●言霊 -Word of Wordz- 「アバーッ!」「アバーッ!」 深夜のテラ・テンプルに悲鳴が上がった。 古い木が香る蒼墨色の中を、キモノ姿の男が悠然と佇んでいる。 キモノ姿の男の足元には転がる者達。割腹した腹より溢れるモノをびちびちとさせて悶絶している。 「これが……上忍」 剣林の下位組織に所属する『剣風中忍』サイゾウ・ヤカグラは、戦慄した。 サイゾウは、"ある人物を引きこもう"という上の判断に、不服でもって対象を襲撃した。 その結果は、テラ・テンプルに漂い出した腸の臭いが雄弁と物語っている。 「カイシャク! イヤーッ!!」 鳥類めいた声と共に、刃の如き踵が振り下ろされる。悶絶していた者達の首が一度バウンドする。 「汚いな……さすがニンジャ、実際汚い」 介錯を終えたキモノ姿の男の声は、殺気を孕んでいた。 サイゾウは「お前も忍者だろう」という言葉を飲み込んで平服した。連れてきた下忍達も平伏する。 こんな筈ではなかった。予想を覆す何かがあるのだ。サイゾウは自身の指が震えている事に気がついた。 「お美事にござる。我らは剣林の下位組織の忍びの者! 無礼にお詫び申し上げる」 絞りだす様に侘びを述べたサイゾウの声を無視して、男は壁際にスリアシで歩いた。 「ザゼン・メディテーション中に、ふいダマ(不意打ち/だまし討ち)めいた真似をするとは実際シツレイなんだが?」 男はショウジを開け放った。 月明かりがテラ・テンプルに射し込み、射し込んだ光がキモノ姿の男を照らす。美丈夫で着物を纏った姿と共に、セプクして果てた下忍の中身が赤々と反射する。サイゾウは恐怖で床を濡らした。 「お、お、お詫び申しあげまする――『言霊師』様」 サイゾウは、言霊師に何度もワビを述べた。 ここで殺される訳にはいかぬ。何としても連れ帰らねばならぬ。 「本来ならばセプクだが――ドゲザとコトダマに免じよう」 言霊師は平伏するサイゾウに悠然と近寄って、錫杖めいたものをしゃらんと突きつけた。 「吾輩はギリニンジョで実際イソガシイ。何用か?」 「我らに力を貸していただきたい。無論タダとは申しませぬ。今の任務を果たされた後でも構いませぬ!」 サイゾウは重箱を差し出した。 漆塗りの重箱は、貝殻で装飾され、金粉が施されている。月明かりを受けてキラキラと光っている。 言霊師は膝をつき、何も言わず重箱を開けた。中身を見て笑みを浮かべる。 「汝の名は?」 「サイゾウと申しまする」 「吾輩はコトダマシです。ドーモ、サイゾウ=サン」 言霊師は左の袖下より、ムラサキ=ショウユと小皿を出した。重箱の中のものを摘む。ピンク色の宝石めいたものを、ムラサキ=ショウユに少し漬けて食す。 「『秋めいて チャドーめいた ワビにサビ』……うむ、奥ゆかしい。実際既にギリニンジョのニンムは済んでいる」 言霊師は右の袖下から、掌に収まる程度の大きさの宝玉の出し、サイゾウに見せつけた。 「吾輩は何処へ参ればよい?」 「……――バ・シティへ」 「グンマー・ダンジョン?」 「いいえ、――バ・シティにござる」 「吾輩は一日九回ハイクを読んでオーガニック・トロスシ食べないと、実際気が狂って頭がおかしくなる系なのだが?」 「構いませぬ! 言霊師様のお力添えがあれば――!」 言霊師は紺の珠を袖下に戻してアグラすると、重箱の中に詰まっていたトロスシを平らげた。 ●滑稽と冗談めいた真面目な話 -Kotodama- 「イチサンサンマル。ブリーフィングを始めます」 アークのブリーフィングルーム。 集まったリベリスタ達に『運命オペレーター』天原 和泉(nBNE000024)は資料を配った。 「剣林派フィクサードが、アーティファクトを狙って行動を起こしています。