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<世界を飲み干す者>唯の眼、その彩りは白濁


 全ては――そう、『ソラに浮かぶ眼球』との遭遇から始まった。
 邂逅以降、ラ・ル・カーナは徐々に変貌の兆しを見せていったのだ。
 空虚な空は黄昏に染まり、世界樹の水源は干上がり、憤怒の荒野はひび割れた。
 そして、数日後。異変を決定付ける事変が起こった。
 ラ・ル・カーナのシンボルたる世界樹が暴走を始めたのである。
 跋扈する生物たちは更なる進化を遂げ、バイデンたちは理性を消失し唯の怪物へと姿を変えていた。
 それだけではない。狂った世界樹は次々と『狂った変異体』を生み出し続けていたのだ。
 こうなってしまった以上、フュリエたちにも影響が及ぶだろう。
 今はまだ理性を保ち種の形状を保持しているが、森が枯れればバイデンのようにならないとも限らない。
 そうでなくとも、この世界の生命の根源たる世界樹が回復しない限り、滅亡は避けられないだろう。
 この状況を打開すべく、アークの研究開発室は一つの可能性に思い当たっていた。
 神秘存在の持つ構成をリセットする『忘却の石』、そして世界樹にリンクする能力を持つ『シェルン』。
 これらの能力を合わせることによって、世界樹に潜り込んだ『R-typeの残滓』を消失できないか、と。
 そして、『戦略司令室長』時村沙織(nBNE000500)はこの状況に強行する判断を下した。
 それは彼の持つ『R-typeへの強い感情』を考えれば当然とも言える話であった。
 かくして、リベリスタとシェルン率いるフュリエの連合軍は進軍する。
 そう、異形化した『世界樹エクスィス』目指して。
 その道のりにはかつてないほどの危険な異形……そして、残る僅かなバイデンたちの姿が見られた。



 先遣隊としてラ・ル・カーナの地を、世界樹付近を偵察するリベリスタ一同。
 彼らが遠目に見つけたのは、巨大な――それは巨大な人型生物。
 足元に立っている、樹齢数百年は経ているであろう背高な枯れ木を遥かに凌駕する体躯。そして、隻眼。
 その姿は、ファンタジー世界におけるサイクロプスによく似ていた。
 だが、世界樹の変調による影響か、身体の至るところが巨大化――いや、奇形化しているようだった。
 隆々たる双腕は異様に発達しており、自重に耐えられず地に引き摺られている。
 唯一の瞳は白く濁っており、果たして見えているのかどうかすら分からない。
 その行動はといえば、癇癪を起こした赤子のようにただ暴れまわるだけ。
 よくよく観察してみると、奴は何かと闘っているようだった。
 それは、バイデンの一団。赤い肌から血を流し、それでも戦いを楽しんでいるようだ。
 数人のバイデンの死体が足元に転がっている。やはりあの巨人、一筋縄では対処しきれない。
 バイデン連中を上手く利用し、協力し合うことでなんとか倒せる、といったところだろうか。
 あの巨人を野放しにしておけば連合軍進軍の大きな妨げになるだろう。
 下手をするとあの怪物にシェルンを潰されてしまうかもしれない。そうなれば、目も当てられない。
 禍々しく変容した世界樹はその巨躯をもって自分たちを、そして連合軍を見下ろしている。
 シェルンが世界樹の中心にたどり着いたところで、世界樹を浄化できるかは分からない。
 だが、やれることは一刻も早くやっておくしかない。伝令を本隊に向かわせ、進路の安全を伝えよう。
 “高い戦闘力を持つ巨人を発見した。奴は我々が抑えておく故、安心して進軍されたし”――と。
 その巨人は古の物語に登場する巨人――ガルガンチュワと、便宜的に呼ぶことにした。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:オルレアン  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年10月14日(日)23:42
 皆さんこんにちは。オルレアンと申します。今後ともよろしくお願いします。
 暴走する世界樹が生み出した、異形の巨人を倒すのが今依頼の目的です。

