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月下の咆哮

●満月の獣
「どうだい、ここからの景色は?」
「素敵! こんな場所があったのね」
 郊外の静かな丘の上。夜空には星が煌き、大きな満月が地上を照らしていた。
「喜んで貰えて嬉しいよ、キミみたいな素敵な子と来たかったんだ」
「ふふ、そんなこと言って、他の子も口説いてるんじゃないの?」
「まさか! キミだけさ」
 若い男女が仲睦まじく愛を語り合う。
「食べてしまいたいくらいキミのことを愛してるよ」
「それじゃあ、証明してみて」
 女性は男性を見上げたまま目を閉じた……。熱い吐息、触れる唇、高鳴る鼓動。
 ドクンドクンと音が聞こえる。自分の鼓動のはずなのに、どこか遠くからそれは聞こえた。
「はぁ……ほんとうに愛しいよ。キミのハートは」
 唇が離れ、目を開いた。そこには愛しそうに手拳大の肉の塊を喜悦の表情で眺める男性。
 その肉の塊が脈打つ度にドクンドクンと音が響く。先ほどの音はこれだったのだ。
「それ、な、に……?」
「これかい? はははっ言っただろうキミのハートさ」
 肉の塊から伸びる赤い糸を目で辿る、その先は大きく穴が開き、中が空洞になった自分の胸だった。
「ない、わたしの、しん――」
「愛を証明してあげるよ」
 いつの間にだろうか、男の体は大きく硬い毛に覆われ、目は鋭く光り、ナイフのような爪、そして裂けたように大きな口。
 美味しそうに、本当に美味しそうに、男だったモノは心臓に喰らいついた。それが女性が見た最期の光景だった……。
 満月に咆哮する。その姿は異形へと変貌していた。それは狼。人のように立っているがその身はまさに獣のものだった。
 周囲から幾つも獣の雄叫びがあがる。姿を現したのは餓えた狼の群れ。
「イイゾ、好きに喰らうがイイ」
 獣人の許可が下りた瞬間、狼達は死んだ女性へと群がる。肉を引きちぎり咀嚼する音だけが、月の照らす静かな丘に響いていた。


「人狼といったところね」
 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が資料を並べる。
「満月の夜に女性が行方知れずになる事件が多発しているようなの」
 犯人に挙がったのがこの男、と資料を指差す。
「名前は青木優人。ホストの仕事をしていて、満月の夜になると人狼となり、配下の狼の群れと女性を襲っているみたい。今からなら現場で待ち伏せできるわ、女性を救助して人狼を退治してほしいの」
 イヴは資料から顔を上げた。
「満月に人狼なんて物語の定番だけど、物語の中だけにしておかなくてわね」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:天木一  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年10月17日(水)22:12
オープニングに目を通していただき、ありがとうございます。
天木一と申します。

■成功条件
人狼の討伐
女性が死亡した場合失敗となります

■戦闘能力
『人狼』
 ノーフェイス、フェーズ2。
 知能は人間並み。スピードが速く、牙や爪での攻撃には流血の効果がある。

『狼』×10
 野良犬が人狼の影響を受けてエリューション化した存在。
 知能は獣並み。群れで連携して動く。牙や爪での攻撃には出血の効果がある。

■行動
数が優位なうちは好戦的に戦いますが、圧倒的に不利になってくれば逃亡する可能性もあります。

 以上が概要となります。
 皆様のご参加をお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
プロアデプト
氷雨・那雪(BNE000463)
デュランダル
★MVP
新城・拓真(BNE000644)
クロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
デュランダル
遠野 御龍(BNE000865)
クロスイージス
内薙・智夫(BNE001581)
ダークナイト
スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)
ホーリーメイガス
綿谷 光介(BNE003658)
プロアデプト
ヤマ・ヤガ(BNE003943)

