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危険なクレーンゲーム

●怪獣のぬいぐるみ
 ゲームセンターの一角に、そのクレーンゲームは設置されていた。
 そこそこ大きな店で、同じようなゲームはいくつもあった。
 ただ、その筐体はどこか異彩を放っている。赤と黒に塗り分けられた毒々しいカラーリングと、描かれたあざ笑うピエロのイラスト。
 中に入っているぬいぐるみだ。大方は動物のデザインだったが、恐竜をモチーフにしたとおぼしき凶悪な面構えのぬいぐるみが数体混ざっている。
 一組のカップルが、筐体の前で足を止めた。
「ねえ、ねえ。あれ可愛い! 取ってよー」
 鼻にかかったような声で、恐竜を指差して少女は恋人にねだる。高校生か、あるいは大学生か。
「ええー、どこがかわいいんだよ……お前が欲しいんならいいけど」
 彼氏のほうも、口では文句を言いながら、甘えられて悪い気はしていないようだ。
 数回のチャレンジの後、景品取り出し口にぬいぐるみが落ちる。
 瞬間、見上げるようなモンスターがカップルの前に出現した。
 ぬいぐるみと同じ姿をしたそれは大きな口を開けると、悲鳴を上げることさえ忘れていた2人に、頭からかじりついた。

●ブリーフィング
「このクレーンゲームは、内部に入れられたぬいぐるみをエリューション・ゴーレムとして革醒させる効果を持つアーティファクトらしいな」
 集まったリベリスタたちに『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が言った。
「一見して、中に入ってるのはぬいぐるみにしか見えない……というか、本当にぬいぐるみだ。ただ、その中のいくつかはもうエリューションになってしまってる」
 どれがエリューションかは、見ればわかると将門は言った。
 普通のぬいぐるみは可愛らしい動物のデザインだ。しかしエリューションは明らかにモンスターの姿をしているらしい。
 なにをすればいいのかとリベリスタたちは問う。
「まずはエリューションの撃破。それから、クレーンゲームの筐体の破壊だな」
 アーティファクトから外に出せば敵は巨大化して、襲いかかってくる。
「つまり、ゲームをプレイしてぬいぐるみを取っていけばいい。取れたのがエリューションだったら、そのまま戦闘になるってわけだ」
 1体1体はリベリスタたちよりも強いが、1体ずつ戦っていくなら対処可能だろう。
 下のほうにあるぬいぐるみほどフェーズが進んでいて、強化されているという。
 最初は単純に爪と牙で攻撃してくるだけだが、やがて炎を吐く範囲攻撃を行うようになり、もっとも強いエリューションになると周囲全体に衝撃波を放ってくる。
 時間をかけると普通のぬいぐるみがどんどんエリューション化していくので、戦闘と戦闘の合間を長く取るのは薦められない。
「ただし、注意がある。プレイするごとに体力を削られるようだ。数回ならさして影響は無いだろうが、回数を重ねるとだんだん響いてくるだろうな」
 クレーンゲーム本体が持つ攻撃能力はそれだけなので、エリューションさえ倒してしまえば破壊するのは簡単なはずだ。
「アークから手を回して、筐体を倉庫に運ばせてある。戦闘の邪魔になるものは片付けてあるから好きなだけ戦ってくれ。フリープレイに設定してあるから金のことも気にするな」
 表向きはゲーム会社の社員という名目で行くことになると彼は説明する。
「ま、慎重にやれば難しい事件じゃないさ。お前たちの実力なら、な」
 最後にそう告げて、将門は口の端に笑みを浮かべた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:青葉桂都  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年04月18日(月)23:42
●マスターコメント
 こんにちは、青葉桂都(あおば・けいと)です。
 今回は皆さんに、とあるゲームセンターにあるアーティファクトを壊しに行っていただきます。

●目的
 アーティファクト化したクレーンゲームと、その内部に存在するエリューション・ゴーレムの破壊。

●クレーンゲーム
 戦闘能力はありません。
 ただ、プレイするたびにいくらかHPを消耗します。
 中には10数個の動物のぬいぐるみと、6個のエリューション化したぬいぐるみが入っています。(最初は6個ですが、プレイする際に間を開けると増える可能性があります)
 エリューション化したぬいぐるみは、筐体の外に出した時点で暴れ始めます。

