●千葉炎上 これは、ある事件に関する、主流七派トップそれぞれの反応である。 「松戸研究所が多派の連中と……大事だな。だがそれだけだ。トレーニング相手ができて丁度いい」 ――六道羅刹 「風紀は元々難色を示してた連中だ。飼えない犬に小屋はいらない。放っておけ」 ――逆凪黒覇 「縞島め……七派のいずれでもなく独立組織として蜂起したか。なら、最初に手を出した派閥が漁夫の利を狙われる。番犬(アーク)の出方を待つか」 ――恐山斎翁 「全く勝手な連中だよ。けど、三尋木自体にダメージは出てないし……今しばらくは様子見かねぇ」 ――三尋木凛子 「えー、七弦ちゃん勝手に出てっちゃったの? 俺様ちゃんも誘ってくれたらよかったのにーい。え、ダメ?」 ――黄泉ヶ辻京介 「剣風の……ついに我儘を通しちまいやがったか。遣る方ねぇな。てめぇらの行く末、今は見届けてやるよ」 ――剣林百虎 「ったァく弱小組織だと思ったらストーン教団、空気読んでくれんじゃねえの。楽しい楽しいデスマッチだ。暫くは高見の見物させてもらうぜ!」 ――裏野部一二三 その、ある事件とは――。 『縞島組』『風紀委員会』『ストーン教団』『松戸研究所』『弦の民』『剣風組』。 六つのフィクサード組織が互いの理想実現のために新生『九美上興和会』として協力合併し、巨大なフィクサード組織に生まれ変わろうとしているというものだ。 彼等の秘密兵器、アーティファクト『モンタナコア』。 組織を完全なものとすべく狙う『セカンドコア』。 そして『新生九美上興和会』。 このすべてが今、アークのリベリスタ達に託されようとしていた。 ●新生九美上興和会、設立! 幕張某所、九美上興和会ビル。幹部会議室。 豪華絢爛な部屋の最上座後方には巨大な純金製の紋章が設置されていた。 この紋をさし、知る者はこう呼ぶ。 「九美上興和会」 上座に設置された一人がけのソファに、男が座っていた。 会議室である。椅子くらいはあるだろう。 だが彼の眼前には五台。そう、五台の立体投射機が設置されている。 通信越しに並んだ光景は、それはそれはそうそうたるものであった。 ――風紀委員会、委員長・風紀四条。 ――ストーン教団、総帥・吾大醍五。 ――松戸研究所、所長・鎌ヶ谷禍也。 ――弦の民、教祖・琴乃琴七弦。 ――剣風組、総元締・路六俵八。 ――縞島組兼、九美上興和会、会長・縞島二浪。 七派それぞれに所属していた傘下組織のトップが、今一同に会しているのだ。 非常に異例なことである。 眼帯をつけたひょろ長の男、縞島二浪。 紫のスーツに高級革靴。いかにもヤクザ然とした恰好で、彼は脚を組んだ。 「ここに集まったンは端から端までみーんな、アークに叩き潰され、壊滅スレスレまでもってかれた組織や。そんなワシらが危険を冒してでも手を組んで、デカい組織になろうとする……そら、よくある話や。自然なことやでぇ」 「良く言うわね」 水兵服を着た少女。おさげ髪に眼鏡をした、印象だけならば大人しげな少女、風紀四条。 手にした資料束を足元にぶちまけ、顎を上げて見せた。 「『私達は負け犬だから傷を舐め合いましょう』? 気持ち悪いわ」 映像にこそ映っていないものの、彼女の後ろには何十人と言う武装集団がいる。ボディースーツにヘルメット。そしてサブマシンガン。中にはどこかヒーローじみた格好をいした連中も混ざっている。 「私個人としてはあんたら全員ハチの巣にしたいけど……アークのドヤ顔に風穴あけられるなら、『私達』としては満足よ。合併を認めたのもそう言う理由。他の連中も、大体のところはそうなんでしょう?」 「うへぇ、恐い。さっすがは風紀委員会のヤドリギ! 鋭い眼光ですなぁー! よっ、女大将!」 ひとり座布団にすわり、湯呑片手に合いの手を入れてくる猫背の男。 ボロと言っても差し支えないような着物をきた、やや小柄な青年である。名は路六俵八。 風紀四条から睨みつけられてもどこ吹く風で茶を啜っている。 まるで小物の振舞いだが、全くと言っていいほど隙が無い。