●廃棄物処理場の悪夢 始めに異変に気づいたのは収集車の運転手だった。 冷蔵庫が動く、薬缶が動く、テレビが電話が廃棄物として集められたゴミ達が動き出す。 しかし、それはすぐに収まった。 それを幻覚だと思い込んだ運転手は、新な廃棄物を集める作業に戻った。 そしてその夜。 人に作られ、人の為に使われ、人に捨てられた物達は反乱を起こす。 人が夢見た幻想の生き物、怪獣に良く似た姿に変わって。 果たして、器物の怒りは動き始めた。 ●ブリーフィング 「妖怪って面白いよね」 『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)が随分と古ぼけた本を片手に集まったリベリスタ達を見渡した。 若干黄ばんだ紙の本をしばし捲ると目当てのページが見つかったのか、カメラを近づけモニターに移した。 「九十九神って言う妖怪の王様だって。今回はエリューションは廃棄物が革醒して合体した怪獣」 モニターの上で、本のページに被る様に地図とエリューションの姿が映し出される。 映画にある海から来て街を破壊するだけ破壊した後に退治される怪獣に良く似ていた……あくまでシルエットだけだが。 「塵塚怪王。フェーズ2のE・ゴーレム。電化製品とかが結合してるけど、コアを見つけて破壊しないと再生する。材料は沢山あるからね」 モニターが切り替わる。 映し出されたのはソフトビニール製の怪獣のフィギュア。E・ゴーレムの姿形に良く似ていると言う事は、コアとなった物の姿を映しているらしい。 「ソフトビニール製だから、熱に弱い。近くに変電施設もあるし上手く追い込めばそこの電気でコアが溶けるかもね」 じゃ、頑張って。暖かい声援と共に、イヴはリベリスタを見送る。 さぁお仕事だ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:久保石心斎 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月13日(月)21:06 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●変電施設 リベリスタ達が廃棄物処理場に到着すると、広大な敷地の中で真っ先に向かったのは変電施設だった。 フォーチュナーが提案した作戦も鑑みて、作業車の格納庫に近い場所で迎え撃つのが良いと判断したからだ。 持ち込んだ電気ランタンやヘッドライト、懐中電灯等で視界を確保し幾人かがそれぞれ戦闘に入る前から自己の能力を高める能力を発揮する、『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)がリベリスタ達全員に自己治癒の力場を付与していった。 その中で『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955) が変電施設を区切る金網を取り外しにかかっていた。 とは言え、移動に不便が無い様にする為には時間が足りない。周囲を警戒している者には既に敵の足音が聞こえているのだ。取り外しているよりも破壊した方が早いと思考を切り替え、影継は金網に向けて鉄槌を振り下ろした。 その一撃で金網を固定していた枠が拉げて倒れた。もう一撃、今度は有る程度離れた場所で振り下ろす。それで移動の為の障害は無くなった。 『不退転火薬庫』宮部乃宮 火車(BNE001845) が一般人が巻き込まれぬ様、強結界を張り各自が武器を構えた所で、巨大な気配が格納庫の奥から移動するのを察知出来た。 電化製品、プラスチックと鉄とゴムの塊を出鱈目に組み上げたソレは目も耳も無い、辛うじて口と思われる部位だけで作り上げた顔を巡らし復習の相手……人間を探して彷徨っている。 リベリスタ達に気づいたのだろうか。ズン、と腹に響く足音を響かせて一歩一歩近づいてくる。 「ギ……ギギィギギ……」 本物の怪獣ならば吼えるであろう。しかしコレは廃棄物を組み上げて作り出された紛い物。口を大きく開いても出てくるのは電化製品のパーツ達が擦れあう音だけ。 その音に憎しみの感情を込め、廃棄物の魔との戦いの火蓋は切って落とされた。 ●戦闘開始 先手を取ったのはリベリスタ達だった。『戦うアイドル女優』龍音寺・陽子(BNE001870)と『三高平の韋駄天娘』十 刈穂(BNE001727) が己のもっとも得意とする高機動戦を挑む。 