●ぬいぐるみエリューション
 凶悪な面構えのぬいぐるみです。形状は恐竜をデフォルメした感じの化け物です。
 ぬいぐるみの山の上部に3つ、中ほどに2つ、一番下に1つあります。
 最上部の3つは近接単体への物理攻撃のみを行います。ダメージを与えた際にHPを回復する効果があります。
 中間の2つは、それにくわえて炎を吐く神秘範囲攻撃を行います。これを受けると火炎状態になる可能性があります。
 最下部の1つは上記2つにくわえて、衝撃波による物理全体攻撃を行います。

●その他
 将門はエリューションを倒してからクレーンゲームを破壊する流れを想定して説明しましたが、先にゲームのほうを破壊しても問題ありません。
 その場合、破壊した時点で残っているすべてのエリューションとまとめて戦うことになります。

 それでは、ご参加いただければ幸いです。どうぞよろしくお願いします。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
マグメイガス
アリス・ショコラ・ヴィクトリカ(BNE000128)
インヤンマスター
四条・理央(BNE000319)
マグメイガス
三村・豪志郎・茜(BNE001571)
マグメイガス
須藤 凛(BNE001580)
ナイトクリーク
クリス・ハーシェル(BNE001882)
ナイトクリーク
月影 雪花(BNE002061)
ナイトクリーク
レン・カークランド(BNE002194)
ホーリーメイガス
メイル・ファニス(BNE002251)

●どこかの倉庫
 ゲームセンターの倉庫で、リベリスタたちは禍々しい筐体を囲んでいる。
「うちの店にも、あの手の筐体はなくもないけど」
 しみじみながめて呟いたのは、『でんのうむすめ 1ひき』須藤凛(BNE001580)だ。
 玩具店の娘である彼女は重度のゲーマーだ。アクセス・ファンタズムまでゲーム機型をしている。もっともアーケードゲームにはそれほど詳しくなかったが。
「……機能もやだけど、見た目も酷い」
「そうなんですか? 面白そうだなって、思ったんですけど」
 凛と逆に目を輝かせていたのは『童話のヴァンパイアプリンセス』アリス・ショコラ・ヴィクトリカ(BNE000128)だった。
「うちには置きたくない。客は集まらなさそう」
 凛は無表情に答える。
「でも、ゲームの中には可愛い子たちが沢山ですよ。持久戦になっちゃいそうですね」
 ぼうっとした雰囲気でメイル・ファニス(BNE002251)が言う。
「クレーンゲーム……ぬいぐるみ! ふふふ、日頃鍛えているクレーンゲームの腕、見せてやりますよ」
 中性的な美少年がほくそ笑む。『孤独を穿つ白』三村・豪志郎・茜(BNE001571)だ。
「うん、しっかり仕事を成功させてぬいぐるみゲットだね」
 黒四条理央(BNE000319)が2人に同意した。
「まあ待て。確かにこだわりとしてはすべて入手したいところだ。筐体を空にしてこそ、ゲームに勝利したと言えるのだからな」
 クールに仲間たちを止めたのは『影使い』クリス・ハーシェル(BNE001882)だった。
「だが、これはリベリスタとしての使命だ。こだわりは捨てて、確実な勝利を取ろう」
 冷静に彼女は仲間たちをいさめる。頭の上で跳びはねている一房の髪は、残念な気持ちを表すようにうなだれていたが。
「まあ、とっとと始めちゃいましょうよ。最悪他のぬいぐるみもエリューション化するかもしれない……気ぃ張って行きましょうか!」
「そうね。早くこの子たちを助けてあげないと」
 心配そうにぬいぐるみたちを見るのは『ナイトプレゼンター』月影雪花(BNE002061)。
「ぬいぐるみとは本来人を楽しませたり、元気付けたりしてくれるパートナーのような存在よ。問題無用で人を襲うような残忍な存在に変えるなんて許せない」
 決意を込めた赤い瞳が、凜に向けられる。
「凛ちゃん、ゲームの難易度を下げてくれるのよね?」
「うん。じゃあ、試してみる」
 機械化された両目で筐体を見つめ、凜はゲームの制御部分に自分の感覚をリンクさせた。
 当然のように高く設定されていた難易度を下げていく。アームでつかむ力は強く、動作も正確に。
「こっちも準備しておくね」
 理央は取り出し口に板をはめ込んで、取れたぬいぐるみがそのまま外に出てくるようにした。『まめつぶヴァンプ』レン・カークランド(BNE002194)が彼女を手伝う。
 クリスは『意思持つ影』に取ってこさせようと考えていたが、影を戦闘以外に利用するのは残念ながら難しそうだ。
 すべての準備を終えて、まずは理央がコントローラーの前に立つ。
「どっからでも来い」
 レンはいつでも戦闘に入れるよう身構えて、彼女にゲームの開始をうながした。