彼は達人であった。 「それだけが理由じゃあございませんて。あっしら一応、七派をそれぞれ蹴っ飛ばしてきたんですからねえ。リスクにはリターンちゅうもんがないといけませんや」 そう言って、彼は胸元に煌めく水晶の欠片をつついた。 彼だけではない。その場に居る全員の胸元に、それは下がっている。 「コレを使って組織をパワーアップするのが、個々に居並ぶあっしらのリターン、と」 「そういうこと! だーいせぇーかーい! まさか僕がこんなポジションから語れるなんてね、世の中何があるかわからないよねえ、あは」 白衣の男がぱちぱちと手を叩いた。 そう、白衣の男。そう表現するほか、印象と言うものが無い。 彼こそが鎌ヶ谷禍也。フィクサードを機械で犯し、強制的に物想わぬ兵器と化す、狂気の研究者である。 「それは『モンタナコア』の欠片だよ。それを使えば、生命力や寿命を犠牲にフィクサードをパワーアップできる。抜け駆けは無しだ。現存するもの同士、せーので使わなきゃ意味がない。コレを破壊できる『セカンドコア』をアークが先日回収しちゃったっていうのが痛いけど、暫くは保つ筈だよ?」 「その『暫く』で七派も手が出せぬ程の力を蓄えようと言うのか。博打だな」 重いプレッシャーが響いた。いや、響いたのは人の声だ。 玉座にこしかけた巨漢が、頬杖をつきながら述べたのだ。 熊の毛皮を被り、表情は読めない。 だが彼のバックには人であることを辞めた怪人と呼ばれるビーストハーフ達がいる。そして、彼らの暴虐的到達点にして命を代償にした化物、怪獣がいる。 巨漢、吾大醍五は威厳ある声で言った。 「いずれはこの世界に八派目を作るつもりか。まあ、それもよかろう。世界征服の踏み台としてくれる」 「まあ、世界征服だなんて。物騒ですわ」 おっとりとした声が、吾大醍五の声をやんわりと退ける。 それはそれは華麗な美女が、足を揃えて座っている。艶やかな和装。首や腰についた鈴。手折れそうなほどの身体に、白い肌。しかし顔は、それ以上に真白いメイクが施されていた。 多くの信者を抱える宗教団体。その教祖、琴乃琴七弦である。 「わたくしはただ、救われぬ少女達に自由をあげたい。そのための虐殺、そのための消滅、そのための炎上。私達はただ――我儘であっただけでございましょう?」 胸に、手を当てる。 彼女に続くように、皆もまた、胸に手を当てた。 笑う。 「新生九美上興和会、ここに設立や」 胸の中に吸い込まれるように、結晶が潜り込んでゆく。 青白い光をちらちらと漏らしながら、笑う。 壮絶に。 豪快に。 優雅に。 大胆に。 陰湿に。 凶悪に。 笑い、笑い、そして彼らは、『力』となった。 ●最終決戦! 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は、そこまでの説明を一旦区切り、リベリスタ達の顔を見渡した。 「『縞島組』『風紀委員会』『ストーン教団』『松戸研究所』『弦の民』『剣風組』……どれも、アークがこれまで幾度となく戦ってきたフィクサード組織だ。これが今、生き残りと互いの理想実現のため協力合併しようとしている」 した、ではなく。 しようとしている、だ。 「まだ戦力は各拠点に分散している。これが一ヶ所に集まられれば非常に厄介な敵になるかもしれない。また一部だけを取り逃せば地下に潜られてまた厄介なことになるだろう。だから――」 だん、とデスクを叩く。 「これより多くのリベリスタを各拠点へと分散。新生九美上興和会を構成する全ての組織を一気に壊滅させる。つまり、最終決戦だ!」 ここで、一つの情報を読み開いておこう。 『モンタナコア』と『セカンドコア』についてだ。 これらはフィクサードを強化・革醒する効果を持つアーティファクトで、九美上興和会はこれを利用して一部フィクサードの強化を図っているという。 そのため千葉県各地にいくつものフィクサード小隊が結成され、行動を開始している。彼等はアークに回収された『セカンドコア』を奪おうとしているらしいが……。 