上手く相手の射線から外れ、左右に別れて動き回る。変電施設から離れれば道を塞いぎ注意を引いて無理やりにも相手を変電施設に運ぶ。 無論、攻撃しないと言う選択肢は無い。二人の手足に宿った業炎を容赦無く相手に叩き込むのだ。陽子は脚を刈穂は腹の冷蔵庫を見事に打ち抜き、着火しないまでも内部への熱は溜ってゆく。 『A-coupler』讀鳴・凛麗(BNE002155) はそんな二人が間合いを離した瞬間に準備していた塩水入りのペットボトルを投げつける。 放物線を描いて飛ぶペットボルを凛麗は指先から放った気の糸で打ち抜いた。ペットボトルが破壊され、塵塚怪王のボディに塩水が降り注ぐ。もしも倒しきれず、変電施設に突っ込ませると言う選択をした時の保険だ。 「元通り……っ 壊れてろぉ!」 雄叫びと共に炎を纏う拳が塵塚怪王の首元に叩き込まれる。火車の一撃だ。 彼は側面から回り込むと、在ろう事か塵塚怪王の巨体を登って居たのだ。手足を引っ掛ける出っ張りには事欠かないその身体は、短い腕では届かない歪な作りになっている。 首元からぶすぶすと黒い煙が上がる。どうやら彼の一撃は炎となって目に見える効果を上げた様だ。 「くっくっく、狙い撃ちってやつです。その無駄な装甲剥がさせて頂きますぞ」 派手な銃声が上がり、塵塚怪王の胸元の冷蔵庫から火花が散る。 『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)の一撃が冷蔵庫上部に叩き込まれたのだ。しかし、エリューション化したのせいなのか、冷蔵庫に損傷こそ与えど破壊するには足りない様だ。 舌打ち一つを残し、九十九がリロードする音が響く。 その音に紛れ、今度は銃弾では無く矢が相手の短い腕の付け根に突き刺さる。 坂東・仁太(BNE002354) が明かりの外側に移動して狙撃したのだ。まるで獲物を狩るハンターの様に、暗視と言う武器を持って狙い撃う。 弓を放った後は即座に移動する。狙撃の基本であり、矢の放たれた方向から位置を特定されない様にする為である。 己の耐久力不足を自覚しているからこその戦い方だ。 続けてウラジミールと影継が仕掛ける。 「猿山の大将に然りだな」 既にウラジミールは自分の防御能力の底上げを図っていた。故に挑発を持って自分を追わせる形で注意を引く。にやりと笑ってみるのも忘れない。 近づくと言う動作の間に武器を振りかぶり、銃身の先に据えられた刺突用の短剣を相手に叩き込むと、引き抜く動作で横に飛ぶ。 数瞬後、塵塚怪王の身体が大きく前――変電施設――に向けて揺らいだ。 アスファルトに大きな傷を付けて前へ押し出したのは影継の鉄槌だ。 気を込めた強烈な一撃は、大量の電化製品を組み上げた巨体の塵塚怪王を吹き飛ばすまでは行かなくとも無理やり動かす事は出来る。 振りぬいた体勢をニュートラルに戻しながら影継はにやりと笑ってみせる。 「さぁて、怪獣退治と洒落込もうか!」 だが、やられる訳には行かぬと塵塚怪王は大きく口を開く。内部には白い光とが集まり暴力的な熱量が見て取れる。 「来るぞ!」 家電粒子砲の発射だと見抜いた影継が警告を飛ばす。 その声と同時に、前方に向けて光の帯が伸びた。同時に…… 「きゃあ!?」 「うおぉぉぉ!?」 口から光の帯を吐き出したまま、塵塚怪王の首がぐるぐると回転し始めたのだ。 元より骨格と言う物が無い身体は、首周りのパーツが飛び散るのも構わずに回転する。首元に登っていた火車など、熱で焼けた幾つかのパーツがその身体に叩きつけられた。 射線から外れたと思っていた者達には奇襲として働いたそれの一撃は、リベリスタ達を容赦なく熱で溶かそうと襲い掛かる。 無論、それで壊滅する程リベリスタは甘くない。直撃を避け未だ戦場に残っている。 じくじくと痛む火傷に形の良い眉を顰めながらも、凛麗は冷静に塵塚怪王を観察していた。透視の能力と己の直感を総動員し相手を見やり思考する。 幸い、相手の本体である物の形状は聞いている。問題は無数のゴミからその形状を見つけられるか……果たして、それは以外な場所に見つかった。 「見つけました! 頭にコアらしき物があります! 小型冷蔵庫の中です!」 そう、もっとも熱が溜まるであろう場所にコクピットと言うべき物があった。 せいぜい1?のペットボトルが二本入る程度の大きさの卵型冷蔵庫の中に、怪獣のフィギュアが入っている。 