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だいだら、ぼっち

●森の中の大入道
 そーっと、ゆっくりと。
 足をついても、地面は微かに揺らぐ。
(ここはどこだろ? 見たこともねえ土地だ……)
 巨大な存在は、途方に暮れたという様子で、辺りを見回した。
 暗いせいで遠くは見えないが、周囲はかなり広い森のようである。
(困った……何でこんただ事に、なっちまっただ……)
 誰か、いないですかい?
 そう言ったつもりでも巨人の口から響くのは、恐ろしげな唸り声。
 ゴゥォォォォ、グガァァゥゥゥ!
 グルルルルゥゥゥゥ!!
 むろん、その咆哮に応えるものはいない。
 巨人は溜め息をついて、再び慎重に歩きだした。
 その、すぐ後。
 幾羽かの鳥たちが巨人の進路上にいたらしく、羽ばたき寝床を移動する。
(っ!? な、なんだっ!?)
 その羽ばたきに、びっくりして。
 巨人が発した問いかけの声は威嚇の咆哮にしか聞こえず、鳥だけでなく獣たちも騒ぎだした。
(わっ!? く、くんな! あっちいけ!!)
 驚いた巨人は地団太を踏むように足踏みをし、大きな逞しい腕をぶんぶんと振り回す。
 その激しさに地面が歪み、大木が次々と薙ぎ倒された。
 驚いた動物や鳥たちが更に騒ぎながら逃げだし始め、巨人はその音に更に驚き、怯えて。
 悪い方に悪い方にと事態は加速し……森の一帯はめちゃくちゃに、嵐でも通り過ぎるかのように破壊されていく。

●妖怪紀行
「だいだらぼっちってご存知ですか?」
 他にも地方によって色々呼び名があるみたいですけど。
 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言ってから、大きなアザーバイドが現れるのだと説明した。
 見た目は人型で、身の丈は50m以上。
「すごく大きいですけど……伝承とかですと山を持ってきたとか足跡が沼になったとか聞きますから、それに比べると小さいんでしょうか?」
 あるいは遥か昔、そういう存在がD・ホールを通って現れていたのかも知れない。
 今回のアザーバイドが現れる時間は夜で、場所は人のいない森の中。
「中と言っても上半身……どころか膝すら木々の上に出ちゃてるみたいなんですが」
 開いたD・ホールによってこの世界に迷い込んだアザーバイドは帰り道を探して森をうろつくのだが、途中で驚いてパニックを起こし周囲一帯を破壊しつくしてしまうのだという。
「それを何とか皆さんに阻止して頂きたいんです」

 方法としては2案あります。
 マルガレーテはそう言って、順に話し始めた。
 一方は単純に、このアザーバイドを退治するという方法だ。
「戦いには慣れていない様ですが、とにかく力も耐久力も桁違いの存在ですので……」
 当然、暴れ回られた場合に比べれば小さくなるだろうが、周囲に被害が出ることになるだろう。
「もうひとつの案は、このアザーバイドとコミュニケーションを取るという手段です」
 言葉そのものはスキルが無ければ通じないが、アザーバイドの性格や状態はある程度判明しているとフォーチュナの少女は説明した。
 アザーバイドは戦いを好まず、どちらかというと臆病で気の小さい性格をしているらしい。
 ただ、驚くと対象が近付かないようにしようとして、威嚇しようとしたりして加減が効かず、結果として周囲に被害が出てしまうのだそうだ。
「現在はお腹も空かせてるみたいで、よけいに神経質になったり不安になったりしているのかもしれません」
 ただ、それを利用して食べ物とかを用意するというのも手かも知れない。
「他にも何らかの方法があれば、皆さんで試してみて下さって構いません」

