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パイレーツ・オブ・スルガワン

●海から来た襲撃者
 今日の海面は凪。
 風も波もなく穏やかで絶好の漁日和。
 年配の漁師はいつもの漁場に向かい、海面を滑るように船を走らせる。
 魚群探知機を確認し、満足げに今日はいい漁になりそうだ、と口にする。
 その時……

 ズズンッ

 腹に響く音ともに衝撃、海面に数本の水柱が上がる。
 いつの間にやら海面に霧が立ち込め、凪いだ海をボロボロの帆船が風を受け走り、滑るように漁船に横付けになる。
 漁船の上にて漁師は恐る恐ると帆船を見る。
 まず目に入ったのはボロボロの海賊装束。
 次に精悍な顔の壮年の男は顔の左半分から青い炎を灯し、剥き出しになった髑髏で嗤う。
「ヒィッ」
 怯える漁師を横目に、海賊船長はカトラスを抜き放ち、漁船に突きつける。
『奪え。殺せ』
 その号令と共に、漁船にロープが投げ込まれ、青白い光を棚引かせながら海賊達が殺到した。

●駿河海戦
「……と言うのが見えたから、仕事」
『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)の言葉と共にモニターの画が変わる。
 切り替わったモニターには蒼い炎を灯す宝石が映し出される。
 手の平に収まるくらいの大きさでその輝きは華美なものだ。
 映像によると、青い宝石を核としてあの海賊船は構成され、通りかかる船を片端から襲いかかっているらしい。
「この宝石の名前は『蒼炎のエスメラルダ』。かつてとある海賊の持ち物で、とてもとても大事にされていた宝物。その海賊が死んだ時に一緒に海底に消えていったそうだけれど、最近変な風に革醒しちゃったみたい」
 あの船長も、船員も、そして船も宝石が作り出した存在、エリューション・フォースでその宝石を無力化するまではいずれ復活するそうだ。
「で、万華鏡に出た彼女の次の出現場所が駿河湾」
 思いっきり近場で思わず転けそうになる一人のリベリスタに、イヴの無表情な抗議の視線が刺さる。
「とても強欲な彼女は、襲う船が無くなると、近くの街まで襲い始める可能性が高い。近場だからこそ、気を付けないといけない」
 極めて冷静なイヴの言葉に思わずリベリスタ達も真顔で頷く。
「相手の行動は、無闇に船に近づこうと試みると砲撃を試みてくる。一般の船では太刀打ちできないほどの砲撃」
 接近できないのか?と問う言葉にイヴは頭を振り、続ける。
「襲う獲物と見定めたら、船は当ててこない。当てたら、積んである宝もなくなっちゃうものね。その時は、下手に刺激しないほうがいい」
 イヴの言葉にそういうものか、と頷く。
 そういうもの、とイヴも頷き返す。
「船が横付けになったら相手は襲撃を始める。それさえしのげば、相手の船に乗り込むが出来ると思う」
「乗り込んでしまえば、相手は砲撃する余裕もなくなるか」
 リベリスタの言葉に、イヴは、ん、と短く頷く。
「彼女は船長が大事に身に付けてるわ。船長を倒して、エスメラルダを破壊するのが今回の仕事」
「船長か…強そうだな」
 腕がなると力を込めるリベリスタ。
「船員はフェーズ1だけれど、船長と船はフェーズ2。船は倒さなくても、エスメラルダが破壊されると消えてしまう」
 だから、今回の依頼内容は『蒼炎のエスメラルダ』の破壊。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:築島子子  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年06月17日(金)22:39
築島子子です。
シナリオ第二弾できました。
今回は海賊ロマンです。
以上シナリオ詳細

●敵との接近
アーク所属船舶を一隻と船員一人、依頼に用意されました。
船員はアーク職員ですが、リベリスタではありません。

●敵と能力

『海賊船プーロビエント』
エリューション・フォース フェーズ2
ミスティフォッグ 常に霧を纏っています。その霧の中では船舶は脱出できません。 
酷くHP高いです。『蒼炎のエスメラルダ』が破壊されると消滅します。

船員
エリューション・フォース フェーズ1 襲撃班6人 船上に6名います。
カトラス装備。
デュランダルとソードミラージュの初級スキルから数種類のスキルを取得しています。
ハニーコムガトリングを大砲限定で使用できます。
『蒼炎のエスメラルダ』が破壊されると消滅します。