「了解、派手に行くよ!」 その言葉に、即座に陽子が反応する。なんと、相手の尻尾を駆け上り背中を蹴って頭部に向けて炎が宿る横殴りの飛び回し蹴りを叩き込んだのだ。。 廃棄物を固めた装甲が弾け飛び、歪な形の怪獣の頭部が削れる。叩き込んだ蹴りの反動を上手く利用して陽子は地面に降り立つ。 「あたしも負けてらんないね!」 すかさず刈穂が大きく脚を振りぬき、その蹴りによって空気を引き裂き刃を作り出す。狙い違わず塵塚怪王の右目の部分に真空の刃は着弾し頭部の装甲が大きく弾け飛んだ。 側面から気糸が伸びる。凛麗が放った物だ。弱点が見えている凛麗は装甲の隙間を狙って精密な攻撃を行う。 しかし、精密が過ぎた。少しでもズレてしまえば効果が薄くなる。 塵塚怪王は、粒子砲を放った時と同じように頭部を回転させる。有るかどうかも怪しい生存本能に突き動かされたそれは偶然にも攻撃を防ぐ形になったのだ。 「ぬおぉぉぉぁぁぁぁ!?」 未だ塵塚怪王の身体に張り付いていた火車が回転する頭部に向けて拳を叩きつける。腰が乗っていないにしてはかなり重い一撃だ。 頭部の半ばまで拳が埋まる……が、回転する力で身体が引っ張られる。しばらくぐるぐると回っていたが、やがて遠心力によって粉砕した装甲と共に空へと投げ出された。 無事着地出来た様だが目が回っている様だ。 「援護を頼む」 銃を持つウラジミールと九十九に影継がの言葉が届いた。二人は頷くと、即座に移動し回転する頭部の付け根に照準を合わせた。 銃声が二発、それぞれ頭部の両側面に向けて散弾とライフル弾が着弾する。如何なる神業か、回転で生じる隙間の中に弾丸は潜り込み、楔の様な役割を果たして回転のスピードが落ちた。 影継は陽子が取ったのと同じ方法で尻尾を駆け上り、放電する鉄槌を大きく振りかぶって叩きつける。 破壊力を極限まで高めたその一撃で、頭部が完全に破壊される。赤い、卵型の冷蔵庫もぐしゃぐしゃに拉げてされて空を舞う。 衝撃で、小型冷蔵庫の扉が弾け飛ぶ。その瞬間、中から黒い影が飛び出し逃走を開始する。 せいぜい15cm程度のプラスチックフィギュア。今回のターゲットのコアだ。 フィギュアは思う、この場ではもはや勝てない。ならば別の場所に潜伏しゴミとして捨てられた同志達を集めて身体を作れば良い。 自分の様に自力で動ける物達を増殖効果で増やし、それを身体にすればアイツ等の様な人間にも勝てるだろう。今度はもっと素早く動ける様に作る。 闇に紛れる黒い体と小さな体躯があれば、アイツ等も追ってはこれまい。 そう思考した所で、風を切り裂いて近づく気配を察知し……身体が地面に縫い付けられた。 フィギュアの視線の先で仁太が残心し弓を下ろしていた。 「わっしの弓は百発百中じゃけぇ」 にやり、と獣面を不適な笑みで歪めて見せる。それが自意識を持ち、人間に復讐しようとしたフィギュアの最期の光景であった。 ●ゴミはゴミに 仁太の一矢でコアが破壊されると、結合力を失った怪獣の身体は崩れただのゴミの山に変わった。 変電施設を使わずに勝てたのは行幸だっただろう。突っ込めば施設は暫く使えなくなる。アスファルトの破損は変電施設の破壊に比べれば安いものだ。 「くっくっく、やはり怪獣より、怪人の方が強かったですな」 満足げに九十九が言うと、気が抜けた雰囲気が生まれそれぞれが武器を戻していった。 「ゴミの怪獣がこれで最後とは思えない。人間が改めない限り第二第三の怪獣は現れるだろう。その事は忘れてはならない……」 遠い目でゴミの山を見つめながら、何処かで聞いた様な台詞を呟く陽子。その言葉に何人かは頷いて同意した。 「ま、中々楽しめたぜ」 影継が火傷に構わずに身体を伸ばす。ゴミが再び動き出さぬか観察していたウラジミールも「任務完了だ」と呟いて武器を収めた。 「役目を終えたものたちの墓場だな」 そう呟くと、年長者の貫禄か戻る音頭を取り、それぞれが疲労と火傷の痛みを押して帰路に付く。 「この後、カレーなど如何ですかな」 九十九の一言で祝勝会が開かれる事となり、ゴミの反乱は幕を閉じる。 皆様も、ゴミを捨てる時はリサイクルを忘れずに…… |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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