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【千葉炎上】怪獣魂 ~極彩竜進撃~

●千葉炎上
 『縞島組』『風紀委員会』『ストーン教団』『松戸研究所』『弦の民』『剣風組』。
 六つのフィクサード組織が互いの理想実現のために新生『九美上興和会』として協力合併し、巨大なフィクサード組織に生まれ変わろうとしている。
 彼等の秘密兵器、アーティファクト『モンタナコア』。
 組織を完全なものとすべく狙う『セカンドコア』。
 無限の未来を賭け、大きな戦いが始まろうとしていた。

「ククク、ハーハッハッハッハ! こんなものか、リベリスタども!」
 響き渡るのはコンクリートの崩れる音とガラスの割れる音。
 降り注いできたそれに下敷きになるのは大量の死体。
 千葉に存在するビル街、その一角は地獄絵図と化していた。
 その原因は、たった一匹の獣の……いや、怪獣の存在であった。
「ハッ、マーモンやデウスだけでなくヴィッカースまでやられたと聞いて期待していたが……こんなものか。我を止められるような輩はいないようだな! くだらん! つまらん! 死ね!」
 理不尽に怒り叫ぶのは体が七色の鱗で覆われた巨大な竜であった。
 その大きさは、実に高さ3メートル。いや、横を向いた首を天へと伸ばせば5メートルは下るまい。
 見る物を震えさせる双眸の上、額に当たる位置には六色の宝石が輝いている。
 彼こそがストーン教団の誇る『怪獣・極彩竜』であった。
 竜は心臓が弱ければ睨まれただけで心停止を起こしかねないほどの恐ろしい双眸に怒りを籠めて周囲を見回し、その巨大な足で地面を何度も踏みつける。
 足元の死体が踏みつぶされて赤い染みと化す。
「大体遅いぞグチブタンどもめ! 5秒で終わらせて来いといったろうが!」
 一人で叫びながらヒートアップしてスタンピングを続ける竜。その時、生き残りのリベリスタが隠れていたコンクリート塊の陰から飛びかかる。
「この野郎、リベリスタを舐めんじゃねぇ!」
 完璧な奇襲。普通ならば間違いなく竜に彼の雷を纏った刃は届いていただろう。
 だが、その攻撃が届く前に竜は数歩下がり、リベリスタと竜の間に影が割り込む。
「いったーい、もう、食事の邪魔しないでよねー」
 攻撃を受け止めたのは大きな翼とトサカを持つビーストハーフ。死体の頭蓋を貪りながら、鶏の怪人『怪人トンヨク』は不平を漏らす。
 痺れるトンヨクの後ろで、極彩竜の額の黄色い宝石が今までよりも強き輝きを放つ。
「くっ、この……」
 再び刃を振り上げようとするリベリスタ。しかし、彼が動くよりも先に、巨大な竜が口を開く。
 刹那、放たれる雷。
 それは、リベリスタの命を一瞬にして燃やし尽くす。
「うるせえ! 黙れ! っていうか死ね! 竜に挑むなら正々堂々勇者っぽく来いやこのすっとこどっこい!」
「もう死んでるよー、それに素が出てるわよーシン様ー。今、極彩竜なんでしょ?」
 翼人にいさめられ、ハッとした表情を浮かべる竜。
「うむ、我は極彩竜。如何様な敵でも焼き尽くしてくれよう、クハーハッハッハ!」
 取り繕っての大笑に、思わずトンヨクは肩をすくめる。
「ブッヒー、シン様、終わりやしたよー! 逃げたリベリスタの抹殺完了でさー!」
 そこへドタドタとかけてくるのは四人のブタ顔の男達である。その内の一匹、唯一黒い肌のブタ男は手にしたリベリスタの首を見せて満面の笑みを浮かべる。
「遅い! が、よくやったぞ怪人グチブタン! 褒めてつかわす」
「ブヒー!」
 笑みを浮かべるシン。彼はしっかりと方向を見定め、歩み始める。
「これより我らはこの先のアークの拠点へ強襲を仕掛け、『セカンドコア』を奪う。それさえあればお前達の怪獣化も簡単にできる。そうなれば我々の力は跳ね上がる! 盗み放題、殺し放題だ! メルボルンなど無くとも我らの力だけですべてを奪い取れる!」
 その言葉にグチブタン達は目を輝かせ、トンヨクは脳髄をすするのをやめて舌なめずりを一つ。
「さぁ、行くぞ。この世の全ては我らストーン教団……いや」
「「「九美上興和会のものだ!」」」
 獣達の声が重なる。
 意気揚々と進撃する彼らを止められる者は、誰一人としていなかった。