●満月の夜に
 空には美しい満月。薄い雲のヴェールがその妖艶さを際立たせる。
 人通りの少なくなった丘の道をライトが照らす。丘の麓で車を降り、腕を組んだ二人の仲睦まじいカップルが丘を登っていた。
「あ、あの……」
 その背後から『Manque』スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)が弱気になりそうな心に喝を入れて声を掛ける。
「ハンカチを落としませんでしたか?」
 その声に振り返ったのは、二十台半ばの海外ブランド物のスーツに身を包んだ、優男風の男性と、遊び慣れて無さそうな、仕立ての良いスーツ姿が様になる、二十代後半のキャリアウーマン風の女性だった。
「――いや、オレは落としてないよ」
「私は……ちょっと待って頂戴ね」
 二人は誰も居ないと思っていた人気の無い場所での出会いに、一瞬、警戒の色を浮べた。だが、声を掛けたのが十代半ばに見える可愛らしい女性だと分かり、問いに応じてすぐに所持品を調べは始めた。
 女性が手持ちの鞄を調べている間に、スペードは気付かれぬように男性に話しかける。
「そ、その……二人だけで、お話しできませんか?」
 ちらっと女性の方を確認すると、弱々しく、そして初々しいスペードの呟き。一瞬、男の目に獲物を狙う獣の光が宿った。男は微笑を浮かべ、軽くスペードにだけ分かるように頷く。
「私じゃないわね、他の人のだと思うわよ」
 鞄を調べていた女性が顔を上げてそう答えた。
「そうですか……」
「せっかくここまで追いかけて来てくれたのに悪いね……そうだ! せめて下までオレが送るよ。美紀恵さん、少しの間だけここで待っていてくれないかな」
「もう、そんなこと言って、その子をナンパする気じゃないでしょうね?」
 美紀恵の不満そうな顔、男は宥める様に肩を抱き、優しく諭す。
「そんな訳ないじゃないか、オレには美紀恵さんだけさ! でもこんな子供を一人で行かせる訳にもいかないだろ?」
「……しょうがないわね、でもすぐに戻ってきてよ優人くん」
「了解! それじゃあ下まで送っていくよ。いいよね?」
「はい、お願いします」
 スペードは微かに笑みを浮かべ、頷いた。

●月夜の狩人
『はい、お願いします』
 アクセス・ファンタズムを通してスペードの声が流れる。先ほどからの一連の会話が、丘に隠れて待機するリベリスタ達に伝わっていた。
「上手く誘導できたみたいね」
 眼鏡を掛け、ピアスから通信を聞いていた『微睡みの眠り姫』氷雨・那雪(BNE000463)が眠た気だった表情を引き締め、仲間を見渡した。
「皆、上手くいったみたいだよ。もうすぐこっちに来るよ」
 同じく通信を聞いていた『やわらかクロスイージス』内薙・智夫(BNE001581)は、敵に気付かれぬように小さな声で仲間に知らせる。
「フェイトを得られずに、月の力に狂わされたか……だが、その所業を許してはおけない」
「ああ、その通りだ。女性の心臓を喰らうなどと、悪趣味以前に、決して許せることではない」
 『舞姫が可愛すぎて生きるのが辛い』新城・拓真(BNE000644)と『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)はお互いに目配せをして襲撃の配置に着く。
「今日は良い月だ――狼の血が滾る」
 月を仰ぎ見る『外道龍』遠野 御龍(BNE000865)はタバコの火を揉み消すと、これから始まる死闘へと高ぶる身体を押さえるように、闇夜に身を潜める。
「狼の群れ、す、好きではないですよね、個人的に」
「僕も好きじゃないです、RPGだとよく見かけますけど、本当に変身するなんて……」
 『羊系男子』綿谷 光介(BNE003658)は天敵の狼に及び腰になりながらも、身を伏せて狼の動きを調べる為に、周囲の音を探っていた。その意見に身を震わせた智夫が同意する。
「狼は周囲に散って潜んでいるみたいです。恐らく戦闘になるまでは動かないと思います」
 ヒツジの耳がぴくりと動く、音から狼のおおよその位置を察した光介は皆に警告する。
「ふむ、ただ殺すより、喰らうなら上等とも聞こゆるが……」
 闇に溶け込んだ『必要悪』ヤマ・ヤガ(BNE003943)は思案する。今まで多くを殺めたヤマには良く分かっていた、これは愉しんでやっている所業だと。
「ま、いずれにせよヤマの仕事よな。きっちり殺ろか」
 そう呟く声を最後に、気配の欠片もなく、闇と化す。
「食べたい位愛してるなんて、なんて、嘘つきなのかしら?」
 那雪もまた身を隠し、戦いの準備をしていた。その偽りの愛を打ち破り、これ以上の被害を出さない為に。
「力づくでもとめないと、ね」