状況は悪く、到着時には既に確保されています」 アーティファクト『紺碧の珠』。賢者の石ほどではないが、魔力を蓄積しているアーティファクトであるという。 これで何を成そうとしているかまでは、万華鏡は弁じなかったらしい。 弁じなかったからこそ、そのアーティファクトを確保、最悪は破壊してでも渡さない事が任務である。この情勢下では正解という判断である。 「敵はナイトクリークが中心で、数は7人。最も注意が必要なのは『言霊師』という者です」 聞けば、この中で最も能力が高いナイトクリークであるという。クリミナルスタアの技も使用し、何とも手強そうである。 「目標のアーティファクトは『言霊師』が確保し、袖下にあるようです」 おおよその見当がついているのならば、目標達成だけは容易いだろうか。尤も精密に狙う方法さえあれば、の話である。 「アーティファクト以外にも何か事情があるようで、『紺碧の珠』の確保が失敗した場合、敵はあっさり逃亡する可能性が高いです」 深追いする必要は無いが、後々面倒な事にも発展しかねない。 ここで叩いてしまう事もありか。 「倒すかどうかのご判断はお任せします。どうか宜しくお願い致します」 和泉は深々と礼をした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Celloskii | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年10月15日(月)23:10 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●忍びに対する最大の褒め言葉 -Ambush Hero in TERA- 「イヤーッ!」 鳥類めいた声と共に、神秘の閃光弾がテラ・テンプルに転がった。奥ゆかしい韻が場に響く。 「……ほう」 トロスシを急いで口中に放り込んだ言霊師は、腰まである長い髪を振り乱して、刹那に飛び退いた。キモノで影を作ると、ここで閃光弾が炸裂する。 「アバーッ!」「グワーッ!」「アイエ!」「ヨタモノッ!?」 下忍達の悲鳴に、ざざざ、と雑踏の音が混濁する。 テラ・テンプルに白き光が満ちて消える。暗闇が戻ってくると、8つの人影が場に増えていた。 「言霊師さ――」 言霊師は、サイゾウの顔面に手をかざすと、サイゾウは言いかけて黙した。チンモクキンナリ。 「アンブッシュは実際シツレイなんだが?」 「手前、天下の盗賊ぐるぐに御座る。お宝頂戴に推参仕った!」 『Trompe-l'?il』歪 ぐるぐ(BNE000001)が、しかしシツレイという一声に辞さず、よちよち名乗り上げた。腰に手を当てて、イフウ推して参る。暗視スコープを通して見る場。鼻をくすぐる古びた木の匂い。目を焼かれた下忍達が悶絶している。ぐるぐが殴る蹴るなどの暴行を加えると、下忍は「アバーッ」と悲鳴を上げた。ヒドイ! 「この世はサイオー・ホース。何が起こってもいいように、備えるでゴザル」 『ニンジャウォーリアー』ジョニー・オートン(BNE003528)はテラ・テンプルに突入する際、言葉の通りソナエ=ウレイナシ、コロバヌツエの境地であった。 ニンジャ眼力(暗視)で、言霊師と視線を交わす。拳を構えるとサツバツがジョニーの身を緊張させた。 「ドーモ、コトダマシ=サン。ニンジャウォーリアーです。フィクサード滅すべし!」 アイサツしたくてするのではない。してしまうのがニンジャというポリシーのオジギ。転がる下忍に正拳一撃。下忍が「グワーッ」と悲鳴を上げる。スゴイオトコ! 「囲んで棒で叩いてネギトロにしちゃえば、遥かに良いのは確定的に明らか―」 『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)が、ハルバートを振り下ろした。