●不変の営み それらは人と同じように、世界の恩恵を受けて生きている。 しかしそれらは、人のようには世界を見て回れない。 それらの個は世界に対してあまりに小さく、その目に映す世界は狭い。 頭部、胸部、腹部に分かれる体を持ち、三対六本の肢を持つ者。 時に地上を闊歩し、時に地中を駆け巡る。 母なる女王の為に、同族の為に、その命を捧げる者達。 人はそれを、蟻と呼んでいる。 その日も、残酷な運命の祝福を受けた彼はいつものように仕事を始めた。 大地を踏みしめ歩みを進め、女王に捧げる供物を探す。 「ひっ……!」 彼は視線の先に目当ての物を見つけると、ギチギチと顎を鳴らした。 肉だ。 自分より小さくて、持ち運ぶのにちょうど良さそうな肉がある。 「あ、ああ……!」 都合のいい事に、その肉はこちらに気づいているのに逃げだす気配がない。 周りを見渡す。 後を追う様に仲間が二人、彼の傍へとやって来た。 心なしか自分より小さいような気がしたが、彼にとってはどうでもいい事だった。 慣れた動作で獲物を囲う。 眼下のそれは甲高い声で叫びをあげたが、それだけだ。 千切って、運ぼう。 柔らかい肉が裂ける音がした。 ●要請 「……このエリューションが出現するのは山奥のキャンプ場の近く」 アーク本部、ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達を前にして、真白イヴは淡々と語る。 「放っておけばこれからの行楽シーズン。被害がどれほどになるのかは想像できるでしょう?」 「……まあ、な」 色味の違う双眸を向け尋ねるイヴに、問われたリベリスタ達が顔を見合わせた。 イヴが視たのは複数の蟻の怪物が、若い女性に襲い掛かり食い千切る未来――それ以降起こりうる連続した事件の幕開けとなるであろう出来事である。 フォーチュナの視た景色は、手をこまねいていれば現実の物となる。怪物の出現も、人の『死』も。 「現時点で判るだけのデータを説明するね」 銀の長髪をなびかせ、イヴの細い指先が踊り端末から情報を弾きだす。 モニターに映し出されたのは、彼女の言葉通り蟻のシルエットだった。 「……敵の種別、エリューションビースト。フェーズ2、戦士級が1体とフェーズ1、兵士級が2体。 いずれも元になった『蟻』の姿を残したまま純粋に巨大化した物みたい。行動原理も働き蟻そのまま」 「餌を探して彷徨って、巣に持ち帰るって訳だ」 「彼らに戻れる巣なんてないけどね」 そう言うイヴの瞳には、ほんの少しの憐みの色が浮かんでいるようだった。 「彼らはその強力な顎で獲物を食い千切って持ち運び易くするみたい。一番気を付けるべきはそれ。 あと身を守るために酸のような物を吐き出しても攻撃してくる。こっちは物理的な守りを無視する上に命中すると気化して燃焼を起こすみたい」 蟻の中にはギ酸と呼ばれる酸の一種を吐きだす物もいるというが、その変異だろうか。 「……ちょっと待った。燃焼って、火が起こるのか」 「? そうだけど?」 「現れる場所が行楽地にもなる山奥なら、その攻撃は不味い。火事になる」 一人のリベリスタの言葉に、イヴはハッとした表情を浮かべると急いで端末を操作した。 次にモニターに映し出されたのは、出現予想区域の地図。 「……良かった。近くに川がある」 記されていた事実にイヴはホッとした表情を浮かべる。そして再び視線をリベリスタ達に向け、言った。 「森の中で酸を使われる訳にはいかない。だから、何とかここまで誘い出して欲しい」 出現位置からそう遠くない場所にある川まで、エリューションを誘い込む。 敵は人ほど知性のある生き物ではない。それ故に誘い込むのは難しい事ではないだろう。 「酸を使うのは身を守る為だから、こちらから危害を加えない限りは使ってこない。