● 「私はいつも思うんだ。血を流すなんてあまりに残虐だってね」 ルキは、今しがたナイフで撫でた腕から血液が流れ落ちるのを見ながら言う。 「だけどね、血を流している人間程キレイなものもないと思うんだよ」 「それがいかに暗澹たる戦場の片隅であっても?」 カナタの問いに、ルキは恍惚としつつ返答する。 「そこにいるのはもはや、ただの棒切れではない?」 「棒切れなんて、またひどい言い方するねえ」 アリサはベッドに肢体を投げ出して、ダルそうに言った。 「ルキ姉、前は涙も好きだっていってなかったかい? あるいは汗も」 「言ったかもね」 ルキは睨むようにアリサを見て、笑んだ。 「つまりは体液が好きなんだろう?」 カナタの問いに、ルキは彼の頭を撫でながら答えた。 「違うの、ちょっとだけ違う」 カナタは首を傾げたが、ルキはそれ以上答えなかった。アリサは溜め息を吐きながらゆっくりと立ち上がる。 「ここは本来、カナタのためのものだったのにねえ」 「それ以上言ったら、怖いよ?」 アリサの言葉に、ルキは刺のついた言葉を返す。だがアリサは動じず、ただ淡々と言った。 「感謝はしてるよ? 私は私の趣味を追っかけられるからねえ」 「いい加減親父趣味はやめたら? 若い身体に傷がつくよ」 「使い方は自分次第ですからねえ」 折れたスカートの裾を直してから、彼女は部屋を出て行った。 「ま、傷がつけられるくらいなら殺すけどさ」 バタンと勢いよくしまった扉を、ルキは静かに見ていた。 「もう、乱暴なんだから……」 フフフッ、とルキは妖しく笑った。 ● 「三尋木のフィクサードにより計六名の男性が軟禁されている。彼らを救出して欲しい」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は開口一番にそう言った。モニターに映るは一軒の家。それは何の変哲もなく、住宅街にとけ込んでいる。 「十歳くらいの男児が三名、三十代後半から四十代前半と見られる男性が三名確認されている。三尋木の女性フィクサード二名、雨宮ルキと雨宮アリサっていうんだけど、彼女たちと男性たちはこの家で共同生活している。別段彼らは逃げ出そうとしてはいないみたいね。住居も生活も十分に与えられているみたいだし、そうであっても不思議はないけど」 「それは……いいんじゃないか? 双方の同意の上ということだろう?」 リベリスタの一人が問うが、イヴは間もなく首を横に振る。 「男性たちは単に彼女たちの趣味に合っているからそこにいることを許されているだけ。それに男性たちは彼女たちに従い、そして刃向かわぬよう、軽い催眠状態にある。だから彼女たちが望むがままに扱われるだろうし、もし彼女らが彼らを気に入らなくなれば、あるいは彼らに飽きてしまえば、恐らく殺される。言うなれば男性たちはフィクサードの玩具のようなもの。そんな奴隷みたいな扱いをさせたままじゃいけない」 仮令その関係が全てうまくいっていたとしても、彼らが彼女らを楽しませるだけの道具と化している以上は、放っておけるものではないのだ。 「家の鍵は扉の前で警備しているフィクサードが持っているはずだから、それを奪って中に入って欲しい。その時点で中のフィクサードに連絡がいくか、そうでなくても気付かれると思うから、何とかうまくやって。男性たちはルキとアリサの私室に各一人づつ、地下にある男性たちに与えられている部屋に残りの四人がいる。彼女たちの配下のフィクサードに妨害されると思うから気をつけて。 男性たちの中にはフェイトを得ている人もいるみたいだから、彼女たちを襲撃すれば抵抗する者もいるかもしれない。けれどもそれは催眠のためだから、気にせず男性たちを救出することを目的として欲しい。 ……それだけをして、根本的な解決になるとは思えないけどね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:天夜 薄 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年10月30日(火)22:28 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● その住宅地に鳴る音は少ない。