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甘くて美味しい栗拾い!


「あのさ、狩生サン」
「なんですか」
「前回もそうだったんだけど、こう、あたしの事なんだと思ってる?」
「友人ですね」
「まあ、先生、私の事は?」
「良き生徒であり、友人ですね」
「お姉さま! 私もお友達だったわ!」
「……、非常に光栄なんだけどさ」
「ええ、なんでしょう」
「ちょっとだけ便利だなぁと思ってない?」
「いやいやまさか、そんな」
「お友達を疑うのは良くないのよ、お姉さま」
「世恋まで……! ポーカーフェイス滅びろ」
「おや、何か仰いましたか」
「ナンデモナイデス」
「では、今回も。どうぞ宜しくお願い致します」


「ええと。なんか。何て言うの。行楽行事のお手伝いをお願いしたいんだけど」
 暇な奴いない?
 ブリーフィングルーム端。椅子に座った『導唄』月隠・響希(nBNE000225)は、適当に声をかけ話を始めた。
「あの、まぁ、とある老人会の方々が栗拾いに行くんですって。
 本当だったら栗を拾うだけなんだけど……其処、近くにキャンプ場があってね。折角だから、秋っぽい料理でもして、ピクニックしないか、って感じになってて。
 ……荷物も重いし、折角だからあんたら一緒に行ってくれないかなあ、って思ってさ」
 如何かしら。その問いに、傾げられる首。
 老人会とアークの繋がりが良く分からない。その声に、嗚呼、と頷いたフォーチュナは即座に、後ろに立つ『常闇の端倪』竜牙 狩生 (nBNE000016)を振り向く。
「嗚呼。……以前、ゲートボールの時にもお世話になった、私の友人達です。
 あの一件で、彼等は非常に我々に好感を持った様で。……まぁ、此処に住む人々なので当然、神秘への理解も十分です。
 先日、何時もの様にゲートボールに向かったのですが……其処で丁度、この行楽の話が出まして。
 また、君たちと遊びたい、と言う声もかなり出ていたので、宜しければとお声かけしました」
 旅費や、必要なものは用意してある、と青年は言う。
 必要なのは身一つ。もし、何か他に持っていきたいものがあるならそれも持参して構わないらしい。
「しおりは此方にあります。僭越ながら、私が作らせて貰いました。不明点があるのなら、是非お気軽に。
 ……嗚呼、当日は徒歩です。山道を歩くので、少々大変かもしれませんが……たまには、このような催しも如何か、と思いまして」
 宜しければご一緒下さい。
 そんな言葉と共に、きっちりと折りたたまれた『たのしい栗拾い』のしおりは机に置かれた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:麻子  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2012年11月02日(金)22:19
くりたべたい。
お世話になってます、麻子です。栗ご飯すきです。
以下詳細。

●成功条件
栗拾って老人会の方々を楽しませる事。

●場所
何処かの山。
なんか栗があります。木があります。
あと、キャンプ場もあります。ちょっと広いグラウンドもあります。
貸切(!)です。

●日程
狩生が作成したものによると

栗拾い・料理・食事・その他
これを、朝の9時~夕方17時までで行えば、何でもおっけーだそうです。
しおりは、リベリスタにしか配られていないので、おじいちゃんたちは詳細な内容を知りません。
是非、お好きな感じにカスタマイズしてあげてください。
あんまり無理があるのは駄目です><

●老人会
狩生が良く遊んでいる人たちです。(『スタイリッシュ☆リレーション』に出てきました)
男性3人、女性4人。
竹次郎さん、菊さん、幸助さんと、八重さん、梅さん、松さん、千鶴子さんです。皆やさしいですたぶん。

●そのほか
持って行くものは自由です。
調理器具と、料理の材料は割とあります(なにつくる!って言えば用意されます。

●同行NPC
竜牙 狩生 (nBNE000016)が同行します。
彼への指示は【狩生】とある一番最新の発言を参照します。

響希はしいなさんちの世恋ちゃんと、お土産を待っているそうです。

以上です。
もし宜しければお願い致します。
参加NPC
竜牙 狩生 (nBNE000016)
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
梶・リュクターン・五月(BNE000267)
ソードミラージュ
エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)
マグメイガス
ジズ・ゲルディーリ(BNE002638)
スターサジタリー
那須野・与市(BNE002759)
ホーリーメイガス
葛葉 祈(BNE003735)
レイザータクト
毛瀬・小五郎(BNE003953)
ホーリーメイガス
六鳥・ゆき(BNE004056)
覇界闘士
阿曇・凪(BNE004094)
■サポート参加者 2人■
マグメイガス
イーゼリット・イシュター(BNE001996)
ホーリーメイガス
救慈 冥真(BNE002380)