だから誘い出すまで手を出してはダメ」 それはつまり、目的地に辿り着くまでは敵の攻撃を受けるしかないという事でもあった。 「……大分面倒な状況になったけれど、お願い出来る?」 「それは勿論。やるしか、ないんだろ?」 軽口を返すリベリスタ達に、選ぶ答えは始めから決まっていた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:みちびきいなり | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年10月22日(月)23:11 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●日常への闖入者 その日も、彼らは変わらぬ足取りで今日の務めを始めた。 餌となる獲物を探し、巣に持ち帰る。 それは彼ら――蟻の日常であり、生まれてから死ぬまで彼らに課せられた使命であった。 だが、今この場にいる3匹の蟻達は気づいていない。 もはや常なる者の枠の外へと、自分達が引きずり出されてしまっているとは。 己に課せられた運命も知らぬまま、蟻達は遂にそれらを見つける。 音がした。その音の主こそ、彼らの求めていた物だった。 ――肉だ。それもただの肉ではない。甘い香りもする肉だ。 蟻達は歓喜に顎を打ち鳴らす。 だが彼らは知らない。 目の前に立つ獲物が、己らと対峙するために現れたのだとは。 ●チェイス・インテイス 「通信機器は機能しておるな?」 眼前に立つ敵を見据えながら、『陰陽狂』宵咲・瑠琵(BNE000129)が声を掛ける。 「ええ、しっかりと。こちらはいつでもフォローに回れます」 「緊急時には急いで迎えに行くぞ!」 機器を通して返ってくるのは『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)と『二ツノ脚、二ツノ拳』滝沢・美虎(BNE003973)の二つの声。 「結界も既に張り終えています。加護は継続していますか?」 「モチのロンじゃ! では、誘導を開始する」 凜子の言葉に軽く返して、瑠琵は地を蹴る。己の体感と、与えられた小さな翼は道なき道に完全に対応していた。 敵エリューションビーストの能力による二次災害を避ける為、リベリスタ達は戦場を河辺と決めた。 その為に必要な敵の誘導役を瑠琵が、その補佐を凜子と美虎が請け負った。 仲間の待つ場所まで、敵の攻撃に痛打足る反撃は許されない。 一見して狙い易い小柄な体躯の瑠琵が囮役になるのは、理に適っていただろう。 砂糖に蜜と、甘露を用意した彼女を蟻達は標的と定めて追走し始めた。 「こっちじゃこっちじゃ!」 付かず離れずのまま、木を蹴り、岩を蹴り、乙女が駆ける。 戦士級が唸るような勢いで首を伸ばし、大きな顎で噛みついた。 間髪、式を飛ばす。 現れた影が、その口元に吸い込まれ、ただのひと噛みで引き千切られた。 「おおっと」 直撃していたらどうなっていたか。そう瑠琵が考えている間の事である。 蟻の、兵士級の一体が、突如道を外れて大きく横手に回り始めた。 (回り込む気か……!) 一匹の獲物に対して、群である蟻達はそのコンパスの差を使い、囲い込みを仕掛けてきたのだ。 ぐるりと周りを囲まれてしまえば。否、足を止めさせられては少々面倒な事になる。が、 「勿論させません。こういう時のための私達です」 先行して瑠琵を誘導していた凜子が回り込もうとした蟻の前に躍り出る。 新たな獲物の出現に驚いたのか、兵士級は歩みを止める。首を傾げる姿が、どことなく気の抜けた雰囲気を纏っていた。 「紅葉の山を血で汚すわけには参りません、こっちです」 機を奪った凜子に誘われるままに、道を逸れた働き蟻が元のコースへと誘導されていく。 