●千葉炎上 『縞島組』『風紀委員会』『ストーン教団』『松戸研究所』『弦の民』『剣風組』。 六つのフィクサード組織が互いの理想実現のために新生『九美上興和会』として協力合併し、巨大なフィクサード組織に生まれ変わろうとしている。 彼等の秘密兵器、アーティファクト『モンタナコア』。 組織を完全なものとすべく狙う『セカンドコア』。 無限の未来を賭け、大きな戦いが始まろうとしていた。 ●白昼にそれは堂々と 煌々と燃える太陽は高い所にある。 「海だーーー!!」 「今、十月だったと思うんだがな?」 夏であれば、良かったものを。 此処はおそらく日本初の人工海浜。春から夏にかけて県外から此処へやってくる人も多い。言わば、観光名所というやつだ。 そんな季節的では無い場所に数人の人影が見える。一人は体格の良い青年、もう一人は細身の少年。青年が海へ向かって両手を広げ叫んだ所で、少年は的確な突っ込みを間髪いれずに発射していく。 「やっぱり、十月だ」 だって寒いもん。 「ま、海とかどうでも良いし……」 「海と言えば、決闘っすよね。血達磨にしてあげましょうか、先輩!!」 「話し聞かないって、消し炭になりたいのか?」 両者構える。青年は両手にクローを、少年は両手にガントレットを。千葉の砂浜が殺伐と殺気に固まる。 だがそんな雰囲気を断ち切ったのは、酷く掠れた女の声。 「二人とも。次、喋ったらその首を明日の昼飯にしますからね?」 どうやらこの女がリーダー格の様だ。扇子で口元を隠し、片足の太ももがこれでもかと見える程のチャイナ服。女狐の如く、細く線を引いた瞳は静かな殺気に満ちていた。傍には使用人らしき人物も二人程見える。 「第二の太陽を、我等が手中に。その目的を忘れたとは言わせませんよ」 嗚呼、剣風組の名の下。技を磨き、力欲しさに欲が出る。 第二の太陽を奪い、完成した組織はどれほどにまで楽しいものに成るのだろうか。 「ウフ、フ、フフ、ふふふふ、フフフフ」 扇子の下で、笑いが止まらない。 さあ、さあ、行こう行こう。フィクサード跋扈のこの千の葉の地で。 一花、咲かせようでは、無いか。 ● 「ちょっと大変なのです、是非皆さんのお力をお貸し下さい……!!」 『未来日記』牧野 杏里(BNE000211)はいつも以上に顔色が悪い。と言うのも、千葉にて六つのフィクサード組織が合併し、一つの強力な組織が誕生しようとしているのだ。 その騒動の中心にあるのはアーティファクト『モンタナコア』。このアーティファクトは寿命や生命力を代償に、フィクサードを革醒または強化する効果を持つという。これのせいか、多くのフィクサード小隊生まれ、各地で兵力を整えている。 彼等が次に狙うのは『第二の太陽(セカンドコア)』。モンタナコアとほぼ同じ能力を持つアーティファクトだ。これをフィクサードは組織完成のために必要とし、そのために大規模に動いている事が解った。 「フィクサードは千葉の各地でバラバラに動いている模様です。 合流されてしまっては、此方も戦うには厳しくなるでしょう。だからこそ、今がチャンスなのです!」 千葉、といえば範囲も広い。だが一小隊の居場所は杏里が予知で突き止めた。また、一般人は事前に協力してくれたリベリスタ組織が入念に人払いをかけているので、完全に気にしなくて良い。 「敵は『剣風組』のフィクサード。技に固執する癖のある集団……と、聞いております。その一人、夜風舞子を中心とした、五人の部隊です。 少数だからといって、舐めてはいけません。勿論夜風が群を抜いて強いですが、相手は剣風組。此処が技量と修練によって力を求めるフィクサード達です。気を抜けば簡単に負けます」 夜風はフライエンジェのスターサジタリー。それを囲む四人の男達。 特に、叉木と呼ばれたインヤンマスターの青年と、平風と呼ばれた覇界闘士の少年は当てる事に執着を持った戦士だという。 「皆さんなら大丈夫だと思いますが、地形は海と砂浜。これに着目して相談して頂けたら、と思います」 ふう、と杏里は一息。伝えるべきことは伝えただろうか。この依頼に関しては、伝え終わったか。 「ただ……この一戦が終わっても終わりでは無いのです。 もし、よっぽどのお怪我をなされていない状態で無事戦闘を終えれたら、『九美上興和会』をいう大本の組織をコアチームと一緒に叩き潰しに行って欲しいのです。 