「千葉がわりとピンチ」
 ぽそりと呟かれた『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の言葉。それは端的に今の状況を表していた。
 ブリーフィングルームの壁に貼られた千葉県の地図に記されたバツ印は10を下らない。
「九美上興和会。それが今回の私達の敵。千葉で六つのフィクサード組織が合体して生まれた新興組織」
 九美上興和会は『モンタナコア』という寿命や生命力を代償にフィクサードを強化するアーティファクトを所持しており、手始めにこれによって強化された兵士を千葉の各地に送り込んでいるのだという。
 彼らの狙いは『モンタナコア』と同種の力を持つ『セカンドコア』という代物。アークの保管するそれを奪取すべく、九美上興和会から無数の刺客が放たれたのだ。
「もしその刺客が全員協力したら、まず太刀打ちできない。だから、協力する前のバラバラの時に倒してほしいの」
 そう言って、彼女は先ほどモニタに映っていた竜らしき生き物の写真をテーブルの上に乗せる。
「シンっていうストーン教団の怪人フィクサードが『モンタナコア』の力で怪獣になった物、極彩竜。寿命を残り僅かになるまで削り取ってそれを全部己の力に変えた破壊の権化。それが今回の敵。口から七種類のブレスを吐いて攻撃してくるよ」
 未来視の中で迎撃したリベリスタ達があっさりと全滅した要因がその強力なブレスである。対多数との戦闘に長けた極彩竜の攻撃に、足りぬ実力を数で補うモブリスタ達は耐えきれなかったのだ。
「といっても、このブレス。実はほとんどは私達の使える技と同じ性能みたい。ある程度種はわかってるから、対策は取れなくもないと思う」
 元々、シンはビーストハーフのマグメイガス。炎の吐息はマグメイガスの炎の魔術、氷の吐息はインヤンマスターの氷の術、といった風に、もともと使える技がブレスの形をとっただけのようである。
 もっとも、怪獣となっているためにその威力は本来の威力より大きく高まっているであろうことは想像に難くない。
「それと、極彩竜の額についてる宝石が全部光ったら気を付けて。六色の光を交互にぶつける感じのすごく目に悪いブレスを放ってくるから」
 その吐息は威力こそさほどでもないものの、まともに受ければ複数の重い状態異常を受けてしまうのだという。
「宝石が光る条件は、状態異常みたい。敵味方問わず、誰かが状態異常になったら、対応した宝石がひかっちゃうよ」
 極彩竜一匹を取っても、気をつけねばならぬことは多い。もちろん、気をつけなくてはならないのは極彩竜のみではない。彼には護衛がついている。
「配下のニワトリ怪人とブタ怪人4人、合わせて五人の部下がいるから気を付けてね。特に黒いブタ怪人は強いみたいだから」
 ドラゴンにオークにハーピー、と考えるとまるでファンタジーのような取り合わせである。
 だが、この戦いは幻想ではなく現実、舞台となるのも無機質なビル街の一角である。
 協力組織のリベリスタ達が事前に人払いをしてくれているために、人っ子一人、車一つない状態で戦うことが出来るだろうとイブは告げる。
「彼らは悠々とアークの支部に向けて歩いてくるだけ。前から迎え撃つのも、前後から挟み込んで戦うのも自由にできるよ。けど、相手は全員ビーストハーフだから奇襲は通用しないものと考えてね。ただ……」
 そこで、イヴは小さく言葉を区切り、続ける。
「アークの人、皆昔より強くなったと思うよ。今なら怪獣とも全力でぶつかりあえるくらいに。皆なら勇者みたいに悪い竜だって倒せるって信じてる」
 仲間を信頼するその言葉に、ブリーフィングルームに集ったリベリスタの一人は照れたように頭をかき……その直後、すっ転ぶことになる。
「だから、きっと大丈夫。この作戦終わった後に第二作戦『九美上興和会撃破』に参加するくらい、よゆう。らくしょう。たぶん」
 手にした『残存戦力によるコアチームとの合同作戦について』のしおりを手に、イヴは飄々と嘯くのであった。