「いつもじいじがお世話になってます……覚えてるかな?」
 朝9時。準備を整えて山の麓に集まった面々の中でも一際明るく礼儀正しく。
『刃の猫』梶・リュクターン・五月(BNE000267)は見知った老人会の面々に声をかけた。
 お久し振り、と返された声に嬉しそうに笑う。頭に乗せた帽子を、泳ぎ疲れたにんg……梅が撫でた。
 それぞれに挨拶を交わし、山の中へと歩き出す。初対面の者、そうでない者交じり合う中、地元の住民に周辺の様子を確認してきた『三高平のモーセ』毛瀬・小五郎(BNE003953)は何時も通り、震えながら歩いていた。
「こないだは楽しかったですのう……今日もよろしく頼みますじゃ……」
 モーセさん元気かい、なんて交わされる会話。昔住んでいた家には、大きな栗の木があった、と告げれば素敵ねぇ、と返る声。
 毎年子供達と拾い集めたのも懐かしい。安全靴が少々危なっかしく緩やかな坂道を踏み締めた。
 幾らハイキングコース的な場所であっても、山道は山道。不安定さのある其処に自分も確り注意を払いながら、『大鬼蛮声』阿曇・凪(BNE004094)も歩く。
「紅葉綺麗だけど、落ち葉ですべらないでねー」
 山育ちの自分にとってはこの程度平地と変わらないけれど、ご老人には分からない。自分の荷物を、そして少し大きな魔法瓶を抱え上げたまま、心配そうに振り向く。
 そんな彼の横、手持ち無沙汰げな顔で歩く『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759)はおずおずと、その服を引いた。
「あ、その凪様? 持ってもらうのは悪いしの?」
 ほら、自分相手なのだから。そんな事してくれなくても大丈夫だ、と何時も通りのネガティブさを発揮する彼女が見つめるのは、重たいであろう魔法瓶だった。
 以前おはぎを褒めて貰えたから、今回は自家製の小豆を味付けて来たのだ。少々重くなるのは覚悟済み。折角栗を拾うなら、ぜんざいにして食べて欲しかった。
 また、美味しいと褒めてくれる顔も、少し見たくて。頑張った彼女の気持ちを知ってか知らずか、軽々と全て抱えた凪は問題ないよと笑って見せた。
「あ、其処段差になってるんで」
 気をつけて。メンバーの先頭で『塵喰憎器』救慈 冥真(BNE002380)は己の足で確かめた危険を直に全員へと周知する。
 老人達が少しでも歩きやすいように、落ちた枝やイガを払う彼の今日の信条は道化に徹する、ただひとつ。
 やっぱり如何見ても好青年なその姿は、老人にも人気。お菊が頻りにボディタッチをしているのは気のせいではないかもしれない。