ジョニーとぐるぐの攻撃でリバーオブサンズを彷徨っていた下忍がミンチ・ネギトロになる。コワイ! 「ドーモ、コトダマシ=サン。ハルバードマスターです」 続きひらりとオジギをした岬の胸には、ninjaもげろーという憎悪めいたもの。鼻孔に刺すは実際洗ってない犬の臭い。 「ドーモ、レコです。ブッダすごいですね」 岬に続いてオジギをした『ブラックアッシュ』鳳 黎子(BNE003921)は、下忍達の間を縫って言霊師に肉薄する。黎子が札の束をばらりと撒けば、札達が舞って踊る。 「それほどでもある」 舞った札達に混ざる道化のカード。死の運命を告げるそれが、言霊師の胸に吸い込まれようとした時、対する言霊師はピッと札の一枚を抜き取った。それは道化のカード。即座に握りつぶす。幽玄! 「剣林にも狂人がいるんだな……」 『リベリスタ見習い』高橋 禅次郎(BNE003527)は、言霊師の性質を見抜いていた。サイゾウ=サンが一度アンブッシュをしている。リベリスタ達で二回。ブッダの顔はこれ三つまで。暗闇よりも暗き暗黒を下忍達に放つ。 「アンブッシュで戦闘不能になるようならアイサツの資格無し」 言い切る禅次郎の横で、『足らずの』晦 烏(BNE002858)は、アイサツを優先させた。 「ドーモ、『コトダマシ』=サン、サイゾウ=サン、ゲニン=サン。はじめましてツゴモリです」 アイサツは神聖不可侵の行為と信ずるが故に、淀みなく、流れるように自然に、頭を下げる。 「ほう……生きたな」 言霊師は感嘆の音を漏らした。烏の有様は、ワビがある。サビがある。覆面はフジヤマである。 「言語解析を完了。言語セット:マッポー」 『エンプティ』街野・イド(BNE003880)は、言霊師の奇妙なニホンゴ=ジツを解析した。脳裏で処理を進めて言語セットを交換する。 「ドーモ、モーターイドです。モーターイドは賢く強い」 初手はともあれ、素直にアイサツする。命令の入力を、と背後に居る者へ託す。 「では行くぞ、同志イドよ! これもまたリベリスタとしての大切なインストラクション! 学べ! そして、備えろ! WASSHOI!」 イドの背後。初手で閃光弾を焚いた『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)は、ガチャリと銃を構える。 「アイサツ前のアンブッシュとて、ニンジャのイクサの華である。古事記にも書いてある」 ドーモ、とアイサツをするベルカは、攻勢戦術を放って、万全アトモスフィアを創りだした。 「成程、『戦闘不能になるようならアイサツの資格無し』『アンブッシュもイクサの華』一理ある」 言霊師は首を傾げた。くしゃと、道化のカードを袖の下。首を正して言葉を続ける。 「ただのヨタモノとは違う様だ」 第一局面は、リベリスタ達の『情ケ無用アンブッシュ過ぎて損はナイ』で始まった。礼儀正しい者が交じった上でカクゲンめいたもの。言霊師は奥ゆかしい、と呟きオジギする。 「ドーモ、リベリスタ=サン。『コトダマシ』です。――そしてしめやかに死ぬがよい」 「リベリスタ!?」 驚愕するサイゾウを無視し、錫杖を構える『コトダマシ』! ――しゃらん。 錫杖の先端で束を為す輪っか。音色が、第二局面へと運んでゆく。 ●リベリスタに死をくれてやる"こそのが"ブッダの愛 -Budda's Agape!- キリング・フィールドと化す。 立ち上がった下忍二名が、クナイを連続でラピットファイアーする。 「お休み中申し訳ないけど、仇を倒すの手伝ってよ。文句は夢の中で聞くからね!」 ぐるぐは首なしの下忍の死体を一つ掴むと、これを盾にして駆ける。 