 かくして、千葉を舞台にした戦いは幕を開ける。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:商館獣  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年11月04日(日)00:02
お久しぶり、あるいは初めまして商館獣です。
今宵始まるのは千葉を舞台にした魔性の宴。
存分に楽しんでまいりましょう。

【後半戦について】
このシナリオの残存戦力は、コアシナリオ『九美上六代幹部、最終決戦!』へ参戦します。
その際、PCはその場の空気を読みつつ自分なりに効率的かつ見せ場になりそうな行動を自動で行います。
なので後半戦に対してプレイングをかける必要は全くありません。
ですがどうしてもやっておきたいことがある場合は30文字まで特殊プレイングをかけることができます。
その場合はプレイング最後尾に【後半戦】と記載し、その後ろにプレイングを書いて下さい。
ただし、その通りに採用されるかどうかはわかりません。

●成功条件
敵の全滅

●エネミーデータ
『極彩竜』シン
元はLV15のビーストハーフ(トカゲ)のマグメイガスでした。
が、『モンタナコア』の効果により金属の鱗を持ち、額に六つの宝石を備えた怪獣『極彩竜』へと変貌してしまっています。
データ的には、超強い武器防具を装備したフィクサード、とお考えください。
羽はただの義翼で、戦闘中は飛びません。
自分の思い通りに事が運ばないと怒る単純な性格をしています。
自分はドラゴンである! という自負があるようで、それを尊重してやると調子に乗ります。

スキルは以下の通り
灼熱地獄:口から凄まじき炎を吐き出し、戦場の一角を焼き尽くします。
ぶっちゃけ、ただのフレアバーストです。
絶対零度:口から凄まじい冷気を吐き出し、全てを凍結させます。
ぶっちゃけ、ただの陰陽・氷雨です。
雷神招来:口から凄まじい雷を吐き出し、全てを貫きます。
ぶっちゃけ、ただのチェインライトニングです。
風神咆哮:口から凄まじい風を吐き出し、周囲をなぎ払います。
ぶっちゃけ、ただの戦鬼烈風陣です。
破邪銀閃:口から凄まじい光を吐き出し、全てを焼き払います。
ぶっちゃけ、ただの神気閃光です。
漆黒怨嗟:口から凄まじい闇を吐き出し、戦場の一角を瘴気で染めます。
ぶっちゃけ、ただの暗黒です。

超反射神経、威風、簡易飛行

EX:極彩の咆哮:神遠全。額の六つの宝石全てが光っている時に使用します。
宝石の光がすべて消えた直後、口から凄まじい極彩色の吐息を吐き出します。
目がチカチカすること間違いなし。威力はそこそこです。
この攻撃が100%ヒットした時、対象は獄炎、氷像、雷神、石化、魅了、凶運の中からランダムで2つを受けます。
受けるバッドステータスは対象毎に決定するため、1度の攻撃でAさんは石化と魅了になり、Bさんは氷像と凶運になる、なんて事態も発生します。

額の六つの宝石は、戦場で誰かが対応するバッドステータスになった時に自動的に輝きます。
(一度輝き始めると、極彩の咆哮使用時以外で消える事はありません)
対応するバッドステータスは以下の通りです。
赤:火炎、業炎、獄炎のいずれかが発生したとき
青:凍結、氷結、氷像のいずれかが発生したとき
黄:感電、雷陣、混乱のいずれかが発生したとき
緑:麻痺、呪縛、石化のいずれかが発生したとき
白:ショック、隙、弱体、魅了のいずれかが発生したとき
黒:不吉、不運、凶運、呪いのいずれかが発生したとき

護衛のフィクサード:
裏野部のフィクサード達です。全部で5人。
プレイングではカッコ内の略称で構いません。
怪人トンヨク(鳥);ビーストハーフ(トリ)×クロスイージス。1人。
極彩竜より早く、回避能力も若干高めです。オカマ。
怪人グチブタン(豚):ビーストハーフ(ブタ)×デュランダル。3人。
耐久力がやや高く、EPが切れるまでギガクラッシュを使います。
怪人クロブタン(黒):ビーストハーフ(ブタ)×覇界闘士。1人。
護衛の中では飛びぬけて強く、土砕掌、虚空、焔腕を使う難敵です。