海賊船長
エリューション・フォース フェーズ2
カトラスとリボルバー装備
デュランダルとソードミラージュの初級スキルの全て使用できます。
スターサジタリーの初級スキルの数種類を使用できます。
EX『七海の略奪王』を使用します。
『蒼炎のエスメラルダ』が破壊されると消滅します。

『蒼炎のエスメラルダ』
EX『強欲の蒼い炎』仲間に力を与えます。

よろしくお願いします。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
スターサジタリー
不動峰 杏樹(BNE000062)
ナイトクリーク
四鏡 ケイ(BNE000068)
クロスイージス
ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)
クロスイージス
白石 明奈(BNE000717)
ナイトクリーク
五十嵐 真独楽(BNE000967)
スターサジタリー
マリル・フロート(BNE001309)
ナイトクリーク
リゼット・ヴェルレーヌ(BNE001787)
インヤンマスター
コルネリア・ハッセルバッハ(BNE002471)

●霧中ガレオン
 ズズンッ……ズズンッ!
 響く低音が海面に連続して轟く。
 続いて海面より立ち上る水柱は間違いなく襲撃を受けていることを意味する物であった。
 アークより貸与された二十メートル級の大型クルーザーは砲撃よる水柱と衝撃で小舟のように翻弄されるばかり、漁船に偽装する為に掲げた大漁旗は左右に大きく振れ、飾ったイカ釣り用の電灯は衝撃で爆ぜ破れ、船上に降り注いだ。
 視界は不明瞭。厚く立ち込めた霧により、十メートル先を見通すことすらも困難となっている。
 立ち込める霧の中に在りながら船の周囲を的確に狙う何者かの正確無比の砲撃、間違いなく尋常ならざる何らかの力……神秘が関わっていることを意味していた。
 カレイドシステムにより予知されていたアーティファクト『蒼炎のエスメラルダ』による海賊襲撃事件。
 リベリスタの思惑通りに食いついてきたとは言え、その砲撃はリベリスタの予想よりはるかに激しく大きな揺れを船にもたらしていた。
「ひえぇ」
 大きく揺れる船縁に立ちながら『蒼鱗小龍』四鏡 ケイ(BNE000068)は情けない声を漏らす。
 海賊船を目にする事を楽しみにしていた気持ちは砲撃と共に霧散し、姿なき襲撃者の位置を割り出そうと意識を凝らす。
 常人よりも遥かに優れた聴覚が轟音にまみれた海面に静かに澄まされた。
 船のエンジン音。海面を撃つ砲撃の音。水柱が上がり、船に強かに降り注ぐ音。そして、波を割り海面を進む巨大な何かの音。
「何か近づいてきます……気を付けてください!」
 ケイの言葉が船上に響く、次の瞬間――

 ――霧を裂いて『ソレ』は現れた。
 船首にて海を見つめるレイディラックは胴半ばから崩れ落ち、漆黒の船体には今までの戦いの傷が深く彫り込まれている。
 全長は五十メートルほどの巨体を左右に揺らし、霧を纏い、幽鬼の如く海を征く。
 マストに掲げる海賊旗……ジョリーロジャーが風無き海で風を受け舌舐りするようにリベリスタの乗る船を見つめていた。
 蒼き炎を灯した海賊船プーロビエントが異貌を露わにする。

 姿を露わにする海賊船を操舵室より睨みつけるように見つめ『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)は不敵に笑う。
「ガレオン船か……これは本格的だな。イイぜ、俺達の相手をするにはそれくらい持ってこなければな」
 怯えるアークの船員を船室に押し込み、操舵室より飛び出し挑発するように手を打ち鳴らす。
 来いよ海賊共、てめぇらの宝、『蒼炎のエスメラルダ』。奪い取ってやるぜ。

「海賊船が出たですぅ! あれが黒いぱある!」
 甲板にて物陰に隠れ、動向を見守っていた『ぴゅあで可憐』マリル・フロート(BNE001309)は、姿を現した船影に思わず声を上げ、慌てて口元を抑えた。
 あと少しの我慢ですぅ。でも、どうなっているのか気になるですぅ。
 物陰から顔半分だけ出して様子伺いながらの我慢の時、青く丸い耳が逸る気持ちと同調するようにぴくぴくと動いた。

 蒼い炎がリベリスタの前に姿を現す。
 ボロボロの海賊装束を纏った壮年の男。顔の左半分を灼く蒼炎は剥き出しの髑髏と共にリベリスタの船を見、嗤う。
 スラリとカトラスを抜き放つ、昏い刃が青い炎を写し、ぬらりと光った。
 カトラスを突きつけ、海賊船長は言う。呪詛の如く。
『奪え。殺せ』
 単純にして絶対の号令。海賊船長の眼窩より蒼炎が溢れ出る。
 クルーザーに投げ込まれる無数のロープ。
 青い炎の尾を引き、船員達が殺到する。

 襲撃が始まった!