●まずは弱めのぬいぐるみ
 さすがに、確実にぬいぐるみが取れるというわけにはいかなかった。
 2人目に挑戦したのは雪花だ。ボタンを押すと、一瞬気だるさが全身を駆け抜けた。
 彼女は一番上にあった恐竜型を見事にアームでつかむ。
「クレーンゲームって、針の糸通しと同じような要領で出来て簡単だから結構好きよ」
 彼女は一瞬笑みを漏らしたが、すぐ表情を引き締める。
 ぬいぐるみが取り出し口から転がり出る、と同時に巨大化した。
 赤いフェルトの口を大きく開けて威嚇してくる怪獣に、リベリスタたちが攻撃した。
 真っ先に動いたのはレンだ。牙を突き立て、赤い綿を吸い上げる。
「うまくねー血だな」
「いちおう吸えるのね。血なのかどうか怪しいけど」
 雪花は思わず呟いていた。
 クリスと共に雪花が気糸を放った。しかし、巻きついた糸は怪獣にたやすく引きちぎられる。
 凛がぬいぐるみの横に回りこみ、マジックミサイルを撃つ。
「筐体に被害、出ないように」
 彼女の攻撃は外れたが、回避した隙を狙った茜とアリスのマジックミサイルが敵に直撃する。貫通した矢の跡から、赤い綿が吹き出した。
 メイルの攻撃や理央のチャクラムをものともせず、怪獣は理央へ噛み付く。
 彼女はマジックディフェンサーで攻撃を受け止めるが、防ぎきれない。牙が少女の腕を切り裂いた。
 もっとも弱い敵のはずだが、油断はできない。リベリスタたちはさらに攻撃を加えた。
 クリスの気糸が今度こそ敵を縛る。
「少しでも犠牲になる子達を減らす為に、早めに片付けないと」
 雪花は黒いオーラを生み出し、ぬいぐるみの頭を狙った。吸い込まれたように完璧に命中した一撃が、怪獣の頭を吹き飛ばす。
 眉をしかめて雪花は動かない敵を見つめる。きっと直してあげると、彼女は心の中で呟いていた。
 最初の戦いが終わって、次いでゲームの前に立ったのはアリスだった。
「これがクレーンゲーム……面白そう♪ ……あ、ごめんなさい、不謹慎ですよね」
 設定を確かめていた凛にやり方を教わり、彼女は心を浮き立たせてボタンに触れた。
 ただ、初挑戦ではさすがにうまくいかなかった。アームは宙をつかみ、次いで茜が挑戦する。
 鍛えた腕を見せると豪語していた少年は、見事に2つめの怪獣をゲットしていた。
「すごいです、茜さん!」
「ふふふ、ざっとこんなものですよ」
 茜の横でぬいぐるみが巨大化する。彼は赤い翼を広げて飛びのいた。
 2体目との戦いでは、最初にクリスの気糸が敵を縛って動きを止める。とはいえ、永遠につなぎとめておけるものではない。
 攻撃を受けながらもがいて逃れた敵は、爪でクリスを引き裂く。それが最後の抵抗となった。
 茜と凛のマジックミサイルが敵に次々と命中する。
「ぬいぐるみさんを攻撃するのは気が引けるけど……マジックミサイル!」
 さらにアリスが魔法の矢を放つと、敵は一声吠えて床に倒れた。
 次にゲームの前に立ったのはレンだ。
 もう1体、取りやすそうな位置にエリューションが見える。
「クレーンゲーム……見た事はあるが、プレイするのは初めてだな」
 調べたり聞いたりはしてきたが練習する時間はなかった。レンは気合を入れ直し、ボタンに触れる。
「いたいの、いたいのとんでけ~」
 背後ではメイルが微風を呼び起こしてクリスを癒している。
 レン自身も傷ついていた。直撃は避けたのに浅くはない傷を受けてしまっている。
 ぬいぐるみが巨大化する
「くらえ! ギャロッププレイ!」
 3体目に対してはレンも気糸を放った。
 糸が敵に巻きつく。捕縛された敵は抜け出そうともがく。
 全員の攻撃が敵に集中する。
 抜け出せないまま、3体目は床に沈んだ。