●成功条件
 変異巨獣『ガルガンチュワ』の撃破。

●敵詳細
・変異巨獣『ガルガンチュワ』
 約15メートルほどの巨体を誇る巨獣です。言葉は解しませんし、目も殆ど見えません。
 その分感覚が発達しており、周囲数メートル範囲に入った生物の気配を読み取ることが出来ます。
 攻撃方法は、『ただ暴れる』だけ。単純ですが、その破壊力は想像を絶するほどです。
 速度は非常に鈍重です。攻撃が外れることはまずないでしょう。
 しかし、異様な耐久力を誇り、簡単に倒れることはありません。
 接近戦を挑む際は、覚悟を決めた方がいいでしょう。

●援軍情報
・バイデンの一団
 五人のバイデンがガルガンチュワと交戦中です。
 彼らはコントロールできませんが、そのどれもが接近戦を仕掛けています。
 また、戦うことに躍起になっていて、逃げ出すということはまずありません。
 行動を予測して、上手く扱ってください。

●戦場
・世界樹付近
 世界樹の変調により荒れ果てています。
 風化しそうな古木がぽつぽつと散見できる程度で、障害物はありません。
 ほぼ平地と考えていただいていいでしょう。

●重要な備考
『<世界を飲み干す者>』はその全てのシナリオの状況により決戦シナリオの成否に影響を与えます。
 決戦シナリオとは<世界を飲み干す者>のタグを持つイベントシナリオを指します。
 予め御了承の上、御参加下さるようにお願いします。


 以上が情報のまとめです。
 それでは、皆さんの素敵なプレイングをお待ちしています。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)
ソードミラージュ
仁科 孝平(BNE000933)
ナイトクリーク
三輪 大和(BNE002273)
プロアデプト
プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)
ダークナイト
蓬莱 惟(BNE003468)
ダークナイト
熾喜多 葬識(BNE003492)
ダークナイト
カルラ・シュトロゼック(BNE003655)
レイザータクト
日暮 小路(BNE003778)


 伝令係の後姿が見えなくなったことを確認し、異形化した巨獣を見据えるリベリスタ一同。
 その足元には、くすんだ色の荒地が広がっている。その頭上には、淀んだ曇り空が広がっている。
 見れば見るほど以前のラ・ル・カーナとは似つかぬ光景に、一同はそれぞれの思いを抱いていた。
「この世界は殊更に変化しましたね……それをリセットする為に、僕らは世界樹に向わなければならない」
 『宵闇に紛れる狩人』仁科 孝平(BNE000933)は眉をひそめながら、そう言った。
 彼は元来、争いを好まない。そんな孝平を突き動かすのは、やはり平和を願う心によるものだ。
「ええ、その通り……沙織様とシェルン様の作戦が、きっとこの世界に平穏をもたらしてくれるはずです」
 『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)が、言葉を続ける。
 その為にも少しでも戦況を有利にできれば……と、シエルは意気込み、細い指を握り締めた。
「改めて考えてもみれば、これの双肩にラ・ル・カーナの存亡がかかってるんだな……責任重大だ」
 彼女……いや、彼(?)こと『ナイトオブファンタズマ』蓬莱 惟(BNE003468)は呟く。