●蒼海の守護者
「よっしゃ! 海賊こーい!」
 襲撃者が船に着地の瞬間に、先んじ迎え撃つ煌めく刃。
『ビタースイート ビースト』五十嵐 真独楽(BNE000967)の振るう爪が海賊達を切り払う。
「お前達のやり方はスマートじゃないぞ!」
 そう言い放つと更に一撃を繰り出す、少女の心と姿を持つ少年は真っ直ぐな怒りで海賊と対峙する。
 真独楽が足止めできた人数は一人。爪とカトラスで切り結ぶ脇をすり抜けるように海賊達は駆けていく。

 海賊の行く手を阻むは、深緑のブレザーを身に付けた一人の少女。不敵に笑い、居合の構え。
「そっちが海賊なら、こっちは海軍だぜ! 勝てば官軍、海賊何するものぞー!」
 駆ける海賊に向い、貫打つバールが閃く!
 腹部の深くに撃ち込まれた衝撃に、海賊は為す術もなく崩れ落ちた。
 体をくの字に曲げ、倒れた海賊を見下ろし、『ミサイルガール』白石 明奈(BNE000717)は手応え有りとニヤリと笑う。
「どけどけどけーいっ!」
 体を切り付ける海賊の一撃も、自己治癒の加護の前にはそよ風も同然。
 ちょっとやそっとの風如きではこのミサイルは止まらない!

『イノセントローズ』リゼット・ヴェルレーヌ(BNE001787)は、幻想纏いである逆十字のチョーカーより、タロットを呼び出し海賊と対峙する。
 海賊の依頼と聞き、本物のパイレーツ! と、テンションを上げてみたものの、そこここに漂う和のテイストに肩を落としたのは確かな事。
 しかして実際目にしたそれは、実に本物の海賊であったのだが……
 その悪辣な手口を見た後で、テンションが上がるほどリゼットは人間が出来ているわけでも腐っていてもいなかった。
「つまりですね、リズは怒っているわけなのですよ! 国産だろうが外国産だろうがだろうが、神妙にお縄につきやがれです!!」
 毅然と放った怒りの声と共に撃ち出されたタロットは黒い弾丸となり、海賊を撃ち抜いた。

 守護の結界を展開し終え、コルネリア・ハッセルバッハ(BNE002471)は深く息を吐いた。
「迷惑じゃない海賊なんてフィクションの中だけの生き物。迷惑な海賊なんていう存在はフィクションの中に留めておきたい存在ね」
 小声で口にしながら、海賊船を睨みつける。事件の首魁たる宝石は船長と共にあるはずだ。
 そこに至るはまだ遠い。今は船に取り付いた海賊への対処を優先するべき。
 一つ頷くと、コルネリアは符を取り出し、印を結ぶ。視界の隅で海賊を見据え行けと命じる。
 符は一羽の鴉となり飛翔、リゼットと対峙していた海賊を撃ち据えた。
「これで良いわね」
 崩れ落ちる海賊の姿にゲルマンの若き術師は小さく頷くと、状況を打破せんと船上を駆け抜けた。

 海賊船を見据え、『アリアドネの吸血鬼』不動峰 杏樹(BNE000062)は幻想纏いを手に取る。
 敵船の抱える砲塔は、取り敢えず動く様子はない。
 取り出したヘビーボウガンを構え、船上に降り立った海賊を狙う。
 仲間たちの奮闘により海賊の数は減ってきている。船上の安全を確保してしまおう。
「亡霊は亡霊らしく海に帰るんだ、静かな眠りについてくれ」
 宝石の妄夢に付き合う必要はもうないと、杏樹の祈りと共にボウガンからは巨大なクォレルが放たれた。
 直撃。明奈と対峙する海賊が崩れ落ちる。
 おやすみ迷い子、鎮魂歌くらいは送ってやるから……

「ほんとはタイマン勝負がカッコいいですけれど子供だから見逃すといいですぅ」
 斬りかかってくる海賊の一撃を味方の陰に隠れていなしたマリルはにゅふふと笑って小さな弓に矢を番える。
 神速で繰り出される光速の矢が海賊を次々と捉え、打ち倒す。
 崩れた船上の戦いのバランス。
 襲撃した海賊共は瞬く間に倒された。

「手早く乗り込もう。反撃だ」

 杏樹の声と共にリベリスタは船に投げ込まれたロープを手に取る。
 さあ、反撃だ!