 マルガレーテはそう説明を終えてから、今回、同行希望の子がいますと付け加えた。
 それに応えるように、皆の足元にいた真っ白いわんこのリベリスタが、クーンと鳴いてみせる。
「名前はシロ。未熟ですがホーリーメイガスなので同行させて下さい、みたいにいってるみたいです」
 動物会話のできるリベリスタさんが通訳してくれましたとフォーチュナの少女は説明した。
 会話等はスキルが無ければできないが、ある程度何となく、リベリスタたちの言動は察してくれるようである。
 背の高い存在にコンタクトを取ろうとする場合、翼の加護等が役に立つかもしれない。
 他、様々な場面でシロなりの全力を尽くしてくれるだろう。
「いろいろ大変だと思いますが、皆さんでしたらきっと大丈夫です」
 そう言って、リベリスタたちを見回して。
「どうか、お気をつけて」
 マルガレーテは皆を、見送った。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年11月04日(日)23:46
オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回はこの世界に現れたアザーバイドの暴走を阻止するという依頼になります。


■だいだらぼっち
異世界から迷い込んだ大きな人型の生き物。
50m以上はあろうかという巨人です。
この世界の言葉は理解できず、喋っても唸ったり吼えたりしているように聞こえる為に恐ろし気ですが、どちらかというと気が弱く臆病な性格をしているようです。
目も耳も良いようですが、そのせいでちょっとした事に気付き、驚いたり怯えたりします。
偶然この世界に迷い込んでしまい、不安げに帰り道であるD・ホールを探して歩き回っています。
お腹も空かせているようです。
放っておくと鳥の羽ばたきや獣の鳴声に驚いて暴れて出してしまい、周辺一帯の森が嵐か何かが通り過ぎた後のように破壊されてしまいます。

戦う場合、実際の難易度が表記より上昇する可能性があります。
巨大な身体に見合う力と耐久力を持ち、器用で動きも機敏な方です。
ただ戦闘には慣れていないようで、攻撃そのものは腕を振り回したり、地団太を踏んだ結果踏み潰すといった感じの単純なものとなります。
(それでも充分な破壊力を持っています)


■出現場所
夜の森林です。
周辺一帯は人家もなく、結界等を張らなくてもD・ホールが開くまでの間、一般人等は誰も近付きません。
動物や鳥等は生息していて、夜行性の動物などは活動しています。
天気は曇りで灯かりもないため、辺りはかなり暗めです。
だいだらぼっちは木々より高いので体がほぼ樹上に出ていますが、暗闇のお陰で遠くからは見えません。
夜明け前に、だいだらぼっちがこの世界に迷い込んできた時に開いたD・ホールが再び開きます。

■シロ
真っ白な毛の犬のホーリーメイガス。
以前エリューション事件でアークのリベリスタたちに助けられ、現在はアークに所属しています。
誰かと一緒に食事するのが好きになってきたようで最近はR・ストマックを常備しています。
翼の加護、マナサイクル、天使の息、マジックアローが使用可能。
ただし攻撃力に関しては低めです。
言葉は通じませんが、頼みがある場合難しくなければ何となく雰囲気などで察してくれます。
アザーバイドとはあまり戦いたくなさそうですが、戦いとなった場合は頑張って皆を援護します。


周囲への被害を一定以下に抑えられれば、依頼成功となります。
それでは、興味を持って頂けましたら。
よろしくお願いします。


参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
覇界闘士
岩月 虎吾郎(BNE000686)
ホーリーメイガス
ニニギア・ドオレ(BNE001291)
マグメイガス
百舌鳥 付喪(BNE002443)
ホーリーメイガス
エルヴィン・ガーネット(BNE002792)
レイザータクト
御厨・幸蓮(BNE003916)
クロスイージス
姫柳 蒼司郎(BNE004093)