下忍に近接すると、下忍の死体を放って跳躍し、脳天に鉄拳制裁を加える。「アバッ!」と下忍の悲鳴。 「ディフェンサー・ジツで下段を固めたメイン盾は、マッハで隙が無かった」 ベルカが垂直に立てた上腕をピッと振ると、防御の戦術が味方を駆け抜けた。次にカースブリットを叩きこむべく、狙いを済ます。 「くっ、おのれリベリスタ!」 サイゾウがリベリスタ達に憎悪を向け、ナイフを握り締めて影と化した。ゆらりとして振るわれる銀閃。 「ドーモ、サイゾウ=サン。ゼンジロ・タカハシです」 禅次郎がこれに対応して立ちふさがる。サイゾウの銀閃が禅次郎に死の刻印を刻み去る。 口角より液体が溢れるも、大事ではない。身体を張ってブロックし、サイゾウと『コトダマシ』を分断させる事が思惑だった。 「狙うはアブハチトラズだぜー、アンタレス」 岬が、くるりと異形の斧を担ぐ。その胸裏はしめやかに流転する。疾きこと"風"の如く。静かなること"林"の如く。侵掠すること"火"の如く! 「後は野となれ"山"となれ! ショッギョ・ムッジョ!」 イヤーッと疾風の如く下忍を薙ぎ払う。クナイを放った下忍の一人がミンチ・ネギトロと化した。 「ニュービー(新参)めいたゲニン=サン達をカカッと滅す! イヤーッ!」 ジョニー=ニンジャウォーリアーは、残る下忍を狙った。 「アイエエエ!」 真っ直ぐにアツイ・カラテ・ストレート・パンチ。実際熱い! ジョニーが『コトダマシ』を見れば、『コトダマシ』は呪文を唱えていた。 「トロスシ・ゴゼンのギリニンジョ。ショッギョ・ムッジョの響き有り」 銃弾の如きスリケンが青墨色の周囲に溶ける。 烏が『コトダマシ』に合わせる様に唱える。 「サラソウジュで、柿食えば、九個でいいと法隆寺」 抜き撃つは散弾銃。放たれたスリケンを精確に弾いて落とし、『コトダマシ』の袖を狙う。驚愕する『コトダマシ』。 「なんたるハイカイ、カブキヤクシャ!」 「ヤクシャか。稼業、昨今のやくされ者で御座いってな」 イドのビジョンには、何やら黒パンツ姿のロボが生じた。妄想ともつかない。幻覚の彼が告げる。 『一発で叶わないのなら十発、百発叩きこむまで』 「貴方は……センセイー!」 見えぬ何かを見ながらイドは『コトダマシ』の袖を穿つ、烏に続く。 イドの一撃で『コトダマシの袖より、――こつんと硝子玉の如きものが床に落ちた。 「さあ、改めてジョーカーを引くのは誰ですかねえ――と?」 黎子は、銃撃で転がり出す珠を見る。床に対して平行の如く跳ぶ。前転して『紺碧の珠』を確保する。 「早い! もう転がった!」 「――それは! くっ、サイゾウ=サン!」 「サダヨシ! ヨリツグ!」 『コトダマシ』からサイゾウへ。サイゾウから下忍へ。 下忍の一人が両手の指を立てて印を結べば、テラ・テンプルに射しこむ月光に"赤"が混ざる。 もう一人の下忍は両手から無数の気糸を垂らして、黎子へと行く。 「不吉なる月!」「縛!」 赤い禍々しい魔力がこの場にいるリベリスタ達を襲う。『紺碧の珠』を確保した黎子を、気糸が何重にも締め付けた。 気糸の下忍は、次に驚愕した。 「馬鹿な……!」 「事情があって、呪縛は効きません」 黎子はするりと気糸の呪縛を抜けると、珠を人差し指の上で踊らせた。 第二局面、緒戦。 下忍二名がバッドムーンフォークロアなどの、下忍らぬ力を見せ、サイゾウのインスタントチャージがこれを補う。 リベリスタ達も大技を連発し、イドのインスタントチャージがこれを補う。まさしく、真っ向勝負。チキンレースの如きもの! 「これで最後」 「アイエエエ!」 黎子が下忍を切り捨てる。潰すように岬がネギトロイッチョー。 「ゲニン=サン達を裏世界で奥ゆかしく幕を閉じさせ終えた――なら!」 