以上、皆様のプレイングをお待ちしています。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ホーリーメイガス
カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)
ソードミラージュ
葛葉・颯(BNE000843)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
スターサジタリー
雑賀 龍治(BNE002797)
デュランダル
飛鳥 零児(BNE003014)
クロスイージス
犬吠埼 守(BNE003268)
レイザータクト
文珠四郎 寿々貴(BNE003936)


 静寂に満ちたビル街。そこは、常とは違う異様な気配に満ちていた。
 車一つない車道を進むのは、信号機よりも巨大な竜とその配下の怪人達。
 それに相対するは、背に巨大な剣を背負い馬に乗る一人の騎士と、その七人の仲間である。
 交差点を挟んでほぼ同時に立ち止まるフィクサードとリベリスタ。
 見下すような瞳でリベリスタを見下ろす極彩竜シン、それに対して馬の上に跨ったまま『紅炎の瞳』飛鳥零児(BNE003014)はその瞳を見つめ返す。
(冗談のような相手ですね)
 現実離れした光景に『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)の掌に汗が浮かぶ。
 数瞬の、間。その後竜はニィ、と唇を歪めるとその口を開く。
「よくぞ来た、アークのリベリスタども。堂々と我が前に姿を現した事だけは誉めてやろう」
 武器を手に構えるフィクサードの怪人達。リベリスタ達に緊張が走る。
 極彩竜は一歩リベリスタへと足を踏み出す。口腔に灯る赤き光。
「貴様達には栄誉を与えよう……この我の手によって死ねるという素晴らしき栄誉を……」
「え、ボスから攻撃するの? こういう時は雑魚戦からが様式美っしょ?」
 だがその光は消える事になる。『覇界闘士-アンブレイカブル-』御厨・夏栖斗(BNE000004)の言葉に、極彩竜はむぐ、と口をつぐむ。自分の言葉を遮られた事によって怒りに染まるその瞳。
「聞いた事があります。ストーン教団にその人ありと謳われた『極彩竜』シン。まさか、そのような大物がいきなり戦場に出るなんて……」
 だがその瞬間に『俺は人のために死ねるか』犬吠埼守(BNE003268)が言葉を繋ぐ。自尊心をくすぐるその言葉に、竜は怒りを和らげ目を細める。
「至高の龍に取り巻き……なるほど『我と戦いたくばまずその力を示せ』というわけだな。さすがは偉大な竜、様式がわかっているな」
「なるほどネ。親玉が最後が王道ってもんだからネ! この雑魚を倒せるまでどっしり構えて待ってろョ、ドラゴン殿!」
 馬から降りその背に背負った巨大な剣を構える零児。その横で『盆栽マスター』葛葉・颯(BNE000843)は対称的な二振りの細身のナイフを構える。
「ブギ? うちらだけでやるっすかシン様?」
「む、むぅ……」
 リベリスタ達の言葉に、フィクサードのブタ怪人達に動揺が走る。当の竜はというと、目を白黒させて固まっている。
 彼とて『ストーン教団』の怪人。お約束を護りたいという思いはあるのであろう。
 そこで最後の一押しを試みたのは『ガントレット』設楽悠里(BNE001610)だ。
「そこで待ってろ、極彩竜! 僕達が君に挑戦する権利があるって事を証明し……」
 が、今度は逆に言葉を遮られる。
「あらー、少なくともあなたと『生まれたままの闘士』には十分素質あるじゃなーい?」
「あっ」
 トンヨクの言葉に、夏栖斗の顔色が変わる。
 ついこの間も言われたばかりではないか。自分は『有名人』だ、と。それもシンと同じ『九美上興和会』にいるであろう男に。
「なるほど、貴様がゼウスとマーモンを倒したという……ならば試す必要はあるまい。全力で捻り潰してくれよう!」
 彼は失念していたのだ。自分がストーン教団と深い関わりを持っていた事を。強さを隠す術を用意しなければ、バレルのは自明の理。
「……悪ぃ」
 両手の棍を構えながら唇を噛む夏栖斗。だが、『八咫烏』雑賀龍治(BNE002797)は軽くその肩に手をやり、首を振る。
「気にするな。馬鹿共のコントを切り上げられて良かったと思っておけ」
 愚かしい反応を示す竜に苛立ちを覚えていた龍治はそれだけを言うと後方へと下がりその得物を構える。
「ハーハッハッハ! 行くぞ、リベリスタども! 我が力、思い知るがいい!」
「はは……怪獣映画のエキストラになった気分だよ」
 アスファルトを砕きながら巨大な竜が迫る光景に、『息抜きの合間に人生を』文珠四郎寿々貴(BNE003936)は乾いた笑いをこぼし、そしてくるりと方向転換をして歩きはじめる。仲間と距離を取るために。
「すずきさんは戦う資格なんてないただの通行人だと思うので無視してくださいね。うん、それじゃ」
「人がカッコつけた途端逃げる気か! っていうか、もっと真剣に喋れ! 死ね! 黙れ!」
 いつものゆるゆるとした口調が気に食わなかったのであろう。巨大な竜が、吠え猛る。
「いや、喋るか黙るかどっ……」
 次の瞬間、寿々貴の反論よりも早く戦場に三つの雷が迸った。