●だいだらぼっち
「昔話の絵本でみたあれと同じかしら?」
 アザーバイドだったのですねぇ、と『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)は呟いた。
「おにゃかがすいてたらご機嫌も斜めになるというものなのです」
 美味しいものを食べて元の世界に戻ってほしい。そう思う。
『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)も、同じような気持ちを抱いていた。
 夜の暗闇の中、知らない場所にひとりぼっち。
(勇敢な子供でも、それなりにビビっちまって当然の状況だ)
「早く保護して、安心させてやんねーとな」
 出来ればこの世界を楽しんで、好きになって帰ってもらえれば。
(だいだらぼっちさんに、無事に帰ってもらうように)
 そしてできれば、楽しい思い出を胸に帰ってもらうように。
「がんばるわ」
『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)は決意するように、きゅっと手を握りしめる。
「B・B・Q! B・B・Q!」
(だいだらぼっちとか、ぼっちの亜種ですし!)
「ぼっち仲間として俺は見捨てておけませんし!」
 一方、元気にテンション高く『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)は用意した荷物を確認する。
 お腹を空かせているのだから気を引くために食べ物を使ってみようというのが一行の作戦だ。
「準備! BBQコンロ! 木炭と着火剤! 木炭挟むトング! バーナー! 軍手!」
 そして、食材関連!
(あらかじめ肉とかタレに付けたり野菜切ったりしていくとしても、包丁マナ板はあった方が便利!)
「食材用トングにアルミホイル!皿や割り箸、コップも必須だよね!」
 後はあると便利、ウェットティッシュ。
「うむ、完璧じゃね」
 一仕事終えたような笑顔で頷いてみせる。
 実際、竜一を含めリベリスタたちが用意した食糧はかなりの量だった。
 とはいえ身の丈50m以上のお腹を空かせた者が相手となれば、その量も当然なのかもしれない。
(身の丈50mて間近で見たらすげぇんだろうなぁ……)
 大きさのイメージで考えると、ウルト○マンとかと同じくらいだろうか?
「つかぶっちゃけ初任務なんスよ」
『超絶甘党』姫柳 蒼司郎(BNE004093)は言葉通り素直に、ぶっちゃけた。
(お役立ちスキルも大してない俺に出来ることって限られてる気がするー)
「せめて足はひっぱらないように頑張りますかネ」
 あと見修行。
「シロたんもふりながら先輩達の動向をしっかりと見させて頂きますヨ」
 前半は言うつもりだったのかダダ洩れしたのかは分からない。
 とにかく潔いくらいに、彼はハッキリ言い切った。
 一方で。
「また迷子さんのお相手じゃな」
「でっかい迷子だねえ」
『眼鏡っ虎』岩月 虎吾郎(BNE000686)の言葉に『イエローナイト』百舌鳥 付喪(BNE002443)はそう応じながら、今回のアザーバイドに想いを馳せた。
(気持ちは分からないでもないけど、ちょっと怯え過ぎだね)
「まあ悪い子じゃあ無いみたいだから、話せば分かるだろうよ」
 幸いというべきか、今回リベリスタたちにはアザーバイドと意志疎通する手段がある。
「頼りにしてるよ、幸蓮」
 そう言って付喪は、傍らの少女に視線を向けた。
『芽華』御厨・幸蓮(BNE003916)は持ってきた道具や食材の確認を終えると、シロへと能力の使用等について話し、翼の加護をお願いする。
 シロは幸蓮に頷くと、元気にワンと鳴いてみせた。

●作戦準備!
 先ずはとバーベキューの準備が始まった。
 機材等はともかく、用意された食材、そして燃料はかなりの量である。
「こんなに沢山だと、さおりんの専属秘書としては良いのかどうか悩んでしまうのです」
 支払いはアークで頼もうという虎吾郎に、そあらは難しい顔をして考え込む、が……すぐに閃いたという表情で頷いてみせた。
「ですが、アザーバイドで被害を出してしまうよりきっと安上がりに違いないのです!」
 あ、ダメですよ?
「無駄遣いだとあたしが判断したものは実費で払ってもらうですからね」
 とはいえ見たところ、無駄使いらしい無駄遣いというのは見当たらなさそうか。
「宴会で釣るって、天岩戸の話みてーだな」
 エルヴィンも古来の物語の名を口にしながら皆と共に準備を整えていく。
 厳しいかもしれないが、なるべくならアザーバイドが座れそうな場所も作っておきたい。
 付喪は食材の用意を手伝い、蒼司郎も手伝いながら風向きを確認した。
「シロの健康にちゃんと気を使ってやらないとね」
 竜一はワンワン用にと、味つけしてない食物も用意する。
「わんこ好きー!」
 ぎゅーっと抱きしめ、せっかくなのでモフモフと。
 そあらはというと、合鴨の雛を利用した田んぼで取れた時のお米を用意した。
(合鴨を守ってカラスをやっつけて稲刈りも手伝って新米を頂いたですけれど、とても美味しかったのです)
「ですからこのご飯で塩おむすびを作りたいと思うです」
(だいだらぼっちをお腹一杯にするにはどれくらい炊けばいいのかしら?)
 相当な量であることは間違いない。
「焚き木が足りないのです」
 呟いた後、そあらはもふられているシロへと視線を向けて……お願いした。
「シロさん、木を一杯持ってきてほしいのですよ」
 おなじわんこのビスハとして一緒に頑張ってご飯を一杯炊くのです。
 そあらの言葉にシロは、元気にワウンと頷いてみせた。
 ぴゅあわんこ・そあらに対して此方は100%犬って意味で、ぴゅあわんこ。
 11月某日、ここに『ぴゅあわんこ同盟』(構成員2名)が設立された。