 面持ちは少し緊張気味。これでも漸く、少しずつ顔を上げて話せるようになったジズ・ゲルディーリ(BNE002638)は転がるイガを見つけて、そっと片足を乗せた。
 確り踏んで、ぐりぐり。ころり、丸々とした艶やかな実は気づけば両手一杯程転がっていた。
「これ、採れたよ」
 控えめに、けれど何処か誇らしげに手を差し出せば、籠を抱えていた八重が優しく微笑んで頭を撫でた。
 良い子ねぇ、と優しい声。少しでも楽しい時間を、彼らに過ごさせてあげられているだろうか。そんな事を考えて、でもうまく口に出来なくて。
 だから、ジズは代わりに次の栗を集めに行く。たくさんたくさん集めて、その後は美味しく食べるのだ。楽しみ、と呟いて、少女は次のイガをそっと踏む。
「疲れたらあたし達に言ってね。背負うくらいなんともないから」
 色づく葉や、転がる木の実は実りの秋の象徴だろうか。『蒙昧主義のケファ』エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)は老人達を気遣う。
 気遣いはいらないだろうか、と思うほど元気な老人達の姿に、少しだけ目を細める。恐らくは同年代か年下ばかりだろうけれど、こんなに元気なのはこうして遊んでいるからだろうか。
 元気と言うよりは寧ろもう殺伐とした戦場を生き抜く美少女(81歳男性)は興味深げに首を傾けた。
「……そう言えば、漸く同年代だと信じて貰えました」
 細い指が野草を摘む。『常闇の端倪』竜牙 狩生 (nBNE000016)の呟きに、思わず笑った。見た目がどうこう、なんて気にする事ではない筈なのだけれど、やっぱり見た目は大事だったりして。
 自分も相変わらず少女だと思われているのだろうか、呟いた声に、今度は狩生が笑った。
 たびのしおりを、ぺらりと捲る。最初よりボリュームアップしたそれを丁寧に確認しながら、『紡唄』葛葉 祈(BNE003735)はひとつ頷いた。
 大体時間通り。こう言うのは大体で良いのだ。時間通りに動く、なんて難しいのだから。
 ゆとりを持って組んだスケジュールは功を奏し、彼らは比較的のんびり、秋を楽しみながら散策出来ていた。
「お土産を期待している子もいる事だし、頑張って拾いましょ」
 ばっちり栗拾い装備。誘ってもらったなら楽しもう、な祈はてきぱきと栗を拾い上げていく。
「痛っ……もう!」
 ちくり、指を刺したイガに眉を寄せる。『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)は恨めしげに栗を見つめて、けれど見よう見まねでもう一度、そのイガを踏みつけた。
 だって悔しいし。採れない、なんて言えないし。ころり、漸く取り出せたそれを見つめる。うん、悪くない。
 紫色の瞳が瞬く。それにしても、狩生の交友関係ってなんて言うか凄く、おじいちゃんじゃないだろうか。加えて言うなら、趣味も。
 くすり、と笑って。でも、もしかしたらそれが当然と言えば当然なのかもしれない、なんて思う。だって、御歳74歳だ。
「どれが食べられるのでしょう……」
 きょろきょろ、周囲に生える草木を見回して。六鳥・ゆき(BNE004056)は小さく呟く。山の中のものは見慣れないものばかりで。けれどだからこそ興味を引かれた。
「これがアケビですじゃ……食べる分だけ取りましょうな……」
 小五郎の震える指先が、よく熟れ口を開いた実を摘み取る。隣ではジズが重そうに抱えた図鑑と交互に見比べ目を細める。
「蔦で籠も編んでみたいね」
「あら、まぁ。こんな風に生えているのね……」
 反応はそれぞれ。長い道中も、会話が弾めばあっと言う間なのかもしれない。


「さあ行くぞ凪、受け止めろ!」
 軍手がグローブに見えたのは気のせいだろうか。残酷な子猫・五月が力一杯腕を振り抜く。
 見た目にそぐわぬ強肩が放つのは籠と言うゴールへの超絶シュート。可憐な猫耳エンジェルが、今この時だけ非情な子猫へと顔を変えるらしい。
 狙いはばっちり、確りゴールを揺らしたそれに、籠を背負った凪は瞬きした。
「みんなも、拾ったのはこの中に遠慮なくいれてね」
 ちょっと驚いたけど、この程度なんのその。ちっちゃくたって山育ちの男の子、へこたれたりしないのだ。
 それに。段々と重みを増す籠は、それだけ収穫が多い事を教えてくれるから。思わず、表情が綻んだ。
 金属の手で躊躇い無くイガを掴んで、ぱきり。何不自由なく取り出せた栗の実に、機械の手も案外便利なものだと目を細める。
「まぁ、じゃあおばあちゃんも本気を出しましょうか」
 五月の横。共に栗を拾っていた梅が不敵に笑う。なんかちょっと斜め。あ、これなんか何時かも見た気がする。
「そ……それは、泳ぎ疲れたマーメイドの――!」
 \黄金☆ポジション/
 そもそもどういう必殺技かも分からない上に泳ぎ疲れたマーメイドってそれなんてジュゴン? な話だが。
 とりあえずものの見事にシュートを決めて見せた梅に、五月が向けるのは感嘆の眼差し。
 栗拾いでも魅せられるとは、とかなんとか言ってますが、その魅力が分かるのは多分貴女だけです。
 後方では、狩生と小五郎が茂みに落ちる栗を探していた。案外穴場なのだ、と小五郎が呟けば、お詳しい、と向けられる尊敬の眼差し。
 茂みに入れば当然、服には草や実が纏わりつく。衣装を点々と飾る紅や緑に、ジズは面白そうに少しだけ目を細めた。
「草の実ついても狩生さんはおしゃれに見えるよね……」
 指先でひとつふたつ。摘んでやれば優しく細められる銀の瞳。ジズ君にも、と綺麗な紅葉の葉が髪に添えられる。
 