それは元より持っていた蟻の習性だったのか。 「もうちょっとで森を抜けるぞ!」 蟻達の猛追を躱しつつ駆ける2人に、残った先導役の美虎が手を回して行く方向を指し示す。 聞こえてくるのはせせらぐ川音。砂利を踏みしめる幾人かの足音。 「……のぅ。わらわ今、物凄く声に出したい言葉があるんじゃが」 もう誘導は成功していると、並んで走る凜子と美虎に瑠琵が言う。3人は体に傷こそあれど意気は高い。 「構わないと思いますよ」 「いいんじゃないか?」 蟻達の猛追を追われる身で何とか躱しながら、己の役目を果たした者達の余裕で。 「では……失敬」 森を、抜ける。躍り出る。 射し込む強い光と、青空と、待ち構える仲間達。そこに飛び込みながら瑠琵は叫んだ。 「アリじゃー!」 ●機先 森から抜け出た仲間達に続いて、標的である巨大化した蟻達がその姿を晒した。 「瑠琵様達、どうやら迷わずに済んだようです」 「森の中は方向感覚狂いやすいって言うしねぇ」 3人の無事を確認しホッと溜息を零す『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)。 使わずに終わった発煙筒を回して『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)が言葉を重ねる。 万が一を想定して用意しておいたバケツから、二人はゆっくりと距離を取った。 「事前に声が聞こえてくればと思ったけれど、あのサイズならそれこそ杞憂だったわ」 「まぁ、森が焼けた様子もありませんし、何事も滞りなくという事ですね」 互いに集中を高めて待機していた『モンマルトルの白猫』セシル・クロード・カミュ(BNE004055)と風見・七花(BNE003013)。 既に臨戦態勢を整えていた二人は、それらが姿を現した時には動き出している。 「攻、防、共に準備は万端……ならば」 取り出した魔力杖を構え、やや緊張の趣の『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)はその広い視野を以て戦場を見据える。 「任務開始。さぁ、戦場を奏でましょう」 その言葉を合図に、リベリスタ達の真の戦いが始まった。 「はんてーん!」 美虎が駆け抜ける勢いそのままに体をくるりと反転させた。慣性に従い引き摺られる足が砂利を擦り、安全靴の足裏に熱を感じる。 「よーし、楽しいありんこ退治だ!」 「蟻の女王には悪いがのぅ。踏み潰されたか蟻地獄にでも落ちたと思って諦めるがよい」 同じく前衛に立つ瑠琵がその手で鬼神の式符を敷いて、己に更なる守りを与える。 「切り替えを!」 「まっかせてぇ~」 凜子と入れ替わりに旭は前衛に向かう。その脇から、自分の最も戦いやすい場所に陣取ったセシルと七花が動いた。 「ねぇ貴方。世界中の全生物のスケールを同一にすると最も強い生物は何か、通説ご存知かしら?」 「この場でそう切り出すという事は、昆虫ですね!」 「ご明察。つまりこいつらは面倒な相手ってわけだけど……」 直後、雷光の一閃と鋭い弾丸が、戦場を広げようとしていた兵士級の巨躯を轟音と共に大きく揺らす。 「犠牲者が出てしまう前になんとかしないとです」 「単純明快ね」 軽いノリに似合わぬ的確で正確な一撃は、誰有ろう七花とセシルの手から生み出された物だった。 そしてそこに生まれた隙を逃すほど、旭は暢気ではない。 「うわ、やっぱり口大きい! こわい!」 流れるような身のこなしで2人が狙った兵士級の懐へと潜り込む。 敵が気づいて足元を見た時には、もうそこに旭の姿はない。次に聞こえた声は、頭上から。 「――けど、その大きな体で一体どこに行くのかな?」 