●激闘ぬいぐるみ
 クリスが筐体の前に立つ。
「クレーンゲームか。小学生の頃はコイツにお小遣いをたくさん使わされたものだ」
 挑みかかるような目つきで彼女はゲームを見る。
「しかし今の私は14歳。子供の頃とは違う。それにリベリスタとして覚醒している。最早ゲームに負ける要素などどこにもない」
 一瞬、なにかを期待する空気が流れる。
 けれど、落ちはつかなかった。
「エリューションよ、覚悟するがいい」
 埋まっている怪獣を取るのに邪魔なぬいぐるみを狙って、クリスは一発で入手する。
 失敗フラグを立てたとしか思えない発言だったが、メンバー中一番器用な彼女はさすがに成功した。
「これがリベリスタとなった私の実力だ」
 やたら誇らしげに、クリスはぬいぐるみを掲げる。
 最後に凛がプレイして、順番が一巡する。ゲームの設定が勝手に変わったりはしないようだった。
 その後は、体力に余裕のある者から順にプレイして、エリューションの上に乗っている動物のぬいぐるみを取り除いていく。
 理央は最初の1回以外はプレイせず、戦闘に備えていた。
 マジックディフェンサーを構えていつでも盾になれるようにしつつ、取った普通のぬいぐるみたちを戦闘に巻き込まれない位置に移動させておく。
 山がだんだん崩れていき、やがて次の敵が姿を現す。
 レンやクリス、雪花が先ほどと同じように気糸を放つ。けれど、敵は先ほどよりも動きが早く、捕らえきれない。引っかかった糸が引きちぎられる。
 後衛の3人からも攻撃を受けながら、大きなフェルト製の口に炎が宿る。
 理央の動きは、わずかに敵よりも早かった。
 印を結んで結界を展開する。
 激しい炎に前衛に立っていた5人が包み込まれる。
「皆をキッチリ守ってみせるんだから!」
 盾は、炎を完全に弾いていた。仲間たちも守護結界に守られ、大きなダメージは受けていない。
 メイルが微風を送って仲間たちを癒した。理央も癒しの符を取り出す。
 敵の激しい攻撃に対し、2人は回復を続けた。
 やがて伸び上がったクリスの影が敵に一撃を入れ、同時に投げ放ったナイフが怪獣の首を切り裂いた。
 エリューションのぬいぐるみはあと2体で、今のところ増えてはいないようだ。
 茜は危なげない手つきで怪獣を取り出し口に送る。とはいえ、プレイするたびに削られていく体力が、そろそろ響いてきていた。
 5体目の敵は出てきたと同時に炎を後衛に吐いていた。今度は理央の結界も間に合わない。
 茜は赤い翼で羽ばたいて、飛翔する。炎が彼の真下を通り過ぎ、肌に熱が届く。
(なるほど、飛んでれば多少は回避しやすそうです)
 ただ、あまり高く飛ぶと不安定で逆効果になりそうだ。敵の攻撃が届かない位置まで飛んでしまえば、自分の攻撃も届かなくなってしまう。
 アリスが4つの魔光を放ち、四重の効果で敵を縛る。
 理央は再び結界を展開している。
 雪花が黒いオーラを叩き込み、レンとクリスがナイフを投じる。
 茜は魔法の矢を打ち込む。それは、内部から綿がはみ出ている傷跡へ命中した。
「ブルズアイ! って感じですか。ボスが控えてるんですから、さっさと倒れてもらいましょう」
 痛打を受けたぬいぐるみが、動きを止めた。
 残るぬいぐるみは1個だけだ。もう、悠長にゲームをプレイする必要はない。
 メイルは一度もゲームをプレイしなかった。
 単純に回復役として消耗を嫌ったからだろうが、もしかすると年長者である彼女は若い少年少女たちに譲ったのかもしれない。
「最後の敵は筐体ごと破壊だったな」
「どかんと一発、集中攻撃。……中身も壊れてくれたら、楽勝なんだけど」
 魔法の矢や漆黒のオーラがいっせいに筐体に向けられる。
 あざ笑うピエロが吹き飛び、プラスチックの窓が割れ、アームがひしゃげる。
 クレーンゲームは壊れた。
「NUIIII!」
 見上げるほど大きなぬいぐるみエリューションが、吠える。
 残念ながら壊れたのは筐体だけで、傷ついてはいないようだ。
 咆哮はレンが放ったオーラを弾くと、衝撃波となってリベリスタを襲う。
「きゃっ」
 体がばらばらになりそうな衝撃にメイルの口から短い悲鳴が漏れた。
 クリスが持続時間の切れた影を再び操作し直す。雪花はエリューションに噛みつき、気糸を放つのに足りなくなっていた力を回復する。
「がんばってください。天使様がついて、いますよ」
 福音が響き渡り、衝撃波で傷ついた仲間たちを癒していった。
 衝撃波で受けた傷がふさがっていき、凛は息を吐く。
「大きい上に動きも早い。無茶なバランス。……りんはクソゲーも嫌いじゃないけど」
 ウィザーズロッドを手に、凛は魔法の矢を放つ。
 ぬいぐるみの巨体は伊達ではなかった。集中攻撃を受けてもなかなか倒れず、逆に全体攻撃を受けたリベリスタたちの中に倒れかねない者がいるほどだ。
 ただ、理央が展開した結界のおかげか彼らは攻撃をしのいでいた。
 しのぎさえすれば、メイルの福音が仲間全員を癒す。……その福音も無限ではないが。
 クリスや雪花は気糸で敵を縛ろうと試みる。
 最後の敵だけあって縛られっぱなしにはなってくれない。気糸を引きちぎり、衝撃波を放ってくる。
「巻き込み、気をつけて」
 凛は魔炎を敵の頭上で爆発させた。味方も範囲に入ってしまうが、仲間たちは素早い動きで、あるいは盾で防いだ。
 アリスも炎を放つ。茜は当たりやすい魔法の矢で確実に敵を削っていた。
 幾度目かの攻撃がぬいぐるみに着火する。
 無限に思えるような敵の体力にも限界はあった。炎が燃え広がると、敵は苦痛の悲鳴を上げる。
 悲鳴が衝撃波に変わる前に、エリューションは燃え尽きていた。