 和気藹々。たっぷりの栗と、アケビ、山菜を抱えてキャンプ場に到着した面々の行動は、非常に迅速だった。
 食欲って、大事です。冥真がミョウバン水につけて栗のアクを取る横では、エレオノーラが小首を傾げる。
「美味しい栗料理、何か知らない?」
 折角だ、皆で考えて作った方がずっと美味しい。そんな言葉に、次々とメニューが寄せられる。
 栗ご飯に、栗きんとん。山菜は汁物も美味しいだろう。薄くスライスして揚げた栗も美味しいのよ、と言う声にはものめずらしげな声が飛ぶ。
 凡そメニューを決めて。てきぱき、動き出すのは祈。慣れた手つきで茹でた栗を剥くものの、その表情は少しだけ、自信がなさげで。
 折角だから色々教わろう、と声をかければ、教えてくれるのは手早い栗の剥き方。
 茹でた後に炒ると、渋皮が剥きやすくなるのだと言う言葉には、思わず冥真も反応する。嗚呼、そんな工夫もあるのか。
「祈ちゃん、食べて欲しい良い人でもいるのかしら?」
「……心配な人が。何れ、彼にも食べて欲しくて」
 そんな返答に、八重は微笑む。貴女はきっと良いお嫁さんになるわねぇ、なんて微笑む姿はやはり優雅です。
 丹念に渋皮まで剥いた栗は、温かい内に三温糖と練り合わせて。ゆき監修・栗きんとんは非常に順調に進んでいた。
 料理ならお手の物。茶巾にしたそれを並べれば、漂う甘い香りに期待の目が向く。
 キャンプ場の端。焼き栗を作る凪の傍で、イーゼリットは慌てて自分の前の栗を端に避けた。
 小五郎や凪が前処理を済ませていてくれたものの、ただ焼けば良いと言うわけではない。気づけば真っ黒になっていた栗に眉が寄った。
 不得手なことだろうと、出来ない、と言うのはプライドが許さないのである。再チャレンジした彼女が何とか焼き栗を完成させたのは、この少し後のことである。
 汁物の用意をする千鶴子と松の傍。真剣に手伝いをするのは五月とジズ。2人共、料理なんて良く知らなくて。
 だから教えて貰おう、と肩を並べる。ぎこちなく下ごしらえを済ませば次は味付け。
 濃すぎないように、薄くもないように。味見を確りして整えて。嗚呼、出来上がりが楽しみだ。


 机の上に、沢山の料理が並ぶ。
 栗ご飯、きんとん、山菜の汁物。それぞれ持ち寄ったのだろうか、葡萄の隣にはアケビ、そして色鮮やかなお漬物。
 ゆきが持って来た取って置きのお茶を置けば、立派な秋のフルコース。食欲をそそる香りに、手が伸びる。
 栗料理、なんて食べた事がなくて。実はこっそり楽しみにしていたそれをジズは一口。
 広がる甘み。程好い塩気。嗚呼、やっぱり日本食、って凄く美味しい。
「おいしい……。おいしいよ!」
 緊張はもう影もない。嬉しそうに綻んだ顔は、喜びを、楽しさを何より分かりやすく教えてくれる。
 楽しませたい、と思っていたのに、気が付けば楽しませて貰っている……否。一緒に、楽しんでいる。
 弾む会話が、交わす笑顔が齎す幸福感は何物にも変えがたい。もっと、と差し出した茶碗に、次の栗ご飯が盛られていく。
 料理から引き続き、祈は八重と言葉を交わす。その立ち振る舞いに憧れる、と告げれば、歳を取ればそうなるわ、と優しく微笑む。
 食事の後はデザート。きんとんに伸びる手に、少しだけ遠慮がちに。与市が机に載せたのは、甘い湯気を漂わせる栗ぜんざい。
「あ、小豆の味付けとか、見てもらいたいのじゃ……よければ、なのじゃが」
 あくまで控えめに。自分の祖母直伝のレシピ通りに作ってみたものの、味付けは少しだけ不安で。
 けれど、出来れば食べて欲しい、と告げ終わる前に、即座にお椀に盛られる甘いそれ。
 小豆単体では、自分にしては美味しく出来たと思う。小さく呟けば、目の前で口を付けられるお椀。
 緊張で泳ぐ視線。少しだけ落ちた沈黙が耐え切れなくて。如何じゃろう、と消え入りそうに尋ねる。
「おー、うまいうまい! 与市ちゃんはこの前のおはぎと良い、料理上手だなぁ」
 もう一杯、と空になったお椀が出される。良かった、と撫で下ろした胸に灯ったのは、くすぐったいような暖かさだった。