 最初の雷は、二筋の銀閃であった。
「それじゃ、お仕事と参りましょうネ!」
 睨み合いの間に反射神経を高めていた颯は真っ先に飛び出し、その刃でブタ怪人の体を切り裂き、跳ねる。
 飛び上がったその小さな体はニワトリ怪人の目の前へと着地。咄嗟に足を止めるトンヨク。その右手は咥えた煙草の焔スレスレで停止する。
 生まれた一瞬の隙、そこへ二つ目の雷が叩き込まれる。
「あぁ、チームの強さを見せてやろう!」
 両手の雷はトンヨクの顔面と走った来た豚の腹部に吸い込まれる。手応えに笑む悠里。
 直後、彼は颯と顔を見合わせ、直観に従って同時に左右へと跳ねる。
 次の瞬間、そこへと落ちたのは最後の巨大な雷。
 竜の口より放たれた雷がランダムな軌道を描いて周囲のビルのガラスを砕き、大地に立つリベリスタへと降り注いだのだ。
(出鱈目な力だな)
 極彩竜から十分に距離を取っていた龍治は左目で冷静にその一撃を分析する。威力こそ高いものの、その精度は自分の半分もあるまい。
「全く、馬鹿が力を持つと面倒なことこの上ないな」
 距離を保ちながら白いブタ怪人へと弾丸を放つ彼の前方では、回避能力の劣る回復手達が雷をまともに喰らい、半死半生の傷を負っている。
「良かった……」
 悠里が無事で。愛しき人が回避した事に安堵しながら、緑の祭服を纏った少女は聖歌を唄う。
 癒しの力を伴う旋律。それは倒れる寸前まで傷ついた彼女と寿々貴の身体に、再び力が湧きあがらせる。
「いやいや、よくないよくない。すずきさん死にかけたからね。真上からの雷とか気をつけないと絶対避けれないし。正直今すぐ帰ってカレー食べてたい」
 厄介そうに後方の二人を見るトンヨク。どこかずれながらも、寿々貴の言葉は仲間への防御の指示を兼ねており、カルナの癒しの力はシンの攻撃力とほぼ互角。この二人がリベリスタ達の柱に違いないと彼は直感する。
「ねぇシン様、まずは狙うなら後ろのー……」
 その時、トンヨクのみならずフィクサード全員の体に衝撃が走る。その正体は、銃撃。
「将を射んと欲すればまずは馬を射よ、と思ったのですが一緒に撃ってしまいましたね」
 一挙動でニューナンブの弾丸を撃ち尽くした守は偶然にも敵の言葉を止める。
「俺は飛鳥零児。全力を持って相手をさせてもらうぞ、極彩竜!」
 そこで前線へ飛び出した零児は己の肉体の枷を外しながら名乗りをあげる。
 まるでヒーローのようなスーツが風になびく姿に目を細める竜。
「さっきの雷、もう一度撃ってみろ! 次こそは必ず見切ってやる。将ならば……魅せてくれるだろう?」
 今の一撃は確かに重かった、が。雷の攻撃が重なったおかげか、光っている宝石は二つのみ。これ以上敵の宝石を光らせる物かと零児は敵を挑発する。
「ククク、よかろう。我が電神の前にひれ伏すがいい!」
 完全に乗せられる極彩竜。トンヨクは呆れたように舌を打ち鳴らすと、その手より十字の光を後方へ放つ。
「キャッ」
 光に射抜かれ強烈な怒りに苛まれるカルナ。
 だが、かつて試練を乗り越えて得た信仰の証が己の中で暴れようとする怒りの感情を静めていく。
「もー、変なアーティファクト持ちとかーやーねー」
 実力は五分、だが最初の流れはリベリスタ達が掴んだ。回復役を崩す手段は敵に少なく、その手綱はこちらがある程度握れている。
 それを確信し、寿々貴は呟く。
「えっとつまり……あの雷がもう一回来るんだよね」
 全く、怪獣映画の端役は楽じゃない。逃げ惑うだけでも一苦労だ。
 深いため息がこぼれた直後、再び雷が降り注ぐ。