 “これ”とは彼……もとい彼女(?)のことだ。この一人称が惟を更にミステリアスにしていた。
「少しもビビッてないって言やあ、嘘になるけど……でも、ちょっとだけだ」
 『孤独嬢』プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)は若干不安げに言った。
 仲間を信じて――自分を信じて、いつもと同じようにやりゃいい。そう考え、彼女は自らを鼓舞する。
「今は少しでも時間が、戦力が惜しい時です。……例えそれが、バイデンだったとしても」
 『蛇巫の血統』三輪 大和(BNE002273)は、利発そうな表情で、苦々しく呟く。
 ラ・ル・カーナの地を我が物顔で暴れる巨獣の足元には、バイデンが群がっていた。
「全く、でかくて面倒くさそーなヤツですね。……あーもう、こんなことなら家で寝てればよかった!」
 変異した巨獣を睨む、『働きたくない』日暮 小路(BNE003778)は気だるそうに吼える。
 場の緊張感をほぐそうとしているのか、はたまた心からの叫びなのか。……前者であると信じたい。
「あまりこっちの世界には関わってこなかったんだが……世界樹を救う為に大勢の仲間が向ってるんだな」
 『逆襲者』カルラ・シュトロゼック(BNE003655)は他の戦場に赴く仲間の姿を遠くに見つけ、呟いた。
 ここで手を貸して体張らなくて、なんの仲間かってな――そう考えると、カルラはふと笑みを浮かべた。
「……んじゃま、アレさっさと倒しちゃおうか」
 『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)は待ちわびた様子で一同に向けて言い放った。
 彼もこの世界にはあまり関わってこなかったが、気まぐれから世界樹を救う気になったのだ。
 葬識は早速自身の得物――ナイフと剣とを重ね合わせた奇妙なハサミ――を指でなぞり、闇を纏わせる。
「俺様ちゃんの準備はこれでオシマイ。んじゃ、先行ってるよ~」
 トコトコと軽快な足取りで歩き出す葬識。他メンバーは一瞬呆気に取られたが、彼に続き相談を始めた。
「ベルジュラック、アンタは俺の後ろに陣取ってくれ。その支援能力、役に立つ気がするんでね」
「OK。アンタの自慢の鎧、少しはアテにしてるぜ、カルラ」
 オッフェンバッハはカルラの漆黒の鎧をコツンと叩き、信頼している様子を見せた。
「あたしはフィーリングで動き回るつもりなんで、陣形がどーとかはどーでもいいです」
 ふわー、とあくびをし、眠そうな目を擦る小路。その様子を見たシエルは心配そうに声をかける。
「あの、せめて前に出るか後ろに引くかくらいは決めておいた方がよろしいのでは……?」
「じゃ、楽そうな後ろで。本当はバイデンの連中が上手いこと仕留めてくれると万々歳なんですけどねー」
 小路のテキトーな様子に思わず戸惑う真面目なシエル。少し不安に思いつつ、後衛の配置に付く。
「……となると、これや大和たちはお姫様方を守る騎士ってわけか。これまた責任重大だな」
「あの巨獣を倒すには後衛の支援が必要不可欠。蓬莱さん、絶対に守り抜いて見せましょうね」
 前衛を務める惟と大和は互いの役割を再認識し、表情を引き締める。
 遠方から巨獣の動向をうかがっていた孝平は、各人が準備を終えたと見るや鬨の声を上げた。
「では、参りましょうか皆さん。討ち取るべきは変異巨獣――ガルガンチュワ!」
 団結した一つの思いを胸に、リベリスタ一同は進軍を始めた。