岬の目は『コトダマシ』へと向いた。 禅次郎はサイゾウと切り結びながら、説法を唱えていた。 「ニンジャとしてはニュービーか。まだ、マッポーの世に染まり切っていないと見える」 黒きパンクめいた巫女服。甘く見てはいなかったが、中忍を名乗るだけあり――「バストは豊満である」と禅次郎は呟いた。 「どうする? このままカイシャクされるか。逃げても碌な未来は無いし、このまま一生狂人の下で働くのも嫌だろ」 サイゾウからの返答はない。 「降伏すれば、フートンの上で死ねる未来の可能性もあるぞ」 「クク……」 突如サイゾウが笑う。訳を解しかねた禅次郎は、呪いの刻印を伴った銃剣で切り返す。サイゾウが向こう側へ跳躍する。 ベルカは着地地点を見抜く様に、そしてスマイルを崩さず、銃弾を放つ。 「こんな強敵を相手にするとは、まったくリベリスタも大変でありますな」 サイゾウの肩を貫く。 「っ……我らは剣風組。ヒトなど辞めている」 烏が問う。 「百虎親分さん公認の動きなのか?」 「知ら――」 「チンモクキンナリ!」 『コトダマシ』の大声が飛ぶと、サイゾウは黙った。 「サイゾウ=サン。珠は吾輩の失態故に、付き合う必要はあらぬ。吾輩のジツが目的であろ?」 サイゾウと分断された『コトダマシ』は、まだ無事だった側の袖より、巻物を取り出してサイゾウに放った。 躊躇の様子を見せたサイゾウは、次に転進。物質透過で離脱する。 サイゾウを逃がすまじとするリベリスタ達に、立ちふさがって響くはしゃらんという音。 月光が射しこみ、青墨色と調和するこの場は幽玄にして幽幻。 最終局面へと達す。 ●土壇場 -Golden Mappo in kawagoe cave- 『コトダマシ』の全身より、気糸が生じた。 「……セプクでゴザルか」 中忍は逃したが、ついに上忍。 ジョニーが拳を構える。事前に知り得ていた『コトダマシ』の最終奥義! 「コトダマシ=サンが恥知らずにもいくえ不明しようとしたら、スルドイ・カラテ・キックを考えていたでゴザル」 「汝らとは戦う運命であったらしい。そして――」 「――バストは豊満である」と、禅次郎が呟く。 『コトダマシ』も「うむ」と肯定する。 「死して何も遺せぬが多くのニンジャの定め。束の間の師弟。束の間でも遺すものができたならば、十二分なあるさまと言えよう」 「華を飾ってあげますよ」 ぐるぐが拳を手の平でぺちんと叩く。 貪欲に奪ってやると注目する標的は三つ。そのうち一つは入手済み。 NO挨拶NO忍者、ブッダ=ヲ=サンドマデ。 「回復無いのはチャメシ・インシデント! 囲んで叩くのだよ―前後おおおん♪」 岬のテンションが上がる。ウジョウ! ――しゃらん、とした響きの次に「イヤーッ!」と鳥類めいた声。 瞬息。 ジョニーの眼前に『コトダマシ』が迫る。フイウチ! 合わせようと拳を振るうが気糸が絡む。 「飾るなら、咲かせるんだが、ヒガンバナ」 ジョニーが、ぐるぐが、岬が気糸に絡め取られる! 自身の手刀チョップが、自身の腹をさばかんとする。見あげれば『コトダマシ』。分身して首を狙う断頭台! 「Wasshoi!!」 岬が気糸から抜ける。巨斧アンタレスを上へと振れば、ガキリッと鈍き音が響く。分身が消える。 「こんな事もあろうかと……お腹に鉄板を仕込んでおいたのさ!」 ぐるぐが自身の腹をカッサバク前に、鉄板で止まる。しかしカイシャクは止まらない! 「グワーッ! ニンジャ・クリティカル・ワザマエ!」 ジョニーは太い首が、胴体とサヨナラしかけた所を寸前で止める。ぐるぐは衝撃を何とか散らす事で、一撃必殺を免れる。 「……生きたか。ならば――」 不吉の月の赤き光が、負傷を加速させる。