●狼の咆哮
「そろそろいいかな? それで、何の用なんだい?」
 女性から見えない位置まで少し歩くと、男性――青木優人は振り返り甘く微笑んだ。
 スペードは女性の居る方を振り向き、ある程度距離が離れたのを確認すると、合図の言葉を告げる。
「この辺りに、狼が出るという噂はご存じ?」
「な!?」
 青木の驚愕の顔。それと同時に周囲から殺到する人の気配。スペードが大きく女性の居る方向へと一歩下がると同時、一陣の風が奔る。
「リベリスタ、新城拓真。──身に覚えがないとは言わせない。お前は、今日此処で俺達に倒される」
 拓真は闇夜を苦ともせずに、最短の道を青木目掛けて進むと、銀光一閃。刀を振り抜く。赤い色が横一線に青木の胸に刻まれた。
「ぐぅっ、リベリスタだと! 罠か!」
 青木は血の流れる胸の傷を押さえながら飛び退くと、みるみるその姿を獣のそれへと変えていく。咆哮。周囲から獣の気が満ちる。闇夜に光る、獲物を狙う眼光。狼の群れが集まっていた。
「ヤレッ!」
 人狼の命で拓真に殺到する狼の群れ、そこに光が放たれる。それは聖なる力を秘めた光、邪悪なるものを焼き尽くす。
「ナイチンゲールフラッシュだよ、今のうちに!」
 智夫の放った光に怯んだ数体の狼へ気糸が絡みつく。
「さて……用があるのは、お前達じゃない。しばらくおとなしくしてて貰おうか」
 那雪の全身から伸びる細い無数の糸。それは生き物のように動き、狼達の足を狙い巻きつくと刺し貫いた。
 智夫の攻撃を避けた群れはスペードへと向かう。その前に駆け込み、立ち塞がる影。
「俺が居る限り、お前さん達は決して通さん!」
 義弘が幾つもの傷の残る、使い込まれた小型の盾を構え、一歩も引かぬと仁王立ちする。
 牙を剥き襲い掛かる狼を盾で殴り飛ばし、怯んだところをメイスを大上段から振り下ろした。ぐちゃりと骨を砕き、肉を潰す感触が腕に伝わる。
 振り下ろした隙を突くように、狼の群れが一斉に義弘を襲う。
「させない! 黒より深き闇よ……」
 スペードの持つ切っ先の欠けた青い剣が、闇夜の黒よりも深い漆黒に覆われる。一閃、剣から闇が広がり狼の群れを覆う。闇は圧倒的な破壊の力で狼を弾き飛ばす。
「くっ……」
 剣を振るったスペードの腕から血が流れ落ちる。強力な力の負担が自身の身体を傷つけたのだ。
 追撃の来ぬうちに狼の群れは二手に別れ散開しようとする。
「生憎だが、月夜は狼だけのものではのうての」
 闇からの突然の声。驚く狼達に殺意を持った気糸が伸びる。正確に目を狙い、穿つ。
「これも仕事でな、殺らせてもらおうかの」
 影のようにそこに現われたのはヤマ。手負いとなった狼達は血を流しながらも訓練されたように一斉に駆け、散開する。
 不意は打てた、だが満月のこの地は狼達のテリトリーだ。油断無くリベリスタ達は武器を構えた。