「零児、当たるなよっ!」
「応!」
 振るわれた夏栖斗の蹴りはクロブタンを貫き、零児の隣を掠めてその直線状に立つグチブタンにも突き刺さる。
 ふらついたグチブタンに直後叩き込まれたのは、言うなれば鬼神の一撃。
 圧倒的質量の得物を叩きつけられ弾ける最後のグチブタンの頭。
 これで、残すはクロブタンとトンヨク、そしてシンのみとなった。
 範囲攻撃に優れた守と悠里が敵全体を削り、夏栖斗と颯は目の前の敵を抑えながらも攻撃の狙いだけは仲間と同じ敵へと集中、そして圧倒的火力の零児と龍治が引導を引き渡していく。
 リベリスタ達は効率よく攻撃を集中させ、敵を圧倒的な速さで倒してゆく。
「ぐっ……」
 だが、決して敵も愚かではない。腹部への強い衝撃。零児の体を強烈な痺れが襲う。
 一直線上にブタ怪人がくるように動いていた夏栖斗はグチブタンのいる側へ動こうとするクロブタンを止められない。
「ブッヒヒィ! シン様、これで準備万端でっせー!」
 クロブタンの狙いは、麻痺。彼は回避能力の高すぎる夏栖斗を避ける事によって条件を満たす事を選んだのだ。
 輝きだす極彩竜の緑の宝石。リベリスタ達の口車によってその条件を満たすのは大きく遅れたが、ついに六つの宝石全てに光が灯る。
 呵呵大笑し、その翼を大きく広げる極彩竜。
「リベリスタ達よ、これが貴様達を滅ぼす我が真のちか……」
「もっと威厳のある振る舞いをしたらどうだ。そんなに気を抜かれたら外れようがないぞ」
 戦場から最も遠く離れていた龍治の呟きは、果たして敵に聞こえただろうか。
 放った弾丸は赤色の宝石へ狙い違わず突き刺さり、それを砕く。
「……っ! この、クソ野郎が! 後ろ逃げてんじゃねぇ! 人の台詞邪魔してんじゃねぇ! マジ死ね!」
 だが、宝石を砕かれても影響がないのであろうか、竜は止まることはない。
 激高したシンから熱波が、冷気が、雷が、風が、ランダムに入り混じり放たれる。
 その吐息は龍治まで届かぬものの、濁流の如き勢いで周囲を破壊し襲いかかる。
「こ、こっち見んな!」
 運悪くトンヨクの放った光によって怒りに満たされ、そのままブレスの本流へ向かって走り始める寿々貴。このままでは避けきれない。
 その時、彼女の体を風が包み込む。煙草臭くも優しい風が。
「さぁ、どうだリベリスタ! これを受けて無事な者など……」
 自信満々に吠えるシン。だが、濁流が消え去った後、そこには立ち続けるリベリスタの姿があった。
「ちゃんと守ったから落ち着きなョ、可愛い子」
 寿々貴の盾となったのは颯。身体を炎と雷に焼かれながらも、女は飄々とした態度を崩さない。
「でも正直、今のブレスは汚い色だと思うな、颯さん」
「全くだ! ホントは女の子庇いたかったんだ! お前のそのきったないブレスのせいだかんな!」
 守を抱きしめるような体勢で夏栖斗も敵を挑発する。
 龍治が作った一瞬の隙、その間にリベリスタ達は仲間を庇ったのだ。
 心奪われた零児も体が石になった事で最悪の事態を逃れ、リベリスタは被害を最低限に抑えきる。
「うぐっ……だ、だが、石化は簡単に解けやしな……」
「悪いね」
 再び遮られる極彩竜の言葉。それは気の流れを制御することで、大事な人を庇いながらも異常に蝕まれなかった悠里の言葉。
「今日は僕のヒロインも一緒だ」
 その時、癒しの風が彼を中心に時計回りの渦を描く。
「だから、無敵さ!」
「えぇ」
 悠里の後ろに立つカルナの表情には恐怖はない。同じ時を刻むと約束した彼が守ってくれると信じているから。
 周囲へと拡散したその風に正気に戻った寿々貴の風も重なる。それによって夏栖斗以外全員の体が一瞬で癒えきる。
 だが、癒したとはいえ、状態異常を受けたことには変わりはない。敵の宝石は既に砕けた赤色の宝石を除いても再び4つ灯っている。残すは黒き宝石のみ。
「仲間を護る、ソレが綺麗な正義の味方っぽい戦い方だョ」
 颯は軽く指を振って挑発し、再び前線へと駆ける。クロブタンを刈り取るために。
「正義の味方、勇者、か……それは竜たる我に勝ってから名乗れ! 勇者気取りども!」
 再び開かれる竜の口。そこから零れるのは漆黒の闇。
「なら逆に言いましょう。我らの様な勇者『気取り』を倒せずして、何がドラゴンですか!」
 自然と、守の口が動いていた。
 脳裏を掠めたのは守にとっての勇者たる父の背中。それを目指す彼にとって、勇者気取り、という言葉はしっくりと胸の中に納まった。
 その言葉に、竜はギリ、と歯をかみしめ守へと視線を向ける。
「あぁ、なんか見覚えあると思ったら……聞いてもねぇのに縞島二浪に喋くられた中で聞いた野郎か。ベーゼルを殺したクセして、なるたけヤクザは殺さなかった紅椿組の偽善野郎かっ!」
 真実とは少々食い違ってはいたものの、守はそれに頷く。相手への挑発を完遂するために。
「まずは手前から殺してやるぞ! 勇者気取り!」
 凍った夏栖斗が視線を遮っていたために、竜は守を狙うべく炎の吐息へと攻撃手段を切り替える。
 迫りくる炎を見、夏栖斗を抱きしめるかのような体勢で盾を大きく突き出す守。
「だぁーっ! ただでさえ暑苦しいのにここで炎かよ!」
「まぁ腹をくくって男らしく汗臭くいきましょう。来ますよ!」
 着弾。爆炎。
 凄まじい熱量が襲い掛かるその中で。
 守は確かに、『気取り』ではなく勇者の面持ちで、その一撃を受け止めるのであった。