「そっちの方は、今も多くのリベリスタたちが対応に向かってくれている。俺達……いや皆の役割は、『セカンドコア』の運用だ」 尚。このアーティファクトが強化できるのはフィクサードに限られる。リベリスタには適用されないものだ。 ならなぜ、運用などと言う言葉を使うのか? 「それについては……この資料を見てくれ」 リベリスタ達に配られた資料。 『モンタナコア及びセカンドコアの性質と運用について』とタイトル付けされた紙資料には、こう記されていた。 『セカンドコア』には二つの性質がある。 ・モンタナコアの位置をおおまかに指し示す性質。 ・所持者にトドメを刺す際モンタナコアと融合し消滅する性質。 尚、この効果はモンタナコア所持者への強い思いや因縁の深さによって効果を増すものと思われる。 「このことから『コア所持者1:1』の割合で各エリアへ配分する必要があることが分かる。モンタナコア所持者は特殊に強化され死ににくくなっているが、ここにいる10人なら倒すことができるというわけだ」 だがしかし。 「現在『セカンドコア』は初富初音邸に封印保管されている。協力者に封印解除をしてもらっているが、どのみちまずは邸へ取りに行く必要があるだろう」 またも、だがしかし、だ。 「だが道中、このセカンドコアを狙ってフィクサードたちが襲い掛かってくるだろう。予知によれば、だいたい初富邸前で鉢合わせることになる筈だ」 まずは初富邸前でフィクサード部隊を一部撃破、強行突破し、それぞれの担当するエリアへ分散するという作戦になる。 「この際、同作戦でフィクサード小隊の対応にあたってくれていたリベリスタたちが援軍に駆けつけてくれる筈だ。大人数対大人数。かなりの混戦になると思うが、敵のボスを倒すという目的だけはしっかり見据えておいてくれよ」 そう言うと、彼は資料をデスクに並べた。 それぞれのコア所持者のデータである。 数にして、10名。 ●10名のコア所持者 ・縞島二浪 もとの九美上興和会幹部連を次々と謀殺し、会長の座を獲得した男。 汚い手をポンポン使い、そのくせ頭も回る。 ・善三 九美上興和会元若頭。通称『不殺(ころさず)の善三』。 深い義理がある九美上興和会のため。組織に吸収された多くの部下達のため。二浪の下についた。 九美上興和会ビルの途中階層で待ち構えている。 ・風紀四条 アークが心から大嫌い。 主に大隊戦を得意とする。 ・吾大醍五 屈強な巨漢であり、非常に剛腕でタフ。 ・怪獣ヴィッカース コアを自らに埋め込み、命を犠牲に怪獣化した。 今はただのものいわぬ猛獣。 前進を金属装甲で覆い、翼の生えた大蜥蜴の姿をしている。 ・鎌ヶ谷禍也 松戸研究所の全てを奪った男。 狂気に満ちており、何を考えているのか全く不明。 ・FMF-B七栄 一時は善意あるリベリスタだったが、機械に犯され自我を喪失。 全身に武器を搭載した人間兵器となった。 ・琴乃琴七弦 今まで多くの弱者を救ってきた反面、振る舞いは静かな狂気に包まれている。 ・初富ノエル洗脳体 巡り目模様の仮面をつけたフィクサード。 瀕死状態の所に念入りな洗脳を施された模様。 銃で武装し強力。彼女の場合コアは仮面に埋め込まれている。 ・路六俵八 通称八兵衛。多くの人間を暗殺しながら沢山の技を奪ってきた。 怪盗とペルソナのスキルを持っている。 目的は、彼等全員の撃破。そしてモンタナコアの全破壊である! 「こいつらを放っておけば、デカい組織が生まれてヤバいことが沢山起きる。俺たちはそいつを黙って見ているわけにはいかない。そうだろ? つまり……叩き潰してやれ!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月06日(火)00:48 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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