●バーベキュー大作戦
 たっぷりと用意された、食べ物と飲み物。
 じゅーじゅーと音を立てて肉が焼かれ始め、辺りに香ばしい香りが漂い始める。
(……ああ、腹減ってきた)
「早くこっちに来てくれよ、迷子さん」
 エルヴィンは準備された品々を眺めながら呟いた。
 とにかく、あとは彼が来るのを待つだけだ。
 あまり騒ぎすぎないよう注意しつつ。
「楽しい雰囲気を出せるよう、盛り上がっていこうか」
 彼の言葉に頷くように、竜一がギターを取り出した。
 腹をすかしたぼっちに食の匂いで誘いこもう作戦。
(BBQの匂いと、和やかな雰囲気と、楽しげな空気)
「そこに俺のギターの穏やかな音色を重ねれば、もう、きゅんきゅんですよ」
 ただ、まーぜーて、の一言も言えないぼっちっぷりを、だいだらぼっちは発揮するだろう。
 そこをバベル持ちに誘わせれば、バッチリだ。
 虎吾郎も肉、野菜、魚をどんどん次々と焼いていく。
 冷え込む季節になってきたので温かいみそ汁も用意し、ついでに……こっそり熱燗も一杯。
(シロに人と同じ物を食べさせるのは健康に良くないと聞いたが、スキルがあるならいいじゃろ)
「上手いか?」
 たれ付きの肉やお菓子をあげれば、シロは嬉しそうにクーンと鳴いた。
「肉肉肉! 経費で食い放題とか最高! ……あ、いえちゃんと働きますヨ?」
 網を充分熱して、ペーパータオルでサラダ油を一塗り。
 焼き上がった肉を保温しとく避難場所も、蒼司郎はコンロの上に確保した。
「この日のために美味しい肉の焼き方調べたんですカラ」
 肉をひっくり返していいのは、たった1度だけ。
「先輩、ここに置いた肉は食べて大丈夫な肉ですからネ」
 ハイ上手に焼けましたー!
「シロたんも肉ドーゾ」
 はふはふと肉を食べるシロを見守りつつ。
(さぁ良い匂いに釣られろでっかいぼっち!)
 今のところは姿は見えない。
 もっとも、夜で視界が悪いのもあるだろう。
 付喪は懐中電灯を用意したり拡声器を幸蓮に渡したりして、捜索や話し合いの準備を進めていく。
「目も耳も良いらしいからね、こっちから呼び掛ければ向うから寄って来るんじゃないかい?」
 話を聞く限り相手は相当怖がってるようだし、こちらから声をかけた方が良さそうだ。
 一旦調理を任せると、虎吾郎も自分たちに気付きやすいようにと周囲にも灯かりを用意した。
 動物等がいたら避難させようかと考えていたものの、幸いに周囲にはいないようである。
 やがて……何かが見える前に地面が微かに揺れ、それに合わせるように地響きのような音が響き始めた。