「待ってた分、お暇だったカナ?」
 全身全霊を込めた颯の刃。それに刻まれ、ついに最後まで立ち続けたニワトリ怪人は倒れ伏す。残すは巨大なる竜ただ一匹。
 対して、その圧倒的な力によって数人が一度倒れたものの、運命の力を持つリベリスタは最後まで誰一人欠けずに立ち続けていた。
「クソ……役に立たねぇ奴らめ! クソが!」
 怒りに歪む竜の表情と瞳。その額に輝く黒い宝石を確認し、零児が敵前へと踊り出ながら叫ぶ。
「気をつけろ、ここからが本番だ。奴の漆黒のブレスは希望を絶望へ塗り替える力を持ってるぞ!」
 放たれた強烈な一撃に巨竜の体が揺れる。
 もはや、敵に撃てる手は多くはない。もし、ここで逆転の可能性があるかも、と示唆されれば、愚かな獣はその可能性に賭ける。
「クハハ、ならば喰らってみるがいい、我が漆黒の闇を!」
 溢れだす闇の吐息。それはリベリスタ達を飲み込んでいく。
「さぁ、闇の中で息絶えるが……」
 が、その闇を突っ切って二つの影がシンを挟み込むように飛び出す。
「行くよ、夏栖斗!」
「応よ! 悠里、しくんなよ!」
「なっ……馬鹿な!?」
 二人の覇界闘士には傷一つついてはいない。当然だ。
 シンは元々、魔力に長けたマグメイガス。身体能力に威力が依存する暗黒は不得手、その威力は彼らに傷をつけられない。
 零児の言葉は仲間への警告ではなく、罠だったのだ。
「「土砕掌!」」
 だが、それに気づいた時にはもう遅い。
 焔の描かれた棍と勇気の刻まれた白き拳が左右より竜の体に突き刺さる。
 巨大な体の中を暴れまわる気の渦は内部より竜の体を破壊する。
「ガッ……」
「こいつ、思ってたより脆いのか?」
 殴った瞬間悠里は直感する。彼は怪獣となる前はマグメイガス、その体力も回避力も決して高くないのではないかと。
 麻痺への耐性もない竜は悔しげに瞳を左右へと動かす。逃げ場を探すかのように。
「ストーン教団、ついに決着の時のようですね」
 守の弾丸が、颯の斬撃が、シンのその巨大な体をまるで砂糖細工のように砕いていく。
 たった一人の竜にその攻撃を防ぐ術はない。
「やめ……ろ……俺は……」
 義翼は折られ、尻尾を切り取られ、その瞳にもはや戦いの意思は見られない。竜は少しづつ後ろ下がり始める。
「成程、図体は立派なドラゴンだったが……もっと威厳を持った動きは出来んのか」
 逃げようとしている事を察し、龍治は軽く挑発する。
「知るかこのクソ野郎ども! 次は絶対殺してやるからな!」
 その言葉が引き金となったのか、竜はその背を敵へと向けて、ビルの谷間を疾走し始める。
「……ああ、そう、そう言った感じだ」
 後を追おうとするリベリスタ達。だが龍治は焦ることなく得物を構える。
 逃げ切る心算なのであろうその動きが彼には止まって見える。
「お前みたいな馬鹿の最後の言葉にはぴったりだ」
 火薬の弾ける音と共に、極彩竜の体は血の海へと沈んだ。