杏里は皆さん全員のお帰りをお待ちしております。それではいってらっしゃいませ、アークが誇る戦士達」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月04日(日)00:11 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「貴様らの陰謀に終止符を打たせてもらう。俺はアークの焔優希。貴様らに決闘を申し込む」 『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)の右手人差し指が一直線。 人に指をさしてはいけないという言葉がある。だがそうすることでフィクサードに容赦はいらないという精神の表れでもあるのだろう。 指を向けられた女は、扇子で口元を隠す。その上から見える女狐の様に線のはいった瞳の奥で愉快と笑い続けている。 「ウフフ、ただ簡単に第二の太陽に手が届いたらツマラナイと、思っていた所でしたわ」 その決闘、応じましょうと。舞子は赤色の翼を広げる。もはや戦闘まで数秒も無いのだろう、優希も魔力鉄甲をもう一度強く手に馴染ませた。 「私たちを誘いましたね? この場所に」 「答えずとも、答えは明白だ。解ってるんだろう?」 クローを嵌めた叉木は山田 茅根(BNE002977)の質問を弾く。 茅根は解っていた。その始まりは一つの疑問から生まれた。何故、こんな場所にフィクサードが居るのだろう?と。おそらく、彼等はリベリスタが来る事を解っていた。そして、より有利な場所で迎え撃つ事にしていた。 「卑怯だと言ってくれてもいーんだぜ! でもこれ悲しいよな、戦争だから勝てばいいんだよ!!」 「五月蠅いですよ、黙っててくれませんか?」 続いた平風が無邪気に喋り、『絶対鉄壁のヘクス』ヘクス・ピヨン(BNE002689)のいつもより低く尖った言葉が突き刺さる。 「新生『九美上興和会』、随分と有象無象が集ったものでと」 『足らずの』晦 烏(BNE002858)はフィクサードを一人一人見てから感想をひとつ。 「せっかくの奥義も、誰もが使えちゃったら安いんじゃ?」 「うるさい! 組織のものを組織で使って何が駄目っていうんだ!」 対抗した平風に、烏は肩を竦めた。 バサリ、広げた翼は夜の黒よりも漆黒の色。 「もう始めちゃおう。なんかよく解らないけど、全部ぶったおせばいいんでしょ!!」 『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)は今日も元気だ。 白い黒本を広げ、その力を引き出せるのは誰よりも、何よりも、彼女が一番。 「いくよ、皆!!」 始まるウェスティアの速攻の詠唱。 「見せてあげるよ、特別な技が無くったって、初歩の初歩を極めればそんなのに負けないってね!!」 ● 「二浪をこの手で殺れんのが残念じゃが!!」 先手はリベリスタがとっている。一番初めには『回復狂』メアリ・ラングストン(BNE000075)が指で宙に陣を描く。 「お前等で我慢してやるのじゃ、雑魚ども!!」 単体で弱いから、寄せ集め。いくら集まったって、負ける気がしないさ。 指が宙で踊り終わるころには、メアリの目の前で魔法陣が展開される。それは仲間へ翼を与える、陣。 「元気いいわねぇ」 そのころ舞子は条霊執行を終え、10m後方へと飛び終わっていた。 「ち、まさか海上戦闘を見通されるとは……想定の範囲外ですわ」 「なんでもいいぜ、戦えるんならなぁ!!!」 舞子の嘆きも聞かず、平風は前方へと走り出した。その拳に、迅雷を迸らせながら!! 「イくぜ!! 痺れちゃえよ!! 壱式ィイイ!!! ジンッら!?「させるわけ、ないじゃん!!」 ウェスティアの速攻が完成した。本来の二倍の速度で組みあがる血鎖の束。 後衛のホーリーメイガスを縛り、その先の――舞子は寸前でイージスが身代わりとなった。 「は!? 葬送曲は詠唱に時間がかかるはずだ!?」 「そう決めつけてるから痛い目見るんだよ」 手を銃の形にし、バンッと言いながらそれで平風を打ち抜くフリを見せたウェスティア。その瞬間、平風の迅雷は吹き飛ばされ、その行動を縛りながら呪いへと落し上げたのだった。 舞子以外にその鎖を逃れた者がいた。