 一人のバイデンがガルガンチュワの拳の下敷きとなり、呻き声を上げる。
 苦痛に顔を歪め、地に伏すバイデン。そんな時、一陣の風が瀕死の彼を包んだ。
「この敵、私達にとっても放置出来ないのです……参戦させて頂きます」
 そうバイデンたちに語りかけるのはシエル。彼女の放つ優しい微風がバイデンの傷を癒す。
 だが恩知らずなバイデンは獲物を取られると感じてか、シエルをキッと睨みつけた。
「貴方達を邪魔する心算は毛頭ございません……されど、アレは私達にとっても獲物」
 なれば、アレを斃すは競争でございますね――そう付け加え、シエルは対抗心を煽ってみせた。
「……で、競争は一回きりじゃつまんないでしょ? これ終わったらアレ、いっちゃわない?」
 シエルの言葉に便乗し、葬識もまたバイデンを挑発する。その視線と指先は世界樹の方角を向いていた。
 バイデンたちは再びガルガンチュワの方へと向き直り、戦闘態勢を整える。
「それじゃ、競争スタートだねぇ~」
 葬識が言い終わるが早いか、大和はガルガンチュワへと向って蛇を纏う黒い札を投げつけた。
 札は容赦なくガルガンチュワの皮を裂き肉を切り、巨獣は想像だにしない激痛に悶え暴れる。
「助太刀、という訳ではありませんよ。どちらの武勇が上か、貴方達と私達で勝負といきませんか」
 大和もまたバイデンたちを煽り、ガルガンチュワへと矛先を向けるよう仕向ける。
 その一方で小路は眉間にシワを寄せ、こめかみに手を当てて念を周囲に拡散していた。
 小路の目に入る攻防に役立ちそうな情報を全員で共有し、戦いに役立ててもらうのが目的だ。
 オッフェンバッハは小路から受け取った情報を交えつつ、ガルガンチュワを注意深く観察していた。
 無謀にも傷を負ったバイデンがガルガンチュワへと向っていき、巨体の餌食となる。
「……とりあえず、一人ではブロックは厳しいかな。一人減って、残りは四人……か」
 バイデンたちが上手く生き残ってくれることを願いつつ、オッフェンバッハは観察を続けることにした。
「ま、ムダに近づく必要はないでしょ。まずは小手調べ、ってことで」
 禍々しいオーラを纏う葬識は、手のひらから漆黒の瘴気をガルガンチュワ目掛けて放つ。
 そして葬識と同じく、カルラもまた漆黒の瘴気を手の内から打ち放った。
 二つの瘴気はガルガンチュワを蝕み、その部位の肉が腐り落ちる。だが、当の巨獣は意にも介さない。
「見た目に違わぬくらいにはタフってワケか……面白い、やってやるぜ」
「んじゃ、ゆっくり丁寧に殺すとするかねぇ」
 士気十分のカルラはニヤリと笑い、葬識は目を細め舌なめずりをする。
 彼らの様子は、獲物に狙いを定めた獰猛な肉食獣のようだった。
 一方、その標的であるガルガンチュワは足元のバイデンたちと戯れていた。
 足元に気を取られている巨獣が隙だらけであることに気付いた孝平は、待機していた惟に声を掛ける。
「今こそ好機。僕たちの力、あの巨獣に思い知らせてやりましょう」
「ああ、これたちならきっとやれるはずだ――行こう!」
「では、僕が先手を打ちます。惟さんは巨獣の反応を見て後手に回ってください」
 言い終わるや否や、孝平は地を蹴り巨獣へと急接近する。
 神速果敢とは彼のためにある言葉なのかもしれない。孝平の後に続く惟はそう感じた。
 そしてオッフェンバッハとのすれ違いざま、彼女が何やらジェスチャーをしていることに気が付いた。
 手刀で足首をなぐ動作をし、ガルガンチュワへと向って顎をしゃくって見せている。
(なるほど、あの巨体では足をやられてしまえば一巻の終わり……ということですか)
 孝平はあっという間にガルガンチュワの目前へと迫り、両手持ちの大剣で左足首目掛け斬り付ける。
 自らの速度を威力へと転化したその一太刀は、大打撃を与えるに十分な威力を持っていた。
 続けざまに惟が黒き残光を伴う苛烈な一撃をガルガンチュワへと与える。
 黒銀の告死剣――ペルセフォネから放たれる斬撃は優美にして残酷。皮を切り肉を絶ち、鮮血を浴びる。
 だが、その二撃を喰らっても傷は骨までも到達していない。
 彼らの存在に気が付いたガルガンチュワは巨大な腕を振り上げ、二人を拳の下敷きにしようとする。
 巨体ゆえ遅鈍な予備動作を取る巨獣を尻目に、孝平と惟は更なる攻撃をそれぞれ加え、素早く立ち退く。
 行き場を失ったガルガンチュワの拳はバイデンへと向けられ、それを食らった一人が息絶える。
「戦えるバイデンは残り少ない……でも、巨獣もダメージを抱え込んでいる」
 オッフェンバッハは現状を冷静に見極め、考え込んだ末に一つの結論を出した。
 ――勝機はこちらにあり、と。