大雪崩落――振り降ろし脳天から地面へと叩きつける一撃が、兵士級に加えられていた。 「癒しの息吹よ……在れ」 シエルの言霊に従い具現した治癒の息吹が、囮役の3人が負った決して軽くは見れない傷を癒していく。 「皆様のお怪我、只管癒してみせましょう……」 それは己の役割を果たす事に真摯な彼女の、皆を力付けるに十分な言葉だった。 「畳み掛けます、皆様重ねてお気を付けを」 ミリィの指示は攻めにも守りにも通じた布陣をリベリスタ達に付与し戦況を支配した。 誘い込まれた事に気づいたのか気づいていないのか。蟻達はギチギチと顎を鳴らして互いに教え合う。 今ここで起こっている事は、狩りではなく。戦いなのだと。 それを通じ合せた時には、機先は既に奪われていた。 ●立ち向かう意志 準備、布陣。共に万全を期したリベリスタ達が、戦いを終始有利に進めている。 動きにくい大自然の足場も、予期せぬ邪魔も、その全てに彼女達は対策を取り、眼前の敵と相対する。 蟻達が自衛のために吐く酸も、その悉くを避けるか即座に癒してしまう対応の早さも、気構えあればこそ。 だが敵には、それら万全をねじ伏せる力があった。 それは自衛の為に防御を貫く酸ではなく、常々誇示されている怪物の顎。 その餌食となったのは、大勢の予想に反し身軽で回避を得意とする瑠琵であった。 瑠琵は蟻達に執拗に攻撃を加えられており、その結果戦士級の攻撃にとうとう捕まってしまったのだ。 囮役として用意していた諸々の品が、ここ戦場にあっても彼らの注意を引き続けたための攻撃の集中だった。 「ぬ、ぐっ……!」 咥えられたまま持ち上げられ、その身が万力の様な力の掛け方で締め付けられる。 小さな体がミシリと音を立てて瑠琵の口から乾いた息が吐き出された。 打ち捨てられ、地面に叩きつけられる。打ち付けた砂利が爆ぜ、さらにその細身が跳ねた。 直後、追撃を仕掛けようと迫る兵士級に、ミリィの放つ牽制の聖光が弾ける。 たたらを踏んで尚、前へと歩みを進めようとするそれを、 「喰らえどっさい!」 合わせて、美虎が踏み込み弾き飛ばした。めり込む感覚に、さらにもう一歩。 ぐしゃりと何かのひしゃげる音と共に、ジタバタと足を動かしていた兵士級は動かなくなった。 さらにその直後、今度はその美虎の体が吹き飛ばされる。 もう一体の兵士級が、インパクトのタイミングで動きを止めた美虎に襲い掛かったのだ。 真っ正直に受け止める事になった美虎の体が、痛みの地面へと転がった。 「あの動き、戦いにおける彼らの本能がそうさせているのでしょうか」 凜子が冷静に状況を分析しつつ、シエルの回復だけでは間に合わないと自分も癒し手に回る。 合わせて攻めの手を減らすわけにもいかず、七花はそのまま攻勢を続けた。 戦局はエリューションビースト達による力押しで、前線の乱れる混戦となっていった。 「ぜったい、過剰防衛だようー!」 一手、己の身一つで敵の攻撃の集中に晒されたのは旭だ。 2体となったとはいえ一撃一撃が恐ろしい相手である。ただの一度もまともに受けるわけにはいかない。 だが相手の技は、今ここに在る8人の内、最も回避を得意とする瑠琵が受けてしまった一撃である。 何とか直撃は避けた。が、それだけでも十分以上の痛みが旭に与えられた。 距離を維持して後衛として立ち回る他のリベリスタ達も、酸以外の攻撃を警戒する必要を感じ緊張に気を更に引き締める。 ――ジャリ、と。砂を踏み敷く音がする。 倒れていた者が起き上がり、強く踏み敷く音がする。 旭を襲った戦士級の足元が凍結した。そのまま凍結が全身に侵食していく。 後衛に狙いを付けていた兵士級が再び足止めされた。その動きを止めているのは、蟻の巨躯に比べて小柄な少女。 「身体の芯まで凍えるがよい」 「負、け、ない。……ぞっ!」 「…っ! 癒します!」 