●月下のダンス
「満月の夜に、オレの前にキタことを後悔させてヤル!」
 人狼と化した青木は筋肉を引き締め胸の傷を閉じる。大きく開いた口からは鋭い牙が覗く。
「人狼の仁義おせぇてやんよ!」
 闘気を全身に漲らせた御龍が、まるで月のような輝きを灯す斬馬刀を振り下ろす。暴風のようなその一撃は人狼の頭部を叩き潰す。……重い感触。刃は地を抉った。
「クフフッ……どうやらドウルイのようだが、遅い、オソいゾ!」
 切り裂いたのは人狼の残像。人狼の爪が赤く染まっている。血の跡は御龍へと続いていた。脇腹が抉られ血が止まらず流れ続けている。
「はっ……やるねぇ! いいぜ、どっちが格上か死闘と行こうじゃないか!」
 痛みなど一切感じていないように、これから始まる死闘を期待して嬉しそうに御龍は哂う。
「青木優人、随分と速度に自信があるらしいな。……俺の攻撃が躱せるか?」
 御龍と人狼の交差を見た拓真が、人狼の前に立ち塞がる。刀の切っ先が地面すれすれに成る程の下段に構える。
「クフッ、安いチョウハツだ。だが買ってヤロウ!」
 口を歪ませる笑いを残し、凄まじいスピードで動く。残像を残し、視界から人狼の姿が消える。拓真は一歩踏み込み、体を入れ替えると刀を左に撥ね上げた。肉を斬り裂く手応え。
「ガハッ……バカな、当たったダト?」
「動きは速いが、戦いは速いだけでは勝てん」
 敵が動く瞬間、僅かに刃を右の下段に置くことによって、相手の動く方向を制限したのだ。獣の動きだけでは出来ぬ戦巧者の業だった。
「ナラ、もっとスピードを上げてヤル! それでもツイテこれるカナ!」
「おいおい、次はこっちと踊ってくれよ!」
 極限まで集中力を高めた御龍が、振り向き攻撃を避けようと、跳び退く人狼に必殺の一撃を叩き込む。その一撃は斬るというよりも、叩き潰すといった言葉が良く似合う。鋼のように硬い毛に覆われた身体を関係ないとばかりに、まるでボールのように吹き飛ばし、木に叩き付けた。
「楽しいねぇ! 月夜のダンスと洒落こもうじゃないか!」
「ゲフッゲフッ。グオオオオオオオォォォォ」
 血を吐き、全身を貫いた衝撃によろよろと身を起こすと、人狼は怒りの篭った雄叫びを上げる。配下の狼達がその周りに集まる。だがその数は残り5体となっていた。
「ナニ?!」
 人狼は周りを見渡す。狼の死体が落ちている、穿たれ、潰され、切り裂かれていた。
 狼を追いかけるようにやってきたリベリスタ達も傷を負っていたが、光介の治療により重傷のものは居なかった。
 人狼に弱気がのぞく、ちらりと逃亡経路を視線に入れる。
「……今、生きようとしたな?」
 振り向くと、そこには斬馬刀を振りかぶりニタリと哂う御龍の姿。
「ガアアアアア!!」
 人狼は形振り構わず必死にその一撃を避けようとする、だがその暴威は右目と右肩を吹き飛ばした。右腕がぶらんと糸で釣られたように垂れ下がり、血が吹き出る。それでも跳躍しようと身を屈め力を込め、跳ぶ。だがその跳躍は全く力の無いものだった。足を見ると気糸が足に穴を開けていた。
「そんなに慌ててどこへいくんだい、嘘つきなお兄さん?」
 那雪が逃亡を察し、気糸で足を封じていたのだ。
「ほら、どれだけ早いのか見せてよ」
「クソッ……ナンダこれハ?」
 那雪の更なる攻撃から逃れようと人狼が着地した場所、そこには気糸が蜘蛛の巣のように張り巡らされ、その身を絡め捕られた。
「ヌシは世界に愛されておらぬのよ。いやあ、フェイトちうのは不可思議でなあ」
 故にワケの分からぬ理不尽な理由で死ぬといい。ヌシが殺した女たちと同じくな――絡め捕られた人狼にヤマが囁く。
「オオカミども!」
 狼達が人狼の逃げ道を作ろうと飛び掛る。だがそれを受け止める一人の男。
「何度も言わせるな、ここは通さん!」
 義弘がまさに鉄壁の如く道を塞いだ。その身は既に傷だらけ、まだ血が流れ続けているものもある。だがその目には全く気力の衰えはなかった。否、護るべき存在がいるのならば義弘が負ける理由など一つも無い。盾で、メイスで、狼を叩きのめす。
「クソっ役立たずドモガ!」
 怒気を込めて吐き捨てる。地面を蹴りつけ何とか縛めから逃れると、きりきりと歯が鳴らして、周りを囲むリベリスタを見渡す。
「クソっクソっ! ……こうなったラ一体デモ多く貴様ラを殺してヤル、グルルルゥゥゥオオ!!」
 もはやそれは人狼ではなかった。ただの狼、狂った獣の姿だった。
「わあっ」
 目にも留まらぬスピードで智夫へ襲い掛かる。襲われた智夫の肩は引き千切られ、肉が抉られていた。旨そうにその肉と血を喰らう獣。
「い、痛い……か、噛まれたけど、ワーウルフになっちゃったりしないよね……」
 光を放ち近づかれないように牽制しながら、泣きそうになりながら肩を抑える智夫。
「大丈夫、すぐに治療します。術式、迷える羊の博愛!」
 光介の周囲を光が満たす。傷を負ったリベリスタ達に癒しの息吹が吹き抜ける。すると痛みが引き、傷が塞がり始める。
「あ、ありがとう」
「ボクにできるのはこれくらいですから」
 智夫の感謝の言葉に光介は笑顔を返すと、すぐに引き締め戦闘に目を戻す。
 もう一度智夫を襲おうとした獣をスペードの闇を纏った剣が押し返す。
「もう人狼ですらないんですね。哀れな……」
 闇の波動が周囲を覆う、直撃を受けた獣は闇から逃げるように飛び退く。
「我が、渾身の一刀……その身に受けるが良い!」
 そのタイミングを計り、待ち構えていた拓真が刃を振り下ろす。鋭い剣筋は鋼の毛皮など物ともせずに両断した。左腕と左脚が転がり落ち、地面を血で染めた。
 そこに追い討ちとばかりに、ヤマの気糸が傷口に差し込まれる。獣の絶叫。苦痛にのたうち回る。
 最後の命を燃やすように、全速力で御龍に襲い掛かる。迎撃に振り抜かれた斬馬刀を潜り抜け、首元にその牙を突き立てようとした。だが御龍は迫る口の中に腕を突っ込む事で致命傷を逃れる。
 御龍は腕を噛み千切られそうだというのに、全く気にせずにただ敵を倒す為に動く。片手でこの斬馬刀は振れない。それならばと、飲み込まれそうな腕を自ら奥へ突っ込み、地面に獣の頭を叩きつけ組み敷く。そして空いた手で斬馬刀を首にあてがい、体重を掛けて押し込んだ。
「その首を、よこしやがれっ!」
 獣の断末魔。首がごろりと地面を転がった。
「オオオオオォォォォォ」
 それはまるで獣同士の戦いだった。勝利した御龍は遠吠えをあげる。