至って閑静である。人の流れはそれほど多くもなく、またざわめきを生む異常など存在しない。そこは未だ平時の雰囲気を保っている。 一軒の邸宅があった。住宅地の中でも一際大きい、というほどの規模ではないが、扉の前に見張りがいても相応ではあるほどの広さはあった。見張りがいると知りながら、侵入を試みる輩はそれほどいない。無防備にあくびをする余裕位はあった。 眼を擦っていると見張りの一人は大勢が住宅地を歩いている気配を感じた。決して違和感を覚えるほどのものではないが、男に見張りとしての職務を思い出させるには十分な事柄であった。かといって、その時男は自分の警備しているこの邸宅に彼らが向かっていることなど、考慮しさえしなかった。 やがてやってきた八人の老若男女が、塀を抜けて警備の二人と相対した。男は彼らの来訪と、彼らが一般の人間ではないことに少々の驚きを見せながらも、冷静に彼らに話しかける。 「ご用件をお聞かせ願えますか?」 「雨宮さんに面会です。アポなしですが」 先頭に立った『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)が言うと、男は怪訝そうに義衛郎の顔を見つつ、切り返した。 「お嬢様方は『お取り込み中』でしてね、少々お時間をいただくことになりますが、よろしいですか?」 「いえ、その必要はございません」 義衛郎がそう言ったとき、男は自分たちに向けられた殺気に気付く。男はようやく、彼らが好意的な来訪者でないことを理解した。 「おぬし達の相手をしてる場合ではないのでござる!」 『自称・雷音の夫』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)が威勢良く言って豪快に得物を振るった。男が吹き飛ばされると同時、もう一人の男は背後から奇襲を喰らった。男は素早く振り返り、『Dr.Tricks』オーウェン・ロザイク(BNE000638)が自分に蹴撃を与えたのを知った。同時に、守るべき扉が開け放たれているのに気付く。 舌打ちしながら男は雷撃を放つ。それと交錯するように『回復狂』メアリ・ラングストン(BNE000075)の放った光線が飛び、男を貫いた。 「こんにちは~突然だけど、殺されちゃってね☆」 『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)の陽気に言う声が警備たちの耳に嫌悪感をもたらした。抵抗の意思を見せるものの、数の差が圧倒的な戦力差としてのしかかる。 「くそっ!」 悔しそうに言葉を吐いて、男は通信機器を取り出した。もう一人の警備の放った光線を横目で見ながら、彼は叫んだ。 「敵襲! 応援を──」 「よそ見してんじゃねェ!」 『デンジャラス・ラビット』ヘキサ・ティリテス(BNE003891)が叫ぶ声に、男は目を慌てて彼に目をやった。しかし男がヘキサを見た時既に、眼前にそれは迫っていた。 「かなり痛いぜェ……! 歯ァ食いしばれぇッ!!」 ヘキサが鋭く放った蹴撃に、避ける間もなく男は吹き飛んだ。回らない頭で、ぼやけた視界で、それでも彼が見た映像は、確かに邪悪な笑みであった。 「じゃ、永遠におやすみ〜」 葬識の得物が男の首を抉り、この世から逸脱させた。 「虚実を織り交ぜるのが、策略と言う物。……果たしてお前さんたちは、俺の虚実を見切れるのだろうか、な」 警備の二人を倒し、幾らかの傷を負いながらも、リベリスタは邸宅に突入する。直前、オーウェンは静かに呟いた。相対する事象に思い馳せつつも、彼は地下にいるだろう一般人を救出すべく、走り出した。 ● 「穏健派……三尋木、か」 『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)は静かに言って思考を巡らす。