ウェスティアの命中には劣るが、それとほぼ同じだけの回避力を持ちあわせた。 「おとなしく先輩に任せとけよ、平風」 小鬼を従えた叉木が、いきなり三式の地球割りを地へ叩き込む。その叉木の近づくヘクス。 「久しぶり」 ずずいと叉木の顔を覗く彼女。 「会ったこと、無いよ」 「ええ、貴方に言ったのでは無いですからね」 そのヘクスの狙いは、叉木の持つEXスキルだ。伝承者がいないと聞いていたが、まさか目の前に現れるとは。今度こそ、そのスキルに敗北しない、屈しない。そのために全ての技量をあげてきたヘクス。 さあこいと言わんばかりに叉木の傍を、彼女は離れない。 その後ろには『プリムヴェール』二階堂 櫻子(BNE000438)が待機した。いつでも回復できるよう、いつでも支えられるよう。 「いやあ、楽しいですねぇ」 茅根がいつもの満面の笑みでそう呟いた。本心からか、はたまたいつもの悪戯の延長戦か。 ともあれ、茅根の切れない気糸は既にウェスティアの鎖の絡まっている敵の回復手をさらに縛り上げている。そして目線はその回復手を見ていないのが脅威と言った所か。 (さあ、あなた達の花を、魅せてください――) 剣風組が、鍛練と技量で作り上げた技を、スキルを、見たい、観たい、視たいと。 ● 後方で独特な笑い声が響く。 「きゅっふっふっふっふぅ」 此処から始まる、『ナルシス天使』平等 愛(BNE003951)劇場。 浜辺だからとはいえ、広がる海があるとは言え。 「なんで、そんなえっちな水着着てんだ!! 十一月だぞ!! 考えろよ!!!」 「きゅっふっふっふー。ばれてしまったか」 そりゃバレますってば。思わず平風が全力でツッコミをいれてしまった。今までの戦闘の風紀というものが音をたてて壊れた気がするがもう少しだけお付き合い願いたい。 小さな身体をくねりと動かし、目はきらきら。これでも三高平の長寿の一人だからね、どうして三高平の長寿って年齢不相応な人ばかりなんだろうね、三高平七不思議だよね。 「世界で一番かわいいのはボク! 決定事項! これは揺るぎ無い真実だよね! 聖神もボクの可愛さに惚れて、吹き始めるよファンファーレ! 天使も吐息を漏らす! あいあむべりぃぃぃきゅー! はい、ご一緒に! あれあれ? 声が小さくて聞こえないよー! そんなんじゃ海風に全て音を奪われてしまうよ! 僕の可愛さはそんなものには負けはしないんだからね! さあ、もう一度みんなで一緒に、あいむべりいきゅーーとぅっ!!」 一同、ぽかーん……どうやら愛の愛は時代を先取りしすぎているようだ。また皆が理解できるレベルに達していないのかもしれない。 「まあ、僕今回やること少ない気がしてね……だから、応援しているよ!!」 敵は強いみたいだし、と付け加えながら、えっちな水着をふりふりと動かしながら、どさくさに紛れてマナコントロールしながら聖神をぶっぱなしていた。 とりあえず気を取り直して。 「世界を漂う力よ……この身を廻り戦い続ける力に」 続いた櫻子の魔力が体内でより効率よく働く。 支援に徹するこの身。仲間のために成すべき事を成すまでだ。ただ、フィクサードがよせ集まったからといってどうと言うことは無い。例え、どれほど寄せ集まったとして全て叩き潰す心算を黒猫の女は心に持っていた。 瞬間、刹那の時だけ眩い白の光が戦場中を包んだ。 「ほんと、フィクサードっていうのはいつも自分の事が最優先でどうしようもないな」 烏の神気は強力だ。命中あってこそ、本来の威力とショックが発揮されよう。 だが、再び叉木だけはそれを避けてみせた。それに少し納得いかなげな表情をしながら烏は叉木に立ちはだかる。 「叉木君の相手はおじさんだ」 「厄介だよね、リベリスタ」 「奇遇だ、こちらもフィクサードが厄介でな」 叉木にピタリとくっつき、烏は彼の行き場を失くす。 さあ、さあ、来い、そのスキルを使えと、烏は瞳の奥で期待していた。 「がら空きだ、そんなにお姫様が大事か?」 その頃、一足遅れて優希が動き出していた。ブロックも無い、守る者さえいない。だからこそのチャンス。 「ひ」 敵のホーリーメイガスへと一直線。その拳に迅雷を纏わせた優希がそれを振り上げ。 「貴様らの、好きにはさせてなるものか」 零距離からの迅雷は、拳の衝撃と共にホーリーメイガスを射抜いた――。 ● 戦況はほぼ、リベリスタの方が有利かと思われたが、そんなことは無い。 序盤、敵のホリメへと集中攻撃を仕掛けたことで、舞子が安全地帯へと遠のいたのだ。そこからイージスの守りは傷だらけのホリメへと移る。 優希がそれを阻止しようと走るが。 「仲良くしよう」 「邪魔ッ」 ブロックをノックバックですり抜けた叉木が優希の前に立ちはだかる。 「回避型か!」 烏が叉木の脚部を狙って攻撃するが、部位狙いのペナルティも重なって掠っていく。 「遠いのじゃ!!」 メアリが攻撃するのは条霊執行中の舞子。ホリメながら牙をむき出し、その牙で吸血するために長い距離をいかなくてならない。 それでもリベリスタの回復は止まることを知らない。 「皆さん、どうかご無事で」 櫻子の祈りは、仲間の傷を治す礎となっていく。 攻撃は硬いイージスに吸い込まれ、それをフリーのホリメが治す。 更には遠2の距離から舞子の攻撃が止まらない。 「ウフフ、的が沢山ね」 呪いの力で作った弾丸を茅根に打ち込み、平風が土砕掌を繰り出す。 舞子はショットガンを片手で持ちながら、もう片方で扇子を持ち口を隠す。その裏で楽しくて笑っていた。 「例え人数差があったとしても、当てることを極めた我等の敵では無いわ!!」 八人居ても、二人が回復に徹してしまえば、それこそ火力が足りないという状況ができあがる。 もはやこれはいたちごっこなのか。だが、攻撃威力と統制と、そこに能力が着いていっているだけ敵の方の軍配が軽いと見える。 「く、くっ」 敵ホリメへいまいち攻撃届かない、忌々しさから優希が奥歯を噛みしめた。あと少し、あと少しの火力が足りない。あと少しで壁が打ち砕けない、壁が砕けないとどうにもならない!! それを打破した、唯一の安定は彼女だった。たった一度のクリティカルが、全ての戦況をひっくり返すのだ。 ウェスティアは頭から煙が出るんじゃないかと思うくらいにまで考えた。 これでは此方の二人のうち、一人の回復が途切れた瞬間にその分回復されない量のダメージが此方の足を引っ張る。または自身がインスタントチャージで攻撃できない分、向こうの回復が厚くなる。 考えている暇は無い。考えるだけ無駄だろう。己は葬送曲一本で乗り切ると決意してきたのだ。 (やらなきゃ、倒さなきゃ) ウェスティアは七回目の葬送曲を組み上げる。高速詠唱の力が早くと口を急がせた。必死すぎてその時何を詠唱していたのか思い出せないまでに必死に組み上げた。 「!? わ、……っ!!!」 まるで体中の魔力を持って行かれるような錯覚を覚えた。 「優希さん、メアリさん、どいて!!!」 いつも以上に光り輝く陣は、はちゃめちゃに回転する。まるで魔力の暴走か。そこから飛び出した血色の鎖は高速で敵を狙う。 優希が体を捻じって避け、メアリの長い髪を掠って。 「ぶっ、ぅぐ!!?」 敵イージスの肩を、腹部を、血鎖は貫きその命をフェイトもろとも奪う。 「な、なんだそれ……かっけえじゃねぇか」 命からがら掠り傷で終わった平風も、呆気にとられて見ていた。 ● イージスが崩れた所で、ホリメの撃破など二十秒あれば容易い。 残るは。 「もう、逃がしません」 「さっきから、本当に邪魔くさい!!」 叉木に何度押されようと、何度でも立ち戻るヘクス。冗談じゃない、こっちは壁を相手する暇なんてない。 狙いたいのはリベリスタのホリメだ。 ヘクスの目に映った、地球割りのモーション。これで八回目か。見れば後衛ごと倒す勢いで来ている、弐式の貫通。 「大丈夫、ヘクスが守りますから」 「……ありがとうございます」 ヘクスは背の櫻子を守る。最強の盾として、最強の守り手として。それに櫻子は回復で応えた。 「誰も、けして誰も重症になんかさせません!!」 吹き荒れる聖神があたりを包む。地球割りに巻き込まれた愛の傷でさえ治していく。 「いっくぜえええ!! 壱、式、ジンッラィイー!! 平風スペシャルウ!」 平風は超元気だ。己の技を繰り出しながら、技名をださく改変している。彼の攻撃はアホっぽく見えて油断すると痛い、弱点を絶対についてくるため。 迅雷は複数飲み込む。茅根を始め、優希、烏、ヘクスを飲み込んでいく。フェイトを飛ばした者も少なくは無い。 「ボクの出番みーつけた!!」 「やばそうじゃの、手伝うのじゃて!!」 愛と、メアリ。