この一撃で、イドがリバーオブサンズへ行きかける。 行きかけて、アンテナ耳のロボが脳裏に現れる。ソウマトウか。…… 『例えカラテが無くとも、フーリンカザンの精神を忘れるなかれ』 「センセイ(2)!」 イドは、さっきから何か見えてはいけないものが見えている、と感じて立ち上がる。立ち上がって銃口を『コトダマシ』へと向ける。 「――劣勢に傾いた模様です。どうしますか、ベルカ」 冷静に指揮官へと問う。 「汚いなさすが……忍者きたない……」 ベルカは呟きながら右上腕をゆったり構える。ズバッと手を指揮を下す。 「攻撃続行! 攻撃続行あるのみ! 私はリアルだと支援タイプなので、オフェンサー・ディフェンサーのジツ状態を維持する! カースブリットを撃ち続ける! 畳み掛けろ、叩き潰せ、ここのこの場こそ有頂天!」 「了解」 獰猛なベルカの喝に応答し、発砲するイドの演算が導き出すは、クリティカル! 「アバッ!」 『コトダマシ』より、初めて苦悶らしい苦悶が顔に生ずる。 「Yeeearttt!」 禅次郎より痛覚倍増の呪詛が生じて闇に溶ければ、フェイトを闇にくべて『コトダマシ』は立ち上がる。 「末期・ハイクは?」 「いらん、まだ決着はついておら――」 「もう勝負ついてますから」 黎子が忍び寄る。影よりSlash! ニンジャ握力からの死の刻印! 「グワーッ!」 夥しい血を吐き出して、『コトダマシ』は膝をつく。 「注意は1秒、後遺症が死ぬまで」 烏は平安時代の哲人戦士の格言を唱え、油断も隙も生じさせずにヘッドショットキルを見舞う。 「ネングのペイ日和じゃない?」 ぐるぐが異様な力みを携えて『コトダマシ』に声をかける。 見逃す『コトダマシ』でもなく、視線がぐるぐへと大きく注がれる。これをジョニーは見逃さない。 バヴァアグラ! それは有頂天の意! 「ニンジャのリバイバルを三度までという名セリフを知らないでゴザルか」 立ち上がったジョニーは『コトダマシ』に背を向け、相手の首に腕を回す。頭を右肩に担ぐ様な体勢のまま、全身を投げ出す様に跳躍する。 「コンゴウストーン・ギリ!」 「グワーッ!」 プロレス技のダイアモンドカッターめいた大雪崩落! 奥ゆかしいテラ・テンプルの床に盛大な穴が空く。 「まだ終わってない!」 ぐるぐが、豪快絶頂拳の準備を整え終わらせた。 それは、しめやかに下される死刑宣告の如き――。 ●刃の下に心を据えて、忍び難きを忍ぶヶ忍者也 -Darty NINJA is Kotodama usage- 「セリエバの枝か……十文字の旦那の娘さん、病状は相当拙いのか」 烏が『コトダマシ』に問うが、返事は無い。 「返事無しか」 「ふむ」 黎子も考える。言葉は妙ではあったが、事情や任務に触れた景色がない。 そもリベリスタと語る舌など無いという意図か。そも『コトダマシ』。通称であって名前ではない。 「……ニンジャ道」 ジョニーはザンシンした。上忍に触れ、だが残心が何なのかは分からなかった。 「任務完了。モーターイド――」 「ネギトロ片付けてからだ!」 ベルカとイドは、ネギトロの事後処理を行なう。 「洗ってない犬の臭いがする」 一方、岬はネギトロを量産した。 「あの巻物なんだったのかなー?」 ぐるぐは錫杖をほくほく回収してくるくる回す。ひょっとしたらあの巻物の中に、『コトダマシ』の技が書かれていたのかもしれない。全滅が必要だったかと考える。 「豊満――」 禅次郎が呟いた所で、静まりかえったテラ・テンプルに、カチリと音が響いた。 『コトダマシ』の錫杖が光り、テラ・テンプルを巻き込んで、爆裂四散する。 : : : |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|