 バイデンが更に一人、ガルガンチュワの犠牲となる。
 残る二人のうち一人は遠くに吹っ飛び地に伏しており、命さえ危うい状況だ。
 現状、数の上では劣勢になりつつある。だが、当のガルガンチュワも相当に疲労している。
 集中攻撃を受けた左足を引きずり、それでも戦おうとする姿は異様な迫力を伴っていた。
 疲れた様子のガルガンチュワに、先ほどと同じ戦法で孝平が突撃し、激烈な一撃をお見舞いする。
 その攻撃を甘んじて受けながら、足元にいる残り一人のバイデンを殴り潰すガルガンチュワ。
 バイデンの息絶える姿を見届けたガルガンチュワは、満足げに次の標的を見定めていた。
 その標的とは、リベリスタたち。バイデンの全滅により、数人が射程圏内に入ってしまっていた。
 最も近くにいたカルラに狙いを定め、ガルガンチュワは単純に腕を振り上げ、単純に腕を振り下ろす。
 非常にシンプルで原始的な攻撃方法だが、あの巨体をもってすればそれが脅威となりうる。
「わざわざゴツい鎧で体張りに来てんだ! そうホイホイ退くかっての!」
 来てみやがれ――そう言わんがばかりの剣幕で、仁王立ちのカルラは巨獣の一撃を受け止める。
 あまりに重いパンチにカルラは地面に叩きつけられ、土にめり込む。
 その一部始終を見ていたシエルはカルラの元へと怪我の治癒に向った。
「カルラ様、大丈夫ですか!? 今、私めが回復を――」
「く、来るんじゃねぇっ! 上を見ろっ!」
 カルラの忠告に、ふと頭上を見上げるシエル。その目には、振りかぶられた巨獣の腕が映っていた。
「――っ!?」
 声にならない叫びを上げ、シエルは直撃を覚悟した。しかし何者かに突き飛ばされ、地面に倒れこむ。
 すぐさま頭を持ち上げ、巨獣の方へと向ける。すると、何者かが攻撃を受け止めていた。あれは――
「……小路様!?」
 そう、そこには華奢な少女が――小路が立っていた。ニヤリと笑い、巨獣へと減らず口を叩きつける。
「あたしはしぶといですよ、こう見えて! アンタなんかの攻撃では……くうっ!?」
 小路のか細い身体では攻撃を受け止めきれることはできず、勢いよく吹き飛んでいく。
 色あせた大地に叩きつけられ、小路の身体は動きを止めた。
 その様子を見ていたカルラは、シエルに向って大声を張り上げた。
「俺は後でいい! 小路を先に助けてやってくれ!」
「わ、分かりましたっ!」
 小路の元へと駆け寄っていくシエル。その後姿を見届けると、カルラは再び戦闘態勢を取った。
 そのやや後方ではオッフェンバッハと葬識が攻撃の算段を立てていた。
「あの巨獣は硬い皮膚に覆われている……でも、あの唯一の――ロクに見えもしない瞳だけは柔らかい」
「アレを潰せば奴の無鉄砲な攻撃の手も少しは弱まる……巨獣と言えど、所詮はナマモノってワケだねぇ」
 弱点を見つけたオッフェンバッハの提案を元に、後衛を務める二人は巨獣へと向ってそれぞれ技を放つ。
 オッフェンバッハは気によって練成されたワイヤーを、巨獣の濁った眼球だけを狙って伸ばす。
 一方の葬識も身体に纏う黒いオーラを指先へと収束し、彼もまた巨獣の白濁の瞳を目掛けて打ち放つ。
 気糸に頭を縛られたガルガンチュワは気を取られてか、目に見えて動きが鈍くなる。
 ガルガンチュワの瞳目掛けて放たれたオーラは巨獣の目を赤く染め、あまりの激痛に巨獣はわめく。
 そして、ガルガンチュワは左腕を支えに膝立ちになり、必死で痛みを堪えている様子を見せる。
 これをチャンスと見るや、リベリスタ一同の激烈なる反撃は始まった。
 カルラと孝平は散々傷付けられている左足を狙い、巨獣が立ち上がれないように立ち回る。
 ピンポイントな攻撃は上手くいき、ガルガンチュワは四つん這いになる。
 その後続には惟の姿。ガルガンチュワの胴体目掛けて黒銀の剣を振り下ろす。
 惟の攻撃が当たるや否や、ガルガンチュワの体には激痛が走った。
 その痛みに耐えられず、無様にも地面へと倒れ伏せるガルガンチュワ。
 次の攻撃を最後の一撃とするべく、オッフェンバッハは大和へと向って叫ぶ。
「首を狙うんだ! 奴は大きさこそ違えど体の構造は人間と同じ! ――だとすれば!」
 だとすれば、首さえ落とせば息の根を止められる。そう確信し、大和は巨獣の首目掛けて気糸を放った。
「……必ずや、ここで撃破を!」
 大和の放った糸はのど元へと絡みつき、彼女は力いっぱい引っ張ってみせる。
「これで終わりです!」
 十重二重に張り巡らされた気糸は巨獣ののどを圧迫し、締め上げられ、最終的には首を掻っ切った。
 最後の最後までもがいていたガルガンチュワは、糸の切れた操り人形のように総身の動きを止める。
 巨獣は汚れた大地に身をうずめ、先ほどまで喧騒に満ちていた荒野は一気に静まり返った。