三尋木という組織は七派の他の組織と比べれば、実行する事柄は割合穏やかだ。今回だって他の七派の起こすものとは、幾分趣向は異なっている。だからといって、彼らのやっていることが趣味のいいことだとは、言えない。 「……いまいち理解できない趣味ね。理解したくもないけれど」 『翡翠の燐鎖』ティセラ・イーリアス(BNE003564)は悪態を吐くように言う。恐らく色欲に満ちあふれたその行為に、僅かでも嫌悪感を抱かないわけではない。年頃の女性であれば尚更かもわからない。 リベリスタが今回彼らの目的を果たしたとして、彼女らを取り逃がせばまた同じことは繰り返されるだろう。彼女らに趣味を止めさせる手立ては、彼女らを捕縛するか殺害するかしか恐らくない。けれどもまずやるべきは、現在彼女らの玩具と成り果てている彼らを救出することだ。そうすれば少なくとも、今起きている悲劇を断ち切ることは出来る。 扉があれば蹴破る程の勢いで、ヘキサは先陣を切って屋内に入る。まず見えるのは二階への階段だ。上からは入り口の警備の通信を受けて慌ただしく動いているであろう音が聞こえる。 「ここが変態の巣窟ぞよ。すみやかに救出して秩序道徳を回復するのじゃ!」 メアリは面白そうに言いながらも、これからのためにしっかりと仲間に翼を付与した。それから家中に蔓延る感情を拾うため神経を研ぎすませる。彼女が何か言うのを待たず、家中を見通した葬識が言った。 「敵さん、下りてきそうだね〜」 「休憩中の奴らもこっちに向かっているみたいじゃな……」 一階に僅かに見える感情を認識して、メアリは言う。葬識は不敵に笑みながら進言した。 「さっさと動いた方が吉かもね〜」 既に先に行ってしまったオーウェンを追いかけるように、ユーディスとティセラが地下へ下りるための階段へと向かう。彼らが急いでリビングへと入ると、二人のフィクサードの姿が見えた。ユーディスは彼らを見、すぐに休憩中のフィクサードがやってきたのだと理解する。 「意外に速かったですね……!」 小声でそう言うと、フィクサードの反応を待たずに彼女は一気距離を詰め、光り輝く剣を手に斬りかかる。当たりはしたが、ユーディスの感じた手応えは直撃とは言い難い。男は攻撃の反動を利用して回転し、全身から気糸を展開する。ユーディスの全身に纏わり付かんとするそれを、彼女は已の所でかいくぐる。 「大人しくしててくれよ、面倒くさい!」 「お互い様でしょ!」 ティセラが素早く銃を連射して男二人を撃った。吹き荒れる銃弾の嵐を避けきることは出来ず、彼らはただ痛みに打震えるばかりだった。対抗するように、男はティセラの銃が鳴き止むと同時に銃を乱射した。 鬩ぎ合う銃弾の嵐をかき分けて気糸が放たれた。それはティセラの方へと接近すると素早く彼女を絡めとった。そして強烈に縛り上げられ、彼女は身動きが取れなくなった。藻掻くティセラをチラと身、ユーディスは気糸を放った男に近接し、思いきり剣を振り下ろした。その全力は男を怯ませるには十分だった。 ユーディスは一旦距離を置いてから再び斬り掛かる。 「早く終わらせないと……!」 ● 二階へ向かったリベリスタは急いで階段を駆け上る。彼らの耳に届いている音が、上の階にいるフィクサードが下りてくるまでにそれほど時間はかからないだろうということを予感させる。 その予感は数秒も経たぬうちに確信と化す。先頭を行くヘキサの目が捉えたのは、丁度階段を下りようとしていたフィクサードの姿だった。男はヘキサを吹き飛ばそうと身構えるが、ヘキサはそれより先に地を蹴り、男に飛びかかった。 「邪魔だぁッ!」 ヘキサは連続的に蹴撃を加え、道を遮っていた男を退かす。ヘキサへと攻撃が集中する最中、リベリスタは続々と階段を上がりきる。 その時フィクサードらの後方から声が聞こえた。 「ほらあんたたち! ちゃんとやんなさいよ!」 彼女は甲高い声を張り上げる。雨宮アリサは自身も攻撃のため構えながら、配下を焚き付けた。焦燥するように、フィクサードたちは矢継ぎ早に攻撃を繰り出した。 「私を傷つけたら承知しないからね!」 