●蒼炎のエスメラルダ
 甲板に乗り込んだリベリスタを取り囲み、海賊達がカトラスを抜く。
 船首楼には海賊船長が、武器を抜き、闘争の予感にニヤリと笑う。。
「盛大なお持て成しですね。リズ達はあのオジサンに用事があるだけなのですが……」
 呆れたように零すリゼットの言葉に頬を緩ませてソウルが前に進み出る。
 海賊が襲いかかる。煌めく銀光、繰り出される鉄杭、潮風に舞うは鮮血。
「……ここは俺に任せな。船長は任せたぜ」
 海賊の強撃により傷を負うも、不敵な顔に痛みを見せぬ、弱さを見せぬ。
「俺はこいつらに用があるんでな」
 流れる血を強引に拭い、グッと一歩進み出る。気圧される様に包囲の輪が広がる。
 船長への道は開けた。
「任せたですよ!」
「ご武運を!」」
 ソウルを残し、リベリスタ達は船長を目指し駆ける。
 軽く手を振り声に応えたソウルはパイルバンカーを構える。
「良いのか、あっちに行かなくて?」
 傍らで投げナイフを構えるケイに声を掛ける。
「ボクも男だから!男には、やらないといけないことがあるのですよね……」
 若干怯えと羞恥が混じった口調、だがその響きは真摯なもので……
「OK! いい答えだ! 後ろ、いや、隣は任せたぜ、ケイ」
「……はい!」
 船首楼への階段を背負い二人は立つ。
「と言うわけで、ここは通行止だ。お前らの頭の助太刀に行きたかったら、抜けてみせるんだな」
 ソウルは不敵に笑う。ケイも真剣な表情で後を繋げた。
「だけど、ボク達は滅法強いですよ!」

「とーぅ!」
 明奈の振るうバール大上段。振るわれた一撃はカトラスが澄んだ音と共に阻む。
 ニッと笑う明奈。追撃の真独楽の爪がリゼットのタロットが船長の胴を薙ぎ、マリルと杏樹の矢が穿つ。
 船長の右手が素早く引かれ、一閃、二閃、それすらも残像。無数の斬撃が明奈と真独楽を襲った。
 吹き荒ぶ血煙、痛みを堪え、立つ明奈と真独楽の身と心に刻まれた、目の前の敵の単純な強さ。
 強い。
 想いが心によぎったその瞬間に、髑髏の眼窩から蒼い炎が溢れた。
 ヒステリックに蒼炎が甲板を走り、船長と船員を包み込む。
 蒼炎を背負い船員と船長は静かに構えを取る。
 追い立てられるように格段と鋭くなった攻撃がリベリスタを襲う。
 船長の銃より発する銃声はひとつ、吹き荒れる銃弾がリベリスタを傷つける。
「負けないぞ……っ」
 傷を押さえ真独楽が、ただまっすぐに海賊船長を見据える。
「食べるワケでもないクセに、無力な相手を一方的に殺すとか、そんな超ダサいヤツなんかに絶対負けない!」
 黒いオーラを纏う鋭い爪、真独楽の一撃が船長を打った。
 ひるんだ海賊船長に迫る銀に研ぎ澄まされたタロット。
「ふざけんじゃねーです! 石ころに尻に敷かれてへーこらしてる奴に、リズ達を倒せると思ったら大間違いですよ!」
 リゼットの放ったタロットに刻まれたアルカナは塔。破滅を意味するもの。
「滑って転んで地獄に落ちろです!」
 滅びを呼ぶ魔力の波動が蒼い炎をかき消した。

 怒りを露にカトラスを振り上げた船長の動きがギシリと止まる。
 周囲に展開された呪印が幾重にも包囲し、その動きを封じ込める。
 呪印の術者はコルネリア。船長を目にいれた瞬間から練り上げ、さらに幾重の強固にした会心の呪縛の呪印。
「アナタにソレは解けない」
 コルネリアの宣言は確かではない。しかし、込められた気概は本物。
 目の前の敵の阻害のみに注力した術式が強固でないはずはない。
「もう一度言うわ。アナタをソコから動かせない!」