●月は静かに
 残った狼達も逃げようとしたところを拓真の銃撃で全て死に絶えた。
「ガフッガフッ」
 首だけになってもまだ獣は息があった。もう最期だからだろうか、その瞳には理性が戻っているようにも見える。
 首だけとなった青木にスペードは最期の言葉を尋ねる。
「貴方は人狼である以前に、ホスト『青木優人』なのでしょう? なら、最後まで貴方を愛した女性に、夢を残さないと」
「ゴフッ……オレは……そう青木、優人。美紀恵さんに、す、素敵な、夢をありがとう。と……」
「分かりました、確かに伝えます」
 スペードの真摯な言葉に、青木は目を閉じると、満足したように動かなくなった。
 月が照らす。その死に顔は獣ではなく、ただの人のようだった。
 女性はこの男のことを覚えていくのだろうか、それとも忘れてしまうだろうか。
 リベリスタ達はあらゆる生き物を魅了する月を見上げる。
 人の記憶が薄れても、きっとこの月は全てを覚えているのだろう。
 どこかで、別れを告げるように悲しい獣の遠吠えが聞こえた気がした……。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
作戦成功です、皆様お疲れ様でした。
綺麗な月を眺めていると何故か気分が落ち着きます。
月の不思議な魅力の所為でしょうか。

今回のMVP発生条件は配下の狼の殲滅でした。
人狼の逃亡に気をとられて、プレイングに書かれていない場合、何体か逃げ延びる予定でした。
ですので掃討を指摘した拓真様に授与したいと思います。おめでとうございます!

参加して頂き、ありがとうございました。
皆様がこの度のストーリーを少しでも気に入って頂けたなら幸いです。