罵倒するように叫びながら、アリサは義衛郎に向け極細の気糸を鋭く放った。その軌道から身を逸らそうとしつつ、義衛郎はアリサに接近しようとする。直撃したものの、彼は構わず血を蹴った。 「お楽しみのところ申し訳ない」 気持ちとは裏腹な言葉を吐きながら、義衛郎は跳躍しアリサに向けて攻撃を展開する。その軌道をフィクサードの一人が遮った。苦しい顔をする男に目もくれず、義衛郎はアリサを見た。 「申し訳ない気持ちがあるのなら、今すぐお帰りいただけない?」 「そいつは無理ってもんじゃな!」 手負いの義衛郎を癒しながらメアリは言った。 「ジジイ転がしは愉しいかの、お嬢ちゃん?」 舌打ちしながら、アリサは次の攻撃のため構える。背後の交戦の様子に気を配りながら、義衛郎は静かに尋ねた。 「おや、お姉さんの方は戦闘はお嫌いでしょうか?」 瞬間、アリサはノーステップで攻撃を繰り出した。あまりに高速な攻撃に義衛郎は若干の隙を作りながらも、アリサとフィクサードたちへの意識は外さない。 「ルキ姉が本気で戦うって言ったら、私はちょっと耳を疑うよ」 地下に至ったオーウェンは、物陰から静かに様子をうかがう。部屋にいる一般人は静寂を保っている。彼らは四人しかいないため、フィクサードが合流していることはまずないだろうとオーウェンは考える。そうでなくとも、一階から聞こえる音と、ティセラとユーディスが未だ地下に来ないことから、彼女たちが交戦状態にあることは容易に想像がついた。彼女らに若干の気を遣りながらも、彼は自分の仕事に集中する。 オーウェンは部屋に入り、一般人に近付いた。彼らは突如現れたオーウェンに驚きながら、やがて敵意を露にして身構えた。 「待ってくれ。自分は雨宮姉妹の秘密の使いである」 色めき立つ彼らに向けてオーウェンはすかさず言った。雨宮、という単語を出した途端、彼らは一気に攻撃の意思を緩めていく。 「館が敵に襲われたので脱出させるようとのことだ」 「……なんだって?」 軽い催眠状態といえども、彼らに思考の余裕はあるようだった。ならば敵と聞き、彼らはどういったものを想像するかをオーウェンは考える。フィクサードが敵として認識させようとするなら、まずリベリスタであろう。フィクサードは彼らにそれを考慮しているように仕向けている可能性もあるだろう。けれどもリベリスタもフィクサードもそう変わるものではない。ごまかすことは、十分可能だとオーウェンは彼らの様子を見ながら考える。 「アリサは無事なのか!?」 「ルキは大丈夫なの?」 彼らは口々に雨宮姉妹に対する懸念を述べるが、オーウェンはその言葉を遮って言った。 「彼女らは無事だ。心配ない」 言った途端、彼らの表情に安堵の念が広がるが、気にせず彼は続けた。 「ただ敵は姿を変化させる術を使っている。見知った顔があっても敵が術で化けたものだ。気にせず、館から脱出することを考えてくれ」 オーウェンは言って、彼らの様子をうかがう。それほど疑念を抱いている様子はなかった。このままなければ、脱出することは容易だろうとオーウェンは考える。 あくまで、何も起こらなければ、という都合のいい前提の上での話だ。オーウェンは気を緩めず、再度引き締めた。 ● 怒りにも等しいオーラが電撃という形をとって男に叩き付けられる。男は体中に流れる電流に打ち拉がれながら、苦々し気に虎鐵の顔を見る。 「おぬしに気をかけている暇はないのでござる!」 そう言って虎鐵は素早く扉に接近するが、それを阻もうとフィクサードが立ちはだかる。意地でも退かぬという姿勢の男に向け、葬識は静かに、素早く得物を向けた。 「そんなに首切って欲しいなら、もっと早く言ってくれればいいのに〜」 陽気な声で、その切っ先は首を確かに狙っていた。血の気の引いた顔で、男は鋏の軌跡から慌てて身を逸らした。その隙を見て、ヘキサは鋭く蹴撃を繰り出した。 「ノックしてもしもーし!!」 激しい音を立てて扉が破壊された。部屋に飛び込んだヘキサは前のめりに倒れ、やがて顔を上げると端正な顔立ちの女性が彼の目に映った。