「あっちも気合が入っているようだな。どうも」
 パイルバンカーが炸裂し、投げナイフが切り裂く。
 満身創痍のソウルとケイの傍らに、転がる骸は四。
 二人の体の傷の代わりに増やしていった戦果の数。
「ソウルさん、敵の二人が見当たりませ……あ!」
 ケイが見渡し、声を上げる。
 そこには大砲を引っ張り出してきた二人の船員。
 顔に浮かぶ歪みは悪意であろうか? 焦燥であろうか?
「死なば諸共ってか?いい度胸じゃないか」
 不敵にソウルが笑う。
「……やらせませんよ!」
 即座に駆け出すケイの前に立ち塞がる船員。
「邪魔ですっ……!」
 繰り出される投げナイフに纏う気糸。
 船員の首に巻き付いたそれは体をマストまで引っ張り縫い止める。
 残りは一人。
 大砲まで歩み寄り、ソウルは葉巻を大きく吸う。
「海の男っていうのは、もっと自由だと思っていたんだがな」
 紫煙と共に吐き出す言葉、目の前の海賊たちを見ている間に去来した感情。
「イイ女に使われるって言うのは、それはそれで結構。アレはそうじゃねぇだろう?」
 強欲さから破滅へと誘う呪われた宝石。
 不甲斐ねぇ。
 発射寸前の大砲に繰り出されるパイルバンカー。炸裂する衝撃音。
「お前達には気骨がないんだよ!」
 大砲と共に甲板に打ち付けられた船員を見やり、ソウルは胸に溜まった言葉を吐いた。

 呪縛にもがく海賊船長。
 そこにある類い稀なる好機。
「贖罪と救いを……」
 杏樹のボウガンより吐き出されたクォレルが船長の腕を穿つ。
 辛うじて繋がっている腕の先に拳銃が揺れる。
「もらったぁー!」
 飛び込む明菜
 全力の一撃が船長の体を捕らえた。

 明菜の一撃により吹き飛んだ体の一部――船長の腕が宙を舞い、音を立て床を打つと、腕は煙のように掻き消た。
「なるほど、エスメラルダの力の産物だからな、船員も船長も、この船も……」
 杏樹の言葉に得心する。
 船にある全ての物はエスメラルダに作られたものに過ぎない。彼女を止めない限り、海に平穏は訪れないのだ。
 ならば本体たるエスメラルダはどこに……?
「目!目にあるですぅ!」
 戦場を身軽に飛び回っていたマリルが声をあげる。
 彼女は見た。
 海賊船長の髑髏の眼窩の更に置くに強欲の炎を静かに燃やす、蒼い宝石を……
「蒼炎のエスメラルダは頭の中ですぅ!」

 カトラスを振り下ろし、海賊船長は呪縛を斬る。
「っ!」
 驚愕するコルネリア。
 呪印を切り払ったその腕で、船長はカトラスを構える。
 俺は、短銃と剣。その二つでのし上がってきた。
 腕は朽ち、銃を失い、その身は襤褸の如く刻まれど……
 俺は俺の証は決して譲らぬ!

 俺こそが! 七海の略奪王だ!!

 恐るべき斬撃の嵐が船上を駆け抜けた。
 生者を掃討する一撃……否。
 命を燃やし運命を従え、リベリスタ達は立ち上がる。
 明菜が、リゼットが、杏樹が立つ。
 明菜が真独楽を庇い、支えあいながらも、立ち上がる。

 理解を拒む様に船長がカトラスを振るい、明菜を切り付ける!
 不可避の攻撃、そう思われた一撃は明奈の振り上げたバールに阻まれ……
「ワタシ達は、色んな物に護られてるんだぜ?きっと」
 天を突く拳。勝利宣言。
 振り下ろされたバールは海賊船長を捉え、膝着く船長の胸に杭のような矢が穿たれる。
「貴方に神の祝福を」
 杏樹の聖句を胸に、海賊船長はゆっくりと倒れた。

 ひょこり
 と海賊船長の顔を覗き込むマリル。
 眼窩にはエスメラルダが眠っている。
「にゅふふ、この距離だったら目を瞑っていても当たるのですぅ」
 放たれる矢、狙い澄まされた、針穴すら撃ち通す一発。
 矢に弾かれ、弧を描き、エスメラルダが宙を舞う。成す術も無く、無力に。
 蒼い炎を溢れさせながら床に落ちる。

「お前なんて、お前なんて、ぜんぜん欲しくもなんとも、ない!」

 カシャァァン!

 絶対の拒絶の意思を込めた真独楽の一撃により、蒼炎のエスメラルダは、粉砕された。

 駿河湾の危機は救われたのだ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。
お待たせしました、海賊以上にかっこいいリベリスタのお話です。
皆さんのプレイングより、導き出されたこの戦い、いかがでしょうか?
私は滅法楽しませていただきました。

今回も字数オーバー。
文字数削りが地味に大変です。