凜子、七花、シエルが全力でその傷を治しにかかる。 一人で前線を張っていた旭が、その治療を受けながら再び敵前へと駆け込んだ。 ミリィが、セシルが、残る意力を以て敵の動きを封じ込めに掛かる。 前線は、崩れていない。 まだ、戦う意志は折れていない。 戦局は最終局面を迎え、気力で押し出す戦いへと進む。 「踏み込み、突き出し、打ち、弾き!」 「少し距離が離れたらぁ、これ!」 二手二足。全身を用いて美虎が前線を圧す。そうして開いた体に旭が飛び込みその美しい脚を躍らせる。 発生したのはカマイタチ。巻き起こる刃が残る兵士級へのトドメとなった。 凍結を破り、再び十全に動き始めた戦士級が見たのは、既に物言わぬ骸となった己が同族達の姿。 そして見回せば、自分よりも小さな者達が、自分を囲んで一気呵成に攻め立てようとしている。 ふと気づいた自分を見据える少女。七花の瞳は、黒く、しかし曇りなく強く輝いている。 外敵から己の世界を守るため、小さな力を合わせて立ち向かうその姿。 何度傷付いても、立ち上がり挑みかかる意志持つ強さ。 彼は思っただろうか。 これでは、これではまるで―― 咆哮し、戦士級は手当たり次第といった体で周囲の物を破壊し始める。 だがそんな状態こそ、ミリィが狙っていた状況であった。 「その怒り、矛先を変えさせていただきます」 晒すのは無防備な姿。戦場に在って余りに隙だらけのその姿は、戦士級の怒りを十分に引き出し乱した。 だが彼の持つ最大にして強靭な武器は、厚い前衛の壁によって彼女の元へと届ける事が出来ない。 封じ込まれた。そして、それが終わりを告げる始まりだった。 最後に引導を渡したのは、セシルの放った一発の弾丸。急所を貫く一筋の線。 「Bonne nuit. ――おやすみなさい、良い夢を」 もう動かない蟻達に、薬莢を弾きながらセシルは静かに呟いた。 ●秋に、識る それが見つかったのは、僥倖か、皮肉か。 その後のリベリスタ達の山の捜査により、蟻達の住んでいたであろう巣が特定された。 念のため。という大方の予想通り、何の変哲もないただの蟻の巣だった。 ――その入り口は、既に潰されていたが。 「周辺の木が倒れていますし、何よりこの踏み跡。間違いないと思います」 「増殖性革醒現象の恐れもなし。事前に事を済ます事が出来たみたいです」 「もしもがあったら、巣を壊す事も考えていたんですけどね」 シエルとミリィが、場の解析を終える。それはリベリスタ達の仕事の終わりを示す物だった。 語る七花の視線の先にある潰れた入口は、もうその必要がない事を告げていた。 「かつての仲間かもしれない蟻さん達を踏み潰しながら、迷子の蟻さんはどこに行こうとしてたのかな」 「どこに、行こうとしていたのでしょうね」 「どこじゃろうなぁ」 潰された蟻の巣に、手向けと称して凜子が砂糖を一山盛っている。それを覗き込む旭と瑠琵は興味深げだ。 「一寸の虫にも五分の魂、ですよ」 そう語る凜子の表情は、大人びた女性にふさわしいたおやかさを持っていた。 「過ぎた姿と力を得たばかりに、愛しのパトロン(女王蟻)の元に帰る事叶わなかった……まあ、そんなところじゃない?」 セシルの言葉に思い出されるのは、あの時イヴが言っていた言葉か。 「ふんじゃー、帰還っ!」 両の拳を突き上げて、大きな伸びをしながら美虎が言う。 頷き合い、リベリスタ達はその場を後にした。 これから行楽シーズンを迎える美しい景観を、誰よりも先に満喫しながら。 美しい紅葉が、彼女達の勝利をささやかに讃えていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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