「こないだ二男が芝栗でかち栗を作ったと持ってきましてのう……」
 食休み。余った料理はお土産に、と詰めながら野鳥を眺める合間に、小五郎が机に載せたのは、芝栗を乾燥させ、炒ってを繰り返して作ったかち栗。
 現代っ子には馴染みがないだろうそれも、老人達にとっては懐かしいおやつ。これは良い、と口に放って転がせば、普通の栗より強い甘みに表情が緩む。
「嗚呼、どんぐりも拾ったのですじゃよ……さて、笛でもつくりましょうかのう……」
 ころり、と転がった茶色いそれの中身を綺麗にくり貫いて。素早く玩具を作る姿に、おじい様方はもうのりのり。
 やじろべえ、独楽、ああそういえば、繋いで首飾りにしてあげた事もあったっけ。
 広がる思い出話と一緒に、作り出される小さな玩具。ゲームも玩具も、今ほどなかった頃。子供はこうして遊んだのだ。
 それはもう戻れなくて、けれどとても愛しい記憶。和やかな空気の中、ふと。すぐ傍の枝に止まった小鳥に、ゆきは小さく可愛らしい、と呟いた。
 同じく、ぼんやりと風景を眺めていたエレオノーラもまた、目を細める。隣の青年を見上げて、微かに首を傾げた。
「日本はいいわねえ、四季が豊かなのは素晴らしいわ……あれは何かしら」
「ゴジュウカラですね。羽根が美しい。……ほら、面白い止まり方をしているでしょう」
 下向きに止まる姿は、他では余り見られないものだ、と付け加えられた解説に、面白そうに目を細める。
 小鳥も花も、やはり四季と共に移ろって。同じモノは二度と見られない。けれど、だからこそ美しいのだろう。


 空気が、段々と冷えていく。落ち始めた日差し。そろそろ帰ろう、と言ったのは誰だっただろうか。
 凪がカメラを取り出す。折角だから、記念の一枚。そう言って、皆で並んだ。
「よーし。10秒したらシャッターきれるよー」
 セルフタイマーをかけて、小走り。素早く列に加わって、ポーズは……モーセに倣ってダブピでも。
 かしゃり、とシャッターの切れる音。それぞれの表情を浮かべて、秋の思い出が一枚、刻まれる。
 ゆっくりと、麓へと歩き出す。最初は軽やかに。けれど、やはりはしゃぎ疲れていたのだろう。段々と足取りがおぼつかなくなって来た五月は、眠たげに目を擦る。
「狩生、おんぶするのだ」
 両手を伸ばす。随分高い位置の銀色は驚いた様に瞬いて。けれど、直に何時もよりずっと優しく細められる。
 屈んだ背に体を乗せた。見た目より随分広い背中が、軽々五月の身体を持ち上げる。
「……じいじは幸せだな、やっぱり良い友達だらけだ」
 自分もまた遊びたい。とろとろと。眠りに沈んでいく声に、狩生が笑う。また遊びましょう、と囁けば、指きりだ、と返した声はもう殆ど夢うつつ。
 もう一度、小さく笑う気配がした。孫が居たなら、君の様だったんでしょうね。そっと漏らした囁きが少しだけ寂しげだったのは気のせいだったのだろうか。
 帰り道はあっと言う間。麓について、此処から先はそれぞれの帰路につく。
「楽しかったわ、また楽しい事する時は誘ってね」
「今日も楽しかったですのう……。また機を見て集まりましょうな……」
 同い年、エレオノーラと小五郎の誘いに、老人たちは頷く。楽しかった、また今度。そんな言葉に混じらせて、祈が告げたのはお礼だった。
「もしよければ、仲良くなりたいしまた遊びたいわ」
 そんな、まだ歳若い少女の誘いにも、老人達は嬉しそうに笑う。次は冬だなぁ、なんて、楽しげな声が聞こえて。
 暗くなった空。漸く別れを告げた老人達が歩き出す姿を、ジズは確りと見つめていた。
 元気で帰るまでが、遠足。見送りだって大切だ。もう緊張の影はなくて、浮かんだのは心からの笑顔。
「ありがとう、またね」
 手を振った。少しだけ小さな後姿が、遠くなっていく。秋は深まって、冷たい空気は、冬の気配を教えてくれる。
 次会う時はどんな事をしよう。考えるのも楽しくて。秋を満喫した一日は、更けていった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。

秋を満喫!なプレイングは、書いている私もとても楽しかったです。
お返しが遅くなって申し訳ありません。もしよければ、またおじいちゃんおばあちゃんたちと遊んであげてください。

ご参加、本当に有難う御座いました。