「全く、アレが楽勝余裕なんてイヴちゃんも無茶言ってくれるネ」
 傷ついた仲間達をカルナの聖歌と寿々貴の気力分与が癒していく中、近くの自販機で買ってきた珈琲を手に颯は苦笑する。
 戦いは終わった。だが、リベリスタ達には休息の暇は僅かしかない。
「次も本番だ。アイツ達の道を開くためにも頑張らないとな」
「うーん、すずきさんは休憩時間も欲しいんだけどね。一か月くらい」
 零児の言葉に軽く肩をすくめる寿々貴。そこへ満面の笑みで宣言するのは夏栖斗だ。
「大丈夫さ! エンジェルマジエンジェルで俺達は無敵なんだからな!」
「えっ、あのっ……」
 真っ赤になったカルナの横で、悠里は無言で親友の頭に梅干し一つ。
「さぁ、行きましょう。守るべき人がまだ私達には居ますから」
「時間は有限だ。急いでいくぞ」
 ブレスの被害を被ったビルを眺めながらの守の言葉に、龍治は頷き、そして立ち上がる。

 そして、戦いは次の舞台へと移る……。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
続きは【千葉炎上】九美上六代幹部、最終決戦! にて。

今回の依頼では、非常に火力が高く、脆いボスが相手でした。
EXへの対策は万全でしたが、最後まで竜を放置した結果、危険な場面もちらほらと。
すずきさんとカルナさんの支援、零児さん発案の「ブレス誘導」、
どれか一つでも欠けていれば少なくとも重傷者が。
あるいは失敗していた可能性もあります。

というわけで、上記三名の方は若干名声にボーナスが入っております。

また、ボスを上手く乗せて戦闘に参加しないでもらう作戦は非常に素晴らしいものでした。
名声合計値が高すぎたために失敗となりましたが、上手くいっていればフェイト復活すらいらない戦闘になったかもしれませんね。

では、また別のお話にてお会いしましょう。