●大きな、ひとりぼっち
「うわぁ、なんて大きいの。すごい」
 びっくり、あんぐり、大きさに感嘆……そんな様子でニニギアが呟く。
 闇の中、離れていても動くのが何となく見えるそれは、圧倒的だった。
 もっとも、その性格は威容とは正反対であるという。
 こちらを警戒しながら見ているだろうと考えて、虎吾郎は笑顔で手招きしてみせた。
(俺、たぶん、役に立てないし引くことも大切だと思うんだ)
 対話は能力を持つ者に任せて。
 蒼司郎は、敵意はないし仲良くしたいと思ってる事を伝えてほしいとお願いする。
 皆もそうなのだろうけど、やっぱり自分の気持ちも伝えたいから。
 ニニギアは翼の加護を使用する者に何かあった場合のフォローを考えて……
「シロさんかわいい」
 きゅんきゅんしながら位置を取る。
 そあらも、もし誰か傷付いたらすぐに癒せるようにと気を配って。
 相手ができるだけ動かずに済むように、と。
 幸蓮は話しかけ易い位置へと飛ぶと、能力を使用して話しかけた。
「そこの御仁!」
 グゥオオオオオゥ!?
 呼び掛けに凄まじい咆哮が返る。
 威嚇の咆哮に聞こえるそれが何なのか、エルヴィンと幸蓮には理解できた。
 呼び掛けにアザーバイド、だいだらぼっちは……ビビったのである。
 警戒して近付いてこないかもと考えたエルヴィンは、怖がらせないようにとゆっくり近付くと、にっこりと笑顔を向けて話しかけた。
「やあ、こんばんは」
 呼び掛けにアザーバイドは、唸り声のようなものをあげる。
 それに頷くような仕草をしてみせて。
「俺の名前はエルヴィン、君の名前は?」
 青年の呼びかけに、再び咆哮が返る。
 もっとも、先程と比べると少し抑揚が少なくなったような……気が、しなくもないような。
 刺激しないよう、柔らかく穏やかに。
 エルヴィンは言葉を続けた。
 おなかが空いていないかという言葉に、だいだらぼっちは大きく頷いて匂いを嗅ぐような仕草をしてみせる。
 そのままエルヴィンと幸蓮はアザーバイドを誘った。
 風が吹いたり地面が揺れたりするような一挙一動に感嘆しつつ、落ち着いて。
 相手を怯えさせないようにと見守っていたニニギアは、首を縦に振っただいだらぼっちを見て、そあらと共に胸を撫で下ろす。
 バーベキュー会場へと招待する為に幸蓮は、そして通訳してもらいながら虎吾郎も丁寧に説明し始めた。
「君は我々の世界に迷い込んだ。我々はそれを察知して、君を元の世界に戻す手助けに来た」
 幸蓮はそのまま、君は自分たちから見たらとても大きい事、それ故に君の姿を見たものは驚いて逃げようとして騒いでいるのだという事を説明した。
「君も身知らぬ土地と生き物に驚くだろう? それと同じだ」
 虎吾郎は、この周辺にはだいだらぼっちに危害を与えられそうな生き物はいないと話した後で、夜明けまで待てば元の世界に戻れると告げ、それまでのんびりしていくといいと提案する。
「聞き疲れただろうし、食事でもどうだろうか?」
「動く際には気を付けてな?」
 幸蓮が誘い、虎吾郎は注意を促した。
「何気なくやった行動でも誰かの命に関わる可能性があるからのう」
 お前さんは自分に危害が加えられると思っておるかもしれんが、体の大きさからいってむしろ逆じゃから。
 そう説明すれば、抑揚の少なめな咆哮が返った。