彼女は扉が壊されたにもかかわらず、至って冷静な様子で、ヘキサに冷たい視線を向けていた。 「ノックは四回、礼儀は守らないとダメよ?」 机に腰掛けていた雨宮ルキはゆっくりと立ち上がる。その周囲に彼女以外の姿は、ない。 「隠した、でござるか?」 虎鐵は静かに問う。事前情報や葬識の報告から、この部屋に少年が少なくとも一人いることは確実であった。だからこそ、誰もいないわけがない。 「こんな血みどろ、子供に見せるわけにはいかないでしょ?」 「そうでござるな」虎鐵は静かに同意する。「だからせめて、子供だけでも助けたいでござるな」 「あら、子供はお好きかしら?」 「拙者はこれでも二児の親でござるしな」 言葉を交わしながら、得物を交わすために身構える。主目的は彼女を倒すことではない。けれども彼女を倒すことは、現在及び未来の子供を守ることにも、繋がる。 「だったら、子供を可愛いと思うことも、分かってもらえない?」 「ああ。だが、お主とは全く意見が合う気はしないでござるな」 「あら、残念ね」 虎鐵は一気にルキとの距離を一気に詰め切っ先を向ける。ルキはそれを僅かに受けながらも、素早く魔力を展開し、鋭く矢を放った。強力な神秘が自身の身体を貫くのを虎鐵は感じる。 「雨宮ちゃん、だっけ? すっごく趣味いいね! 気が合いそう。 だから殺されてよ」 鋭く向けられた刃は彼女に僅かながらの傷をつける。恍惚とした顔で葬識を見ながら、ルキは言った。 「人で無くなる気は、まだないよ」 ● 男が一人倒れるが、ユーディスとティセラは十分すぎる程の傷を負っていた。だがもう一人の男ももう一押しという所であった。ユーディスは得物を構え、ティセラは地下へと向かおうと試みた。 けれども彼らの耳には、階段を駆け上がってくる大勢の足音が届いていた。それを聞いて、ティセラは思わず立ち止まる。次の瞬間には、オーウェンが姿を現していた。その後ろには、地下にいたと思われる救出対象の姿が見える。 「待たせた。脱出しよう」 言いつつ、オーウェンは冷静にフィクサードを気糸で撃った。続けざまユーディスとティセラが攻撃を放つと、フィクサードは虫の息になって地に転がった。引きつった顔をする者も何人かいたが、それでも逃走に抵抗する意思を見せる様子は、なかった。 配下の一人が地に伏せるのにアリサは目もくれず、気糸で鋭くメアリを撃つ。そして素早く自身の部屋へと後退した。開け放たれた部屋からは一人の男性が寂しそうに佇んでいるのが見えた。義衛郎は素早く部屋に入ろうとするが、フィクサードがそれを阻まんと立ち塞がる。 「通したらダメよ、絶対だから!」 苦しそうにしている配下に、アリサは強い言葉を浴びせた。だが次の瞬間吹っ飛ばされた男を見て、彼女は舌打ちしながら身構えた。 義衛郎は部屋に侵入しようとするが、その時隣の部屋が妙に慌ただしくなっているのに気付いた。やがて葬識が飛び出し、叫んだ。 「オーウェンちゃん救出完了だってさ〜こっちはちょっとキツいかもだから、退いてもいいかもね〜」 「……それもそうだな」 フィクサードとリベリスタは現状、戦力はほぼ互角だ。義衛郎とて、それを理解していないわけではない。身体の節々には痛みが走っている。 「しょうがない。女王様気取りのお嬢さん方には、次にお相手願いますか。オレたちはオレたちの目的を果たしたのでね」 「アンタみたいな醜男、ゴメンだね」 悪態を聞きながら、義衛郎とメアリは下がっていく。素早く後退した虎鐵がその後に続いた。 「じゃあね、また遊んでね☆ また殺し合おうね」 葬識は手を振りながら、フィクサードをかき分けながら去って行く。最後にヘキサが侮蔑するような目で去っていくのを見送ってから、ルキは静かに呟いた。 「もう、乱暴なんだから……」 その目は愉しそうに、妖しく光っていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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