。ファウナのフィアキィもまた氷のダンスを踊り、アザーバイド達を凍らせる。そしてこの場を制圧するのは氷だけではない。 「わりぃな、お前、こっちにいちゃいけないんだとさ」 ひでえよな?好きでこっちに来たわけじゃないのに、でも仕方ねーさ――。 「この世に都合の良い事なんて一つもない、不都合だらけさ」 そう嘯く異界の声の束縛より逃れた『墓守』ノアノア・アンダーテイカー(BNE002519)の放つ魔炎は紅葉蝶を、そして紅葉麗女も、その傍の樹をも焔に巻き込む。 「可哀想に。お前が『其処にいるから』その木は死ぬんだぜ」 ノアノアの行為はそんな言葉を通約するまでもなく、表情と、行動だけでアザーバイドの気を引くには十分すぎた。 「ふざけるな! 貴様貴様貴様!」 紅葉麗女は激昂する。それは子を燃やされる痛み、同族を燃やされる悲しみ。されどノアノアは哄笑する。世界は悲鳴で出来ている、お前だけが愉悦で満ち満ちているだなんて、そんな上手い話はあり得ないと。ツケは回りに、そして自身に返る物だと。 「まず、殺すのはあいつからだ、わが子達!」 当然ノアノア自身の行動のツケもまた彼女へ返る。多くの氷結の雨と舞をかいくぐり、動ける紅葉蝶達がノアノアへと殺到する。ある物は近くで羽ばたき、有る者は周囲をも巻き込んで飛び回る。 「おいおい、最弱とはいえボクは魔王だぜ。呪いの類はきかねえよ」 されどノアノア自身はその無情の舞に抗ってみせる。彼女は呪われない、ただ痛みだけをこらえて立ちふさがる。 「別段貴女のことを否定しようだとか、そういう思いはありません。邪魔なものを排除しようというのは、生物なら皆抱くであろう感情ですからね。」 だけど、貴女はこの土地になじめなかった、歓迎されなかったのですよ、外来種。そうシィンは言葉を掛けながら、福音を奏でて傷ついた味方達の傷を癒していく。そう、フェイトを得ることの出来なかった外来種は、ただ刈られるだけが定めだから。 そしてそんな刈られるべきアザーバイドへ打ち込まれるのは、七海の放つ呪いの込められた魔弾。寸前かすらせ捕らえきれずも、その攻撃の意味はあると感じさせる。此度の戦いは行動を阻害する氷結使いが多い故、もしそれが決まれば大幅に行動を制限できるのだから。 「なんなんだお前達は……どうしてそこまで邪魔をする!」 振り向きざま紅葉麗女は彩女やシィン達へ異界の声を響かせる。挟撃するが故に一度に狙われるのは片方だけ、それでも、アザーバイドは知恵ある相手。故に最も効果的な行動を選択する、肉薄する相手が少なければ敵の多くを束縛する方が得策と。 「騙るぜ、神々の戦争を」 そんなアザーバイドの攻撃にノアノアはさあ、戦いは此処からだと敵を殲滅するその神々の加護を味方へと解き放つ。 「ボクは神を騙る者、ノアノア・アンダーテイカーだ!」 そう、いくらアザーバイドが強き上位世界の住人であろうとリベリスタ達とて無力ではない。たとえその声に束縛されようとも、敵を見据えて戦い続ける。それが使命、それが戦いそのために。 ●紅葉乱れて咲き誇り 「來來、氷雨!」 雷音のその呼び声が氷の雨を呼ぶのも何度目か、凍り付く雨に打たれ、紅葉蝶の一部が凍り、砕け散る。回避に優れるが故に幾度もの氷結より逃れようとも、幾度の攻撃を逸らそうとも、同時に高くない体力は何度も打ち据えられれば捕らえられる。 「いやいやいやいや! 私の子を、私の子供達を!?」 「確かに君は美しい、紅葉と一緒にいる姿はまるで絵画のようだ。けれどこの世界には、君の居場所はないのだ。もう、もとの世界に戻ることもできない。君はこの世界の法を侵したのだそれを看過することはできない」 子が砕け散り、狼狽する紅葉麗女に雷音はさらに言葉を重ねる。君は、やってはならぬ事をしたのだと。 「子を傷つけたくない? こっちだって人を傷つけられたくなかった、母たる貴女が、他の種族の子を殺すのに何も想わない感じないなんて、言わせんよ」 異界の声に縛られた俊介だが、それでも言葉は継ぐ。母ならば、子を傷つけられた嘆きが分かるのならば、やってはならぬ事をお前はしたと断罪する。 「そ、そんなこと、それは、違う、私とお前達は違う、モノだ」 その言葉は確かに紅葉麗女を動揺させる、母が故に、子を今まさに失うが故に、激昂と、混乱を同時にもたらされて彼女もまた動揺する。 「――そう、此処は違うの。此処は私達の世界でも、ましてや貴女の居た世界でもない。異物は私達であり、貴女。認めたくないかもしれないけれど、これがこの世界。貴女が貴女の子らを傷つけ怒るように、私もこれ以上皆を傷つけようとするのなら、許さないよ!」 そうルナは言い放ち、彼女のフィアキィは緑のオーロラをその場に呼ぶ。味方を癒し、束縛から解き放つ癒しのオーロラを。 「異物だと、異物だから好んで排除されろと? そんな横暴は知らない!」 「っ! 来るのだ!」 注視し続けた雷音が警告する、自分達の元へと、それが来ると。 「踊れ、踊れ踊れ死の舞を踊れ!」 紅葉麗女がその全身を踊らせる、周囲に舞い散るは神秘の紅葉、それが雷音たちを包み込み、傷つけゆく。死毒を刻む、毒の葉。