●みんなでの御飯
「足りんかもしれんがまあ好きなだけ食べていけ。腹が減っておるんじゃろ?」
 通訳を通した虎吾郎の言葉に、だいだらぼっちは再び頷いてみせる。
「まあ、飲め! 今日は無礼講だ! れっつぱーりー!」
 にこやかな笑顔で、竜一は大きな客を迎え入れた。
「ほらこれ、食べてみな。熱いから気をつけろよー」
「あ、金だらいは食べないでくれると助かるが」
 エルヴィンは料理を薦めながら皆の言葉を通訳し、幸蓮は用意した金だらいに調理した食べ物を入れて差し出す。
 だいだらぼっちはお礼を言うと、そーっと親指と人差し指でつまむようにしてたらいを受け取った。
 中身をじーっと見る彼を安心させるように、ニニギアが美味しそうに、幸せそうに……もぐもぐと、肉や野菜をほお張ってみせる。
 それを真似するようにして、だいだらぼっちは金たらいの中の食べ物を口の中にあけて……
(なまらうんめえぇ!!)
 興奮した様子で吼えたものの、その顔が何となく嬉しそうだとニニギアには感じられた。
 味覚が近いといいなと心配していた彼女は安心し、はりきって追加の料理を作り始める。
 いろいろたくさん持ってきたし、おなかの足しになるように。
 希望とかも聞こうと思ったけれど、通訳の2人に聞く限り上手いを連呼しているようなので、その辺はこのままで良いだろう。
 ちなみに名前の方はエルヴィンが聞いた限り……ごろごろちいごとん……とか、そんな感じらしい。
 元の世界では、彼は小さい方なのだそうである。
 それでも竜一が用意していたぼっち用のデカイ物が手のひらサイズだったりするが。
(あ、Dホールの時間忘れないようにタイマーはかけておこう)
「後は歌って踊って騒いで食えばいいだろ!」
 竜一がギターを弾き、幸蓮は焼きおにぎりを作り始める。
「悪いがおにぎりは焼けるまで我慢してくれ」
 じーっと見ているシロに言えば、シロは元気にワンと応えた。
「何とものんびりした話だねえ」
(まあ、一つ仲良くしておこうか)
 だいだらぼっちに怪我など無いかを確認した後、付喪は燃料等の確認をしてから焼く係の方を手伝うことにする。
「私はそんなに食べないからね。皆、好きな物をどんどん食べな」
 シロの方もスキルのお陰で大丈夫そうなので、好む物を。
「さあ、たんとお食べ。慌てなくても一杯有るからね」
 ごろごろも嬉しそうに次々と、焼き上がった品々を食べていく。
 虎吾郎は様子を見つつ酒を飲ませ、ついでに動物が無害である事を解らせる為にシロにじゃれつかせてみた。
「のどかな雰囲気で皆さんと御一緒にご飯を食べると美味しいですねぇ」
 皆の様子を眺めながらデザートのいちごを用意し、そあらが呟く。
 この時期ですと梨の方がよかったかしら?
「でもいちごが一番おいしいのです」
 もぐもぐしながら断言して。

 蒼司郎はぼっちに向かって、彼の世界がどんなとこなのかと聞いてみた。
 草は、木は、空は? 見える景色はどれだけ違う?
(あんたが脅えてたこっちの世界が、少なくとも今この時くらいは……)
「あんたにとって優しい世界であればいい」
 そう、思う。

●ありがとうと、さようならと
 夜明けが近付き、幸蓮はD・ホールの位置を確認した。
 竜一のセットしていたタイマーも、時が訪れたのを告げる。
「じゃあな、楽しかったよ」
 そう言ってエルヴィンが食べ物について尋ねれば、全部おいしかったとだいだらぼっちは笑顔で答えた。
「はは、ありがとう、元気でな!」
 青年も笑顔で応え、虎吾郎はお土産にと気に入った物を包んで持たせる。
(ほんまにありがとうございました。なんて礼を言えばいいか……)
「気を付けて帰るんじゃよ」
 暫しの付き合いで、恐ろしげなその顔の変化も何となくだが分かってきた気もする。
 安心した様子で、嬉しそうで、ちょっと寂しそうな……
 大きな大きなお友達。
(住んでいる世界は何もかも大きいのかしら?)
 ニニギアが見送りながら手を振れば、だいだらぼっちも……周りの迷惑にならぬようにと、小さく手を振り返す。
 大きな、だいだらぼっちが悠々と通れそうなD・ホールが口を開けた。
 手を振りながら、彼は向こうへと姿を消して。
「ゲートを破壊して後は、片付けして終わりだね」
 付喪の言葉に、皆が頷く。

 戻っていたアザーバイドに向かって。
 ゲートを壊す為の能力を準備しながら、竜一は彼方へと呼び掛けた。
「あばよ、ダチ公」



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
依頼の方、お疲れさまでした。
アザーバイドはびっくりはしたものの暴れる事なく、無事に接触と説得は成功。
そのまま怯えさせる事なく、時間まで皆さんと……という流れになりました。
だいだらぼっちは安心して時を過ごし、別れをちょっと寂しく思いつつ感謝して帰っていったようです。

御参加ありがとうございました。
それでは、また御縁ありましたら。
よろしくお願いします。