ホリメの二人が聖神と天使の歌がリベリスタの背中を押した。メアリはリベリスタの後衛まで届かない位置、つまりは舞子の場所にいたため、全体に行き届かないものの十分だろう。 「回復手が、前に出てきてんじゃないですわよ!」 半ギレの舞子の銃口が、メアリに直撃する。零距離のピアッシングは危険だ、ブレイクするのだ。 足場を失くしたメアリの体が海へと落ちる。大勢が上手く取れない。 だが入れ替わるようにして、ウェスティアの血鎖が舞子へと刺さっていく。 「もう、逃がさないからね!!」 海のその上、黒羽をはためかせ、その血鎖は舞子、平風、そして叉木を射抜いた。安定の火力が三人を追い込んでいく。 勿論一番最初に倒れたのは舞子だ。サジタリならでわの回避と防御の無さが穴となる。 チャンス。優希は見逃さない。負けるだろう心算はこの時既に無かった。 「クッ、来るんじゃないですわ!! くそ、こんな屈辱初めてですわよ!!」 「なら、その屈辱と共に沈め」 櫻子からもらった翼をはためかせ、優希は海上を滑る。その腕には勝利を確信した迅雷を持ちながら。 飛沫が上がる。海面に紫電が弾ける。 「く、くっそぉぉおおおおお!!!!」 チャイナドレスのど真ん中、胸の中央を拳がひとつ、直撃する。その瞬間迅雷は舞子の体を痙攣させ。 その全てを奪った。 「これで、そちらの負けはほぼ確定です」 「さ、命は消える寸前が一番輝くそうです。魅せてください」 櫻子が落ちたメアリへと翼を授け、茅根が叉木へと元ある命中を更に磨ぎながら笑顔で気糸の罠に嵌める。 蜘蛛の巣のような気糸に捕まって、ぶらさがる叉木はため息ひとつ。 「……死ぬまで負けてねえ」 まだあちらはやる気満々。平風が大雪雪崩を茅根へと落とし込む。だがすぐさま反撃の烏が神速の狙撃を行い、その弾丸の全てを平風に命中させた。 「最後まで、お付き合い頂くよ」 「ああ、いいぜ!!!」 烏の言葉に、平風はさも楽しそうに、狂ったように、何度も何度も技を出す。もはやフィクサード二人はボロボロの状態で、体力もほぼ無いのだろう。 「最後の仕上げじゃて、まだ、次に行かないといけないのじゃ!!」 メアリの回復が仲間を守り、 「うん、一気にいかせてもらうよ!!」 インスタントチャージを終えた葬送曲が再び白昼を舞う。 「はぁ。纏めて、死ねええええ!!!」 叫ぶ平風が参式の地球割りを放つ時、ヘクスがその前方に立ちふさがり櫻子を守り通すのだ。だが、フェイトは飛ぶ。 (ヘクスは、耐えきったですよ) 以前のヘクスと思うでない、計一二回の攻撃を耐えた彼女の盾の能力は素晴らしいと言えるだろう。 「はは、楽しかった、楽しいな、もっと技量を磨いておけば良かった」 鍛えすぎて人間やめちゃった剣風のフィクサード。その息の根を引き抜くのは。 「さぁ、有象無象の区別なく我が弾頭は許しはしない、と行こうかね」 二四式・改を手に馴染ませ、そこから繰り出す弾丸は二つ。 ひとつは叉木、ひとつは平風。その直前で、死に際の抵抗とし、再び叉木は三式の地球割りを放ったのだった――。 ● 静かになった砂浜で、横たわる平風を優希は見下ろした。 「平風は」 「…何ンだよ」 「来世で俺と戦え」 思いがけない言葉があったものだ。こんなフィクサードでも一戦士として認めるのだろうか。 今まで色々悪いことを思うがままにしてきた。その報いが今きたか。嗚呼、もし会えるのなら来世会ってやろう。 「上等、だ……はは、ぁ」 そこで平風の頭が砂浜に落ちた。最後の一人の生も途切れる。 この戦場でのリベリスタの勝利が、決まった。 第二の太陽に魅せられて、野心と忠誠心を胸に。フィクサードと呼ばれし、悪魔達の戯れは始まっている。 場所は千葉。 時は堂々たる昼間。 一般人に紛れ、リベリスタとフィクサードが入り混じり、命の駆け引きを行おう。 戦えリベリスタ。リベリスタが止めなければ瞬間、ジ・エンド。 さあ。次の戦場へ、走ろう。 「皆さん、次の場所へ行く前にその傷治していきましょうね」 櫻子の優しさが身にしみよう。そして。全員の足が、思い思いの場所へ向かって走り出した――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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