●可愛いぬいぐるみ
「ふぅ……なんとか片付いたな、連続で戦闘はさすがに疲れる」
 敵が倒れたのを確認して、レンは大きく息を吐いた。
「それじゃあ、アークに任務が成功したと連絡しておきましょう」
 茜はアークに連絡を取った。一通りの報告の後、彼は言った。
「ところで、帰ったら無事なぬいぐるみはもらってもいいですか」
 通信装置の向こうで、アークの誰だかが絶句した。
「欲しいです。ぬいぐるみ」
 しばし話した後で、茜は仲間たちを振り返る。
「一通り調査して、問題なければ持っていっていいそうです」
 エリューション化していない物も、そのまま放置する気はアークにもなかった。ただ、あくまで問題がなければ、だと念を押された。
「もらってっていいんだ。じゃあ、せっかくだからボクももらおうかな」
 理央が、避難させておいたぬいぐるみの山に目を向ける。
「えっと……この縞々模様のねこさんが取れましたので、お持ち帰りしたいです♪」
 アリスが喜色を浮かべ、ねこのぬいぐるみを抱きかかえる。
「OKが出たんなら、俺も記念に1つ持って帰るかな」
 レンも適当なぬいぐるみを手に取った。
「欲しくなるのもわかるわ。かわいいですものね」
 メイルは彼らの姿を微笑ましげに見ている。
 雪花は、戦いで壊れたぬいぐるみに目を向けていた。
「もしもらえるなら、私は傷ついた子たちを頂戴することにしたいわね」
 倒された怪獣たちは、動かないただのぬいぐるみに戻っているようだった。
「それは……問題ないのだろうか」
「他のぬいぐるみも大丈夫かまだ不明。とりあえず、言うだけ言ってみればいいと思う」
 クリスや凛の言葉を聞きながら、雪花はかがみこんでぬいぐるみを見つめる。
(愛情を込めて直してあげれば、私の家に沢山いるお友達とも仲良くしてくれるかしら?)
「……うん、きっと大丈夫よね」
 祈りを込めて、彼女は呟いた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 青葉桂都(あおば・けいと)です。
 今回はご参加どうもありがとうございました。

 ぬいぐるみを欲しがる方がいるというのは、あまり考えておりませんでした。
 こういった予想外のプレイングが来るのは楽しいですね。
 アイテムとしてぬいぐるみを発行したりできないのが残念です。

 それでは、また別の依頼で参加者の皆さんにお会いできることを期待しております。