 遠方に吹き飛ばされ、辛くも生き延びたバイデンの元へとシエルは向っていた。
 戦いが終わり、開放された気分でシエルはバイデンへと駆け寄る。
 そしてバイデンを抱き起こし、労いの言葉をかけながら治癒の法術で彼の体を癒そうとした……だが。
「巨獣を倒す競争は私たちの勝ちです。けれど、貴方達の武勇も見事なものでしたよ。
 今は勝利の喜びを、生き延びた喜びを分かち合いましょう――っ!?」
 シエルはバイデンが異様な敵対心をむき出しにしていることに気が付いた。
 総身をピクピクと痙攣させながら、白く濁った瞳でこちらを睨んでいる。
 その様子は、先ほど倒した変異巨獣――ガルガンチュワに良く似ていた。
「シエル、離れろっ!」
 惟はそう叫び、勢いよくバイデンへと接近した。
 黒銀の剣でバイデンの首を跳ね飛ばし、体が硬化していくのを確認すると、安堵の溜息をついた。
「……これが、変異というものですか」
 そう言ったのは孝平。
 理性が失われ、肉体は奇形化し、元の記憶さえ喪失して、ただの破壊衝動を内に秘めた肉塊と化する。
 世界樹の歪みによって起こされる生態系の著しい変化――それが、変異と呼ばれる異常事態だった。
「本隊の作戦が上手く行かなけりゃ、ラ・ル・カーナ全ての生物がこうなっちまうってワケか」
 しかめっ面でバイデンの死体を見やるカルラ。ふとあることを思い出し、シエルに一つ尋ねてみる。
「そういえば、小路はどうなった? 手当て、してくれてたんだろ?」
「あ、ああ……そうでしたね。その件なのですが――」
 シエルが言いかけるや否や、遠方から声が聞こえた。
『ちょっとー! あたし、怪我人なんですけどー!』
 気だるい叫び声が聞こえてくる。この声は間違いなく小路のものだ。
 ふと疑問を感じた大和がシエルに疑問を投げかける。
「あの、あんなに騒いで命に別状はないのでしょうか?」
「ええと、その件なんですけど――」
 シエルの話によるとこういうことらしい。
 なにやら物凄く当たり所が良かったらしく、体はほぼ無傷。
 吹っ飛んで地面に叩きつけられた際も、背負っていた布団が緩衝材となって大事には至らない。
 しかも、その衝撃で布団が都合よく広がり、小路はそのまま寝転がっていたのだとか。
『あー、あたしバナナ食いてーです! 怪我人なんでー!』
 なおも叫び続ける小路。しばしの沈黙の後、オッフェンバッハは口を開く。
「……ま、あれなら命に別状なんてなさそうだね」
「その、恐れ入ります……」
 シエルはペコリと頭を下げる。
「謝ることはないさ。……みんな無事で、ホントに良かったね」
「ええ、それが何より喜ばしいことです」
 照れくさそうに帽子を被りなおしながら無事を喜ぶオッフェンバッハ。
 そして、素直に返答するシエル。
 その一方で、葬識は変異した世界樹を見やっていた。
(……全く、純粋な悪意だけであそこまでキレイに歪めるものなんだねぇ)
 葬識は皮肉っぽく、少し楽しそうに含み笑いをする。
(はてさて、神は殺せるんだろうかねぇ)
 本部の掲げる世界樹の浄化。上手くいく保障などありはしない。
 だが、ラ・ル・カーナの破壊を防ぐにはこの手段を用いるほかないのだ。
 リベリスタ一同は、作戦の成功を心から祈った。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
この度はご参加お疲れ様でした。
戦いの行く末がどうなるかは未だに分かりません。
しかし、少しでもプラス方向に向かう事を信じましょう。
我々には、それしかできないのですから。

皆さま、素敵なプレイング、どうもありがとうございました。