されど言葉が、動揺を誘ったその行為が狙いを逸らし、本来ほどにその強さを発揮は出来ない。 「或いは……貴女は『私達』に近い存在なのかもしれない。……ごめんなさい。それでも、私は貴女の行いを見過ごす事はできません」 その行動の隙を突きながらファウナはフィアキィに氷のダンスを踊らせる。紅葉麗女に、その周囲に飛び回る紅葉蝶に。そうして紅葉蝶は再びその数を減らす。 「近しいというなら、何故だ、分かるなら何故だ、私を、どうしてこうして私を排斥する」 「さあ、あるべき場所へ帰りなさい」 言葉はわからずとも、うろたえるその様を見ながら七海は天より火の雨を降り注がせる。残る蝶達を焼き払うように。言葉が分からぬ、そのことを残念にも思いながら。 「ああ、子らが、私の子らが……」 焼け落ちるその姿、それは母に悲しみを呆然を与える。その姿をみながらも彩花はけして情に流されず、ためらいなく切り捨てる。それが支配者たる彼女の価値観だから。 「私の実力、とくとご覧なさい」 もう何度打ち込んだかも分からない神気の十字架、それを紅葉麗女へと刻み込む。ぐらりと、その姿が揺れる、もはや立つ気力すらほとんどないのだろう、それでもまだ己が子らの復讐故にか紅葉麗女は立ち上がる。 「お前、達を許さない、呪う、呪ってやる、この身朽ち果てても呪ってやる」 そう、呪詛を込めて舞い踊る、再び舞い散る紅葉の乱舞。回復の暇もなく振るわれたそれに紅葉蝶に集中して狙われてきた班であるルナが、雷音が、俊介がノアノアが刹那膝を突く。されどそれでも、彼らは立ち上がる、運命の加護を受け入れたリベリスタだから。 そう、アザーバイドとの決定的な違い、その身は、世界に愛されていたから。 「ねぇ。貴女の傍の仲間たちは、本当に貴女を歓迎していましたか? フュリエである自分には、聴こえていますよ」 立ち上がった仲間を癒しながら、シィンは紅葉麗女へ問いかける。彼女はフェリエ、植物と意志を交わす者、だからこそ。この場の本質もまた、見えていた。独りよがりの、仲間意識が。 「君は、この世界に歓迎されていると思っているのは錯覚だ。この世界の植物たちは君の仲間なんかじゃない」 その本質が見えていたのは雷音も同じ、だからこそ、告げる。――似ているのだとしても、本質的に仲間なんかじゃないんだと。 「そんなことはない、この子達は拒まなかった」 ――否、拒むすべがなかった。 「この子達は逃げなかった」 ――否、逃げ出す術がなかった。 「この子達は……寄り添ってくれていた」 ――否、寄り添っていたのは貴女だけ。 ――だから、終わりにしよう。 雷音の放った不吉の影が、紅葉麗女を飲み込んで、彼女の亡骸すらも影に溶けて、消えていった。 ●紅葉散りて寂しさ残る 「一人世界に墜ちて仲間を求めただけ……それが世界を綻ばせるなんて、世界は今日も残酷です」 世界は残酷で、それでも世界が優しくなればいいのに。雷音は、そう願いながら父にメールをする。優しくない世界で、世界の軋みから世界を守るために、戦い続けなければならないから。自分のために命を落とした人に報いる自分であるためにも。 「ごめんな、殺して。因果応報憎んでくれても構わないさ。ただ俺は赤色が嫌いだけど紅葉の赤は凄い好きだよ」 俊介は、殺してしまったアザーバイドへそう詫びる。好ましかったと、憎まば憎めと。されど因果応報は、きっとお互い様で、それを口にしないのは俊介なりの優しさだろう。死んだら終わり、そんな気持ちを知る彼だからこそ、殺すことはきっと嫌なことだから。 「季節の彩りは最期に散ってこそ風流……なんていう事は人間が勝手に決めた美徳ですね」 彩花はそう、切なさを込めて呟く。散り際こそが美しい、そんな人間の身勝手さ、植物の思いなど、わかりはしない、人間の美意識に。 ――でも残念ながらこの世界はそんな身勝手な人間が支配している世界なんですよ。 そうこの世界は、そういう世界だから。散りゆく紅葉は散ってこそ、儚く美しい。 「この世界にも、この世界の存在が育んできた在り様というものがあります。それを乱す事は――きっと、誰にも許されない許してはならない事なのです」 だからファウナもそう述懐する。彼のアザーバイドの存在は、その世界の有り様を崩すこと、いかに自分達とも似たような、そんな得意な稀人であろうと。招かれざる客は、除くしかないのだと。 「ま!今日のところは帰ろうぜ!」 春が来たら花の種でも植えに来ればいいじゃん。おもいっきり周囲も巻き込んで爆炎に踊ったノアノアはそう明るく言い放つ。命は大地に還り、また命を育む 「あいつらだって案外、生まれ変われるかも知れないだろ?」 ――徒花ではなく、実を結ぶ花としてさ。 そういったのは彼女なりの優しさか、魔王を自称するそんな黒山羊さんの、精一杯の、優しさか。 いずれにせよ、アザーバイドは退治され、後に残るは紅葉の葉。秋もおわりて冬にゆく、ただ散りゆく紅葉だけが、この戦いを知っていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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